無人島を有人島にする。お前がこの島の開拓者だ。
「私はローレ。ここは私の秘密基地だよ。メメルに連れて行ったら食べられちゃうから。良い島でしょ?」
人魚族のローレさん。チャームには掛かってるみたいですね。いつか解けるんでしょうか…。
「噛んじゃってごめんね?痛い?」
痛いですけど、これぐらいの傷なら私の魔法でも治せますし、大丈夫です。
それより、
「あのですね…まず私はネムアムと言います。で、ローレさんを魅了してしまいましてですね。ローレさんが私を助けてくれたのは多分そのせいなんですよ。」
使わないって言ってすぐ使いましたからね。サデス様に引かれてそうです。
「あー、それで…。ま、良いよ。助けてあげる!」
ありがとうございます。
なんでですか?
「メメルではさ、人族とは話しちゃダメなんだ。人族は約束を破るし噓を吐くし、殺した生き物を食べずに捨てちゃう悪い奴なんだって。でもね、私お話してみたかったの。だって話してみなきゃ本当にそうか分かんないじゃん?それで、仲良くなって陸に連れて行ってもらうの。」
私に連れて行ってほしいってことですか。
「何代か前の人魚姫様は陸に上がって、そのまま人族と結婚したんだって。結婚はよく分かんないけど、陸には行ってみたいんだ。雪見てみたい!かき氷食べたい!」
その二つは両立出来るようで出来ないですよ。
人魚姫様の話はあれですね。シーのギルマスの話ですね。おばあちゃんが陸に連れて行ったんですかね?
連れて行くだけなら私でも出来そうですが、その先はそれこそ、魔女に薬でも貰わないと難しいですよね。私薬とか造れる系の魔法使いじゃないですし。うっすい回復薬とかしか造れないですもん。
「氷魔法じゃダメですよね?」
「ダメ。」
じゃあ契約の魔法でもしますか。ティアお姉ちゃんに貰ったちゃんとした契約書があるので、これ使いましょう。
「条件は、『あなたの旅を手伝うので、私を助けてください。』で。」
「契約内容はちゃんとしてよ?そんな曖昧な条件じゃ、破ったかどうか分かんないじゃん。…人魚舐めてる?」
バレましそんなことないですよ。
じゃあどうしましょうか。
「私はローレさんを陸に上げる。ローレさんは私が魅了を解いても私を襲わない。お互いに協力出来る事は出来る限り手を貸す。」
こんな感じでどうでしょうか。
「いいね。これからよろしく、ネマちゃん!」
「よろしくお願いします。ローレさん。魅了解きますね。」
と言っても、私はまず生き延びねばならんのですよ。
この島マジで小さいんで…何日持つんでしょうねぇ…。一応鞄の中身は残しときたいですし、暫くは釣りでもしますか。釣り竿入ってるんですよ。終盤に手に入る感じの餌とか付けなくていいやつ。まあゲームみたいには釣れませんけど。
釣りって言うのは根気が要るんですよ。いややっぱ要らないです。時間です。暇な大人が暇つぶしするためにやってるんですよ釣りは。暇な大人が有り余る時間を浪費するためにやってるんです。広告のクソゲーと同じです。人生には無駄な時間が必要なんです。釣りはクソゲーです。みんな課金して広告消してるんですよ。たまにスペシャルパックとかで船に乗ったりするんです。どうせ釣れないのに。じゃあ何で課金したのってことですが、時間の他に金も余ってるんですよ。余ってる時間と金を効率よく消費するために趣味があるんです。私が旅をするのも同じです。暇なんですよ。人生は暇つぶしって言いますけど、私は嗜好品とかゲームと同じものだと思ってます。「楽しいからやる。」人生はそう言うシンプルなものなんです。初心者の釣れない釣りはクソおもんないです。
全然釣れないですよ。
今日の晩御飯は霞ですね。
それでは、この世のすべての食材に感謝を込めて、いただきま
吸ぅぅぅぅぅぅぅぅぅ。
「…。」
なんですか?人が弱って死んでいく様を黙って眺めているのは最高ですか?
「お腹空いてるの?」
空いてます!
「私食べる?」
アンパンの精霊みたいな事ですか?
