大切な存在は小さくて大きいもの。
小人族の国「ミニル」。まるで私が巨人になったと錯覚するようなミニチュアの国。当然町で休むなんて出来ない。休む必要なんて無いんだけど。狭いからすぐ抜けられるし。ネマ姉の方が時間かかるに決まってるしさっさと抜けてしまおう。そう考えて歩を進めるのだった。
しかしそう。小人族はこんなところに国を構えるくらい癖のある種族。町を避けて進んではいるんだけど、やはり旅は出会いの連続。なかなかどうして無視させてくれない。なぜなら…。
「俺も連れて行ってくれ!!」
「私も!!絶対力になるから!!」
「僕も連れて行って下さい!!必ず、かの邪智暴虐の魔王を除かなければならぬのです!!」
小人族は戦闘狂で有名なのだ。
戦場で死ぬことを誉とするめんどくさい種族。でも協力してくれるなら普通に嬉しい。ので、一人仲間に引き入れたんだけど、そしたらどんどん増えて来て…。
「我はこの国の王である。是非力をお貸ししたい。是非戦いたい!!」
「そっちが本音でしょ…。」
…まぁ別に良いか。勝手に付いて来る分には別に…良いか…?良いのか…?すぐ服を脱ぐミニフさんに小人たちをよだれを垂らして見るラト。そしてその上司だと思われている私。良いのか?何かあったら私の責任だぞ?…ん?小人たちが急に大人しく…。
「ミニフさん!?何で脱いでるの!?服着て!?」
「良いじゃん小人だよ?…巨人になれば良いのか!それだけサイズ差があったら見ても分かんないでしょ!」
「良くない!!だいたい巨人になったら絶対小人たちのことぷちっとするでしょ!?」
「いや流石に…するかも。」
「するな!!」
拝啓ネマ姉。ヘルプ。敬具。
「ぎゃあああああああ食べられるうううううう!!!!!」
「食べないでラト!!それを食べたら一線超えるから!!」
どうしよう。ネマ姉が居たら一対一で監視出来たのに。私一人で二人見なきゃ。…と言うか、よく考えたら小人たちの事も私一人で見なきゃ。え、どうすんのこれ。スラリンは出せないし…。
………………もういいや。
「じゃあみんなで行こう!行くぞー!」
もうなるようになればいいやぁ。
「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!」」」」」」
着いた。ティア姉はどこだろ。こいつらは…ほっといて良いか。
「フィヴちゃん…!?何でここに居るの…!?小人族…!?」
ティア姉見付けた。実はこれこれこーゆーことがあって…。
「――お姉ちゃんが死んだ…。」
「でも生き返るかもしれない。だから一緒に――。」
一緒に行って良いの…?…ティア姉は思ってたよりメンタルがやられてる。この状態のこの人を…?ティア姉は11年前にネマ姉が、9年前にジル姉が行方不明になっても私達を置いて行かなかった。8年前に召集がかかった時もすぐには行かず、スラリンを作ってから家を出た。ティア姉にとってジル姉は私たち妹よりも大きい存在。だから7年前のことも4年前のことも隠して黙ってた。絶対背負うから。姉妹の中でティア姉が一番不安定なのに。
「…お姉ちゃん頑張るから。まだ隠してることあるよね。言って。」
ダメだ。ごめんネマ姉。ティア姉は連れてけない。…私は何も分かってなかったんだ。どれだけ苦しんで来たか。何も。
「…言えない。」
「何で!?お姉ちゃんじゃ力になれないの!?」
その状態でも力になれる天才だからダメなんだよ…。
「一回帰ろう?ティア姉。みんな大きくなったんだよ。」
安心出来る場所で休ませないと。
「…分かったよ。じゃあせめて、今出来ることをさせて。何も言わなくて良いから。何も考えないから。」
私はラトのスキル対策アイテムをティア姉に作ってもらう。スラリンは人に擬態させて伝言を頼み、ラト、ミニフさん、小人族たちは戦場でネマ姉を待つらしいので、私はティア姉と二人ヒュメルに帰った。ほんとはネマ姉を待ちたかったけどしょうがない。あの人は突発的な思い付きで10年仙境に居るような人だから、多分今回もどうせ何かしらあって1年くらいサキュルに滞在してるかもしれない。そんな人を待つのはもう無理。3年待って我慢出来ずに3年探してやっと見付けてこれなんだから、本当にどう言う思考回路で動いてる生物なのか理解出来ない。…でも伝言は残したから今度は来てくれる。………多分…。
「――行っちゃったね。」
「行っちゃいましたねー。」
良く分かんないけどお目付け役が居なくなった!これで脱ぎ放題…!早速脱ぐぞぉぉぉ…ぉ?
