第60話 第7の子供編⑥ 少年の隠し事
竜の山でたまたま出会った勇者の子供、ダイチは魔王退治にめちゃくちゃ否定的だった。
・・・否定的すぎて怪しいと思った俺達は、彼が何を隠しているか探る事にした。
「ダイチの奴、どこかへ出かけるみたいだな。」
「今がチャンスね。
戻ってくる前に小屋の中を調べましょう。」
待つ事しばし。
ダイチが外に出掛けにいったみたいなので、その隙に再度、小屋の中へと入る俺達。
ちなみに鍵は掛かっていなかった。
そう言えば、さっきも扉に鍵が掛かってなかったみたいだな。
・・・まあ、人間なんてほぼ皆無、むしろ隣人は魔物みたいな状況じゃ、扉に鍵掛ける意味なんて無いだろうけど。
しかしこの小屋、理由はよくわからんけど、動物も魔物も近づきたがらないんだよな。
何をそんなに警戒しているのか、小屋の何かに勘付いて脱皮の如く逃げ出してしまう。
やっぱりなんか怪しいなぁ。
だが・・・。
「1階で特に変わった所は無いようね。」
「ただ、植物やら本やらが多いのは少し気になる。
薬の研究でもしてるとか?」
まあダイチって、そういうのが好きそうな感じではあるけど・・・。
「考えて込んでも仕方なかろう。
とりあえず、2階へ上がってみるぞ。」
ってな訳で、2階へ上がってみたが、廊下にはこれと言って珍しいものは見当たらない。
部屋の数も多くないし、とても凄い秘密が隠されているようには見えない。
「じゃあ、最初はこの部屋の中を調べてみようぜ。
何があるかな~?」
と、エルムが気楽な感じに、階段を上がってすぐの部屋を開ける。
「どれどれ~・・・?
!!!!
な、何者だ!?
お前??」
???
何?
誰かいるの??
「えっ、誰かいるの?
・・・でも『何者だ!?』はないんじゃない、エルム。
私達の方が部外者なのよ。」
部外者というか、侵入者というか・・・。
どっちにしろ、家の主に対してその態度は失礼すぎるよなぁ。
「い、いや。そうは言うけどなぁ、アカリ。
ほら、部屋の奥にあるあのベッド・・・見て見ろよ?」
戸惑った表情で、部屋の奥を指さすエルム。
こいつがこれほど動揺するのも珍しい。
何を見たんだろう?
「あなたねぇ。
ごめんなさい、私達怪しいものぉおおおお!?」
「!!??」
「ま、まさかこいつは・・・?」
エルムに続き、アカリ達まで騒ぎ出す。
どうしたんだよ?
なんで誰かがいただけで、そこまで驚・・・・・・・・・・・・いて、当たり前だった!!!!
「・・・あなた達、誰?」
声を聞く限りは、儚い女性のような感じだが、その姿はあきらかに普通の人間ではない。
葉っぱのような色をした髪、肌は薄茶色な上に肉感が無く、植物の茎のよう・・・。
まるで人間と植物のモンスターを足して2で割ったかのような姿である。
・・・顔立ちこそ美しいが、おそらくは。
「魔族・・・なのか?」
「!! 光の・・・剣士さん?
私、あれから誰を傷つけたりしてないよ?」
そして何故か、俺の事を光の剣士扱いする魔族。
確かに俺は光の剣を使って戦う事もあるが・・・。
「おい、ライト。
お前、この魔族と知り合いなのか?」
「んな訳ないだろ。
初対面に決まってるじゃん。」
「・・・あ。光の剣士さんと出会ったのは、10年以上も前。
しかももっと大人びてた・・・。
あなたがあの時の光の剣士さんのはず、ないよね。」
どうやら10年以上前に出会った、俺によく似た誰かと間違えたらしい。
天然だなぁ。
でも一体、誰だったんだろうか?
「う~ん、ライトのそっくりさんの事も気になるけどさ。
それよりなんで、ダイチの小屋で魔族が寝てるんだ?」
少なくとも、俺達が来る前から2階にいたと思われるが。
それにこの部屋、主が元気無さそうな魔族のわりに掃除が行き届いているようだ。
また、ベッドの近くには空になった皿やら薬の瓶やらが置いてある。
・・・ストレートに考えるのであれば。
「ダイチが病気の魔族を看病している?」
ユラと同じ結論になるよなぁ。
だけど勇者の子供が魔族を看病するなんて、違和感しかない。
ダイチの奴、この魔族を利用して何かを企んでいる?
「病気とは少し違うけど、確かに看病されているようなものね。
・・・ダイチには本当に申し訳ないわ。」
しかし、魔族は心の底からダイチに申し訳なさそうにしている。
そんな態度を取られると、利害で繋がった関係に見えなくなってしまう。
「あれ・・・まさかダイチの奴!!
この魔族を守るために『魔王を倒すなんてゆ〝る〝さ〝ん〝』って態度だったのか!?」
「魔族は魔王の仲間。
だから魔王を倒そうとする私達は、魔族達も滅ぼそうとしている。
・・・って、判断したって事!?」
ちょ、なんだよその理屈?
そんな事を話していると、さっきまで落ち着いていた魔族が急に狼狽え始める。
その目線は俺達の手に記された星マークの方を向いていた。
「あなた達!!
もしかしてダイチと同じ、勇者の子供達?
魔族である私を殺しに・・・来たの?」
やや怯えながらも、諦観した表情で問う魔族。
あれ、この魔族も勇者の子供の事を知っている?
「ふむ、お前からはかなりのパワーを感じる。
だから是非、戦いを挑みたいところだ。
・・・が、これほど弱っていてはな。戦う気になどなれぬ。」
「ええっ?
弱ってるから戦いたくないって、意味がわからない・・・。
普通、逆じゃないの!?」
そりゃ単に魔族を殺すだけなら、弱ってる所を狙う方が効率的だもんなぁ。
って、そうじゃなくて!!
「こら、そこのアホ脳筋!!
急に変な事、言うんじゃねえよ。
魔族が困ってるだろうが!?」
俺は良くも悪くもブレないレイドに文句を言う。
・・・問答無用で襲い掛からないだけ、まだマシだが。
「あなた達は一体、何しに来たの?
私を攻撃する気は無いの??」
「いや、俺達は別に・・・。」
「ふぅ、やっと調合が終わった。
さあ、フラウ。
薬草が出来た・・・よ・・・・・・?」
なな、この声はダイチ!?
まずい、もう帰って来たのか!!
パサッ。
俺達に気付いたダイチの手から、出来上がった薬草が落ちる。
「わ、わああああああああ!!
フラウ、フラウーーーー!!!!」
俺達を押しのけ、魔族・・・フラウの元へと駆け寄るダイチ。
「お、落ち着いて。ダイチ。
私はまだ何もされてないわ。」
「よ、良かった。
い、いや。
安心している場合じゃない!!」
フラウの無事を確認したダイチは、敵意を剥き出しにし、俺達を睨みつける!!
「お前達・・・魔族であるフラウを殺す気なんだな!?
そんな事はさせない、フラウには指一本触れさせない!!
例え、刺し違えたとしても、フラウは僕が守るんだ!!!!」




