第87話 鳥魔族編③ 悪を滅ぼせ、勇者達よ!!
旅の途中、なんやかんやあってやたらと逃げ上手な鳥魔族に襲われる俺達。
相手の脅威の回避力に苦戦するも、ユラの風魔法が鳥魔族に効果抜群だったおかげで、ギリギリ勝てた。
・・・が、鳥魔族はおそらく一人だけではない。
他にも大勢いるようだ。
だから・・・。
「さあ皆、早くここから離れよう。
あんなやべぇ鳥魔族達と関わるのは危険だ!!」
俺達の目的はあくまで魔王を倒し、死の呪いから解き放たれる事だ。
無関係な戦いに巻き込まれ、死んでしまったりしたら、何のために旅を続けてきたのかわからない。
「ちょっと待てよ、お前ら!!」
ん?
あれは俺達にやたらと突っかかってきた変なヤクザ男。
まだこんな所でぼんやりしてたのかよ?
「あ~、さっきの戦いで俺達があの鳥魔族と仲間じゃないのはわかっただろ?
だったらもう、これ以上話す事なんかないはずだ。
お互い、さっさとこの町から離れた方が身のためじゃね?」
もうあいつが俺達と関わる理由なんてないんだけどなぁ・・・。
と、内心呆れていると、ヤクザ男は急にとんでもない事を言い出した。
「お前ら・・・あの化物共をぶっ倒せるほど強いんだろ?
だったら、俺達の町を襲ったあいつらを皆殺しにしてくれよ。
俺の仲間達の仇を取ってくれよ!!」
はあっ!?
「ヤダよ!!
なんで俺達が人殺しなんかしなきゃいけないんだ!?
そんなに殺し合いがしたけりゃ、お前達だけで勝手にやってろ!!」
例えあの鳥達が魔族で、快楽殺人鬼だったとしても・・・。
俺は、俺達は人殺しなんか絶対やらねぇ!!
「・・・ふ、ふざけるなぁ!!
俺じゃ、俺達じゃあいつらを倒せないから頼んでるんだろうが。」
「いやいや・・・。
人殺しなんか、暗殺者とかに頼むものじゃね。
通りすがりの旅人に頼むとか、おかしいだろ?」
そうだよなぁ、エルム。
どうしても誰かを殺したい場合、自分の手で殺すか、暗殺者辺りに依頼するのが普通だろうに・・・。
誰かをガチで殺したいって心理が普通かどうかはさておき。
「こんな状況で、あいつらを倒せる暗殺者なんか都合よく雇えるか!!
大体なんだ、さっきから人殺しは嫌だって・・・。
俺が頼んでいるのはあのしゃべる鳥・・・化物の始末だ!!」
化物て。
確かに傍から見ればあいつら、化物にしか見えないけどさ。
「あの鳥達はおそらく魔族・・・。
・・・頂上国の悪党達に改造された、元は人間だった人達よ。」
「だから私達には殺せない。」
「ちょっと待て!?
ユラって言ったな、お前。
さっき、風魔法であの鳥魔族を殺しただろうが!!」
こらこらこらこら!!
「あの鳥魔族ならまだ死んでないぞ・・・。
戦う力はもう残ってなさそうだが。」
「んなっ!?
あ・・・。」
「う・・・、ううっ。」
レイドの言う通り、さっきユラが倒した鳥魔族はまだ死んでいない。
地面を這いつくばりながら、必死で俺達から離れようとしている。
追撃を行えばおそらく息の根は止められるだろうが、当然そんな事をするつもりなどない。
「ま、待てよ・・・。
仮にあいつらが元は人間だったとしても、だ!!
