人付き合いとは、軽い出会いと軽い別れを繰り返すもの。
「お前、グリアが逃がしたって言う【血鬼剣聖】の妹か?あれ以降音沙汰なくなったと思ったら、今のワザ…どこで覚えた?」
まず誰なんですかこの人は。
「仙境です。」
…倒れてる淫魔族に知った顔があります。ジェーサさんあんまり恨まないであげて下さい。私が悪いと言う事で良いので。
「仙郷だと…?天界に行ったのか…?」
…?なんか噛み合ってませんね。
「ビセルの仙境です。」
「ビセルに仙郷があるのか…!?」
なんなんですかさっきから…。
「………俺が知っている仙郷は天界にある。お前がさっき使った技術は本来、天界へ行かなければ得られないものだ。そしてそれはあり得ない。何故なら、その仙郷は一度足を踏み入れれば二度と出る事の叶わない場所だからだ。当然、脱出した者は存在しない。」
ししょーは自力で習得した感じでしたが…。あの仙境が本当に特殊な場所だったんでしょうか…。
「ビセルの仙境は正しく『秘境』と言った様相でした。」
「なら天界の仙郷とは違う。そこは仙人の住む郷だからな。家もあれば人も居る。」
「じゃあ関係ないんじゃないんですか?」
「いや間違いなく関係はある。お前が使っている輪と呼ばれる格闘術は仙郷の仙人『神』が編み出したものだからな。」
輪ってししょーのオリジナルじゃなかったんですか。
「だがそうか…輪に、お前にはスキルは効かないだろうし…どうやって切り抜けるか…。そもそも俺は研究職なんだ。戦場でガンガンやってくタイプじゃないんだよな。…どうしたら良いと思う?」
「私に聞かないで下さい。」
「だよな…。」
「…私にもその『スキル』試してみたら良いんじゃないですか?とりあえず。」
効かないらしいですけど…。
「ん?いや…俺のユニークスキル【心】は、認識した相手に、好きなように心を追加するスキルだ。追加出来る数に制限はない。そうやって追加した心を元の心と争わせて、対象の心を破壊するのが基本的な使い方でな。お前みたいに特殊な心を持ってる奴か、そうでなくても強い心の持ち主にはどれだけぶつけても効果はない。一応、無生物もスキルの対象になるから、石や土を生物のようにする事も出来るんだが…輪の使い手相手じゃな…。多少手駒を増やしたところで焼け石に水だろ?」
私の輪がこの人に通用するとは到底思えませんが…。なんかやる気無くしてます。
「せめてキメラでも連れて来るんだった…。大体こう言うのはヴァイスの役割だろうが。なんで俺が出て来なくちゃいけねぇんだよクソが。」
…キメラって、オグルに現れた奴ですかね。そんな事言ってたような気がします。…あ!
「もしかして、ドリューさん…ですか…?」
ヴァイスさんが話してましたね。思い出しました。
「そうだが…?俺を知ってるなんてモノ好きだな。お前マイナー厨?」
そんなことないんじゃないですか?…多分。
「まぁ良い。とにかく、もう残ってるのは心が強ぇ敵だけだ。スキルがなきゃ俺なんて弱いもんよ。輪の使い手相手に真正面からやり合うなんてごめんだぜ全く。じゃあな。俺は帰る。淫魔共ももう帰って良いぞ。解散だ解散。」
…え終わりですか?私折角かっこよく登場したのに?わざわざ画風変えたのに?…って。
「ちょっと待って下さい!」
「何?残業嫌なんだけど。」
天界の事を知ってるなら神族の国への行き方も知ってるんじゃないですか?絶対聞いておいた方が良いですよ。
「どうやったら神族の国に行けるか、知ってませんか?教えて下さい!」
「変なところに行きたがるんだな。別に渋るような事でもないから教えるが…。」
マジですか!聞いてみるもんですねぇ!
「いくつかルートはある。が、天界の神に頼らないルートは一つだ。」
邪神様は地上の神ですから実質一択ですね。
「ギガルと魔界の境目辺りにバカデカい山があるだろ?」
「そうなんですか?」
「…あるんだが。」
無知無知ですみません…。
「その山を登る。すると着く。以上。」
意外と単純なんですね…。豆の木みたいな…?
「…以上だが、強いモンスターがアホみたいに居るから…まぁお前なら問題ないだろ。以上だ。」
ご親切にどうもありがとうございます。
「で、当然俺の質問にも答えるんだよな?」
私が知っててドリューさんが知らない事ありますかね。
「聞きたい事は一つ。【血鬼剣聖】の妹、お前の姉、ティアルーン・ロードレイグはどこに居る?」
「ここに居るんじゃないんですか…!?私そのつもりで会いに来たんですけど…。」
「何でお前が知らねんだよ…。お前の肉親だろ…。」
「すみません…。美味しいアイスクリーム屋さんとか教えましょうか?」
「いらんわ!…知らないなら良い。【勇者】の関係者だから殺したいってだけで大した理由じゃないしな。それに何度も言ってるが、こう言うのはヴァイスかグリアの仕事なんだ。俺に任せるから逃げられるんだよ。じゃあな。」
じゃあって言ってもまた会うか分かりませんけど。ピンチは脱したと言う事で良いんですかね?
