プッチンするプリンのヤツは、頑張ったら全部蓋にプッチンして載せれると思う。
「この辺りまで飛べば充分かな?」
…。
「ありがとうはナシ?傷付くな~。」
別に言っても良いですけど…。
「あなたのせいでこうなったんですよ?」
グリアさん。
「いや~、爆発で全部消し飛ばして欲しいモノだけボクが逃がすって予定だったんだけど、中々上手くいかなかったね。イレギュラーが多かった。…招いたのはボクだけど。」
私は人魚の血を飲みました。人族の状態で。その後【血霧変身】で体をドロドロに溶かして脱出しました。ローレさんの血を吸血鬼状態で吸うのはなんか嫌だったので、何と無く死んだ風に見せかけて逃げてみたんですが、そこからどうしようか考えているところ、グリアさんに捕まって遠くまで運んで来られたわけです。それと【血霧変身】は、自分が「自分のもの」だと認識している持ち物も血に変えられますから、あの時持っていた持ち物は全部持って来れてます。つまりちょっと調べれば分かるような、ちゃちな偽装だったんですよね…。私は死んだことになってるんでしょうか…?
「…で。私に魔王軍に入れって言うんですか?お姉ちゃんたちも一緒に。助けてあげるからって。」
どう考えても抵抗できないですし。
「言わないよ。…ボクってそんな未練がましく見える…?」
「いえ…。そう言う訳では…。」
「そう?…。」
「ええ…。」
気まずい…。
「…そうだ。血のストックはあとどれくらい残ってる?」
えっと…。
「空は飛べます。回復もいくらかは。…強いスキルは使えませんね。」
体力を全回復させたらほとんど残らないです。
「分かった。少し分けてあげるよ。はい。飲んで?」
「…直接ですか?」
「ボクが首をあどけなく晒すなんて滅多に無いんだよ?ほら飲んで。」
「失礼します…。」
…おぉ…なんか美味しい…?…いや美味しいですけどこれは――。
「何ですかこれ!?…私じゃなかったらハマってますよ…?」
生命力に溢れてるから美味しいのは分かります。依存性がレビィの血とは比べ物にならないんですけど…。
「悪魔の血だから。吸血鬼にとっては麻薬みたいなモノかな。」
なんてもの飲ませるんですか…やっぱり悪魔は信用できませんね…。
「キミなら大丈夫でしょ。そんなことより行先は決まってるのかい?」
行先ですか…。結構殺されかける事増えてきましたし、もうちょっと鍛えたいんですけど…。
「ボクからはエルフの国をオススメしておくよ。お金が無くても景色が綺麗だから楽しめると思う。じゃあね。」
「お金が無くても…確かに、報酬とか貰えてないですもんね…て、あ。」
行っちゃいました。…エルフの国も気にはなりますけどちょっと遠かったような。もっと近い目的地を決めないと…この国も全然観光できてないですし。…そう言えば誰かが近くの観光地?みたいなところ教えてくれましたよね?えっと…ラビリアさんのパーティメンバーと話してる時――。
「最近になって、私ももっと鍛えた方が良いのかな―と思ってまして。ビセルには修行場的な観光地とかって、あったりするんです?」
「修行場か…なら仙境って知ってるか?とんでもねぇ高さの山の上にあるんだが、強力な魔物は居ても食えるものは無い山でな?登るだけで何年もかかるって話だ。」
「そんな山を踏破した先にあるのが仙境。そこには仙人が居て、不思議な力を得るための修行を付けてくれるらしいよ。」
「そこ、アタシ等も挑戦したんだよ。でもダメだった!全然届かない!」
――みたいな事を教えてもらったんですよね。修行頑張れよーみたいな感じで。
仙境…難易度高そうなんですよね…。まぁとりあえず行ってみますか。
「…マジですか。」
ここが仙境…。不毛の山ですね…。確かに食べるものは無さそうです。…私なら血さえあれば生きていけますし、夜の間に登って、昼間は魔物に見つからないよう隠れて、ってすればなんとかならないですか。上まで飛んで行くのは現実的じゃないですよね?飛んでる魔物も沢山要るっぽいですし。…大人しく国外に飛びましょうか…いやいや!そもそもなんで私悪いことして…してないですよね?してないのに追われなきゃいけないんですか!私まだ11ですよ!
