十四
さて、会議の結果だいたい次のような戦略になった。
すなわち、まず現実世界の伊賀付近へ進軍している紀阿閉麻呂の軍に向けて援軍要請の使者を送る。敵が動くのは時空の霧が晴れた夜明け以降だろう。僕たちは夜明けまではサイゼで休息をとり、念のため見張りは交代で行う。夜明け前に兵を小隊単位に分け要所に配置し、このサイゼを本陣として比売神様と僕が連絡係として残る。敵が市街地に入ってきた場合は街路を利用しながら反撃する。現代の奈良市街に不案内な敵に対して、街路を把握しているこちらは少数でもある程度は持ちこたえられるだろう。それでも前線を下げざるを得なくなることは想定内で、その場合はサイゼリヤを放棄して徐々に後退し、最終的には春日大社までラインを下げることはできる。援軍が来るまで持ちこたえられれば我々の作戦は成功となる。
「こんなところでしょうか」
と、吹負がまとめた。
「それで行こう」
比売神様も同意した。
僕は作戦の良し悪しはわからないが、ともかく今回の作戦は理解した。僕と吹負と比売神様がいれば世界を多少操れるらしいということもあり、何もわからずに敵中突破したときに比べると気持ちにいくらか余裕がある。
「では、私は兵たちと話してきます。命をかけて頑張ってくれていることをねぎらいたいので」
「そうか。それがよかろう」
吹負は立ち上がりグラスを持って、隣の席で盛り上がっている兵たちの輪に入っていった。打ち解けた会話が聞こえてくる。
テーブルには僕と比売神様が隣り合わせで残された。
比売神様に聞きたいことはたくさんある。いきなりこんな異世界に飛ばされてわからないことだらけだ。しかしたくさんある中からどれを質問しようかと酔った頭の中で考えてみても、どうもあまりまとまらない。
僕が考えていると比売神様が少しばかり愉快そうな様子で言った。
「颯太、なにか聞きたい話がありそうだな?」
「はい……わかりますか」
「神の力などではないぞ。君の顔はわかりやすい」
なるほど、以前友達にそんなことを言われたこともあった気がする。
「いろいろと聞きたいことはあります」
と僕は言った。
「いろいろか……そうだな。では私が何者かというあたりから始めようか。吹負たち古代人にはあまりに突拍子もない話ばかりで混乱してしまうだろうからな、君と二人きりになったのはちょうどいい」
比売神様はまたグラスを干し、いつの間にか誰かが差し入れてくれたボトルからワインを注ぐ。神に手酌させるのもどうかという感じだが、酔うともうどうでもよくなってしまった。
「さて、話は二千年前の宇宙からだ……」
比売神様の話は地球から約三十光年離れたとある惑星から始まった。