「主様。」
スラリンは居るんですか。
「ティアルーン様とフィヴィナ様より伝言を預かっております。『オーの街で待ってる。』とのことです。」
ティアお姉ちゃんのメンタルケアを優先した感じでしょうか。天界への行き方は分かりましたが、私一人ならともかく他のメンバーも戦力として連れて行くわけですし、一旦全員で集まって作戦会議でもしたいです。
と言う事で、私は小人族の皆さんに戦場を任せて、スラリン、ラト、ミニフさんと一緒にヒュメルの王都ことオーの街へ戻り――。
「アタシも行く。」
「何でジェーサさんがここに…。」
「戦場から帰って来た中にアイツが居なかったから。…やっぱり、こんなとこで死んじゃって。」
「ジェーサさんこれは私が。」
「優しさなんてサキュバスには要らないんだよ。…私よりずっと大人で、ずっとしっかりしてて、ずっと強かったのに。………ザコ。コイツはザコサキュバスだから死んだの。アンタは関係無い。」
「……行くって、親友を生き返らせるためですか…?」
「前言ってたよね。お姉ちゃんを生き返らせるんでしょ?」
「………はい…。」
「アイツが望むなら生き返らせたいかな。…どうせ転生させるんなら人族が良いよね。可もなく不可もなくって感じで、一番安定してる種族でしょ?………アイツが居ないと、ヴァンパイアの力を持ってる私を庇ってくれるヤツが居ないから、サキュルには居られないんだよ。」
「私がジェーサさんを守ります!親友の代わりになんてなれませんが、絶対に!」
「良いよ。硬くなんないで?…それに、唯一無二の親友だから…簡単に代わられたらたまらないって!…ありがと。」
親友は私にも居ます。その人とは歪な関係ですけど、大切な人だと思っています。…出来ればもう一度会いたいです。本当に大切な人なんです。
と!!言う事で!!私たち5人…4人?「人」で数えて良いんでしょうか?…は!!オーの街へ向かいます。と言ってもミニル、ギガル、ドワルまで行ってやっと船が出るんですが…。
ミニルは何てことなく抜けられました。ギガルでは少し何てことありましたが――。
「――ドラゴンはマズいですドラゴンは!!」
ミニフさん殴る蹴るしか出来ないので、空を飛んで魔法とかブレスとか撃って来るタイプにめっぽう弱いんですよ。
「レアモンスターじゃん!!素材を売ったらがっぽり稼げ――。」
突如放たれる超威力の下級魔法!!
「待たせたっす…。シンリ…ピンチに颯爽と駆け付けるっす…zzz。」
寝てる!!
「魔法の神様からちゃんと加護は貰えたんだけどな。まぁそりゃあ、今直ぐって訳にはいかないよな。」
なるほど…。しっかり価値のある旅だったみたいで良かったです。
と言う事でシンリさんとキャルさんが加入しました。…でももっと集められそうではあるんですよね。サヨさんとか。
「サヨって、【血鬼剣聖】と【勇者】に弟子入りして鍛えられたって言う勇者パーティの【侍】?知り合いなの?」
サヨさんそんなことになってたんですか。
「私はサヨさんの命を救ったことがあります。」
行き倒れてた時に。
「マジ…!?…でも【侍】は魔界でしっかり魔王軍と戦闘中だから無理かな。」
勇者パーティに居たならそうなりますか。じゃあビセルでローレさん…とラビリアさんを探しに行きましょう。…ラビリアさんはともかく、ローレさんはまだビセルに居るんでしょうか?
「――ネマちゃん?」
まだ居ました。もうとっくにどこか別の場所へ旅立ってるものかと。
「夢じゃない?」
夢でも幻でもないですよ。
「生きてたの?」
ヤバ。
「あ…その…死んだふりだったんです…すみません…。」
やらかした。またやらかしました…。
「………良かった。生きてて良かったぁ…!」
えっと、えっと、えっと、とりあえず抱きしめる!!
「私の血で殺したんだと思ってたんだよ…!?良かった…!死んだんじゃなかったぁ…!生きてたぁ…!!」
話を聞くと、ずっとビセルの王都から出られなかったそうです。私のお墓を作ってずっと通ってたとか。…すみません。やっぱ私主人公向いてないですね…。
…って――。
「お墓壊さなくても良かったんじゃないですか!?」
何で壊しちゃうんですか私の名前が掘られた石を!!なんか嫌じゃないですか…!!
