みかんとオレンジは手の爪切りと足の爪切りくらい違う。
穴の空いたスプーンは管理しやすくなるので分かるんですよ。
穴の空いてないスプーンは何ですか?
抜け穴のない行動を取れるようにするための呪いの一種ですか?
あと持ち難い形のスプーンは何ですか?
使いませんよね?見た目で買っても使い難いと使いませんよね?
使うんですか?勿体無いからですか?何のために買ったんですか?
お婆ちゃんが旅の道具を買い揃えたんですよ。
ちょっと高いんですよ。
変な鳥の模様とか入ってるんですよ。
臨時収入が入ってウキウキなんですけど、お婆ちゃんは普段何の仕事をしてるんですか?
子供の見た目で職あるんですか?
儲かるなら私も一枚噛みたいんですが。
「冒険者じゃが、儲かるぞ?行商人の後ろを着いて行くだけで金1枚じゃ。」
と言う事で、私も冒険しようと思います。
冒険者ギルドってこの町にもあるんですけど、ここは支部になるんですかね?
「登録料小銅貨1枚です。」
はいどうぞ。
小鉄貨1000枚分なので、千円くらいですか。元は取りましょう。
いや!お婆ちゃんのお金でしたね!じゃ良いです!
「では、こちらの紙に名前などご記入いただいて、こちらへお持ちください。代筆は必要ですか?」
10年過ごしてきたんです。任せてください。
多分イけます。大丈夫です。
「お婆ちゃん。職業って何書くんですか?魔法使いの弟子ですか?」
私無職なんですけど。
「得意な事で良い。そこに職業と傾向が書かれとる本があるじゃろ。参考にしてみるとええ。」
分厚いですね…。えっと、あ行は、
【アイシクルマスター】
【命の恩人】
【鬱血剣士】
【エンシェントトランスクリエイター】
【王】
どうやって参考にしたら良いんですか?
私前世帰宅部だったので何も無いですよ?【ゴーホームマスター】を名乗る時が来たんですか?
【トラベラー】は駄目ですよね。
書いてありますけど。
【見習い魔法使い】とかですかね。
でも魔法使いになる予定はないんですよね。
『スキルで絞り込め〼。あなただけのジョブを見つけよう!』
良いじゃないですか。えーと、別売りみたいですね。
ギルドの備品じゃないんですね…。
スキルって、私が使えるのは簡単な魔法だけですが、大丈夫ですかね?
『炎魔法が得意なあなた!』
【炎の魔法使い】
【アイスドラゴンスレイヤー】
【火付け役】
【放火魔】
名乗って良いんでしょうか。
『光魔法が得意なあなた!』
【光の魔法使い】
【ダークドラゴンスレイヤー】
【ハゲじゃなくてスキンヘッドだから。剃ってるだけだから。ワザとだから。光魔法だから。】
【照り焼き】
光魔法系は違いますよね。私に合ってない気がします。
「…そんなに悩むなら【旅人】でええじゃろ。魔法もまだまともに使えんしの。」
そうですね。
ランクが上がれば更新出来るみたいですし、今は【旅人】にしておきましょうか。
「では、【旅人】のネムアムさん。これで手続きは終わりです。」
ギルドカードを貰いました。
鉄の紋章が刻まれてます。
「ネムアムさんはたった今から冒険者です。最初は鉄の、【アイアンランク】の依頼しか受けれませんが、多くの依頼を受けてギルドに認められればランクが上がり、さらに多くの依頼を受けられるようになります。」
アイアンランクは報酬が鉄貨止まりなんですよね。
クエスト中の入手物を売却して稼ぐモノっぽいです。
「ネムアムさんの活躍を楽しみに待っています。」
「気を付けて、頑張ってくださいね!」
やっぱり受付嬢は顔採用ですよね。絶対そうです。
給料良いんですかね?仕事は多そうですが。
あー、でも、受付嬢だけではギルド回せないですよね。
受付はしない、事務員ですか?そう言う仕事もあるんでしょうね。
ギルドマスターも居ますしね。
「何か受けてみるか?採集依頼とか。簡単じゃぞ。」
そうですね…。
「お婆ちゃんが稼いでくれたので、今は大丈夫です!」
働きたい人って居るんですか?
お金が貰えるとか、趣味を兼ねてるとかじゃなくてですよ?
単純に「労働をしたい!」と思う人、存在するんですか?
「そうか…。まあ、一回ぐらい受けてみたらどうじゃ?ワシも手伝うしの。」
そこまで言うなら…。まあ…。仕方ないですね…。
「では…。定番の薬草採取を。」
お願いします。受付嬢さん!