勝手な理由で暴れまわるあいつらを何故殺そうとしない!?」
「んなの、決まってるじゃん。
人殺しなんて、生理的に気持ち悪くて嫌だからだよ!!」
身も蓋もないエルムの意見だが、殺人を忌避する理由なんてそんなものだ。
・・・俺達が互いに人殺しなんかして欲しくない、って考え合ってるのも大きいが。
「生理的に気持ち悪いって・・・。
そんな、そんな自分本位な理由で人殺しはヤダなんか、ほざいているのか!?
・・・お前らはどんだけ自分勝手なんだよーーーー!!!!」
「いや、自分本位な理由だったとしても、それくらいは大体の人間が考えている事だから。
ってかぶっちゃけ、殺人を強要する輩の方が自分勝手なクズだし・・・。」
ほとんどの人間は殺人なんて忌避するものだが、その大半は高潔な理由からきているものではない。
大抵は大罪だからとか、人を殺すなんて生理的に受け付けないとか、そういった動機で拒絶しているのだろう。
だがそれは人であれば至極真っ当な感情であり、何一つ間違ってなどいない。
むしろ、嫌がる人間に殺人を強要する連中こそ腐りきった外道だと思う。
そもそも誰かを裁く仕事にでも就かない限り、人を殺す権利も義務も一切発生しない。
「話を聞く限り、悪いのはどう考えても鳥魔族達の方だからさ。
あんた達が鳥魔族達に復讐するのを止める気はない、止める権利も無い・・・。
だけど俺達を巻き込まないでくれ。俺達には何も関係が無いんだから。」
俺達にとってあの鳥魔族は、ただの物騒な通り魔でしかない。
仮に俺達の誰かが殺されていれば、敵討ちに挑むかもしれないが、今の時点では全員無事だからなぁ。
むしろ変に深入りすると、不要な犠牲が出る恐れもある。
そう言い、立ち去ろうとする俺の手をヤクザ男が掴む。
ちょ、おい。
離せこら!!
「お、お前らぁ!!
あんなに強い癖に、どうして滅びゆく町を見捨てようとするんだ!?
それだけの実力があるなら、悪しき連中を討つべきだろうがぁ!!」
「なんでだよ!!
あの町は俺達の故郷じゃない、知り合いすらいない。
だからあいつらと戦う理由なんて・・・あっ!?」
「「わぁああああああああ!!!!」」
「キャーッハッハッハッ!!!!」
んなっ!?
若いカップルが鳥魔族に襲われている?
さっき戦ったのとは違う奴のようだが・・・。
「死ねぇーーーー!!!!」
「「ひゃああああああああ!!!!」」
無情にも鳥魔族の爪がカップルを切り裂こうとする直前。
「ホーリー・ナイフ!!」
「ぎゃああああああああ!!!!」
俺は咄嗟にヤクザ男の手を振りほどき、光の衝撃波を放って鳥魔族をぶっ倒す。
・・・あっ、当たった?
さっきの鳥魔族には全然攻撃が当たらなかったのに。
あいつがあのカップルを襲うのに夢中で、隙だらけだったからかもしれない。
けど、危ねぇ!!
もう少し魔法を放つのが遅ければ、あいつらは・・・。
「大丈夫か、あんた達?
・・・じゃ、ねぇ!!」
いや、なんで俺は王族の配下らしき鳥魔族をぶっ倒してんだ!?
どうして助ける理由もないカップルなんて、救おうとしたんだ!?
俺ってば、いつぞやの山賊騒動の時から全く成長していねぇ!!
「おい、そこのバカップル。何びーびー喚いてやがる!?
あんまりにも騒がしいから、間違って王の使い(?)の鳥魔族様をぶっ倒しちゃっただろうが!!
どう責任取るつもりだ、あぁ!?」
「「ひ、ひえぇ!!」」
・・・うん、我ながらちょっと酷すぎる言い草かもしれない。
しかし自分達を都合良く助けてくれる存在、などと誤解されても困る。
「またそうやって脅そうとする・・・。
お人よしの癖に。」
「・・・まあ、人助けを本気で後悔しなくなっただけ、マシになったのかもね。
それにしたって酷すぎる態度だけど。」
エルムとアカリが余計な茶々を入れる。
あのなぁ。
「だってなぁ。
あのカップルまで『強いんだから、町のために鉄砲玉として死んでこい!!』
・・・な~んて、言い出したら嫌だろ?」
「お、おい。貴様!!
