エンターキーって、気付いたらあの形じゃないとしっくりこなくなってるよね。
妹が生まれた少し後、村に旅人が来たんです。
ママの知り合いみたいですね。
その人好きなんですよ。生き方と言うか、人間性と言うか?
それで、その人の弟子になれば旅に出れるなーと考えてたんですけど、その人が、
「旅人になりたいのか?ええ趣味じゃの。最高じゃ!ワシが弟子に取ったるわ。気が向いたら文を遣せ。この村に来てやるでの。」
って言ってたので、春に手紙を送って来てもらいました。
両親も受け入れてくれて、無事に旅人の夢を叶えられました。
見てるか?ルル。俺は夢を叶えたぞ。
「いやルルちゃん死んでないわ!!」
つって、HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!!
「何やっとんじゃ…?」
気にしないでください師匠。
時期に慣れます。
「師匠って角?ありますよね。人間じゃないんですか?」
のじゃロリで角生えてるんですよ。良いですよね。
「人かどうかで言えば違うが、ぬしと変わらんぞ?鬼の中には角が生えとる種族もおる。まあ、鬼と言うのも人が勝手に付けた名じゃし、大昔の名残じゃ。昔は会話の出来る相手と思われておらんかったらしい。自分達以外は凶暴な獣と、考えとったと言うだけじゃな。人の方が数も多いし、仕方なかろう。」
そう言えば、吸血鬼らしいですね。結局。
吸血鬼って、なんで魅力的に映るんですかね?
やっぱ、いつまでも美しい存在と言うのが、夜の闇に映えるんでしょうかね。
それとも、血と肌のコントラストが良いんですかね。
吸血鬼の身体だからか、かなり興味あるんですよ。吸ったらどんな感じだろうって。
感覚的にはそう言うことのイメージなんですけど、成長したらその時が来るんでしょうか。
…その時の相手って師匠ですかね?師匠、多分百歳超えてるんですよね…。
「大人のレディーに年齢を聞くなどするもんじゃないぞ?」
とか言ってるんですよ。でもママの対応的になぁ、師匠なぁ、ロリババアなぁ。
ロリババって実際どうです?
ババですよ?
精神的にババはちょっとアレですけど。精神的に若ければ大丈夫です。
「でも師匠は精神的にババですよね…。」
「何を言っとるんじゃ…?」
師匠は魔法使いでして、私も以前村に来た時一つ魔法を教わりました。
光源を作る魔法です。
「ライトニングフラッシュ!」
どうですか。前より明るいですよ師匠!
「昼間に使ってもよう分からんわ…。」
と言うことで、今度は夜に使います。
火起こしの魔法「ヒートファイア!」を!!
「上手くはなっとるが…。その、なんで叫んどるんじゃ?気合いを入れんと出来んもんでもないじゃろう。」
「カッコつけたいからですけど?」
「…。」
「…。」
…。
道中は馬車的なヤツに乗って行きます。
雑食中型の竜らしいです。名前は「からあげ」です。
体力があって、力もあって、いざと言う時のスピードは驚くものがある。らしいです。
「いざと言う時は師匠が戦ってくれたら良いじゃないですか。怖いんですか?」
「そりゃ本当にどうしようもない時はワシも魔法を使うが、襲って来たとは言え、避けられる殺しは避けるべきじゃろう?後怖くないぞ。」
故郷トーの村を出て、トーの森を抜け、ラーの川を越えてラーの森に入って、ラーの森を抜けようとしたらー、
「ししょー!いざって時が来ましたよー!!」
デカいの熊に追いかけられています。10mくらい?
「まだ大丈夫じゃ!森を抜ければ追って来ん筈じゃ!多分!!恐らく!!Maybe!!」
荷物下ろしてたので、血と角と竜しか残りませんでした。
どうするんですか?マスター?一文無しですよ?
「マスターて、さっきワシがMaybe言うたからか?」
通じるんですね。
「そりゃ通じるじゃろ。ライトとかファイアとか、ワシの方が詳しいじゃろ流石に。ワシ魔法使いじゃぞ?」
それで、今後の予定は?
「人生において重要なことがある。それは切り替えることじゃ。無いものは無い。有るものは有る。自らを律し、心を切り替えることが肝心なんじゃ。」
何の話をしてるんですか?
「時には、悪事を見過ごす必要もある。盗むぞ!ネムアムよ!」
頭打ちました?医者に掛かるお金無いんですけど。
「からあげ、穴掘るの手伝ってくれる?」
さようなら、あなたのことは忘れたいです。
「ボケとらんわ!それに良い事を思いついたぞ!ワシらはパッと見捨て子じゃろ?そう思って油断した相手を、ワシの魔法で一発じゃ!」
随分楽しそうですけど、まあしょうがないですね。
ロリに近付く大人は理不尽にシバかれる運命ですから。
「ん?」
杖を持って目を瞑り、多分遠見の魔法を使っているマスターが何か見つけたみたいです。
「しめた!盗賊の馬車じゃ!」
コホンッ!と一度咳をして。
「罪無き人々から物を奪うとは許せん。ぬしもそう思うじゃろう?あの盗賊から奪われた物を取り返そうではないか。」
盗賊退治イベント、もっとカッコいい理由が良かったです…。
「野蛮な盗賊どもよ!奪った物を置いて今直ぐ立ち去れ!さすれば、今回だけは見逃してやろう。」
白いローブを身に纏い、真紅の角を陽に照らし、水晶が輝く大きな杖を持った少女はそう言い放った。
少女の声に盗賊達は動揺する。
「…なんだガキか。」
一人の盗賊が落ち着きを取り戻すと、それは素早く伝播して行く。
「ひとりでちゅかぁ?パパやママはどうちたんでちゅかぁ?」
盗賊の言葉に少女は怒り、杖を向ける。
杖の先から出た炎が盗賊を悶えさせた。
「もう一度言う!大人しく引け!」
少女が杖を戻すと炎は消えた。
盗賊達は息を呑み、顔を見合わせる。
「次は灰も残らんぞ…?」
少女が再び杖を向けると、盗賊達は急いでその場を走り去った。
「戦いは避けろとか言ってましたよね?」
あのまま戦闘になってたら、どうするつもりだったんですかね?