性格が〜とか。趣味が〜とか。そんなの、結局可愛ければどうでも良いんですよ。
顔が良ければ許されるんですよ。
お婆ちゃんも顔良いので許します。
『ライルテールの採集。30本以上。大鉄貨1枚。』
根は残して、茎を根本から切り取らないといけないそうです。
「ライルと言う生き物が居ってな。尻尾を切ってもまた生えてくるんじゃ。」
なるほど。それでライルテール。
勉強になりますね。使うことないでしょうけど。
「これで…。30本目ですね。帰りましょうか。」
青色の花で、ペットボトル2本分くらいの大きさです。
目立ちますけど、疎にあるので面倒ですね。
1本大鉄貨1枚の買い取りだったので小銅貨3枚入。
採取道具の貸し出しで、籠3枚ハサミ2枚の大鉄貨5枚出。
報酬が大鉄貨1枚入。
掛かった時間が、移動を含めて約3時間。
…時給900円も無い?
でも物価違うし?他のクエも受ければ効率的だし?
「毎日真面目に働いてギリか…。」
いやいや、ランクが上がれば補修金自体で稼げるようになるし、何よりロマンがある!ヨシ!
「宿探しに行くぞ。」
からあげと荷車は、預けておける場所があるのでそこに。
「あら。小さなお客様ね。パパとママはどうしたの?」
角が生えてても、子供の姿なのはおかしいんですね。
ギルドカード見せてます。
「それじゃあ、ここにお名前書いてくれるかな?」
宿取れそうですね。
お婆ちゃん、背が足りずに台出して貰ってる…。
今世ではちゃんとした外泊初めてなんですよね。
ルルちゃんが村を出る前に一回だけお泊まり会をしたんですが、私の寝相が悪かったみたいで、良く眠れていなかったんですよね。
ルルちゃんは喜んでたので私は悪くないです。
「流石のワシも今日は疲れたわい。あんな化物が居るなんて聞いとらんぞ。」
今日は濃かったですね。
バカデカい熊が居て街を作れるんですから、異世界の人々は逞しいですよね。
熊の手って美味しいんですか?
でもあの熊を狩れるんですよね?冒険者の皆さんは。
全員と言う訳では無いでしょうけど、一対一で倒せる人も居るんでしょうね。
冒険者稼業も夢はありますけど、普通に働いた方がお金持ちになれそうですけどね。
薬草採取に全力出してる様じゃ、老後に生きていけないですよね。
薬草って育てられないんですかね?
需要が少ないんですかね?それとも育てるのが難しいとか?
研究目的で育てる人は居ても、食糧目的で育てる人は居ないでしょうし、自分たちで使えないものは育てないんでしょうね。
そこらへんに生えてる草でも、あの熊が居る世界ですし町の外に出たく無いんでしょうね。
大規模採取はコスパが悪くて、小規模採取はコスパが良い。そう言うところが初心者にオススメなんでしょうね。
この世界のお金、貨幣なんですけど、鉄、銅、銀、金、白金が小、中、大あって、10枚で繰り上がるんですよ。
白金貨とかいつ使うんですか?
田舎と都会で貨幣の価値が全然違うとして、金貨までは分かりますけど白金貨って一兆倍ですよ?国家予算じゃないですか。
白金貨なんて偽造する人も居ないですよね。
いつか手に取る日が来るんですかね?そもそも本当に存在するんですかね?
冒険者の最高ランクが白金の【プラチナムランク】なんですよ。
適正報酬兆ですか?国落とすんですか?
一人で国落とせるレベルって事ですか?
でもドラゴンとかって、小さな国なら落とせるイメージなんですよね。
ドラゴンスレイヤーが居るなら一人で国落とせる人も居るってことなんでしょうね。
「お婆ちゃんってランク何なんですか?」
高そうですよね。
「シルバーランクじゃ。」
なんか低くないですか?そんなもんですかね?
園、小、中、高、大で考えても中学生ですよ?義務教育終わってないんですよ?
まあ見た目は小学生ですけど。
「ワシ魔物の討伐とか怖くて出来んし。」
もう隠す気も無いんですね。
高ランクのクエストはモンスターの対処依頼ばかりなんでしょうね。
明日出発前にギルドで見てみますか。
ギルドって、施設の名前では無いですよね。
冒険者ギルドとか、冒険者協会とか色々ありますけど、結局よく見るあの建物は何なんですか?