「…登りましょうか。」
せっかく来たんです。行けるとこまで行ってみましょう。
それから私は何日も山を登り続けました。昼間は身を隠しながらゆっくり進み、夜は魔物を倒して血を補給しながら一気に進む。そんな生活が百日ほど経ったところで、私は自身に起こっている異変に気付きます。
髪とか爪とか、伸びにくくなってる…?
どうやら、時間の流れが頂上に近付くにつれてゆっくりになっているようです。魔物もどんどん狂暴になり、かなり体力を消耗してしまう。ですが運が良かったのか、それとも相性が良かったのか、私は無事に頂上「仙境」へと到達出来ました。私の意識と引き換えに。
「――何とか生きているようなのじゃ。クマ美、運ぶのを手伝ってくれなのじゃ。」
誰かいる…。仙人…?分からない…。クマ美って誰…。うぅ…血が…人族状態になったら死ぬ…。血が足りない…。血が…。血…。血…。
…あれ?血が足りてるような…?と言うか元気になってるような?
「おーい。回復したなら目を覚ますのじゃ。おーい。…死んだのじゃ?クマ美、『あなをほる』のじゃ。」
「ポケモンか!!」
弔おうとしないで下さい。生きてますよ。ところであなたは――。
「九尾の狐娘のじゃロリババア仙人!!!???」
獣人ですよね…?何で尻尾が九本…と言うか回復?してくれてありがとうございます。血、くれたんでしょうか。
「元気そうなのじゃ。なら良いのじゃ。クマ美、穴を掘るのはもう止めて良いのじゃ。」
「あの…色々聞きたいことが…とりあえずありがとうございます。」
狐の獣人、尾が九本、ロリババア、のじゃ、仙人っぽい、これで属性少な目なんですから、私の母国はほんと色んな人が居ますね。
「お前吸血鬼なのじゃ?回復はさせたが、血は吸わせてないのじゃ。吸うのじゃ?」
「いえ!大丈夫です。」
今が夜で助かりました。今の内に人族状態になっておきましょう。
「仙人…ですよね…?」
「そう呼ばれているのじゃ。」
「私に修行を付けてくれませんか…?」
「修行か…久々なのじゃ。それなりに厳しいぞ?覚悟はあるのじゃ?」
「あり…あります!」
「怪しいのじゃ…。」
なんとなくで来ちゃいましたので…すみません…。
「まぁ良いのじゃ。どの道、ここへ来たからには輪を習得するまで帰す気は無いのじゃ。早速表に出るのじゃ!」
押忍!
「これからお前に『輪』と言う技を教えるのじゃ。」
…何ですかそれ?
「輪とは、簡単に言えば流転の力なのじゃ。クマ美!」
クマ美さんが大岩を持ってきました。デモンストレーションですか?
「万物は流転するのじゃ。流転する万物の根源を知り、自身に落とし込むことで力を発揮するのじゃ。根源とは、流転の始点と終点であり、そのどちらでもないものなのじゃ。『根源を制すること。自らの根源を流転させること。これ即ち力となる。』のじゃ。流転は完成したものなのじゃ。増えることも減ることも変化することもないのじゃ。故に流転は、流転の外から流転の内に入ろうとするものを弾くのじゃ。自らの根源を制し、流転させる技の事を『輪』と呼ぶのじゃ。実際に――。アレが――。コレが――。」
………………分からねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!
「…?一度に喋り過ぎたのじゃ?まぁこの辺りは輪の習得にはさして関係ないのじゃ。気にするななのじゃ。安心するのじゃ。これから分かりやすく例を見せるのじゃ。」
助かります…。
「コホン。では問題なのじゃ。この大岩が道を塞いでいるのじゃ。お前ならどうやって退けるのじゃ?」
退けれるような大きさじゃないですし…。
「魔力を溜めて魔法で破壊しますかね。」
「ふむ。ではよく見ているのじゃ。輪はこうやって使うのじゃ。」
ししょーは岩に手を触れただけで、全く動かず、力を込めることもなく、簡単に破壊してしまいました。
「岩にわしの輪を当てたのじゃ。輪が持つ『弾く力』に岩が耐え切れず、砕けたのじゃ。」
…マジですか。6mくらいありましたよ…?と言うかクマ美さんデカくないですか…?
