RPGの一周目はロールプレイ、二周目はフリープレイ。
色々聞いていたらすっかり日が暮れてしまいました。
チャームチャームて、主人公の能力ですかこれが。エロ同人の主人公でしたか私は?
勇者様…レビィですか。死んでるので前世の名前は忘れるとして、何て呼びましょう。対面すると流石に様を付けてしまいそうです。気を付ければ…。
しかしどうしたものでしょう。良い感じに明かせると良いのですが、100年会ってない相手からの特大サプライズですからね。滅多に無い状況ですよ。と言うか無い状況ですよ。とびっきりのサプライズを用意しないと…うっ!心の中の脱サラ呪術師が…!
「そこのお嬢さん。ちょっと聞きたいんだけど。」
お嬢さんと言うあなたもお嬢さんに見えますが。
「ボク道に迷っててさぁ、てっきり一番デカいココが王城だと思ったんだけど、神殿なんだって?」
神様の家より大きい家を建ててはいけない決まりですからね。信仰に熱い国なのです。
「王城は横の建物ですよ。神殿が影にならない様に、北に建てる様にしているそうです。」
「ナルホドねぇ…ありがとう、助かったよ!」
どういたしまして。
王城に用があるとは、泥棒とかですか?私は共犯者じゃ無いですよ?迷える仔羊の手を引いてあげた優しき旅人です。仔羊に手は無いですが。
「陛下、本日の謁見者は次の方が最後になります。」
「そうか。漸く休めそうだな。」
扉が開かれ、一人の人物が王の前に立つ。
「キミがヒュメル王だよね?影武者とかじゃくて。」
「無礼であるぞ!!」
宰相の指示に従い、その人物を騎士隊が囲む。
「まあ落ち着きなよ。話をしに来ただけなんだ。」
囲んだ様に見えたが、その者は玉座の背もたれに寄りかかっていた。
「本来の謁見者が居た筈だ。無事なのだろうな?ー」
「流石は王様、動じないね。安心して?ちょっと眠って貰っただけだから。宰相さんも、そんなにピリピリしないでよ。」
「なら良い、話を聞かせて貰おう。」
「皆落ち着け。今ので判るだろう。生きて居られるのはこの者の気紛れだ。」
騎士達は槍を下ろし、下がる。
「良いね。無駄な殺しはしたく無かったんだ。」
その者は元居た玉座の前に立ち、宣言する。
「話は単純だよ。宣戦布告。それだけだ。」
「…何だと?」
「我々魔族の国デボルは、人族の国ヒュメル並びに近隣諸国全てに対し、戦争の開始を宣言する。先ずは、ヒュメルの王都からだ。前哨戦のオグルは【流星】の介入で負けちゃったからね。ちょっとズルいけど奇襲させて貰ったよ。」
「奇襲?そんな報告は届いていない。陛下の暗殺に来たのでは無いのか?」
宰相は聞く。
「王を殺しても代わりは居るでしょ?ボク達が殺したいのは兵士だよ。魔王様の望みは完全勝利。『楯突く力の有る者は例外無く殺せ。』だってさ。」
「それを態々伝えに来たのか?それだけでは有るまい。」
「王様は察しが良いんだねぇ…。魔王様もそう言うトコあるし。王様ってそんなんばっかなの?遅くまで働いてるトコとかそっくり。」
態とらしく咳をし、空気を変える。
「ボクは魔王軍四天王が一人、【翼】のグリア。【勇者】ってドコに居んの?殺したいんだけど。」
おやぁ?おかしいですね。アレは確かに魔物です。隠れましょう。
えっと、名前は…。
「ダークウルフよ。」
そう、それです。何で居るんでしょう。卵生じゃ無いですよね?