「いや…ネマちゃんちょっと齧っちゃったし、私も一口なら齧られても文句言えないなぁ…って。」
吸血鬼が人魚の肉食べたら変なことになりそうなんで遠慮しときます。800年生きるとかじゃ収まらなさそうなんで。
「そっか。じゃあ食べられそうな魚捕って来ようか?」
「お願いします!」
最初からこうすれば良かったんですよ。何ですか釣りって、ロッククライミングですか?それかカンナですか?ハードル高いんですよ。ガキは黙って放流。これに限ります。
「美味しい?」
美味しいですよ。お腹空いてれば大体美味しいです。
「国に戻らなくて良いんですか?」
「みんな怒ってるでしょ。もう後戻りは出来ないんだ。覚悟を決めろ!」
私そんなに壮大な心持ちじゃないんですけど。
「人族ってさ、服着てるじゃん?ネマちゃんはそんな薄い布で体守れるの?鉄の鎧とか着ないの?」
毎日戦ってる訳じゃないですからね。日常生活にはこれで十分なんです。
「動き難くない?」
ないですね。海の中ならそうでしょうけど。
「陸に上がったら着てみますか?」
「着る!」
ティアお姉ちゃんなら薬造れると思うんですよ。連絡が取れそうなもの鞄に入ってないですかね?手紙みたいな…どれがどれか分からないです。じゃあ説明書とか入ってないですか?
「あった!」
【ネムアちゃん専用アイテムの使い方】
※ネムアちゃんしか使えない効果が付いてます。
・空飛ぶ手紙「立体の鳥を折ると、送りたい相手の所まで飛んで行ってくれます。※制度や飛距離はクオリティによる。おすすめはペインクラーセルヒルレック鳥。」
誰ですかそれ。鶴じゃダメですか?
「※折り鶴程度のクオリティだと四軒隣が限界。」
良いと思いますけどね鶴。
じゃあお手本見してくださいよ。
「マリンダックの作り方。」
ペインクラーセルヒルレック鳥はどこに行ったんですか。
「1.先ず新鮮なウォーターダックに塩と胡椒で下味を付けます。※胡椒は白です。」
食べ方じゃないですか!!
注意書きが多過ぎますって!最初から「白胡椒」って書け!!
「ウォーターダックか~。イイネ!」
良くないです。
手紙は使えませんか…。
「ビセルって商人の国で大国なんですよ。魔女の秘薬とか売ってないですかね?」
ヒュメルより売ってそうなんですが。
「さあ?でもビセルに行くなら陸に上がらないと。みんな人族を連れて逃げるならそこだと思ってるはずだから。」
わざわざ無人島に来るぐらいですもんね。それはそうですか。
一つずつ考えましょう。
無人島に薬は無いので、人が居る大陸に上がるしかないです。人魚であることを誤魔化すために幻影の魔法を使います。ヒュメルの王都に行くには、道中戦えない人魚をかばう必要があるので魔力が持ちません。ビセルは商人の往来のため、ヒュメルより街道が整備されいるので、大きな町に着くまで魔力は持つと思います。あと多分薬もあります。無かったら詰みです。
「ビセルに行きますか。」
ローレさんに背負われてビセルに着きました。海で人魚族に喧嘩を売ってはいけないとも思いました。ジェットスキーってこんな感じですか?違いますか。
ローレさんを陸に上げて…服を着せますか。
一人じゃ着れませんか。
「着れない!」
先ずは海水を布で拭き取って…別に何てことない独り言なんですが、無知シチュはあんまり好きじゃないんですよね。罪悪感を感じると言いますか。子供みたいと言いますか。「みんなが知ってる当たり前を、この娘は知らないんだ。」って思うと、どうしようもない気持ちになるんですよね。「教えてあげたい。」と言うより、「取り戻させてあげたい。」って感じです。相手の今までの人生を無駄と決め付けてるんです。そう考えると余計なお世話ですか。
顔が良いだけあって似合いますね。
今はティアお姉ちゃんの服しか無いんですよね…。薬を買ってお金が余ったら買ってあげましょう。
…すみませんね変な姉の服で。私の方が普通に変ですが。
…。
ひれ…ひれか…。
まあ上の服着せたぐらいじゃ隠せませんよね。旅人御用達の暗い色のローブでも着てもらいましょう。
では、次は私が背負う番です。
「重くない…?」
全然重くないですよ羽のように軽いですそれに体力には自信あるんです旅人なんでちょっと休憩挟んで良いですか!!
「ぐふっ…。」
宿のベットにローレさんを寝かせます。
何とか借りれました。魔法をかけながら自分より大きいものを背負って歩く。良いトレーニングでした。もう十分鍛えられたでしょうもうやりません。
「お疲れ様!」
意外とバレずに来れました。一部の人にはバレてるかもしれませんが、まあどうしようもないので気にしない方針で。
「足を生やす薬とか無いか探して来ます。」
探して来ました。
「あとこれ昼食です。」
野菜とお肉のサンドイッチです。陸っぽいので。
「美味しいですか?」
「めちゃ美味い。」
パサパサした物は海底に無いですからね。
では探索のけっっっか、はっっっぴょ~~~~~!!!!!!!
