第78話 奴隷編⑦ 電撃の中級魔法
アカリの体から電気が発生して・・・まさか!?
中級魔法修得の前触れなのか??
「・・・って、ダメじゃん!!
アカリ、お前がケルベロス達を皆殺しにしてどうするんだ!?」
別に俺じゃなきゃ殺して良いわけじゃないんだぞ?
「ライト、アカリを信じようぜ。
あいつは奴隷を殺すために力に目覚めたんじゃない。
救うために力に目覚めたんだ!!」
「エルム・・・そうか、そうだよな。
奴隷を一番傷つけたくなかったのは、あいつだもんな。
わかったよ。」
ここはアカリを信じるしかない。
ビシッ、ビシッ・・・。
この音・・・あっ。
氷の壁が壊れる!!
バギッ!!
「「「ギャオーン!!」」」
ケルベロス達!?
まずい、まだアカリの魔法は発動していない。
「アカリの邪魔をするなぁ!!!!
ファイア・ナックル!!」
「ウインド・ダーツ!!」
「「ぎゃう!?」」
エルム、ユラ!!
そうだ。
アカリの魔法が発動するまで、俺達でアカリを守るんだ!!
「やっておしまい。
ケルベロス達!!」
「させるかぁ!!
アイス・レイピア!!」
「ひゃいん!?」
レイドもかなり体力を消耗させているが、それでも力を振り絞り、ケルベロス達の猛攻からアカリを守る。
アカリはまだか・・・あっ!?
「アイアン・ボディ!!」
アカリに向かって、一人のケルベロスが体当たりを行おうとしていた。
させるか!!
俺はアカリとケルベロスの間に入り込む。
「ぐぅおおおお・・・。」
「ライト、お前!?
・・・身を挺してアカリを。」
な・・・なんとかアカリを守れたが、さすがに効くな。
こいつらの体当たりは。
・・・お前ら!!
「いい加減にしろよ、このケルベロス!!
大人しく救われろぉーーー。」
「きゃーおぅーーー・・・。」
俺はアカリに体当たりをかまそうとしたケルベロスを全力で放り投げた。
面倒な奴らめ!!
「今よ、メガ・サンダー・ロッド!!」
どうにか時間稼ぎに成功し、ついにアカリの中級魔法が発動する!!
これは光り輝く・・・杖?
杖からは溢れんばかりの電撃が放出され、場にいる全てのケルベロスに向かって的確に流れていく!!
「「「「「「「「きゃうーーーーん!!??」」」」」」」」
電撃が命中したせいか、ケルベロス達の悲鳴が辺りに響き渡る。
ボンッ、ボンっ!!
・・・ほ、本当に大丈夫なんだろうか?
何かの爆発音まで聞こえてくるんだが。
「アカリ・・・あのぅ。」
「何、心配してるのよ。ライト。
私の魔法のコントロール力を見くびらないでよね!!」
確かにアカリは魔法のコントロール力がずば抜けている。
それは知っているが、この光景を見ると実は殺っちゃっていないか、不安になるよ・・・。
しかしそれは杞憂だったようだ。
「あ・・・あれ?
私、無事なの!?」
「痛くない、苦しくない。
・・・あ!!」
「隷属の首輪が壊れてる?
私だけじゃない、他の皆のやつも!!」
アカリの魔法で大怪我を負ったケルベロスは誰一人としていなかった。
それどころか、奴らに付けられていた隷属の首輪が全て破壊されている!!
「な、なんで隷属の首輪が破壊されてるのよ!?
中級魔法じゃ壊せないはずよ!!」
おばさん・・・じゃなくて、頂上国の王女がヒステリックに叫ぶ。
えっ、そうなの?
でも現に壊れてるんだが・・・。
「私、思い出したの。
あの時出会った人魚の話を。」
人魚の話?
「あっ、そうか。
人魚、言ってた。
隷属の首輪は電撃に弱いって。」
そう言えば、そんな事を話してたような気もする。
けどアカリもユラもよく覚えていたなぁ、そんなこと。
「ふざけないで!!
例え、隷属の首輪が壊されようが、あんた達ケルベロスは私達の奴隷よ!!
さあ、あいつらを捕まえなさい!!」
自称王女の声が聞こえたのか、ケルベロス達が俺達に向かって進んでくる。
その歩みは遅く、先ほどまでの暴力的な気配は感じないが・・・って、おいこら?
「お、お前らなぁ。
まだあんなクズ共の命令を聞いて・・・。」
「落ち着け、ライト。
・・・もうケルベロス達に敵意は無い。」
そうなのか?
レイド??
こうして話している間にも、ケルベロス達は俺達の傍へと近づいていく。
が、先ほどまでとは違い、攻撃を仕掛けてくる感じではない。
どこかちっちゃい子供がもじもじしているような感じにも見える。
「「「お姉ちゃん、お兄ちゃん達。
・・・ありがとう!!」」」
お、お礼?