「胎生に決まってるでしょ?『卵から孵って持って来ちゃった。てへ。』なんてアナタだけよ!」
「!?幽霊さんじゃないですか!驚かせないで下さいよ…あ、就職おめでとうございます。」
「ありがとう…じゃ無くて!早く逃げるわよ?」
幽霊さんはあの後王都に来て、夜間の警備として雇われたそうです。夜中に出歩く人を驚かす仕事だそうで、趣味と実益を兼ねて始めたとか。それだと怖がる人より面白がる人の方が増える気もしますが、私には関係無いですからね。あと幽霊って雇えるんですね。
「急に魔物が現れたのよ。多分、誰かが連れて来たんだと思う。だとしたら魔族が居る筈よ。アナタには借りがあるし、家まで送るわ。」
「ありがとうございます。」
長生きなだけあって色々知ってるんですねぇ。死んでますけど。
「ネムアちゃん!良かったぁ…。」
ティアお姉ちゃん。私は元気ですよ。
ジルミお姉ちゃんはどうしました?いつもなら抱きついて来るのに。
「ジルミお姉ちゃんなら、ギルドに呼ばれて魔物を倒しに行ったよ。冒険者は皆んな招集が掛かってる。」
招集ですか。緊急クエストですかね?
「魔王軍の四天王が、魔物を連れて王都を襲って来たらしいよ。でも安心して!ネムアちゃんは行かなくて良いからね!」
「へぇ…国王陛下直々の依頼なら報酬も豪華そうね。」
「行くよネムアちゃん!!安心して!!お姉ちゃんが護るからね!!」
「現金だね…。」
ティアお姉ちゃんに連れられて夜の街へ繰り出します。魔物退治ですよ?
「ネムアムさん!」
レビィ…様、先程はどうも。お陰様で実りある時間を過ごせまして候。
「あの、話したい事があるのです。ネムアムさんを少しお借りしても宜しいでしょうか?」
「勇者様…!?が護って下さるのなら、姉としても安心です。どうぞ。」
そんな借り物競走じゃないんですから。
「えっと…ウェレイア様からちゃんと、色々と大切な事を聞けました。ありがとうございます。」
「お力になれて良かったです。転生特典は分りましたか…?」
「分りました!制御出来る様になったので、これで安心出来ます。」
「本当に良かったです!お姉さんの下に送りますね。しっかり捕まっていて下さい。高い所は苦手ですか?」
「大丈夫ですよ?それが何か…。」
「では!」
そう言うとレビィ様は私を抱えて飛んで行きました。
勇者って飛べるんですね。飛行の魔法でしょうか。かなり高度な魔法ですが、流石ですね。
「今晩はお嬢さん。そうそう飛んでるそこのキミ。ちょっと聞きたいんだけど…。」
さっき道を聞いて来た多分泥棒さんじゃないですか。
あなたも飛べるんですか?飛べても迷子になるんですねぇ。
「勇者サマがドコに居るか知らない?」
「…私が勇者です。この魔物達はあなたの仕業ですか?」
「やっぱり!飛べる人族なんて珍しいと思ったんだ!ああそうだよ?ボクが連れて来た魔物さ。でもキミは戦わなくて良い。ボクが殺すから。キミを。」
「ネムアムさん、彼女は危険です。早くジルミさんの下へ合流して下さい。この方は私が対処致します。」
泥棒では無くテロリストでしたか。流石に読めないですね。
「勇者サマは眼も良いんだね!大体『男だ』って思われるんだけど、ボクはか弱い女の子なんだよね〜。」
どこがか弱いんですか!と、心の中で突っ込んでおきます。
「でもどうしよっかな。勇者サマは強いからな〜…人質は居た方が良いよね!」
私なんてすぐ死にますから人質向いてないですよ!?