「人魚族に人間の足を生やす魔女の秘薬が今日の夜五年振りにオークションに出されるらしいです。」
「あるんだ。」
あるんですよね。
ただ、珍薬コレクターの富豪ぐらいしか買わないので値段が高くてですね。前回は2400万ハイヅで落札されたそうで、700万ハイヅは無いと土俵に立つことすら出来ないと言っていました。
私の持ち物が売れれば良かったんですが、「使用者を限定する効果」付きなのでやっぱり断られてしまいまして。
クエストを受けようにも、ドラゴン退治でも出来ないと700万ハイヅは無理ですし…。今日を逃せば五年後ですし…。
どうします?
「因みに、誰に聞いたの?」
「サンドイッチ屋のおばちゃんです。」
「誰?」
おばちゃんも商売人ですからね。情報が命なんですよ。
…。
「…何?」
「人魚って高いんですよね…。」
「本末転倒でしょ!目的と手段が入れ替わってるよ。」
いやよく考えれば、獣人族の国ビセルが如何に商人の国とは言え、人族の女の子は珍しいはずです。学業の神ハイツオレサーシス神を神としては居ますが、頭が良くても生物には種の繁栄と言う大いなる目的があります。
「売「絶対ダメ。」
「そんな事までさせられないよ…。」
そこまでやるつもりは無いんですが…じゃあもう最後の手段ですね。
おばあちゃんがどこに居るか分からないですし。五年も真面目に働くなんて嫌ですし。
「魔女の秘薬、盗みましょう。」
持って逃げる訳じゃないんです。ローレさんに飲ませてしまえばいいんですから、まだ簡単なはずですよね?
「知らないけど…。」
獣人族は、人族ほど器用では無いらしいので、多分私の魔法には対応出来ないと思うんですよね。
ただ今日なんですよね…。もう少し準備期間が取れれば良かったんですが…まあ仕方ないです。
「…私の体さ、価値があるんだよね?目とか腕とか…売れないかな…?」
「私欠損無理なのでそれは無いですね。」
まずは敵情視察と行きましょうか。オークション会場に行ってみましょう。
「あ、えっと…行ってらっしゃい。」
「行って来ます。」
来たは良いんですが…勿論入れませんよね。
空間把握の魔法である程度は分かるのでこれは良いでしょう。
問題なのはターゲットです。幻影の魔法で近付いたとしても、何らかのセキュリティはあるんでしょうし、オークションの中で盗み出すのは多分無理です。となると商品の引き渡しを狙うべきなんでしょうか。本当に本物の「魔女の秘薬」なのか確かめると思いますし、その鑑定中に何とか奪えませんかね?
まあ目標に張り付いて好機を窺うしかないですね。ジルミお姉ちゃんには申し訳無いですが、いざとなったら切り札を切りましょう。オークションは夜ですからね。
「と言う訳で血を吸わせてください。」
「良いけど…。人族じゃなくて吸血鬼族だったの?」
色々とありまして…。
「では頂きます。」
「どうぞ。」
あ~ん…。
「やっぱりやめておきましょうか。」
「どしたの?」
なんか、何でしょう…。牙を突き立てた時に、口にしてはいけないものを食べているような…ドロッとした嫌悪感が…。
「う~ん…吸血鬼族って、水を嫌うじゃん。人魚族が吸血鬼族に食べられたって話は聞いたことが無くてさ。私も分かんない。ごめん。」
大丈夫ですよ。レビィに無理やり飲まされたのが大量にありますし、薬を飲んですぐ逃げることになったら、ローレさんに体力が必要ですからね。
よし。
そろそろオークションが始まります。人魚族吸血鬼族関連は気が向いたら調べるとして、今は目の前の事に集中しましょう。
今回の商品は九つ。「魔女の秘薬」は八番目です。
「さあ続いてはこちらの薬!人魚族に人間の足を生やす『魔女の秘薬』です!何と!前回の出品より実に五年の時が経っております!これ以上無い希少な薬!これを逃せば五年後だ!700からのスタートです!」
土俵ってマジで土俵だったんですか。オークションだと意味無いですよ。
「2000。」
2000!?
「さあいきなり2000が出た!」
「2500。」
「2500だ!まだ遅くないぞ!」
えぇ…希少過ぎません?
「4000。」
そのお金恵まれない私に分けてくれませんか?
