第72話 奴隷編① 奴隷との遭遇
今話からしばらくはなろう系では定番の奴隷ネタです。
可愛い(?)女の子の奴隷達も後々登場する予定です。
俺の名はライト。
不本意ながら、勇者の子供だ。
今は仲間と共に魔王討伐の旅を続けている。
だが魔王の住む魔大陸へ行くには、不死鳥を復活させ、空から向かう他無い。
そして不死鳥の復活には、不死鳥の宝玉と言うアイテムが4つ必要だ。
ってなわけで、不死鳥の宝玉の手掛かりを求め、幻影城へと足を進めていた・・・。
********
ダイチと別れ、竜の山を下り、歩く事しばし。
「グゲ、グゲゲゲゲ!!」
あ、あれは!!
「ホブゴブリン。
一匹だけいるなんて珍しい。」
ホブゴブリンは端的に言えば、強くなったゴブリンの事である。
しかし大抵は徒党を組んで行動しており、一体だけでいるのは珍しい。
「グゲーーーー!!」
5VS1にも関わらず、獰猛な表情でこちらに迫って来るホブゴブリン。
・・・俺達が子供だからと、侮っているのかもしれない。
「今回は私に任せて!!
サンダー・スティック!!」
アカリがホブゴブリンに向かって、雷の魔法を解き放つ。
「グゲ!?
グギャウ!!」
少し距離があったためか、ホブゴブリンは横へ飛び、雷の魔法を回避する。
あいつの魔法はパワー、スピードに関しては、俺達よりもちょっと弱いからな。
だが・・・。
「えい!!」
アカリは雷の軌道をホブゴブリンが回避した先へと変える。
攻撃を避けたと油断したホブゴブリンはもう逃げられない!!
「グギャ?
グギャウゥウウウウウウウウ!!!!」
そう、アカリは魔法のコントロール力がずば抜けている。
途中で雷の軌道を変える程度は造作もない。
それに少しパワーが弱いと言っても、それはあくまで俺達の中では、の話。
ホブゴブリンくらいなら一撃で倒せる程度の攻撃力はある。
「ほう・・・。
やはりアカリは魔法のコントロール力に長けているな。」
「だな。同じ魔法でも誰が使うかで結構違うよな。」
例えばの話、エルムの魔法は接近戦に特に強い。
アカリの場合はさっきの通り、魔法のコントロール力が非常に高い。
ユラの魔法は俺達の中でも最速で遠距離戦に強い。
レイドの氷魔法は特に応用が利き、サポートに長けている。
など。
あれ・・・?
なんか俺の魔法だけ特徴が無いような。
・・・うん、気にしたら負けか。
こんな感じで俺達は旅を続けていた。
********
そして久しぶりに人間の住む村へと到着した。
だが・・・。
「農村・・・みたいだけど、あそこにある建物はなんだろう?」
「無駄にデカいなぁ。
違和感しかねぇ。」
一見すると普通の農村だが、遠目でもわかるくらい大きな建物が建っている。
村長の住処とかか?
いや、それにしたって大きすぎる。
ここも果物村みたいなヤバい場所だったりするのかなぁ。
この大陸、変に治安が悪いし。
一応、危ない村人とかがいないかを観察してみる。
とりあえず、飢え死にしそうなくらい追い詰められている村人はいないっぽい。
田畑などが荒らされているようにも見えない。
が、村人達は疲れ切った様子で皆、死んだ魚のような目をしていた。
そして。
「なんだ、あいつら?
妙な首輪付けてるぞ??」
「・・・!!
あれは隷属の首輪!!」
隷属の首輪?
聞いた事のある名前だ。
「人を奴隷として操る事ができる外道アイテム。
中級魔法の使い手でさえ、支配するほどの力がある。」
ユラが淡々と、けれどどこか気に食わなさそうに語る。
隷属の首輪なんてものを使う人間に嫌悪感を持っているのかもしれない。
しかし中級魔法の使い手でさえ、支配するかーーー。
それって、俺達にとってもヤバいアイテムなんじゃね?
