歯に挟まった繊維はベロじゃ取れないからさっさと洗面所に行け。
「父上!?何故私に剣を向けるのですか…!?」
抗争が始まって直ぐ第一王女「シエン」は実の父である国王「バラン」に殺意を向けられていた。
「お前が私を裏切ったのではないか!!お前が奴らと結託し!!私から王位を奪おうとしている事は分かっておる!!」
シエンは腰の直剣に手をかけ、ゆっくりと後ろへ下がる。
「これはあなたとイラが行った愚行の結果ではありませんか!!私は何度も止めたはずです!!何度も!!…あなた達を信じて…!!」
意を決し剣を抜く。
「…イラに言われたのですね…?またあなたは…母上と同じように私を――。」
「黙れ!!」
シエンは背後の窓から飛び降り逃走する。王を殺しても意味はない。改革には第二王女「イラ」を殺すしかない。国のため、民のため、どれほど困難な道であろうと進むのだと。
そして王都の外れにある廃れた教会へ足を運ぶ。革命の火をシエンは少しずつ燃やしていた。今日の抗争のために兵を集め、彼らはこの教会へ集う筈だった。
「誰か居ないのか…!?私だ…!!第一王女のシエン・ダン・ビセルだ…!!誰か…!!」
声は響く事すらなく消えて行く。
「シエン様。」
突然現れた声を追うと、一番前のベンチに何者か座っている。そこには誰も居なかったのに。
「良かった…!そこに――!?」
駆け寄るとその者の姿はなかった。
「どう?ヒトの視界に入らない遊び。上手く出来てる?」
耳元で声がし、やっと姿を捉えられた。
「…誰だお前は…?兵をどこに…。」
その者はベンチの背に手をかけて立っている。
「大方キミの予想通りだよ。」
兵は殺した。そして、この者の正体は。
「悪魔…なのか…?」
第二王女の正体は悪魔である。国王はその悪魔に洗脳されている。そう仲間に告げていた。
「ボクはね。第二王女は違う。『洗脳』も、ハズレじゃないけどアタリではない。」
自分の想像出来ない「何か」が第二王女の正体。
「答えろ…!!何が目的でこんな事を…!!」
シエンは剣を抜いてこの悪魔に向ける。
「魔王軍の目的なんて世界征服に決まってるでしょ。それ以外考えてないよボク達は。」
当然と言わんばかりにそう答える。
「あぁでも…。」
手をかけるのを止め、悪魔は王女の目の前に立つ。そして次の瞬間に王女は音もなく倒れる。
「キミを殺すのが今の目的だったね。」
第一王女の死体を担ぎ、悪魔は王城の方向へと飛び去った。
時は遡り、第一王女が逃げた後、王は自身の寝室に向かっていた。
寝室に隠していた大瓶を手に取る。瓶には半分ほど、半透明の赤色の液体が溜まっている。
「よし…。これだけ溜まれば足りるであろう…。」
その瓶を持ち、王は愛する第二王女の下へと走る。
「溜まっておったぞ!イラ!これで私は若返るのだな!」
王女は王から瓶を受け取る。
「ええそうですわ。この命の水は巨大な生命力の塊…。取り込むことで大きな力を得ることが出来ますの。若返るくらい訳ないですわ。」
イラは命の水を掲げ。
「具体的には…この様に――。」
瓶を砕き、飲み干した。
「何を…?それではわしが…若返れぬではないか…。」
「言っておりませんでしたがお父様。私、王家のルートスキルを引き継げましたの。」
「それが…何を…?」
「魂は複製出来ませんの。そしてスキルは魂に刻まれる…。似せて作る事は出来ても、ユニークスキルやルートスキルは詳細が分かりませんから、手に入らないのですわ。」
「何の話をしておるのだ…!!イラ…!!」
「お父様。」
イラは音もなく王の背後へ移動し、囁く。
「愛する私のために…。私に吸われ続けてみじめになったその命…焼べて下さい。」
抗争は圧倒的に御三家側の優勢で進んでいた。王家側に就いた冒険者の多くにはドルント家の息がかかっている。その者たちが開戦と同時に裏切ったからだ。既に御三家の力は王家を超えていた。