「輪を応用すれば、相手の攻撃を流転させ反撃することも、逆に回復することもできるのじゃ。回復は難しいがな。なのじゃ。」
さっきの回復はそう言う…でも、回復が出来なくても、普通にカウンター攻撃は私と相性良さそうなんですよね…。ユニークスキルで相手の攻撃を把握しやすいですし。
「めっちゃやる気湧いてきました…。」
「うむ。では説明はこれくらいして修行に移るのじゃ!」
押忍!
「これからお前を死なない程度にボコボコにするのじゃ。」
押忍!………は!?
「輪を習得するには、大前提として根源を知る必要があるのじゃ。己の根源を。なのじゃ。」
「己の根源を知ることと半殺しにすることに何の繋がりが…?」
「…ふむ。では問うのじゃ。お前はボケなのじゃ?ツッコミなのじゃ?」
「それ関係あります?」
「不正解なのじゃ!!ボコボコにするのじゃ!!」
え!?ちょ――!!
「この問いに答えられるまで一生半殺しなのじゃ!!さっさと答えるのじゃ!!」
「えぇ!?…ボケです!!」
「不正解なのじゃ!!」
「じゃあツッコミです!!」
「アホなのじゃ!?そんな適当な答えで良いワケないのじゃ!!」
「こんな状況で落ち着いて考えられませんってぇ!!」
ししょーに追われながらじゃリソースを割く余裕ないですよぉ!!
「バカモン!!なのじゃ!!老いぼれの攻撃ぐらい容易く躱してみるのじゃ!!」
「ロリババアは老いぼれとは言いませんよぉ!!」
「ロリババアとは何なのじゃ!!わしは800歳以上のクソババアなのじゃ!!」
え、そうなんですか?
「900歳とか1000歳とかじゃなくて?」
「獣人族は100年生きると尾が一本増えるのじゃ。そもそも短命な種族なのじゃ。知られて居ないのも無理はないが。のじゃ。」
あー、八本増えて九本ってことだったんですね。…え、じゃあやっぱり。
「仙境って時経たないんですね。」
「わしが長生きなのは輪のおかげでもあるが、まぁそうなのじゃ。『移ろいあれど変わり無し。』時間は経つし、陽は動くし腹も減るが、歳を取ったりすることは無いのじゃ。」
はぇー。
「じゃあ何年でも修行できるんですか?」
「出来るのじゃ。だから落ち着いてボコられるが良いのじゃ!!」
「痛くて苦しいから嫌です!!」
「わがまま言うな!!なのじゃ!!」
いやーーーーー!!
「と、言いたいところだが、お前、本当にそう思っているのじゃ?」
え――。
「…思ってます。」
「嘘だな。のじゃ。」
そう言われましても…。
「…分からないんですよ。」
自分が何を思っているのか。何を望んでいるのか。何も。
「なんとなくで生きてきましたから。」
昔はもっとはっきりした思いがあった気がしますけど、いつの間にか思い出せなくなってました。「思い出したい。」「覚えていたい。」そう思った時にはもう失っているんです。
「…輪を習得するには己の根源を知る必要がある。わしは輪を使ってお前の…『心』と言えば分かりやすいか?それを知った。何とも珍しい心なのじゃ。」
「『器が無い。』って言いたいんですか?」
「そうなのじゃ。だが、それは根源を知ることに影響しないのじゃ。」
…そうですか。
「…続けるのじゃ。わしはお前が『どうしようもない無理難題』を欲していたから与えたのじゃ。心当たりを覚えていないのじゃ?」
…少し思い出した気がします。確かにそれを求めていました。でも分からなくなったんです。それは「私」が求めているのか、「私と言うキャラクター」が求めているのか。
「…好きな者は居るのじゃ?」
「居ますよ。それも『私かどうか』分からないですけど。」
昔はもっとシンプルに考えてた気がします。でも何かあって、その思い出と一緒に失ってしまったんです。
「…よし。荒療治なのじゃ。わしが輪で『お前』に『お前』をぶつけてやるのじゃ。加減はしないのじゃ。お前自身の全てと向き合って、今のお前がある為の源流を知れ。のじゃ。…もう一度言うが、輪を習得するまで出す気はないのじゃ。お前に『消えたくない。』と言う想いがあるのなら、必ず帰って来るのじゃ。良いな。のじゃ。」
あると、私は思いたい、と、思いたいです。
…。
思います。
…。
「押忍!」
――冬の朝に生まれた。山の影の黒と、霜の白で、灰色すらない、文字通りの白黒の世界。裏世界に迷い込んだ様な、知っているのに知らない景色で、何故か不安になる。そんな時に私の産声が聞こえ、これが現実に呼び戻してくれたみたいで頼りに感じたのを覚えている。と、母は言っていた。