「僕達を助けてくれてありがとう。」
「あたし達、ずっとあの人達に意地悪されていたの。
これでもう意地悪されないんだね!!」
「嫌な首輪を壊してくれて、ありがとう。」
嫌な首輪ってのは、隷属の首輪のことか。
ケルベロス達にお礼を言われ、エルムもユラもレイドもどこか戸惑っているようだ。
状況は理解しているのだろうが、先ほどまで死闘を繰り広げていただけに、感情の切り替えが出来ていないのだろう。
「どういたしまして。」
しかしただ一人、アカリだけは笑顔でケルベロス達に応えていた。
だよな、奴隷であるケルベロス達を一番助けたがってたのはアカリだもんな。
「あ・・・。
あの。」
ん?
ケルベロスの一人が俺に向かって声を掛けてきた。
・・・き、気まずい。
追い詰められていたとは言え、あんだけ『奴隷なんて殺しても構わない』とか叫んでたからな。俺。
他の四人に対してはまだしも、俺に対しては敵意が残っているかもしれない。
「ありがとう、お兄ちゃん。
私達を助けてくれて。」
え、ええっと・・・。
「い、いや・・・俺。
・・・お前たちにあんなに酷い事を言ったのに、さ。
怒ってないのか?」
人魚の例を見る限り、隷属の首輪が外れたとしても、記憶までは消えないはずだ。
お前らなんて死んでもいい、なんて叫ばれたら、怒って当然だろう。
「助けてくれたのに、怒るわけないじゃない。」
口調は子供っぽいのに、対応が大人すぎる!?
戸惑う俺に何人かのケルベロス達が近づいてくる。
「そりゃ、お兄ちゃんに酷いことを言われて、さ。
悲しかったよ。」
「『奴隷はな、生きてても不幸なだけなんだ。救われないんだ・・・』
って、言われたのが辛かった。
・・・僕達には良い事なんてないんだって、思って。」
うっ、そっちか。
なんか心が痛いんですけど。
「でも、お兄ちゃん・・・。
僕達のために泣いてくれた。
ボロボロになってでも、助けようとしてくれた。」
「僕達のこと、誰も救ってくれなかった。
けど、お兄ちゃん達だけは救ってくれた。
・・・本当にありがとう。」
こいつら、魔族の癖に心が広すぎやしないだろうか?
それに俺は奴隷を殺したくなかっただけだ。
自分から救おうとしたわけではない。
成り行きでこんな結果になっただけである。
けどまあ。
俺は近寄ってくるケルベロス達を撫でながら、返事をする。
「・・・良かったな、奴隷から解放されて。
お前達はもう自由だ!!」
「「「うんっ!!」」」
こいつらは魔族にされたわけだし、前の生活には戻れないかもしれない。
しかしあいつらから解放されただけでも、少しは救われたはずだ。
ケルベロス達は俺達にお礼を言った後、どこかに向かって歩き始める。
そして。
「「「「「「「「ぐるるるる・・・。」」」」」」」」
一斉にうなり声をあげた。
・・・あぁ、なるほど。
頂上国の連中に逆襲しようとしているのか。
「な、なによ。その態度?
私達に仕返ししようって言うの??
今までの恩を忘れて!!」
あの王女、あいつらの居場所奪って、魔族に改造しておきながら・・・。
それで恩なんて感じるとでも思ってるのだろうか?
「みみみ・・・見くびるなよ。
わ、我々にはまだ秘密兵器があるんだ!!
人の遺伝子は含まれていないが、それでもお前達よりずっと強いんだぞ。」
秘密兵器・・・って、あの悍ましいキメラか。
確かにパワーだけなら、ケルベロス達をも上回るかもしれない。
けれど一体でこれだけ大勢のケルベロスから主人を守れるとは思えない。
例えあのキメラに敵わずとも、隙を見て頂上国の連中に攻撃するくらいは余裕だろう。
「あいつらに復讐・・・するのか。
止めはしないけど、無理すんなよ。」
「「「うんっ!!」」」
「止めなさいよ、バカなのあんた!!
ケダモノが人間様を襲おうとしているのよ!?」
王女がなんか叫ぶが、ケルベロス達よりもあいつらの方がケダモノではないだろうか?
人格的に。
大体、ケルベロス達に襲われるのは完全にあいつらの自業自得だ。
止めるつもりなんてこれっぽっちもない。
「「「「「「「「ギャオーン!!」」」」」」」」
ケルベロス達が怒りに満ちた叫びをあげながら、頂上国の連中に襲い掛かる!!
「ひっ、ひぃ・・・ん?」
「!!??」
しかしその最中、ケルベロス達は次々と倒れていった。
攻撃を受けていないにも関わらず。
えっ?