「ラト。私が脱ぐのを止めるんじゃない。」
何だよそれ!!結局脱げないじゃん!!
「…スラリン…?も脱ぎたいよね?」
変な名前だなー…。フィヴィナの知り合いらしいけど…どこから現れた…?
「いえ全く。」
スラリンにも止められるし…。フィヴィナが居なくなったのに全然脱げない。絶対裸の方が良いのに。…そう言えば最近元のサイズに戻ってもないな。小さいままこんな長い間過ごしたことないから新鮮かも。でもヒマなんだよね。やっぱ私も小人に混ざって前線に行った方が良かったかな?ヒマ!!なんか起きない!?
「報告!!報告!!」
「何事だ?」
「前線が勝利しました!!戦線を押し上げるために戦える者は来て欲しいとの事です!!」
「誠か!?総員!!直ちに前線へ向かえ!!この好機を逃すな!!」
膠着した戦場に動きが出来た。この機を逃すまいと、後衛に待機していた戦闘員全てが送られた。後衛には戦える者が居なくなった。
「…何だよ…これ…。聞いてた話と違うぞ…?勝ったんじゃねぇのかよ…?」
前線へ向かった兵達は現実を知る。誰一人として勝利した者など居ない事を。前線の兵は皆一様に、仲間からの攻撃で倒れている事を。
「魅了の力…?サキュバスか…!?」
この状況は淫魔族が起こしたものであった。後衛に待機している回復役を潰す為に、その護衛共を誘き出す為に、一人の悪魔族によって紡がれた死の糸であった。その糸で辿り着く先が地獄と知らずに辿ってしまったのだ。
「数十人サクラは用意したんだが…全員とは。思ったより釣れたな。頭の切れるヤツは居なかったようだ。」
後衛に残された者達の前に彼は現れる。彼はたちまち後衛の全てを殺し、前線に向かった者達を後ろから追い立てた。
「意外と死んでるじゃないか。この淫魔共をこれだけ殺せるとは…。小人に…巨人か…?【魅了】の効かないヤツが居るみたいだな。」
「…サキュバスの相手で目一杯だってのに…!!…誰だテメェは!!」
「俺は魔王軍四天王が一人、【心】のドリュー。戦闘要員じゃないんだ。そりゃあ知らねぇよな。で、【血鬼剣聖】の妹はどこに居る?殺したいんだが…。」
「居ねぇよここには…!!そして殺されるのはテメェだ!!勇者様の仇!!」
「勇者を呪い殺したのは別の四天王だ。俺じゃない。そもそも勇者が呪いを受けたのは弱かったからだろ。自分の弱さを他人の責任にするな。強くなれんぞ。…まぁ居ないなら良いんだ。お前らを殺す方を進めよう。」
ドリューはユニークスキルを発動させ、ほぼ全員を戦闘不能にする。
「…ちらほら耐えたのが居るな。小人と巨人は流石として…魔人か。これはスキルによるものだな。面白いのを持ってるみたいだ。そしてもう一人…スライム?…そうか、【錬金術師】だったな。凄い才能だ。俺のスキルに勝てる心を錬成出来るとは驚いた。…本人の居ないところで褒めても意味は無いか。」
次にドリューは戦闘不能にした者達に対して命令を与える。
「死ね。」
このたった一言で、数名の生き残りを残して全員が自害。生き残った者達も最早四天王に届きうる強者は居ない。
「………ここまでか…。無念…。」
ドリューは一人の小人族に対して死の糸を手繰り寄せさせる。
「狂戦士の小人族でも戦争は辛いだろ?俺が殺してやるよ。」
戦闘が苦手な四天王最弱の男。それでもその壁は高く、誰も登ろうとしない。
ただ一人を除いては。
「もう大丈夫!」
掛け声と共に現れ、片手でドリューの攻撃を消滅させる。
「何故って?」
仙境で身に着けた格闘術、輪によって。
「私が来た!!」
くぅ~!一回言ってみたかったんですよこのセリフ!