物心ついた時には何でも出来て、家もまともだったから何不自由なく育った。全ての障害を片手間に越えて、いや、障害なんて無かったのかもしれない。面倒だとも、難しいとも、苦しいとも、辛いとも、感じていたはずなのにどの障害もすり抜ける。そんな自分が嫌いだった。
みんな頑張って、必死に生きて、必死に努力して、時には才能に嫉妬して、時には才能に甘えて、そうやって少しずつ人生を進めて行くのに、私は最初からゴールに居る。「スタート!」の旗の裏側が「ゴール!」になっている。何度も潜って振り返って、みんなみたいな道が無いのを確かめている。何度見ても無いものは無いのに。受け入れたことを認めないためにずっと振り返り続けている。
妹が出来た。嬉しさよりも心配が先だった。「私と同じなんじゃないか。」と考えていた。結果、妹は私とは違っていて、杞憂に終わってくれた。でも本当に安堵したのかは分からない。私は妹に「私と同じように」なって欲しかったんじゃないかと考えてしまう。「私より酷く」なって欲しかったのではないかと。そう考えた私は「良いお姉ちゃん」を演じた。妹には幸せになって欲しかったから、「私」が障害にならないように。
妹は私に良く懐いてくれた。お姉ちゃんを慕ってくれた。私はただ理想を演じただけなのに。みんなすぐ私を好きになる。顔が良い。声が良い。体が良い。演じる性格が良い。こんなに簡単に出来るものをすぐ好きになる。長い時間をかけて得る筈の信頼を簡単に渡す。いつもそう。みんなが一生頑張って人生に価値を見出すのに、私は一瞬でそれを越えてしまう。私の一瞬がみんなの一生で、みんなの人生の価値は私の一瞬にも満たないんだ。みんな私なんかよりもずっと良い子なのに、みんなの人生が意味の無い無価値なものだなんてあって良い筈がない。だからみんなは私に出来ない事を出来なくちゃいけない。みんなに価値を作らなきゃ。私が出来ないことを作らなきゃ。
人に嫌われるのは簡単だった。みんな好きになるなら難しいと思ったのに。期待外れだった。でも大きくなってきて知識も増えて、恋愛は難しいらしいと知った。だからやった。異性じゃなくて同姓で、尚且つモテそうで想い人が良そうな可愛い女の子に、私を意識させようって。私はまたみんなに価値を作れなかった。ちょっと優しくしただけなのに。優しくしなかった時の方が多いのに。なんで?
時間をかければ月にも行けるし、優勝台にも上れる。恋人も。お金も。みんなに価値を与える事は出来無いけど、何だって出来る。やっぱり価値なんて無いんだ。人生に、生きることに意味なんて無いんだ。意味も、理由も、価値も、何も無い。じゃあもう良いや。なんだっていい。わたしがいればみんないらないし、みんなはいきててもしんでててもかんけいない、いしころなんだ。
「…お前…めちゃくちゃ面白れぇな…!!」
「何?てか誰?」
「演技力あんの良いな…出来る笑いが増える!!」
「聞いてる?」
「お前今日から私の親友な!!いっしょにWR-1優勝するぞ!!おー!!」
「…その大会優勝するの芸人として縁起悪過ぎない?」
「長い。ツッコミはもっと簡潔に。」
「うるせぇな!」
そう言えば…友達が居たような…。親友でしたっけ。何で親友なのか忘れてましたけど、こう言う事だったんですね。そっか。そう言えばそうでした。何で忘れてたんでしょう。みんなの人生に意味が無いならって、せめて「生きてて良かった。」って、言えるようにって、みんなに笑って欲しかったから、みんなに「意味は無くても面白かった。」って、言えるようにって、だから。
だから。
だからそうじゃないですか。そうですよ。みんなの笑顔が好きだったから、笑って欲しくて冗談とか言い始めたんでした。不自然なデスマス口調も、好きなってもらうためじゃなくて、キャラ付けで始めたんでした。何で忘れてたんでしょうか。死んだからですかね?いや違いますよ。多分、告白されて、私を好きにさせるために自分から近付いた子じゃなかったから、どうしたら良いか分からなくて、結局ああ言う感じになっちゃって、それで素に戻ってたから。いや素は違うのか。いや!あれも私の素です!あれは私です。キャラクターなんかじゃないんです。演じてたとしても、嘘を吐いてたとしても、私は私なんですよ。コメディアンの私も居ればお姉ちゃんの私も居て、魔性の女な私も居れば美少女な私も居て、全部私が自分で考えて作ったキャラじゃないですか。だったら私です!