「え…?」
レビィ様は私に向けられた魔法を代わりに受けてくれました。
「大丈夫です…。この程度の傷なら魔法で回復出来ますから…早く行って下さい。」
私はその場を立ち去ります。足手纏いですからね。
「勇者サマにも効くんだボクの魔法、弱いのに…。もしかして、手加減してくれてるのかな?」
「手を抜いていて勝てる程、甘い相手では無い様ですね…。本気で行きます。」
「良いね。手加減してる相手に勝っても面白くないんだ。絶対負ける戦いも面白くない。絶対勝つ戦いも面白くない。ギリギリの接戦で勝つから面白いんだよ。勿論、ギリギリの接戦で負けるのは一番面白くないけどね。ただ…キミはまだ本気を出せないみたいだ。残念。」
「あなたの方こそ、良い眼の様ですね…。」
私のユニークスキル【蘭摧玉折】は、力が伸びやすくなる代わりに、力を発揮出来なくなる。ゲームで例えるなら、「経験値が多くなる代わりに弱体化が入る」スキルでしょうか。その為、本来発揮出来る筈の力を抑えた状態でしか戦えず、力を解き放つ為には「強い意志」が必要になります。
その「強い意思」を得る為の転生特典【愛の勇気】。愛する気持ちがそのまま力を発揮する為の勇気になる、ウェレイア様から頂いた勇者の力。
「レビィに唯一足りていないもの。それは力を発揮する為の『勇気』です。その力はきっと、貴女とお姉さんを繋ぐことでしょう。」
ウェレイア様、私には足りないものが多過ぎます。唯一などではありません。
姉さんは私が持たないものを持っている。姉さんなら、この様なスキルにならなかった筈。姉さんが生きていれば、きっと大きな事を為した筈。あの時死んだのが姉さんで無く私なら、目的も無く老いる事など選ば無かった。
「想いに呼応して力を解放するスキルか!?中途半端に解放するから、身体が悲鳴を上げてるじゃないか!それを回復魔法で誤魔化しゴリ押し!面白いね!正に宝の持ち腐れだ!」
速い。普通の飛行魔法ではありませんね…。スキル?どの様な?魔物が急に現れた事と関係が?
「普通の成長速度じゃない。それもスキルだろ?弱体化するデメリットがあるスキルだ。違う?」
大量の魔物が現れ続けている…いずれ限界が来るとしても長く時間は掛けられませんね…。
こちらの戦力は父さん、母さんのプラチナムランク。ジルミさんを筆頭としたゴールドランク。そしてシルバーランクの冒険者、騎士が続き、ブロンズランク。一体一体なら倒せる戦力です。広範囲に攻撃出来る魔法使いや、複数を圧倒出来る剣士も居る。魔物だけなら私が居なくても問題は無い筈。
魔物を出現させているのはこの方の仕業だとして、倒せば止まるでしょうか…どちらにせよやらなくては。私は【勇者】なのですから。
「話ぐらいしてくれても良いじゃないか。魔法も無詠唱で味気ないし。仕方ないな、ボクから話を振ってやるよ。」
背中から翼が生えた…違います。隠していたものを出しただけ。
魔族には腕が四本か、半分の腕の代わりに翼があると聞いていましたが、隠す事も出来るとは…。これでは人族と見分けがつきませんね…。
「ボクはグリア。【翼】のグリア。ユニークスキルもそのまま【翼】だ。翼を付けたモノを自由に運べる。まあ、翼って言うのは比喩表現で、実際にはマークを付けてる感じかな。」
「魔物はあなたのスキルによるものですね?」
「やっと喋ってくれた!そうだよ、ボクのスキル。デボルからヒュメルまでは距離があるからね。ボクを殺しても、運んでる途中の奴らはそのまま運ばれる。でも安心してよ、流石に無限じゃない。もう少しで全部運び終えるからさ。最後の方はとっておきだし、プレゼントみたいなものさ。好きに使って良いからね。」
プレゼント…ですか…。魔王軍の戦力は計り知れませんね…。全面戦争を仕掛けられれば、ヒュメルなど一夜にして崩壊する。と言うのに、何故わざわざ個別に攻め入る必要が?グリア、彼女も遊びの様ですし、単なる領地拡大が目的では無さそうですね…。
しかし今は勝たなくては…!
「すみませ〜ん!」
「ジルミ・ロードレイグを見ませんでしたか?」
ティアお姉ちゃんも足めっちゃ速いですし、全然遠くに行っちゃて見つからないんですよ。
「ジルミ・ロードレイグ…もしや!嬢ちゃん、いやあなたはネムアムさん!?」
何で私の名前知ってるんですか!?ロリコンですか!?
