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第5話 序章⑤ 始めの終わり

「ねえ聞いてよ、お姉さん。

 あのクズじじぃが盾にするせいで俺、オーガのハンマーに潰されて死ぬ所だったんだ。

 思い出しただけでも腹が立つ。」


「はいはい、愚痴るのはその辺にしなさい。

 それよりも喋るオーガの事なんだけど・・・。」


今日、俺達は喋るオーガに襲われた事を冒険者ギルドのお姉さんに話していた。

このお姉さんとは俺達が子供の頃からの付き合いになる。

たまに面倒そうにされる事はあるが、困った時は親身になって助けてくれる良い人だ。


「でさー、ライトの奴、しゃべるオーガ相手にすっげービビってさ。

 逃げよう、逃げようって必死で・・・ったく、情けねー奴だよな。」


「あはは、ライト兄ちゃん。情けなーい。」


「わー、ヘタレー。」


俺とお姉さんが話している側で、エルムが近所のガキ達に俺の悪口を吹き込んでいた。

この小さな町では冒険者に憧れるガキ達が、たまり場のようにギルドにやって来る。

今、エルム達と話しているガキ達も顔馴染みで、狩りの話なんかをせがまれる事も多い。


それはともかくエルムの野郎、ここぞとばかりに馬鹿にしやがって・・・。

イラっと来たのでガキ達の方を向いて軽く睨むと、奴等は笑いながらギルドから逃げて行った。


「エルムてめぇ、お前はあのオーガと出会わなかったからそんな事が言えるんだ。

 お前だって実際に会ったら、きっと震えて動けなくなるに決まってるさ。」


「んなわけねーだろ。大体お前、女のハジメよりもビビってたじゃねーか。

 同じ男として恥ずかしくなるぜ。」


う、うぜぇ。

そもそもエルムよりハジメの方がメンタル強ぇじゃねーか。


「まあ、怪しいおじさんの事はよくわからないけど、オーガがこの町の近くまで来ているのは心配ね。

 最近、山賊とオーガ達魔物が手を組んで、悪事を働いてるって噂だから・・・。

 太陽城下町の近くでも頻繁に目撃されているようだし、不安だわ。」


「えー。山賊とは言え、人間と魔物が手を組むなんてありえるの?」


魔物は簡単に言えば、賢いが凶暴な野生動物のような存在だ。

人を慕う事などまずありえない。

ましてや人間と組んで悪事を働くなど、前例の無い事である。


ただ・・・。


「んー・・・、私達と出会ったオーガは喋れたし、会話も出来たわ。

 だから人間と手を組むってのもありえるんじゃない?」


だよなぁ。


けどあのオーガ、山賊だったのか・・・。

あのクズじじぃの復讐?にばかり拘ってたから、その発想は無かった。


「おっ、最近流行りの山賊について話してるのか?

 俺も混ぜてくれよ。」


「あ、エリトさん。」


エリトさんは俺達の先輩とも言える人で、魔法無しだと俺達でも敵わないくらいには強い。

この人にも何かと世話になってるが、たまに厄介事に巻き込んで迷惑を掛けてくる。


・・・良い人だとは思うが、困った先輩でもあるんだよなぁ。


「ライト達が森の中で喋るオーガと出会ったって言うのよ。

 しかもそのオーガ、アース・ハンマーって魔法まで使ったそうよ。」


「魔法が使えるだと!!

 ・・・太陽城下町で山賊対策の警護依頼を受けたのはマズかったかなぁ。

 だが、お偉いさんとは顔を繋いでおきたいしな・・・。」


そう言えばギルドの依頼、やけに太陽城下町の警護依頼が目立ってたけど、山賊対策だったんだ。

・・・いくらなんでも国より山賊達の方が強いなんて事、無いだろうけど。


「まっ、いくら山賊でも堂々と城や城下町を襲ったりなんてしないか。

 じゃあ、太陽城下町へ行ってくるよ。またな、皆。」


エリトさんは俺達のように魔物狩りをメインにしている訳ではなく、こういった依頼を受け、活躍している人だ。

この大陸では結構人気があり、知名度が高い。


「山賊対策の警護依頼かー・・・。

 なあ、皆。せっかくだから受けてみないか?」


「断る!! もうあんな危ない連中に関わるのはゴメンだっつーの。」


「なんだよ、ツレねぇなあ。

 そんなんだからガキ達からヘタレなんて言われるんだぞ。」


「お前が余計な事を吹き込むからだろうが!!」


エルムの奴、調子乗りやがって。

ちょっと不気味な夢見たくらいで怯えまくる豆腐メンタルの癖に・・・。


「まあまあ、喧嘩しないの。もう日が暮れるし、そろそろ家に帰りましょ。

 明日はどうする? 狩りを再開する?」


あのオーガの事件以来、念のため俺達は狩りを休んでいた。

少しくらい働かなくても、問題無い程度には稼いでるしな。

けどまあ・・・。


「もうそろそろ大丈夫だろ。

 明日からは狩りを再開しようぜ。」


「わかったわ。それに何かあっても大丈夫よ。

 ライトが・・・皆が一緒なんだから。」


エルムと違って、ハジメは良い奴だなぁ。



そして、俺達は冒険者ギルドを後にした。

早く帰って休んで、明日からまた狩りをスタートだ。


ヤバい事件が起きるかも・・・って不安はある。

だけどハジメ達と力を合わせれば、どんな壁だって乗り越えられる。

そんな気がするんだ。





ドサッ。





え。





「おい、ハジメ。こんな何にも無い所でコケてんじゃねえよ。

 相変わらずボンヤリしてるなぁお前は・・・おい、ハジメ?」


エルムが声を掛けるも、ハジメは何の反応も示さない。


「どうしたのハジメ・・・?

 !! なんて冷たいの・・・息もしていない。

 なんで、どうして!?」


冷たい? 息をしてない?

そ・・・そんな訳ないだろ??

ちょっとコケたくらいでそんな事になる訳ないだろ???


「ハジメ、ハジメ!! どうして、返事してくれないんだ?

 なあ、なんか喋ってくれよ・・・・・・なあ!!」



俺達は突然動かなくなったハジメを抱え、全力へ医者の元へと連れて行った。

だがハジメが目を覚ます事は二度と無かった・・・。


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