「4000!4000万ハイヅでの落札です!とんでもない値段が出た!皆さん!是非22番のお方に賛美を!」
では22番の方を追うとしましょうか。
幻影の魔法を使えばバックヤードに入れますかね?
入れましたね。
どうやら私が知らない内に強くなってしまったようです。ネムアムは!
さて22番の方は…。
「こちらが『魔女の秘薬』で御座います。先ずは鑑定をどうぞ。」
丁度良いタイミングです。
22番の方が連れてきた鑑定士の方も普通の鑑定士みたいですね。これなら魔法で盗めそうです。
先ほどの司会の方は普通の方みたいですし、22番の方も――。
うぇ~殺気が気持ち悪いですぅ…。
バレたみたいですね完全に。殺される前に逃げましょうか。
…逃げるなって感じですねぇ…。
「確かに。本物の『魔女の秘薬』です。確かに受け取りました。」
「では、こちら4000万ハイヅ。確かに確認いたしました。今後とも是非御贔屓にお願いします。」
取引が終わったみたいです。私の人生も終わりそうです。
「お先にお帰り下さい。」
鑑定士の方がこっちに来るんですけど。
殺気が無いの怖いんですけど。
「帰りますよ。」
土にですか!?
「宿は変えておりませんな?」
え?はい。
え?ストーカーですか?
「流石に目立ちますよ。偶々街で見かけたんです。」
自分より大きいもの背負って歩いてる子供は見逃せませんか。
「秘薬は差し上げます。」
マジですか!?
「勿論タダでは上げられません。一つ、私のお願いを聞いて下さい。」
何かによりますけど…。
「先程の『未遂』や、正規の手続きを経ない入国の件に関しても、私の方で良くしておきますよ?」
「聞かせていただきます!」
やっぱ今後はもうちょっと考えて行動しましょう。
「先ずは人魚さんに会わせて下さい?」
どうぞこちらです。
と言うかこの訛り、この国の人じゃないんですかね?何の獣人なんでしょうか。
「こんばんは人魚さん。突然ですけど、この薬飲んでもらえます?」
いきなり薬を飲めって怪しい…それ魔女の秘薬じゃないですか!!良いんですか!?
「私は商売人です。商売に取引はつきもの。取引には契約書がつきもの。ですけど、たかが紙切れ一枚、嘘を吐くのは簡単。取引、つまり商売です。それにおいて重要なのは、薄く簡単に破れる紙一枚とインクの文字より、信頼できる取引相手。そうは思いませんか?【旅人】さん。」
「めちゃくちゃそう思いますぅ…。」
首根っこを掴まれるってこんな感覚ですか…?
「この薬は、一度に一瓶全て飲み干して効果が出ます。効果は永続。ただし、『海に戻れば効果は消える。』と言うのが私が知っている事です。『海に戻る。』が、特定の海を指すのか、全ての海を指すのか。海水と淡水の違いなのか。川・湖・雨ではどうなのか。砂糖水や果汁、酒では?水蒸気では?泥では?人間の体液に魚の体液。同じ人魚ではどうなのか。そもそも効果が本物なのかすら、私は何も知りません。あなたが欲した薬はそういう代物です。」
人魚を捕まえるって、人魚が陸に上がって人間を捕まえるのと同じことですからね。そりゃあ検証のしようがありませんか。それで効果を確かめたいから飲ませてやると。
「ちょうだい。」
ローレさんは受け取った魔女の秘薬を飲み干します。
少し経って、ローレさんはベットを掴んで震え出しました。
変化が始まったのです。
鱗が小さくなって行き、同時に人魚のひれは二つに分かれ、人間の足へと姿を変えます。
「悶え苦しむ激痛。効果は本物。酷い副作用ですね…。体力を使い果たして、気を失ってます。体力の少ない子供や老人なら死の危険性もある。ここで分かって良かったです。この結果は商品の説明に加えましょう。」
私が血を吸ってたら危なかったんじゃ…ちょっと前の私ナイスです!
「家に来て下さい。部屋は用意してます。経過観察もしたいですからね。」
見事、ローレさんは足を手に入れました。とりあえず喜んでおきましょう。
そして私たち二人は…名前なんでしたっけ?
「すみません…!申し遅れました…。」
いえいえ、私も名乗ってないので。知られてるみたいですけど。
「私は折紙商会会長、ローリック家22代目当主のゼーテ・ローリックと申します。よしくお願いします。」
「【旅人】のネムアム・ロードレイグです。よろしくお願いします。」
「お噂はかねがね。」
やっぱり知られてます!
それに…変な人に目付けられましたね…。