そして開戦から数時間後、イラの下に第一王女の亡骸を持った悪魔が到着する。悪魔は窓を溶かして開き、シエンの亡骸を置き魔法で傷を治した。
「お待ちしておりましたグリア様。命の水は無事取り込みましたわ。」
「よしよし。予定通りこっちのは全員殺したけど、足りそう?」
「はい。ドルント家とチャイルズ家の当主には効きませんから、私も余力を残す必要はありますが、それでも十分に足りているかと。」
「予定通りだね。じゃあ、危なくなったら帰っておいで。」
「了解いたしましたわ。」
悪魔が姿を消すと同時に王の間の扉が開かれ、入れ違いにネムアムが到着する。
「ごきげんいかがですか。ネムアム様。私ビセル国第二王女のイラ・ダン・ビセルと申しますの。よろしくお願い致しますわ。」
城内の人間は皆さん私に反応しませんでした。国王様の様子もおかしいですし…第一王女様の遺体も…。何より、さっきまでここにあったもう一つの気配は間違いなくグリアさんのものです。どうなってるんですか…。
「何で獣人族が魔族の部下になってるんです…?」
「簡単ですわ。魔王様は神様とお友達なんですの。」
「…転生者ってことですか。」
「当たりですわ。」
ハイツオレサーシス神様は何でこんな事黙認してるんですか…?魔王とグルなのか…もしくはもう死んでいるのか…。
「これ、私のクローンですわ。そしてお姉さまの魂亡き肉体…。」
「何をするのか聞いても…?」
「勿論ですわ。この様に…アンデットにしますの。」
ボスが取り巻きを呼び出す時って、何で邪魔しないのかと思ってましたが…。今分かりました。邪魔しようとしたら確実にカウンターを喰らいますね…。超ひどいゲームの主人公になった気分ですよ…。
「私は本来そのような技術は持っておりませんが、命の水と私の魅了を合わせることで可能になります。まだ試験的な段階ですから、命の水には他にもっと良い使い道がある筈ですが…今のところは上々と言ったところでしょう。」
命の水…?いやそれよりチャームって、この人元淫魔族なんでしょうか…?そう言えばグリアさんが、淫魔族が部下に居る的なこと言ってたような…。
「あぁ、命の水と言うのは、生命力を極限まで凝縮したエキスのことですわ。冒険者の方々は簡単に接触出来ますから、以前から準備をしておいて先日やっと奪えましたの。確か最初はルーキーと呼ばれている…。」
「ラビリアさんですか。」
「そうでしたわ。お教えして頂いてありがとうございます。国民の皆様、広場にお集まりになられていたのに、彼女は一人で出歩いていたものですから、丁度良かったですわ。」
「…私の彼女なんですけど。」
「あらそうでしたの?これは申し訳ございませんわ。ちゃんと栄養を取って安静にしていれば治りますので、許してくださいまし。」
…許すも何も、私じゃあなたに手も足も出ないんですけどね…。
「さて、完成しましたわ。私はジェイサー様をお相手しますので、これで失礼致します。ごきげんようですわ。」
国王様とクローンも一緒に連れて行ってくれたのはラッキーですけど…ジェイサーさんにはすみませんが…。
…いっそジェイサーさんの所まで行って二人で戦いましょうか…?でも多分イラさんには私が行ってもあんまり意味ないでしょうし…攻めて日が落ちればまだマシなんですが…。それなら一対一で第一王女様のゾンビを落とした方が良さそう…ですかね…。やってみましょ――。
「うぅ!?」
はっや!!腐ってないですもんね新鮮ですもんね傷もないみたいですし!!腐ってないゾンビはゾンビで良いんですか!?いやもう何でも良いです!!ゾンビと言えば聖属性!!人族状態なら聖属性の魔法も使えます…よ!!
「ホーリーライト!!」
――効いてないんですけど!!…まぁ見た目的には効きそうにないですけど。
じゃあ炎で!!