でもどっかの魔族が何かに凄く弱いって、言ってたような・・・。
何に弱かったんだっけ?
思い出せない。
「そ、そんな。
なんて酷い物を・・・。」
アカリがとても痛ましそうな声で呟く。
ユラ曰く、隷属の首輪は神人族によって作り出されたアイテムで、今となってはロストテクノロジーとなっている模様。
だが頂上国には隷属の首輪が大量にストックされていたらしく、自分達よりはるかに強い魔族もこれで操っていたと言われている。
隷属の首輪を付けられた者は、所有者の命令に決して逆らえなくなる。
ただし命令以上の成果を期待する事は出来ない。
あと命令内容に矛盾が生じた場合、後に命令された内容が優先されるようだ。
扱いを間違えるとあっさり暴走してしまうため、上手く扱うにはそれなりの慣れも必要となる。
・・・どっちにしろ、ヤなアイテムではあるが。
「ううむ。
見ていて、あまり気分の良いものでは無いな。」
「だな。よしっ、この村に関わるのは止めておこう。
おかしな事に巻き込まれる前にさっさと離れようぜ!!」
こうして俺、エルム、ユラ、レイドは村を後にしようとするのだが・・・。
「ちょっと待ってよ!!
奴隷として苦しめられている人を放っておくの!?
可哀想じゃない、助けてあげましょうよ!!」
おいおい、アカリのやつ。
感情的になりすぎて、常識がすっぽ抜けてるな。
・・・普段はしっかりしてる癖にこういう場面に出くわすと熱くなるからなぁ、あいつ。
「何言ってんだよ、アカリ。
奴隷を助けるなんて、悪行でしかないんだぞ?」
「えええっ!??」
衝撃受けすぎだろ、お前。
少しフリーズするも、徐々に怒気をはらませていくアカリ。
「ライト!!
あなたまさか、面倒事に関わりたくないから、そんな事を言うの?」
「それもかなりあるけど、大事なのはそこじゃない。
奴隷はな、誰かの所有物として扱われている。
勝手に助けるのは、犯罪なんだからな!!
・・・知らなかったのかよ、アカリ?」
「・・・・・・・・・・・・あっ!?」
アカリの奴、感情的になりすぎて、そこまで気が回らなかったのか。
そう。
この世界では奴隷制度が認められており、勝手に助けたりすると犯罪者扱いされてしまう。
だからこそ、俺が村から離れようと言った時、エルム達は一切反対しなかったわけで。
「俺達の故郷である光大陸でも、奴隷っているらしいからなぁ。
貧しくて食っていけないからって、親が子供を物みたいに売るんだってよ。
俺達の周りでは見かけなかったけど。」
「武術大陸でも大きな借金を負った者や、犯罪者などが奴隷として扱われる事がある。
そんな奴等を助けるともちろん、罰せられる。」
さすがに借金や犯罪なんかが理由で奴隷に落ちるのは自業自得でしかない。
が、無力な子供が非も無いのに売られるとかは無情で残酷な話だ。
・・・しかしそこにはやむを得ない事情がある事も多く、だからこそ始末に負えない。
「でもあの村の連中、なんで奴隷として扱われているんだろう?
借金や犯罪が原因、って風にも見えないけど。」
「・・・暴力で他人を強引に奴隷にする人達だっている。
戦争に負けたせいで、敗戦国の人達が奴隷にされる事だってある。」
なるほど。
端的に言えば、侵略ついでにタダで使える人材Getってわけね。
世の中ってえげつないよなぁ。
「・・・なんで世界はそんな非道を許しているの?
どうして奴隷制度なんか認めているの!?」
バカだなぁ、アカリは。
そんな事もわからないのかよ。
「決まってるじゃないか。
権力だけはある醜い豚どもが楽して肥え太るためさ!!」
「あのなぁ、ライト。
そんな発言をしたら、奴隷制度が大好きな人達から怒られるぞ!?」
いや、奴隷制度が大好きな奴なんて・・・。
・・・たくさんいるから、世の中には奴隷制度が存在するのか。
「なんだよ、エルム。
俺の言ってる事、間違ってるか?」
「それは・・・・・・あれっ?
