一方的な攻撃
「あ、ありがとうございます。」
「ぼーっとしてるなら早く行きなよ。」
ビアンケットがダカンチェッラーレを降ろすとダカンチェッラーレは俯きそのまま動かないでいた。
「俺は…俺は……。」
「殿下、助けに来て頂いたと考えても宜しいのでしょうか。」
「そうだね。警護の兵はもう少ししたら来るから先ずは来た感じかな。」
つまりは無策であると言っているビアンケットにポルタミーナは全力で帰れと言いたくなった。
しかしそんな戯れをしている場合では無いのですぐ様マルティータに視線を戻す。すると先程まで攻撃してきていた赤色の鉛筆が割れて消え、腕輪からもパキンッと何かが砕ける音がした。
「あら…やっぱり紛いものはダメね~。まぁ、まだまだあるから良いけれど。」
ポルタミーナはマルティータと目が合うとゾクリと悪寒がした。本能が逃げろと伝えている。
「皆にげて!」
「プロフィウジョン ドゥ フルール!」
白と黒以外の鉛筆が動き出し沢山の切り花を描いていく。空一面が花で埋め尽くされると花々は一斉にポルタミーナ達の方に茎を向けた。
「ポルタミーナ様~?貴女がボロボロになる姿、楽しみですね。ティラール!」
矢のように一斉に襲いかかってくる花々に皆が為す術もなく、ただ身をかがめ痛みに耐える為に全身に力を入れ眼を強く瞑る。
しかし、いつまでたっても痛みは来ない。ポルタミーナは恐る恐る眼を開けた。すると目の前にはガラスの様に透けた壁が花々を弾く姿があった。
「間に合ったか。」
「遅いよ兄上!死ぬかと思った~。」
「お前は…王族が単身でホイホイと危険な場所に行くな!コレが片付いたら説教だからな。」
「え~それは勘弁してよ。」
第二王子はマルティータを見据える。ポルタミーナ達を守った壁は第二王子のスキルの一つの下敷きだったようで役目を終えると第二王子の傍に戻った。第二王子は他にもルーズリーフとアロンアルファを具現化している。
攻撃を防がれたマルティータは反撃手段を持つ第二王子を忌々しそうに睨みつけた。
「邪魔をしないでっ!」
「貴様は罪人として拘束する!レターシークレット。」
ルーズリーフがまるで封筒の様に折りたたまり七色の鉛筆を包み込む。
「私の鉛筆!」
「アロンアルファ。」
ルーズリーフでつくられた封筒は七色の鉛筆を入れたままアロンアルファによって接着された。
「これでスキルは使えないだろう。取り押さえろっ!」
呆気なく拘束されたマルティータの姿を見てポルタミーナは身体から力が抜けた。座り込んだままのポルタミーナをビアンケットは優しく抱き抱えると何かと比較するよに頷く。
「これこれ、これを求めていたんだよ。」
「殿下、私は大丈夫ですので降ろして下さい。」
「それは無理だな。大人しく運ばれててよ。」