「ギルドで聞いたぜ!ロードレイグ家の天才姉妹の三女が王都に来て冒険者やってるって!似てると思ったんだよ!そしたらロードレイグって!マジかよ!ホンモノかよ!ウッヒョ〜!サイン下さい!!」
「嫌です。」
「チクショウ!!それでジルミさんだな?西で暴れてるらしいけど、そっちは魔物が塞いちまってな。」
切り替え早いですね。
じゃあティアお姉ちゃんはどうでしょうか。
「ティアさんか…向こうでアイテム配ってるけど、それは別だしな…。まあ多分、西だと思うぜ?仲良いじゃん。あの姉妹。…ネムアムさんの姉妹でもあんのか。ネムアムさんが分かんねぇなら、じゃあ俺には分かんねぇわ。すまんな。」
そうですか。
まあ二人は強いので、私も折角来たんですし何体か戦って報酬貰いましょう。後は一般ヒュメル民に紛れて結界の中でゆっくりお茶でも。
「魔物が出たぞ!」
弱めの魔物でお願いします!そして私を活躍させて下さい皆さん!
「あれはダークゴリラ!」
「安心しろお前ら!ネムアム・ロードレイグさんが来て下さったぞ!ネムアムさんお願いします。」
「何で私が!?」
「え?ネムアムさんは全ての魔法を使いこなす【流星の魔法使い】の弟子で自身も黒魔法から白魔法に特殊な魔法まで全て使いこなす魔法使いで近接戦闘力は鬼族の【侍】にも劣らずその総合力は魔王軍四天王を一時撤退に追い込む程だろ?」
「マジかよスゲェ!」
「鬼族の【侍】って、剣士の間で超有名なあの【侍】か!?実在すんのかよ!?」
「それに劣らない!?魔王軍四天王を撤退!?その若さで!?」
「違います!!」
勘違いしてますって!確かに黒も白も魔法は使えますけど、初級も初級のカス魔法ですよ!?それに鬼族の【侍】てサヨさんのことでしょう!?あの人めちゃくちゃ弱いですよ!?肩書きだけですよ!?魔王軍四天王だって…。
「まあ一応撤退させましたか。」
「うおおおおおお!?最強じゃねえか!!」
クソッ!!確かに撤退してるのが紛らわしい!!
「とにかく違います!私は強くないです!イキリとかじゃなくて!!」
またなんかやっちゃいました?とかじゃないんです!ホントに弱いんです!エンジン鳴り響かせるヒーロー以上に見た目も弱そうなんです!!実際弱いんです!!
「この歳なら調子に乗って当たり前!なのにこの謙虚さ…!皆んな!ネムアムの姉御に迷惑掛けねぇよう、ダークゴリラとのタイマンは俺たちで守るぞ!!」
誰がやるって言ったんですか!?タイマンって何ですか!?それがもう迷惑なんですよ!!落ち着いて見て下さい!!私はただのメスガキです!!生物的な!!
「ウホ?」
「!はろぉ…?うほ…。」
このままゆっくり距離を取って逃げましょう。死にます。
「ウホオオオオオオオ!!!!!!」
「イヤアアアアアアア!!!!!!」
私を狙わないでください!!ゴリラなら草食であってくださぁい!!
「姉御…!俺たちに負担をかけねぇよう、距離を離して…!」
「不甲斐ねぇぜ…!お前らぁ!姉御の下に行かせんじゃねぇぞ!!」
「オウ!!」
「バウ!!」
「くぅぅん…。」
「ワオオオオオオオン!!!!!!」
「イヤアアアアアアア!!!!!!」
来てるじゃないですか!!全然姉御の下に行ってますよ!!ダークゴリラにダークウルフに!!次は誰ですかぁ!!
「コケエエエエエエエ!!!!!!」
「ギャアアアアアアス!!!!!!」
「ニャアアアアアアア!!!!!!」
「モオオオオオオオオ!!!!!!」
「もお良いですってええええええええ!!!!!!」
ふう…何とか逃げ切れました…。マジで酷い目に遭いましたよ…。私よく逃げ切れましたね。凄いですよ私。褒めてあげます。
「!!ッァア…!!」
「レビィ様!?大丈夫ですか!?」
ネムアムさん…?何故ここに…いえ、私が飛ばされて来たのですね。まだ勇気は足りない様です。
「大丈夫…ネムアムさんは…早く…逃げて…。」
「…敬語が抜けてるじゃないですか!大丈夫じゃないんですね!?」
敬語…?