別に間違ってないかも??」
「お前らなぁ。
気持ちはわからんでもないが。」
奴隷制度なんてクズ共が他人を使い捨ての道具として扱いたいから、生まれたんだと思うが。
「ライト達の意見も一理あるけど、奴隷制度はそんな単純な話じゃない。
もっと複雑。」
「?
どういう意味だ!?」
「それはね・・・。」
ユラの話によると一言で奴隷と言っても、扱われ方にはいくつかのケースがある。
例えばの話、家畜以下の扱いを受ける事もあれば、普通に働くのとほぼ同じと言うケースもありうる。
先ほど話した通り、奴隷となる経緯も色々なパターンが存在する。
借金や犯罪など、自業自得な理由である場合もあれば。
親が子を奴隷として売ったり、戦争などの暴力が原因で奴隷となる人もいる。
・・・そして誰かを奴隷にしなければ。
奴隷に成り下がらなければ・・・。
生きていけない人達だっている。
奴隷ってのは、世界の変えようが無い歪み、救われない部分なのかもしれないな。
「それにもし奴隷を助けたところで、彼らに居場所なんて無い事の方が多い。
助けた奴隷の一生を背負う覚悟がないと、殺してしまうのと同じ。」
「う、うう・・・。」
ユラの手厳しい意見だが、内容そのものは完璧に正論である。
いくら可哀想だとしても、奴隷なんて旅人がその場のノリで助けられる代物ではない。
「・・・諦めろ、アカリ。
いくら可哀想でも、俺達に奴隷を助ける力なんてないんだ・・・。」
だいたい俺達は自分自身だって、助けられるかどうか怪しいのだ。
魔王の呪いのせいで、明日死ぬかもしれない命だしな。
「・・・。」
俺達の言葉を受け、暗い表情で俯くアカリ。
理屈では理解しているのだろうが、感情がどうしても受け入れてくれないのだろう。
「それにしても、闇大陸の奴隷には隷属の首輪が使われているのだな。
武術大陸の奴隷でそんな物を使われてる奴はいなかった。」
重くなった空気を払拭したいからか、珍しくレイドが話題を変える。
「光大陸でも奴隷に隷属の首輪が使われてるなんて話は聞かねーや。」
「そうね。あれ、じゃあここの人達・・・。
!! まずい、早くここから離れないと!!」
ユ、ユラ?
どうしたんだ急に!?
いつも俺が言っているような台詞を吐いて。
「子供・・・嫌っ!!
で、でも。」
「この村に来た者は皆、捕まえなければならない。
あの方達に差し出すために・・・。」
「・・・わしらはあの方達の忠実な奴隷。
逆らう事は許されないのじゃ。」
周りを見渡すと、いつの間にか大勢の村人達が凶器を片手に取り囲んでいた!!
またかよ!?
「やべぇ!?
ってかこの大陸の連中、野蛮すぎるだろ!!」
闇大陸の連中は、不意を突いて誰かを囲むのが上手いな。
俺達が迂闊なんかもしれんけど・・・。
「しかし自ら奴隷狩りを望んでいるようには見えぬ。
・・・これが隷属の首輪の力なのか?」
「隷属の首輪を付けられたら最後、決して主人には逆らえなくなる。
反抗すると首輪の力で罰を与えられて、死ぬ事だってある・・・。」
うわぁ、なんてロクでもない首輪。
そんな話をしている間にもじわりじわりと近寄ってくる村人達。
正直、以前出会った果物村の連中以上に可哀そうな奴らだ。
あいつらは曲がりなりにも自分の意志で誰かに危害を加えていたが、こいつらは完璧に被害者なのだから。
だけど・・・。
「俺達は黙ってあんたらに捕まるわけにはいかない。
悪いが、思いっきり抵抗させてもらうからな!!」