「生きてたんだよ?お墓あったら縁起悪いよね?」
そ…うかも。…確かにそうですね…。
「でしょ?ラビちゃんにも教えてあげよ。生きてたこと。」
「ラビリアさんと知り合いなんですか?」
「ずっとこの街に居れば流石にね。」
そんなこんなでラビリアさんも早々に見つかり…。
「分かってたよ。来てくれるって。」
と言われてしまいました。私の思考回路と言うか、性格と言うか、行動基準と言うか、めっちゃ読まれるようになってます…。…前世の彼女と私ではありえないことですが、こっちの方が「良い」関係です。
「殺してもらったおかげですね!」
「礼には及ばないよ。」
こんな冗談も言い合える関係では無かったですし。
さて、ローレさんとラビリアさんが加入して9人パーティになりました。ドワルから船に乗ってビセルへ。ビセルから船に乗ってヒュメルへ。ラビリアさんの名が売れているおかげもあるんでしょうけど、商人の国なだけあって乗ろうと思えば船はありました。よって、私が知り合いに会いたくなくて避けてるだけだったことが証明されました…。本当にすみません。…時間としては私が15歳になるくらいです。
そうなんです。なったんですよね。15歳。
『じゃあそろそろネムアムちゃんに呪いをかけよう。成長もしない老化もしない、時が止まる呪いを。』
邪神様の声、加護を持ってるのはロードレイグ家なのでフィヴに聞こえても、今のメンバーは誰にも聞こえてないんです。なのに深夜に話しかけて来て…。嫌がらせ大好きですね本当に。…ってちょっとちょっと。
「呪いはもうかかってるんじゃなかったんですか?」
『ネムアムちゃんにかけた呪いは運が悪くなる呪いだよ?勘違いしてたぁみたいやなぁ!』
ウザ。…私がやることなすこと上手くいかないのはそのせいですか。まぁほとんど私の怠慢が原因で起こったやらかしなのでそれは良いですけど。
『じゃ、そう言うことで不老の呪いかけたから。ホントタイプドンピシャカワイイ!!』
ありがとうございます…。
「因みにアドバイス貰えます?」
天界とかその行き方とかで。
『君たちが見付けた行き方は予定通りだから大丈夫。天界に関しては、着いてからこの私セデス様自ら手を引くんで、おっけーっす!』
じゃあおっけーですね。
『うんおっけーおっけー任しといてー…あ!そうだ言い忘れてた!』
「何ですか?」
『私のこと、ちゃんとセデス様って呼んでね。天界の神々に「人の子にまで邪神と呼ばれているのか…。」とか思われたくないから。』
「分かりました。セデス様。」
『そうそう、そんな感じでヨロシク。じゃあまた!天界で会おう!』
はーい…。
私は不老になった訳ですが…。血さえ有れば前から不老不死ではあったんですよ。今回、血が無くても不老になったので本当に死ななくなってるんですね私。…でもこれ以上成長することもなくなってるんですよね…。身長とか胸に拘りは無いんですが、これ以上筋力とかが伸びなくなったのはちょっと気になります。…一応、輪はこの状態でも成長するはずなんですよ。なので、これからは輪を重点的に鍛えるか血のストックを増やすかが、私の強くなり方になりそうです。とは言え、戦力を集めろと言っておきながら私の戦力が上昇しにくくなる呪いをかけるとは…。何か狙いがあるんでしょうけど…今は考えても仕方ありませんか。フィヴたちと合流しましょう。
「………………嘘…。」
オーの街に着いた私達は息を飲み込みます。人族の国ヒュメルの王都は既に、魔王軍の襲撃を受け壊滅していました。
と、言う話は聞いてるんですよ。前世の両親は二人ともその襲撃で命を落としたんです。でも生き残りは居て、その人達が協力して何とか生活を維持している。と、聞いたんです。そんな街でフィヴが待ってるのは妹がみんな居るからなんでしょう。となればギルドに居るんでしょうか?それか学校かもしれませんね。何かしらヒントは残してると思うんですが…聞き込みで分かりますか。流石に。
「――ロードレイグさん!?ギルドに行って下さい!!皆さん待ってますよ!!」
ありがとうございます。ギルドですね。…この感じ、やっぱり王都では名が売れてるんですね。私は悪名なんでしょうけど。
「そんなことないよ。ネマ姉は悪名もあるけど、それ以上に善名が売れてる。」
「フィヴ…。そうなんですか…?」
「私は歳追い越しちゃったけど、妹の前で悪名が轟くことしないでよ?」
「しませんよ!…多分。」
「いや言い切ってよ!!」




