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なろう作家物語 ~俺は熱い異世界物語を紡いでやる!!~

 ある日、突然。

 それは、やってきた。


 『小説家になろう』というサイトで連載を始めると、普通の人間が突然『なろう作家』になるのだ。


 それは、恐ろしい物語の始まりだった……。





 構想三ヶ月!

 プロット一ヶ月の末、ついに俺は『小説家になろう』で連載を開始した。


 書きためは、毎日投稿したとして一月分。

 これだけあれば、十分だろう。



 連載開始!


 とりあえず、書き溜め()はあるのだ。

 土日で三話づつ投下だ!!


 よくわからんが、最初にしては上出来だろう!

 よし、プロットに基づいて続きを書くのだっ!!



 一週間経過。



 ぬおっ!!

 なんか、面白くない!!

 これは、プロット変更だぁっ!!!


 よし、ここで新たなキャラを投入っ!!

 ぬはははははっ! よいではないか、これでいこう!!


 考えている間に、書き溜め()が減ってしまっているではないか。

 土日で書き溜め()を補充するのだ!!



 一週間経過。



 仕事が繁忙期に突入した!!


 仕事が忙しく、家に帰っても飯喰って寝るだけで、全く書けない! 


 ……


 いかんっ! 書き溜め(残弾)が減ってきた!

 どうする!?

 とりあえず、二日に一話を書き上げ、凌ぐ。




 明日は、棚卸だ!

 だが、書き溜め(残弾)は明日の分を残して、使い果たした……。

 帰りは、日付が変わる頃か?



 だがっ!!!!


 人間一日くらい、寝ずとも大丈夫だっ!


 仕事を終え、帰宅し、風呂にも入らずに


 俺は書く!



 書く!



 書くっ!!


 ……よし、なんとか間に合った!





 繁忙期の最中、誤字脱字報告が相次ぐ……。



 なんていうことだ!


 こんなものを、俺は今まで恥ずかしげもなく晒していたのか!?


 くぬっ!




 こうなったら、新兵器を投入するしかあるまい……。



 出でよ、校正ソフトォーッ!!!


 ふはははははははっ、最強ではないか、我が軍は!




 だが、誤字脱字報告は止まない。


 どういうことだ!

 弾幕薄いよ、何やってんのっ!!!


 ……いや、そうじゃなく。


 これは……掃討戦に移行するしかないのか!?

 しらみつぶしに、単純ミスを潰していく……。

 精神力を無駄に消耗してしまった。


 掃討戦をしつつ、続きを書くという、ある意味消耗戦に突入しいたことに俺は気づいていなかった。





 ミスとの戦いに疲弊した俺に、さらなる苦難が襲いかかる!




 ぬぁぁぁぁぁぁっ!!


 どう考えても、プロット通りには、ならぬのだーっ!!





 もはや、プロットは無意味!!




 もう、キャラに任せて続きを書くしかないっ!!


 お前ら、勝手にしやがれ――っ!!




 ……なんだ、意外に楽しいじゃないか。


 まさか、これが噂に聞くキャラが勝手に動くという奴かっ!!

 透明な世界に入ったということか!!!



 そうこうしているうちに、年度末にさしかかる。



 ふっ、そろそろ物語も佳境だ。


 プロットは崩れてしまったが、終わりは決めてあるから、多分大丈夫だ……。




 よしっ! この土日に可能な限り書き溜め(残弾補充す)るぜっ!!



 ふはははははっ! 筆がのっているな! どんどん書ける!


 書ける!


 書けるーっ!!





 ……




 翌朝。


 消えてるっ!!!


 土日の作業分が、



 全て消えてるっ!!!



 なんとか復活する手段を思案するものの、そんなものはないことを知る。


 なんということだ!


 書き溜め(残弾)ゼロ……。


 もう、終わりだ……。

 



 「これ、今週中に終わるんだよね」


 上司の無情な工程管理が飛ぶ……。


 とてもじゃないが、連日遅くまで残業しなくては無理だ。




 心のヒットポイントが、限り無くゼロに近づく。


 ああああああ、ダメだ。





 別に、こんなのただの趣味じゃないか。

 一円だって、儲かるわけじゃなし……。

 ブクマが沢山あるわけでも、ランキングに載るわけでもない……。


 もう、やめちゃってもいいんじゃないか?







 もし、一人でも楽しみにしてくれている人がいたら、残念がるだろうな……。

(馬鹿か!? そんな人いるわけないじゃないか!)





 いや、例え一人でも、待っていてくれる人がいるというのなら。






 その人のためだけに、


 俺は書くっ!!!!







 ゴールは目前だ!!


 やるんだ!


 俺なら出来る!



 きっと、出来る!



 いや、やるんだ!!!!



 一日三時間も寝れば大丈夫の筈だ!





 残業し、仕事に全力を投入してなお、家で執筆を続ける。


 時には、会社から帰らずに、無精ヒゲを伸ばし、加齢臭を撒き散らしながら……。



 二週間……。



 遂に、最終回を書き終える!!!


「よし、よくやった、俺……」



 完結ブースト楽しみだな……。




 そんなことを考えながら、PCのモニターの前で夜明けの訪れを感じる……。




 ……。




 パッパラッパー!!♪


 なんだ!?


 なんだこの、いかにもオープニングって感じの曲はっ!?





 へっ?



 どこ? ここ……。




 嘘だろっ!! マジで?


「今から、あなたにギフトを与えます」


 誰だよ、あんた!!




 てか、この展開は……まさか!!



 俺、死んだってことかっ!!?


 のおおおおおおおおおおおおおおっ!!

俺の1万字は、消え去ったのだ!

復活すること能わず!!


悲しみとともに、ここに弔いを捧げる……。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 率直な作者の気持ちが伝わるようでした(*^-^*) [一言] 私も、現実が急がしすぎて連載作品なかなか進まず、最近2ヶ月ぶりに投稿し、待っていてくれた人がいたことに驚くと同時に反省しました…
[良い点] いい勢いでした! 素晴らしい!
[一言] 一万字は切ないですね( ;∀;)ものすごくわかりみ深くて泣けてきました(笑)
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