「ファイアブラスト!!」
――効いているんですけど!!効いてはいるんですけど…!!効果が薄いと言うか…端的に言えば火力が足りません!!ひるみませんしね!!もうふるバフかけてぶった斬るしかないですよこうなったら!!…私の魔法、戦闘だと補助以外で使わないんですけど!!せっかく教えてくれたのにごめんなさいお婆ちゃん!!
魔力出力強化、身体能力強化、感覚強化、重力影響軽減、武器炎属性付与、武器追加効果付与・炎刃、あと…取り敢えずこれで行ってみましょう!!
「フラッシュ!!」
目くらましは効くみたいですね…。でもあんまふざけてられなさそうなんで、風魔法で後ろに回って…斬る!!
…右足を斬り落としたんですが…でも――!?
いっ――たぁ…横腹を斬られましたね…。内臓まで行ってます…。どんな反応速度してるんですか…。どうしましょう…この部屋窓大きくて日光が…と言うか目の前で変身する隙ないですし…。
…仕方ありません。真下の部屋には誰も居ませんよね…?一応サーチして…居ませんね。私の魔力量だと一回だけで、しかも大した距離は移動出来ませんが…真下の部屋にワープします。成功して下さい…!!
「――!!ッはぁ…!!」
はぁ…はぁ…はぁ…成功しましたね…。吸血鬼に変身すれば血を消費して魔力も怪我も回復出来ます。レビィに無理やり吸わさせられてて良かったですよ本当に…。サボってたら死んでました。ここで。私とは戦わないんじゃないんですかグリアさん!!なんか良い様に見透かされてる気が…。本気を出したら勝てること分かってるんでしょうね…。
いやいや!とりあえず吸血鬼になって回復出来ましたし、勝つ方法を考えないと。そうですね…。窓の位置と第一王女様の位置的には、やっぱり吸血鬼の状態で上には居られません。チャームは出来るだけ使いたくないですし…。消耗を気にしなければ余裕なんですけどね…。…そうするしかないですか…。
天井をぶち抜いて…。
「ブレイク。」
…落ちてきましたね。
「血霧変身。」
窓を魔法で塞いだのでここなら日の光はありません。消耗は激しいですが【血霧変身】の状態なら物理攻撃はほぼ無効化出来ます。再生は出来ないみたいですから、五体を切り落とせばもし殺しきれなくても無力化出来るでしょう。私の魔力出力だとどう頑張っても第一王女様の魔法耐性を突破出来ませんが、物理攻撃なら別です。魔法で強化・加速したナイフなら切り落とせます。
左足。これで動けませんね。
左腕と右腕を切って…まだ生きてるんですか。心苦しくはありますが…首も切り落とさせてもらいます。
勝てました。…でも殺しきれてはいませんね…。…このまま放置しても良いとは思いますが、第一王女様が可哀そうですから止めを刺してあげましょう。直接触れれば私の魔法でも殺せます。
国の状況的に無理かもしれませんけど…。
「安らかに眠って下さい。ブレイク。」
抗争を大方収め、王を捉えに城に来たジェイサー率いる傭兵団は、城内の異様な静けさに警戒を強めていた。
「全員、魂が抜かれたように…。まるで生きた人形みたいだ…。」
「招かれてるみたいですね…。気味が悪い…。」
城内の人間は全員がイラのチャームによって意思を封じられていた。だが、その者たちは総じて王の間へ続く通り道には立っていない。
「第二王女が何かしたんだろう。お前らもこうならないよう警戒しておけ。」
ジェイサーは部下達に言う。しかし、いつもなら「了解」の返事が返ってくるところ、何の返事もない。
「――ッ!!」
急いで振り返ると…殆ど全員がその意思を奪われていた。
「団長…。スキルを…!!早く…!!」
最後まで抵抗した部下も魅了されてしまう。
「流石ですわジェイサー様。やはりあなた様は魅了出来ませんのね。」
傭兵団の後ろには、既に第二王女が巣くっていた。
