第89話 鳥魔族編⑤ 救助活動
鳥魔族から襲撃を受けている人々を救うため、俺達は避難通路の入り口へと向かった。
避難通路は避難所と繋がっており、もしかしたら逃げ隠れている人達を助けられるかもしれないからだ。
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「で、ここが避難通路。
・・・が、あった場所ね。」
「本当に大岩で塞がれてたのね。
どかそうとか考えなかったのかしら・・・。」
カップル達曰く、どうやら自然災害が原因で避難通路は塞がれてしまったらしい。
しかしこの町はあいつらが来るまでは平和で、避難通路とか使った試しがなかったため、放っておいたんだとか。
「どっちにしろ、まずは大岩をなんとかしねぇとな。」
「「「私達に任せて。アイアン・ボディ!!」」」
「なっ!!
ケルベルスが魔法を!?」
ハル達三人は体を鋼鉄化させる魔法を使い、そのまま大岩へと突進する。
ドカシャッ!!
岩が砕ける激しい音と同時に、邪魔だった大岩は綺麗さっぱり無くなった。
「ふむ、良い一撃だ。
やるではないか。ハル、ハナ、サクラ。」
「「「えへへ・・・。」」」
ハル達の活躍にはさすがのレイドも大絶賛。
だが彼女達の強さにコメントをしたのは、レイドだけではなかった。
「なんだよ、なんだよ。
お前ら、連れのペットまでこんなに強いのかよ!?
なのに殺し合いは嫌だとか・・・ふざけた事ばっか言いやがって!!」
んんっ!?
この声は・・・。
「ヤクザ男!!
お前、いたのか!?」
「そう言えば、さっきまではいなかったような・・・。
てっきり逃げ出したとばかり。」
だよなぁ、アカリ。
避難通路へ向かってる際は、あれだけ騒いでたヤクザ男の声がぱったりと止んでだし。
知らぬ間にとっとと逃げ出したのかと思ってたが。
「ヤクザ男って、ざけんな!!
俺の名はザックだ。
お前達がビビって逃げ出さないよう、見張ってんだよ!!」
「いや、俺達の依頼主はあくまでこのカップルだから。
お前の命令を聞く気はねえぞ。
・・・ってか、ハル達の事をペットとか言うなよ!!」
そうそう。
ハル達は俺達のペットなどではない。
大切な仲間なのだから。
「ってか、ザックだっけ?
あんた、さっきまで何してたんだよ??」
「!!
・・・お前らには関係ないだろうが。」
な~んか、怪しいよなぁ。
何故か妙な匂いまでするし、一体何をしていたのやら。
「そ、そんな事より、これで避難通路に入れるだよな。
ほら。ボーっとしてないで、とっとと行けよ。
お前らがグズグズすればするほど、犠牲者は増えていくんだからな!!」
「ちょっと、ザックさん!!
この子達は、私達の命の恩人なのよ。
そんな言い方しなくても・・・。」
さすがの言い草にカップルの女性の方が苦言を漏らす。
どうにも感じが悪いザックだが、本当にこいつも一緒で大丈夫だろうか?
しかし身勝手ではあるものの、奴なりに町の人間の無事は祈っているようだ。
だから同じ町出身のカップルや一応、救助に向かっている俺達に危害は加えないはず。
・・・だと良いのだが。
不穏分子にやや不安を抱きつつ、俺達は避難通路へと入っていった。
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薄暗くじめじめとした避難通路を突き進むことしばし。
ようやっと俺達は避難所へと繋がっているであろう場所へと辿り着いた。
天井に扉が付いており、まるで蓋がされているみたいだ。
「じゃっ、さっそくこの扉を開けて・・・ん″?
あ、あれ?
全然、開かん!!」
ど、どうして?
「あっ!?
確かこの扉の上って、大きなタンスが置いてあったかも!!」
「そうそう。」
「いやいや!!
なんで避難通路の入り口に、大きなタンスなんか置いてんだ!?」
いくらなんでも不用心すぎるだろ、この町。
これが長い平和による油断ってやつか。
「だ、だって。
あっちの入り口が大岩で塞がってたし。
だったら別に構わんだろって、町長が・・・。」
「あんたらなぁ。」
気持ちはわからんでもないが、だからってわざわざ避難通路を塞がなくても。
「つまりだ、この扉の上には大きなタンスが置いてある。
のであれば、この扉の上に人はいないはずだな?」
「そ、そうだと思うけど。」
まあ、鳥魔族を怖がるあまり、タンスの中に誰か隠れていないとも限らないが。
「ふむ・・・確かに真上に人の気配は感じぬ。
ハル、ハナ、サクラ!!