「これで1人の少女を育てられる。その為なら、ワシはやって良かったと思っておるよ。」
美しい笑顔ですね。
私の国では盗まれた物を盗み返しても犯罪なんですよ。マスター。
「…まあ、取り敢えずラーの町に行きましょう。近いんですよね?」
「そうじゃな。そこの人々が取られた物じゃろうしな。いやー、良い行いは気分も良いのお!」
そんなこんなで、ラーの町に着きました。
トーとかラーとか、ここの地名そんなんばっかなんですよね。
地名って、どう思って付けたんでしょうね。
多分深い意味は無いんでしょうね。
余ったラー油の消費方法も無いんでしょうね。
「そこの馬車、止まれ!」
…なんか衛兵さんが話してますね。
これはアレですよね。英雄ルートですよね。
村に帰らなくて良さそうです。良かった。
「二度も同じ手口で来るとはな。舐めやがって、クソ盗賊共。」
マスターが拘束されました。
私も拘束されました。
からあげ、暫しの別れだ。……草食べてる。
「入れ。」
牢に入れられました。
「手を出せ。」
拘束は解いてくれるんですね。
何で捕まったんでしょうか。多分、盗賊関連の事ですよね?
それとも、マスターが以前やらかしたんでしょうか。
だとしたら最悪ですね。尊敬出来ないですね。糞ですね。唐揚げの方が頼りになりますね。
「ワシ何もしとらんよ…。」
じゃあ…何ですか?
子供のふりして、油断したところを襲撃!とかしたんですかね?
「ババアが熊倒してればこんな事にならなくて済んだんですけどね。ババアが。熊を。倒してれば。」
ちょっと震えてますね。
流石に起こりましたかね?
「うるさい!あんな化熊と戦っとれんわ!ワシだって怖いもんは怖いんじゃアホ!!」
まあ、私も怖いのでその件はどうでも良いですけど。
「さっさと出るぞ。」
そう言うと、ババアは牢の鍵に手を当てました。
そして直ぐにガチャっと音が鳴り、牢の鍵が開いたのです。
「凄いですねババア!私にも教えてください!」
ババア呼びを辞めたら教えてくれるそうです。
致し方無し。ですね。しょうがないです。諦めましょう。
「諦めるな!!」
「…一応師の立場じゃし、後で教えてやる。それとせめて『お婆ちゃん』にしてくれ。」
その、お婆ちゃんの杖とローブを取り返すと、それらが置いてあった部屋で盗賊に関する情報を見つけました。
それによると、町長の娘アリシャちゃんが、たまたま町に来た少女と知り合い仲良くなる。これが3日前。
その少女がアリシャちゃんを、なんと町長の目の前で誘拐!これが2日前。
そして昨日身代金の要求があり、今日私達が捕まった。そうです。
「あー、こりゃ無理じゃな。この事が頭の隅にある限り、少女の見た目をしたワシらを信じてもらえんぞ。」
町長の娘ですか…。
助けたらそれなりにお礼頂けそうですね。
「怪しくても、娘を助けてくれた恩人ですし、旅費は何とかなるのでは?」
そうと決まればレッツトーゾクパーリナイです!
ついでに解錠の魔法も教えて貰いました。鍵を差して回して開けるタイプの錠はこれで開けられそうです。練習あるのみですね!
…どうやって練習するんですか?
町中の鍵を開けて回るんですか?赤服白髭爺入門ですか?
一つの鍵で繰り返し練習しても意味ないですよね?
一応、時間さえあれば開けられるので、自然に慣れるのを待つしか無さそうですね…。
と言うか、魔法使いを牢屋に入れるって愚策なのでは?
それとも、お婆ちゃんは簡単に開けてましたけど、かなり複雑な鍵だったんですかね?よく分かりませんね。
「見つけたぞ!盗賊共の寝ぐらじゃ!」
割と近いです。
近所の山の2号目くらいの距離感です。平地ですけど。
着く頃には夜ですかね。からあげの足なので。隠密には丁度良さそうですね。
「からあげの足」て、なんか美味そうですね。部位的な話ですかね。
「作戦はこうじゃ。ワシがパッと行って町長の娘を連れて帰るから、燃やせ。」
サー!イエッサー!
「ほい『パッ』と。」
お婆ちゃんが消えました。
その直ぐ後に断末魔が…聞こえないことにしましょう。
私は私の役割を。
「ファイヤー!!アロー!!」
先制出来そうですね。
やる事は直接チャッカマンですけど。
木造なので期待出来ますねぇ?
「ほい『パッ』と。」
お婆ちゃんがアリシャちゃんを連れて来ましたね。後は逃げるだけです。
…。
アリシャちゃんの元気がないですね。
盗賊共め、こんな美少女を痛ぶって楽しんでいたとでも言うのか!?許せん!!
「眠っとるだけじゃ。騒いで面倒での。」
なんだ。良かった。
「アリシャを、娘を助けて頂きありがとうございます。」
町長さんから謝礼をたんまり頂きました。
これで旅が続けられそうです。
旅続けなくて良いかもと思い始めましたが。