「魅了…サキュバスか。魅了は精神的に強固な相手には効かないと聞くが…こいつらがヤられたなら俺でも時間の問題だ。」
命の水によって強化されたことでイラのチャームは現状、特別な耐性を持っている相手以外全ての者にかけることが出来る。それは次期当主として幼少より鍛え上げた精神を持つジェイサーも同じこと。通常の耐性力では対処不能、最強の【魅了】となった。
「ルートスキルを使わなければ。ですわよね。」
通常の耐性ではない完全耐性ならば、異常な蓄積値の「イラの魅了」であっても蓄積しないため無効化出来る。ドルント家のルートスキル【完全開放】は、発動すると精神汚染系の状態異常に対する完全耐性とその他状態異常に対する高い耐性、自然治癒能力の大幅強化と身体能力及び知覚能力の大幅向上を「スキルを解いた後の絶大な疲労。」を代償に得ることが出来る。発動中こそ何のデメリットもないが、下手に使用すればスキルを解いた後で死を招く可能性を孕んでいる。
「大体の想像は付く。『民の生命力を奪って大幅に強化した。』と言ったところだろ。良い趣味だな。」
「嬉しいですわ。ですが…あなた様のお相手は私ではなくこの子達ですの。淫魔族は正面戦闘が苦手ですのよ?」
イラは魅了した兵にジェイサーの相手をさせ、自身は更に兵を増やそうと外へ出る。
「今は獣人族だろ。」
完全開放を切れば魅了にかかる。このまま発動時間を伸ばせば死ぬ可能性は高まるが解く事は出来ない。
「許せお前ら…!!」
ジェイサーはイラを追うため部下の足を折る。しかし、イラに魅了された者はこの程度で止まらない。痛みで魅了が解けないからだ。無視して進もうにも数が多く物理的に塞がれる。そして…。
「――陛下…!!」
生き人形と化した王がより堅牢に仕立て上げる。
王家のルートスキル【王の護り】は自分以外に盾を張る能力。
「ちっ――先手必勝だ…!!」
スキルを発動する前に仕留めようと王に放った攻撃は【王の護り】によって防がれた。
「……は!?」
どうなってる…。第二王女は確かに外に居る…。盾の有効射程はこれほど長くはない筈だ…。イラが使っている訳ではない…。
「………マジかよ…!!」
外に居るのはクローンか…?…なら近くにいる筈の本物を…ダメだ。そっちは陛下の盾で防がれる…!!最悪だ…!!俺と相性が悪すぎる…!!粘ったら活路が見えるか…!?…ダメージレースじゃ勝てないからな…。盾も破れない…。……どうする…?
「止まれ!!」
一人の吸血鬼の号令に人形たちは足を止めた。
「音は盾で防げないんですね…!」
「仲間が居ないと使えないスキルだからな…。味方の支援を受けたり、連携を取る必要がある分、そこら辺りは融通が利くようになってる…。で。」
なるほど……「で」?
「何でお前の命令を聞く?」
「チャームをかけました。」
抗争が始まるまで暇だったので、片っ端から【魅惑の完全支配者】の発動条件をクリアしておいたんですよ。城内の人達もさっき。
「…今のイラより強い【魅了】がかけられるんだな?」
「私の命令ならどんなことでもさせられます。」
「……自害させろ。」
…え!?
「仲間にするとかじゃなくてですか…?」
「お前今吸血鬼だろ。まだ陽が落ちるまで遠い。俺の眼には、人間状態のお前じゃ保たないように見える。盾を甘く見るな。はっきり言うが、【王の護り】持ちが二人揃った時点で無敵だ。突破方法は無い。」
…いや、でも…。
「お前が何を使ったのか知らない。ただ『それは上書きじゃない。』そうだろ?」
【魅惑の完全支配者】は「追記」ですから、そうですけど…。
「解けないなら精神は汚染され続ける。イラを殺す頃には全員廃人だ。…やるせねぇだろ。自害まで行かずとも抵抗力を折れ。それでさっさとイラを殺す。」
…分かりました。
「戦えないようにしてください!」
これで…。
「――!?」
何で皆さん死んで……!?