もう一度、あれを頼めるか?」
「「「任せて、レイドお兄ちゃん!!」」」
もう一度あれをって・・・ああ、なるほど。
あれを使うのか。
「何をする気だ、お前ら。
・・・って、まさか!?」
「「「アイアン・ボディ!!」」」
彼女達は再び、体を鋼鉄化させ、扉目掛けて全力でジャンプする。
そして扉を上に置いてあったであろう大きなタンスごと、ぶっ壊した!!
「「「きゃああああああああ!!??」」」
「「「ま、魔物だぁ!!!!」」」
・・・。
なんかえらい騒ぎになったんだけど。
「バカか、お前ら!!
魔物がいきなりあんな真似したら、パニックになって当たり前だろうが。」
「むっ、それもそうだな。
ついうっかりしてた。」
「ざけんな、このクソガキめ!!」
今回ばっかりは、ザックを論破しづらい。
けどレイドのやり方が間違いとも言い切れないんだよなぁ。
・・・あんま、時間に余裕が無いし。
「ちょっとみんな!!
お、落ち着けよ・・・。」
「このケルベロス達は悪い魔物じゃないわ!!」
「・・・え?
そう、なの??」
パニックになっていた町人達だが、カップルが弁明を始める。
彼らの知り合いもいたからか、騒ぎは徐々に落ち着いていった。
「そうよ。
私達はあなたを助けに来たの。」
「ああ、そのカップルの依頼でな!!」
カップルの弁明に便乗し、味方アピールを行うエルムとアカリ。
「こちらはライトさん達とそのお仲間のケルベロスさん。
彼らのおかげで、また避難通路が使えるようになったんだぜ!!」
しかし町人達は未だ、状況を把握しきれず、混乱した表情を隠しきれずにいる。
とは言え、避難通路が使えるようになったのは理解したのだろう。
助かるかもしれない・・・そう思い、少しずつ喜びを露わにし始めた。
「にしても、想像以上にたくさんの人がいたなぁ。
鳥魔族の奴ら、うっかりしすぎだぜ!!」
「けどまあラッキーと言えば、ラッキーね。
私達も無駄に戦わずに済むし。」
・・・あれ?
おかしいな。
非常事態だから町人達が避難所に逃げ込む、ってのはわかる。
だけどエルムやアカリが話す通り、少し人数が多すぎる気がする。
普通の魔物と違って、鳥魔族は元人間・・・。
非常事態だと避難所に人が集まりやすい事くらい、理解していても不思議ではないはず。
なのに、こんなに町人達を見逃すなんて、どうにも不自然だ。
「っ・・・!!
皆、早く避難通路へ逃げて。急がないと危険。
ハル、ハナ、サクラ。避難誘導をお願い。」
ど、どうしたんだ。ユラ?
いつも以上に大人しいと思ったら、突然慌て出して・・・。
「「「う、うん。」」」
「俺達も手伝うよ。」
「みんな、こっちこっち!!」
ハル達とカップルが、戸惑いつつも避難所にいた人達を避難通路へと導く。
彼らも何か良からぬ予感がしたのだろう。
素直にハル達の誘導に従った。
「一体、どうしたんだ。ユラ。
そんなに焦って、らしくない。」
「レイド、皆・・・。
あ、あれ。」
・・・んなっ!!
あ、あれは!?
「ケーッケッケッケ!!!!」
鳥魔族!?
って、おいおいおいおい。
よくよく見ると、10人近くはいるじゃねえか!!
まさか避難所の周りにこんなにたくさんの鳥魔族がいたとは。
けどなんで、襲って来ないんだろう?
たった1人で町人達を皆殺しにする事だって、出来ただろうに・・・。
「これで生き残っている奴らはほぼ全員、避難所に逃げ込んだかなぁ?」
「安全だと安心していたら残念!!
避難所に逃げ込んだ奴らは全員、俺達に皆殺しにされるのでした~。
・・・キャハハ、あいつらの絶望に満ちた顔が楽しみだぜ!!」
ちょ、あの鳥魔族達!!