その言い草はなんだ!?
まるで俺をゲスなヤクザの親玉みたいに!!」
殺人を強要している時点で、ゲスなヤクザの親玉と同じだと思うが。
「「「鉄砲玉って、拳銃の弾のこと~?」」」
「・・・違う、違う。ただの物の例えなんだけど。
まあ、ハル達は知らなくて良い言葉よ・・・。」
なお、鉄砲玉とは捨て駒前提で敵を殺しに掛かる輩の事である。
・・・ハル達も少し前までは、鉄砲玉に近い扱いを受けてたんだよなぁ。
うん。やっぱり他人を鉄砲玉扱いする奴らなんて、ただのゲスだわ。
「思う所はあるけど、旅人がよその国の王一派を殺しに掛かるなんて、絶対ダメ。
そんな事をしたら、私達の故郷に迷惑が掛かるかもしれない。」
「そうだな。
それに俺は自分で出来る事さえやろうとしない・・・。
そんな口先男の言いなりになんぞ、なるつもりはない!!」
「・・・ど、どういう意味だよ、おい。
俺があの鳥魔族から逃げ回ってるのを責めてるのか?
勝ち目の無い戦いに挑んで、死んでこいってか!?」
あんただって似たような事、俺達に言ってるじゃねぇか!!
一応、勝率0%じゃないってだけで、負けて返り討ちに合う可能性だって低くないのにさ。
「何も勝てぬ相手に突っ込んで、死ねとまでは言わない・・・。
だがせめて、同じ町の仲間くらい救おうとはしなかったのか?
自分一人だけ逃げ出したのか??」
「なっ・・・?」
「復讐どころか、同じ町の仲間すら助けようとしない・・・。
なのに、旅人相手に『町のために殺し合え』などとほざくのか!?
この愚か者め!!
貴様のような奴の言う事など、誰が聞くものか!!!!」
・・・あ~、そうだよなぁ。
俺だって、あのヤクザ男が命惜しさに逃げ出すだけなら、薄情ながらも仕方ないかとは思う。
しかし自分は逃げるだけの癖に他人には戦え、殺し合え・・・などと喚くのは薄汚いにもほどがある。
レイドの言う通り、鳥魔族を倒すのは無理でも、同じ町の仲間を逃がす手伝いくらい、出来たはずなのだから。
「お、お・・・。
お前らのような強い奴らに、俺の何がわかるってんだよぉおおおお!!」
「んな事言われても。
・・・さっ、皆。
こんなのはもう放っといて、今度こそさっさと逃げようぜ!!」
俺達は既に二体、鳥魔族を倒してるんだし、もうかなり危ない状況にある。
鳥魔族側のほとんどが俺達の事に気付いてないだけ、マシだが。
けれどこれ以上深入りすると、鳥魔族達との抗争から逃げられなくなるかもしれない・・・。
未だアカリとレイドが何かを気にしているものの、今度こそ俺達はこの場を後にしようとする。
が!!
「待って、お願い!!
お願いだから・・・。」
ん?
ヤクザ男の次は、俺がついうっかり助けてしまったカップル・・・の、女の子の方か。
「なんだよ。あんたら、まだいたんだ。
さっさと逃げれば良いのにさ。
・・・それともあんたらまで『町のために死ぬ気で殺し合え!!』な~んて、ほざく気か?」
「し、死ぬ気で殺し合えだなんて、言わない!!
でもお願いだ・・・どうか、どうか。
町の皆を助けてくれ!!」
カップルの男の方が涙ながらに懇願する。
た、助けてくれ・・・だと!?