「まぁ…こうなるよな…。…クソ真面目野郎共が……!!」
「生きてたら戦える。」とか……!?意味分かんないですって……!!
「もっと細かく命令するべきでした…。すみません…。」
「…気にするな。お前がやらなきゃ俺が殺しただけだ。」
…国王陛下は残ってますね…。
「盾は消えている。…逃げたな。」
イラさんの気配はありません…外には居ますけど…。
て、あ。
「…これで国王陛下は殺した。次は第二王女を殺す。」
…ジェイサーさんは行ってしまいましたが、私はどうしましょう。…いや、私も行くべきですね。【魅了】に抗える貴重な戦力ですし…。
「イラ!!!」
「早かったですわね。おおかみさん。」
ジェイサーさんを追いかけて来たけど…もう始まってる。優勢なのは…。
…ギリ互角…か、若干押されてる…?
「スペックのごり押しかよ。面白れぇな。」
技量では圧倒的にジェイサーさんの方が上。それを覆す圧倒的な膂力。こう考えると勝てそうですけど…。
「――!!」
ジェイサーさんの攻撃が…「盾」で護られた…。
「私も加勢致しますわ。『盾』だけ…。」
攻撃が通らなくなったら一方的になるんじゃ…。
「舐めんなよ。獣人族は世代交代が早い分進化も早いんだ。22代目の進化、見せてやるよ。」
!さっきより断然速いです!バフ系の魔法が使えたんでしょうか?これなら「盾」込みで互角です!
「俺たち兄弟の中でルートスキルを引き継げたのはアイツだけだった。そしてアイツはそれを更に鍛え上げた。」
………誰!?
「お兄さん…弟さん?ですか?」
「ジェイサー。アイツはスキルを重ね掛けしてんのさ。その分リスクもデカいってのに、バカみてぇな生命力だぜ…。全く…!!」
増えたんですけど。
「そうなんですか話聞いてます?」
「しかし第二王女が二人…あれがクローンって奴か…。」
また増えた。
「みんな 【魅了】対策は持ったな!!行くぞォ!!」
………………おー!!
「ネムアムさん!」
ゼーテさん!にリコさんも!
「仲直り出来たんですね!」
「…うん///」
「仲直り…したよ…?///」
え、なんですかそのスラッシュ。
「冗談はあと!我が作ったアイテムで【魅了】は無効化出来る。事前に使う必要があるからもうかかってる者は無理だが、これ以上敵が増えることはないのだ!我に【魅了】が効かなくて助かったぞ…。」
じゃあもう第二王女を倒すだけじゃないですか!
…それで詰まってるんですけどぉ!
「盾を出してる本体を叩けば良いんですよね…?」
――ラビリアさん!?
「…誰なのだ?」
「噂のルーキーやで?ホンマに興味ないんやな…。」
「その…ラビリアさん…いえ。ラビリアさん、体力は戻ったんですね?」
「大丈夫。…それなりに強い自信はある。アレがドラゴンより強いのは分かるけど、この人数なら倒せないほどではないと思う。」
ジェイサーさんの兄弟が団員を率いて来てくれましたし、リコさんのアイテムに、【魅了】にかかっていない冒険者達、そしてラビリアさん。
「武器でも装備でも好きなだけ持って行け!我の秘蔵もあるぞ!」
で、私。
「…ラビリアさん。勝てると思いますか?」
「思うよ。」
「どうしてですか?私は間近で魔王軍幹部の戦いを見ました。」
イラさんがグリアさんのお気に入りなら勝てるビジョンが浮かびません。四天王ほどではないとしても、水のバフも考えたら…ラビリアさんが強いとしても…。
「『勝てる。』と思う理由はシンプルだよ?」
その声は、私が今まで感じてきた彼女の声よりずっと暖かだった。
「好きな子に『カッコいい!』って思われたいのは、女の子も一緒だから。」
この表情を私は、表現しようとして、躊躇った。