町人達がここへ逃げ込むのを、わざと放っておいたのか・・・。
んでもって、ほぼ全員が集まってから、一斉に皆殺しにする気だったんだ。
・・・あ、あいつら。
いくらなんでも、快楽殺人鬼としてハイレベルすぎるだろう!!
「おい、お前ら。鳥魔族がもうすぐ避難所を襲おうとしている。
早くハル達について、避難通路へ逃げるんだ。
急げ。でも焦って混乱したりすんなよ!!」
下手にパニくられると、暴動に発展する恐れもあるからな。
「ひ、ひぇええええ!!」
「大丈夫よ。
あなた達が上手く逃げ出すまで、私達が守るから。」
「す、すまない・・・。」
結構パニくってはいるが、守られている安心感からか、暴動などは起こさず避難できている。
このペースであればなんとか全員、逃げ出せそうだ。
・・・と、思っていたのだが。
「「「・・・」」」
町人達のほとんどが避難通路へ入っていったも、ザックとその他数名はどうしてかその場を動かない。
何故か俺達の方をじっと見つめている。
一体、何を考えているんだろう?
「どうしたんだ、お前ら。逃げないのか?
せっかく殿くらい、やってやるつもりだったのに・・・。
時間が無いんだ。逃げる気がないなら、先行くぜ!!」
エルムがボヤく通り、依頼を受けた以上、大人しく助かろうとする連中は可能な限り、守るつもりだ。
だがその気になれば逃げれるにも関わらず、逃げる気の無い奴の面倒まで見る余裕はない。
このままだと俺達も危ないからな!!
すぐに逃げないと・・・。
だと言うのに、ザック達は避難通路を囲み、俺達の逃亡の邪魔をする。
「ザック・・・お前なぁ。
いくら俺達が嫌いだからって、この非常時にくだらない嫌がらせはよせ!!
早く道を開けてくれ。」
「・・・かえ!!」
・・・かえ?
って、なんだ??
「戦え!!
戦って、あいつらを倒すんだ!!!!」
「そうだそうだ、ザックから聞いたぞ。
お前ら、あの化物を二体もやっつけたんだろ?
だったら他の奴らも全員、ぶっ殺してくれよ!!」
「逃げるなぁ!!
この臆病者めぇ!!!!」
なん・・・だと?
「おい、ちょっと待てよ。
俺達は町人達を助けに来ただけだ。
魔族達と殺し合いに来たんじゃねぇ!!」
「そうよ、そうよ!!
殺し合いなんか、もうごめんだわ。
ふざけた事ばっか、言わないで!!」
「・・・戦うのはまあ構わぬが、殺し合いなどお断りだ。
それに約束を強引に破ろうとする連中の命令など、聞く気になれん!!」
エルム、アカリ、レイドが難色を示すも、ザック達は一向に引こうとしない。
それどころか・・・。
「お前達はどうして、どうして俺達の想いを無視するんだ!?
家族や仲間を・・・皆殺しにされた無念を晴らしてくれないんだ?
その気になればあいつら全員、ぶっ倒せるくらい強いくせに。
なのに死にたくないだとか、人殺しは嫌だとか、そんな事ばかり言いやがって!!
戦え・・・戦って、あの化物どもを滅ぼしやがれーーーー!!!!」
・・・なんて、意味不明な事まで言いやがる。
「おい・・・ザック、お前ら。
いくら無関係だからって、そんなに旅人を犠牲にしたいのか?
そこまで他人を捨て駒にしたいのか??」
あいつらの無念がまったく理解できないわけではない。
だがそれでも『自分達の気晴らしのために、お前ら赤の他人は捨て駒になれ!!』とほざくザック達が酷く醜く思えてしまう。
「ざけんな、クソガキが!!
なんでそう、俺達を外道扱いしやがる!?
俺は、俺はただ、お前らしかあいつ達を・・・。」
「た、大変!!!!
鳥魔族が・・・ついに鳥魔族が!!」
ユラの叫びが避難所に響き渡る。
と、同時に壁が鳥魔族により次々と破壊され、襲撃者達の姿が露わとなる。
し、しまった!!
ザック達と問答していたせいで、鳥魔族が攻めてきやがった。
くそっ。
力づくでも良いから、どかしていれば・・・。
「ケケケーーーー!!!!
この町の奴らは、み~んな皆殺しだぁ!!」