「私は大丈夫です。大丈夫ですから。」
「まだダメ?まだ手加減治んないの?良い加減死んじゃうよ?良いの?」
良い訳ありません。必ず勝たなければ。
「…レビィ様。手加減、無くせるかもしれません…。私の力なら…。…後悔するかもしれませんが。」
ネムアムさんの力?ユニークスキル?それとも神様の…。【流星】さんの魔法の可能性もあります…。
いえ、そんな事はどうでも良いのです。今重要なのは手加減を無くせると言う事実。それが仮に、麻薬の様な理屈であったとしても、私は望まなければなりません。そうです。望まなければ。ここで死んだら、姉さんに会えないのです。ここで…。
「お願いします。やって下さい。」
「お、マジ?良いじゃん良いじゃん。やってあげてよ。」
そうです。100年耐えたのです。今更どんな事が起ころうと、姉さんに対する気持ちは、私の精神は何ら変わりありません。前世でも、私はずっと、姉さんの後を追わずに耐えて来た。楽な道を選ばず耐えて来た。姉さんならきっと…。
「では、口を開けて下さい。」
口を…何か食べれば良いのでしょうか?それとも飲めば?
…いえ、これは違います。これは口付けです。愛し合う恋人同士がする行為です。…舌を入れる行為は、更に深い中の…。
私のファーストキス。
「…!」
「!?泣いてるんですか!?嫌でしたか!?やっぱりそうですよね!昨日今日の中でこう言う行為は…と言うか同性ですもんね!それはまた違いますか!」
何故でしょうか。分かりません。姉さんの葬儀でもしなかったのに、何故こんな事で…。
「て言うか、よく考えれば別にキスしなくても良かったです!そうですよ!指とか舐めて貰えば良かったんです!サデス様はマジでテキトーですね!!女好きの変態邪神です!!」
「あの…すみません…。そんなに泣くとは…。いえ、言い訳はしません!どうぞ罵って下さい!!」
「えっと、その、冗談を言う時間ではないですよね?分かってたんです!でもクセでつい…いやだから良い訳は!」
「でも!!ちゃんと手加減は無くしますから!!安心して下さい!!」
…。
何をしているのですか私は。安心させるのは私の役目でしょう…。
ネムアムさんは私の為に、私のサポートをする為に、この街を、国を、人々を守る為に力を貸して下さったのです。私の様に邪な思いで生きている下劣な人間では無いのです。これではまるで、ネムアムさんが悪者の様ではないですか。
「こちらこそ申し訳ありません。そしてありがとうございます。気にせず続けて下さい。私は大丈夫ですから。」
良い笑顔が出来たでしょうか…。嘘を吐いて騙すなど、【勇者】に有るまじき行為ですね。
ですが責任は取らなければなりません。
「勇者レビィは、この身朽ち果てるまで戦い続けます。必ず魔王を討ち取り、世界に平和をもたらします。」
「お願いしますネムアムさん。」
これで良いのです。姉さんは、私には相応しく無いのですから。姉さんは姉さんの人生を、私と言う枷の居ない人生を、どうか過ごして欲しい…私が言うなど傲慢でしたね。姉さんは私よりずっと凄くて自由なのですから。
「…やっぱり辞めます。」
「!?何故ですか!?私の事は気にせず!!」
「そうだよ?本人がやってくれって頼んでるんだよ?やってあげなきゃ失礼だよ?それとも嘘だったの?嘘っぽく無かったけどな。」
嘘?私を安心させる為の?
…どこまで行っても、私は最低の人間ですね。ネムアムさんの方がよっぽど【勇者】に相応しい。
「いや、出来るのは出来ますよ?ただ、それだとレビィの為にならないと言うか、もっと良い方法があると言うか。」
…レビィ?