私の人生何年経ちました!?やっと気付けました!私の根源、それはみんなを幸せにすること!みんなに「生きたい。」と、「生きてて良かった。」と思わせること!その為にはコメディだってするし、理想のお姉ちゃんにもなるんです!
これが私の源流です!!
「では改めて問うのじゃ。お前はボケなのじゃ?ツッコミなのじゃ?」
「ツッコミです!」
「いやボケなのじゃ!!」
「何で決め付けるんですか!?」
私ボケもやりますけど、ボケてくれる人が居るならツッコミたい方なんですよね。
「…ししょーは私の源流を分かってたんですね。」
最初から。
「これでやっと次の段階に進めるのじゃ。…因みに一年くらい瞑想していたのじゃ。」
「一年!?」
マジですか…。初歩の初歩でこんな詰まってたらいつ習得出来るか分かりませんね…。
「安心するのじゃ。習得にはわしが修行に費やした時の百分の一もあれば十分なのじゃ。」
八年くらいですか。…長いですけどね。
「そもそもなんで習得するまで出られないんですか?」
「この仙境は流転そのものと言っても良いのじゃ。簡単に説明すれば、入る時は流転の影響を受けながら進むから入れるが、出る時は流転の影響に阻まれながら進むから出られない。輪を習得して相殺しなければな。…なのじゃ。」
「ししょーが守ってくれるのはダメなんですか?」
「相殺するにはわしの輪でも足りない。負けてしまう。しかし、己を流転させた輪であれば、勝てずとも負けることは無い。輪は消耗しないからな。…なのじゃ。」
えーっと…つまり…。輪は消耗しないから使い続けられる。ので、自分で輪を使って防御すれば、仙境の輪にも耐えられる。他者を守ろうとして、仙境の輪を真正面から止めようとするなら、ししょーよりも強い輪が必要だから、守れない。て感じで良いですか?
「輪は消耗しないけど、強さに差はあるから仙境の輪には太刀打ち出来ない。だから、自分で輪を使って自分の身は自分で守った方が楽。なので輪を習得しろ。と?」
「そう言う事なのじゃ。こればっかりはどうしようもないのじゃ。すまないのじゃ。」
「いえ。なんとなくで来たのは私ですし。」
100年とか言われたらどうしようって思いましたし、むしろ全然早かったと言うか。
「個人差はあるが、習得自体はすぐなのじゃ。その個人差も、最初の段階で差が出来るくらいなのじゃ。」
へぇー…。
「因みに私の『一年』は早いですか?」
「早いのじゃ。」
ほとんど「悟れ。」って言ってるようなものですもんね。私みたいに基盤があれば早いんでしょう。
「質問は終わりなのじゃ。修行を始めるのじゃ。」
「押忍!」
修行内容は座禅を組んでの瞑想に、組手、ししょーにボコボコにされる、他にも色々。一つ一つは些細な事ではあるんですが、一回一回が長いんですよね。滝行百日ぶっ通しとか、ししょーが回復してくれるからこそ出来る修行方法ですし。でも、それはそれとして休息も取らせてくれるんですよ。仙境を案内してくれたりもしましたし、クマ美さんたち仙境の動物さんと遊んだりもしました。根源の方は知った訳ですし、あとは流転させるだけなんですが無理ですよね。
「流れるように回転。ぐるぐる。ぐるぐる。」
深呼吸して。
「循環ではなく流転。ぐるぐる。ぐるぐる。」
ぐるぐる。
「クマ美。」
クマ美さんが、右前足を振り上げて、叩き付ける攻撃を。合わせる。
[輪――。]
――あれ。衝撃がない。
「……ししょー、これは…。」
「成功したのじゃ。お疲れ様なのじゃ。」
「…押忍!」
クマ美さんも喜んでくれてます。付き合ってくれてありがとうございます。
「えっと…ありがとうございます。お世話になりました。」
「輪は鍛錬すればするだけ強くなるのじゃ。怠るな。なのじゃ。」
「押忍!」
歳は取ってませんけど、長く過ごしました。
「…行くのじゃ。」
「押忍!!」