酒場とか宿屋と一緒になってるタイプもありますよね。
でも病院は一緒になってないんですよね。自己責任てことなんでしょうね。
ギルドはあくまで仲介をしているだけですし、ぶっちゃけ一番美味しい役どころですよね。
でも、ギルドを通さない依頼は、ギルドに狙われるんでしょうね。
それだけ冒険者ギルドとか、冒険者協会が強い力を持ってるって事ですよね。
ギルドは意味的に分かるんですけど、協会は何ですか?
結局協会も、会員以外は許さないスタイルでやってるんですか?
それとも会員は守ってくれるんですか?
ギルドはその町の冒険者を仕切っている組織で、ギルド自体を運営しているのは協会。って事なんですかね?
もう面倒いのでなんでもいいや。
それでギルドの壁に貼ってあるクエストを見て、ギルドを出たとこなんですけど、
「吸血鬼討伐って何ですか…?」
私も吸血鬼なんですけど。私討伐対象になる種族だったんですけど。
「吸血鬼は嫌われとるぞ。…まさか何も聞いとらんのか!?」
聞いてないですけど。
「この町を離れたら話しちゃる…。」
凄い深いため息されたんですけど。私何も知らないんですか?
ラーの町からだいぶ離れた場所で火を起こし、日もすっかり落ちてしまったところで話し始めました。
「吸血鬼は害をもたらす種族なんじゃ。知性のある魔物と殆ど同じ扱いを受けておる。」
まず一に血を吸うこと。
吸血鬼は血を吸って相手の生命力を奪う。それにより若さを保てる。
さらに吸血鬼に共通してある自己中心的な物事の考え方は、同族であっても変わりなく。吸血鬼は共食いをする。
そして、天然吸血鬼は吸血相手を養殖吸血鬼に変える力を持つ。
養殖は吸血欲求に弱く、吐いても止まらない程にひたすら血を欲する化け物となる。
「但し、ぬしの一族は特別じゃ。加護があるのでな。陽に当たっても灰にならんし、血を吸わんと生きていけんと言うこともない。」
ほえー。
「ぬしの母の適当さはワシも良く知っておる。この分じゃと、のしの姉も教えられておらんかもしれんな…。」
多分そうでしょうね。
「『血を吸ってはいけない』と、『吸血鬼である事を明かしてはならない』と言うことは言い聞かされてきたんですが。」
まあ、知って何か変わる訳でもないでしょうしね…。いい加減ですね。
「待ってたぜ。」
待たれてたみたいですね。美少女は辛いです。
昨日の盗賊ですかね。
…盗賊っぽくない人が出て来ましたね。人…?角生えてますね。鬼ですかね?
お婆ちゃんにも私にも小さいですけど牙あるんですよね。
興奮したら大きくなるんですよ。あ、そう言う意味ではなく。
「鬼族の少女…。町長の娘を攫ったのはぬしじゃな?」
あーなるほど。お婆ちゃんも鬼族の少女ですからね見た目は。それで捕まったんですね。
「それにただの鬼でも無い…。吸血鬼か。」
そうなんですか?
私は天然ですよ。養殖なんかに負けません!
「同族に会ったのは久々だ。…いや、もう同族とは呼べぬか。」
吸血鬼になったからって事ですか?
養殖とは言え、私も家族以外で初めて会ったんですけど。気が合いますね。
「可愛い部下を虐めてくれてありがとう。」
そう言うと鬼族の少女は腰の刀を抜き、
「この礼は今直ぐさせて頂こう…!」
やっぱ鬼って和なんですね〜。
東にあるんですかね!鬼の国!
「少女の姿で全盛では無い。なら、かなり若い時に、吸血鬼にされた様じゃな。それに自我を保っておる。相当な量の血が必要な筈じゃが…何人殺した?」
鬼の角って邪魔そうですよね。
ケモ耳っ娘の尻尾とか。
子供の内は小さいらしいので、お婆ちゃんはそんなに気にしてないみたいですけど。
「そうだな…。二百か三百か。それ以降は覚えてないな。」
マジヤバいじゃないですか。
どうするんですか。
めっちゃ囲まれてますよ!超人気レイヤーになった気分ですよ!
お婆ちゃぁぁぁぁぁん!!何とかしてくださいよぉぉぉぉぉぉぉ!!!
「とんだ悪党じゃの…!」
ニヤけてますけど!手震えてますよ!?
チラチラこっちを見てもどうにもなりませんよ!?
ヤバい!!この「先に動いた方がヤられる」雰囲気、こっちはただ怖くて動けないことがバレたら…
「え〜?何?怖いの?」
「心配しなくても、お姉さんが優しく可愛がってア・ゲ・ル(はーと)」
!これはこれで良いのでは…?