「ネムアムさん…?あなたは…いったい…。」
「100年でしたか?あの時はすみません。こんなに慕ってくれているのに、あなたを置いて行ってしまった。」
ネムアム…さん…。
「あなたは私に無いものを持っています。100年も律儀に耐え続けたのは、きっとそのせいでしょう?そしてそれは私のせいでもある。」
ネム…。
「覚えていますかね。あなたにとっては100年前ですから、覚えていないですかね。…いえ、覚えていますね。あなたは覚えています。あなたはそう言う子ですから。」
ね…。ぅぅ…。
「100年前、将来の夢に悩んだあなたは、職業図鑑を持って私に『姉さんがやっているゲームの、【勇者】と言う職業はどう言うものなのですか?この図鑑には載っていません。』と、可愛い事を言いました。それに対して私は『そうですね…仕事は世界を救う事でしょうけど、お金の稼ぎ方はモンスターを倒すとか…クエストを達成するとか…要は人助けですね。ヒーローの様に、人の助けになることをする職業です。』と答え、あなたは『では、姉さんは私の【勇者】ですね!』と嬉しそうにしていました。私は確かにあなたの【勇者】かもしれません。ですが、【勇者】と言うのは、私の様に妹をいつ終わるか分からない地獄に落とす者ではありません。私を慕ってくれるのは嬉しいです。ですが、私に縛られるのは辞めて下さい。私は自由が好きです。あなたがそれを分かっていて、私を自由にさせる為に才能を伸ばした事も知っています。だからこそ辞めて下さい。」
「レビィの自由も、私は好きなんですよ?」
「姉さん私…!私は!」
覚えています。鮮明に思い出せます。
どれだけ強く想っていても、日々増えて行く記憶に押されどんどんと奥へ埋まってしまう。私は天才なのに、私の記憶力は普通では無いのに、老いて行っても問題は無かったのに、転生してから出来た幼少の記憶がそれを書き消そうとする。
それに対抗してずっと姉さんの事を考えても、日々が永く感じるだけで意味は無く、ただ詰まらない事を想像するだけ。姉さんの居る妄想の生活を。夢に意味は無いのに。
もしこのまま忘れられれば私は楽になれるのかと考える。楽になれる訳無いと考える。きっと、苦しむ理由も分からぬまま耐え切れなくなるだけ。意味は無い。
姉さんが居ない世界に意味は無い。
「また縛られていますね。意味を求めるのは良い事ですが、囚われてはいけません。私が居れば良いのなら居ますから、少しは姉に甘えて下さい。あなたは私のせいで『自由』に縛られています。私を想うのなら、その縛りを解いて下さい。100年も頑張ったんです。しかも一度死んでるんですよ?『一周目はロールプレイ。二周目はフリープレイ。』私のプレイスタイルです。一周目のストレスは二周目で発散するんですよ。」
「姉さん、私はーー。」
「深呼吸して下さい。」
深呼吸?
「…これで良いのですか?」
「良いです。では目の前の殺人未遂犯を捕まえて下さい。頼めますか?」
「…はい……はい!」
「任せて下さい姉さん!私が倒します!!」
「面白いな、やっぱり面白い。殺すのは惜しいよ。」
雑念は無い。こんなに晴れやかな気持ちは100年振りです。
「姉さん覚えてますか?私はあの後【勇者】と言う言葉の意味を聞いたのです。」
「よく覚えてますね…覚えてなくても良いんですよ?」
「忘れませんよ。姉さんの事は。」
『意味ですか…そうですね。【勇者】とはーー。』
「【勇者】とは『真の勇気を持つ者』のこと!『真の勇気』とは、『絶対負ける戦い』に迷い無くその身を投じーー『勝つ』こと!!」
「絶対は絶対だろ。人族は簡単な常識も教育しないのか?」
「そんな恥ずかしい事、忘れて下さい!!」
「嫌です。姉さんに言われて気付きました。これからは私も自由にしようと思います。」
「そう来ますかぁ!!姉誑しめぇ!!」
「失礼ですね。純愛ですよ。」
「ならばこちらは退避だ。」
行ってしまいました。
黒歴史に悶絶する姉さんも可愛いです!
「やっと本気が出せるみたいだ。キミがシスコンで助かったよ。」
「姉さんとの逢瀬が有りますので手短にお願いします。」
「じゃあさっさと来いよ【勇者】!!夜が明ける前に終わらせる!!」




