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第4話 序章④ 1日の終わり

「ブレイブチルドレン・・・選ばれし勇者の子供達よ。

 お前達は魔王や魔族達を滅ぼすために生まれて来たのだ。

 さあ、今こそ使命を果たせ。我らを・・・世界を救うために戦うのだ!!」





・・・・・・・・・・・・。





「た、大変。あのおじさん・・・急におかしな事を言い出したわ。

 オーガさんに襲われたショックで、頭が狂ったのかも。

 早くお医者さんに診てもらわないと。」


「おいおい何言ってんだよ、ハジメ。あんな冗談真に受けちゃって。

 多分、宗教の勧誘とかだろ。俺達を騙して金でも巻き上げたいんじゃね?」


そりゃ急にあんな事言われても、妄言か詐欺だと思うわな。

・・・ブレイブチルドレンって単語だけは気になるけど。


「貴様ら。ふざけた事を言うな。真面目に聞かんか!!」


「いや・・・真面目に聞いたから、妄言か詐欺だって感じたんだけど。」


こんな話、鵜呑みにする奴がいたらそっちの方が問題だろうに。



「あのー・・・皆。一応、勇者や魔王、魔族って実在するらしいわよ?」



「「「え、本当!?」」」


おいおい、いきなり何言い出すんだアカリ。

あのクズじじぃが気の毒になって、話を合わせたのか?


「えーと、ここから遥か遠い場所に魔大陸って言う、戦争ばっかしている大陸があってね。

 その中でもとっても強いけどとっても醜い人達ばかりいる頂上国って国が、魔王や魔族を作り出したそうよ。

 けど制御に失敗しちゃったせいで、頂上国どころか魔大陸そのものが滅びそうになったの。


 だけどどこからか勇者が現れて、暴走する魔王達を成敗したんだってさ。

 おかげで魔大陸に一時の平和が訪れた・・・それなりに有名な話よ。」


その話だったら、俺も聞いた事ある。けど・・・。


「でもアカリ。それって子供向けのおとぎ話だろ?」


「そうとも言い切れないわ。今でも魔大陸は荒れ果てていて、誰も近づこうとしない程なんだから。

 まあそれでも、魔大陸の人達と私達に関係なんてあるはずないんだけどね。

 だからハジメやエルムの言う通り、あのおじさんの話は妄言か詐欺目的の嘘だと思うわ。」


結局、アカリもあのクズじじぃの話を信じていないんだな。

まあ、通りすがりの人間が実は勇者の子供達だなんて、無理ありすぎるしなぁ。


「何を言っておるか。下級とは言え魔族と渡り合える強さ。

 そして何より手の甲の星マーク・・・それこそが勇者の子供の証なのだ!!」


手の甲の星マークねぇ。

確かに俺達4人全員の特徴だけど、なんかガキ臭い感じがして嫌い。

けどいくら頑張っても消せやしねぇから困ったものだ。


「いや、勇者達の話はともかく、勇者の子供の特徴なんて聞いた事ないわよ。

 大体、勇者の子供が実在するなんて記録もないわ。」


「・・・そもそも、もし何かの間違いであのおじさんの話が全部本当だったとして、さ。

 私は魔王や魔族達と戦いたくないわ。だって何もされてないんですもの。」


なるほど。争いの嫌いなハジメらしい意見だ。

俺も同意見だけど。なんで何にもされてないのに殺し合わなきゃいけないんだか。


「私も嫌・・・勇者とか魔王とかって言葉聞くと、奇妙な研究所の夢を思い出すの。

 酷く汚い声で『使命を果たせ』とか、『魔王達を倒せ』とかって言われ続ける夢。とっても気持ち悪いのよ。」


うわぁ・・・なんて嫌な夢。

しかし、アカリまで研究所の夢を見てたなんて。


あれ? エルム、滅茶苦茶青ざめてるな。

・・・悪夢を見たなんて話くらいで怯えるなんて珍しい。


「それくらいまだマシじゃねーか。俺もたまに不気味な研究所の夢を見るんだけどさ。

 いつも数え切れないほどの赤子の死体が出てくるんだ。吐き気がするぜ・・・。」


「ヒィ・・・ちょっと止めてよ。私まで夢に見そう。」


「あらあら、私とライトだけじゃなくて、エルムやアカリも研究所の夢を見るんだ。

 ・・・私達って、実は呪われてる?」


「一度、お祓いにでも行った方が良いかもな。

 武術大陸って所にお祓いで有名な人がいるらしいぞ。旅行ついでに会いに行かないか?」


「お、それ良い考え。俺達ってまだ、この大陸から出た事無いしさ。

 たまには他の大陸へ遊びに行こうぜ。」


「き、貴様ら・・・いい加減にせんか!!

 何が詐欺だ、妄言だ、醜い人達だ、気持ち悪いだ、吐き気がするだ?

 バカにするのも大概にしろ、名誉ある使命を誇りに思わんのか!?」


あ、夢の話に夢中でクズじじぃの事忘れてた。


ってか、あんたみたいな不審者の命令聞くののどこが名誉なんだ?

そもそもさ・・・。


「そんなに魔王達を倒したいなら、自分の力で戦えば?」


「ふざけるな。何故私がそのような事をせねばならぬのだ!?」


えー・・・他人には戦えとか言っときながら、自分が戦うのは嫌なのかよ。

そりゃまあ、下級魔族?からも逃げ回っていた奴が魔王を倒せる訳無いけど。


「自分で戦えないなら、冒険者ギルドに依頼した方が良いんじゃね?

 報酬が良ければ、引き受ける物好きも出てくるだろ。」


あっ、その手があったか。エルムの言う通りだ。

信用してもらえるかはさておき、本当に魔王や魔族がいてそれをどうにかしたいなら、一番現実的な方法だと思う。

しかし・・・。


「この愚か者め、金目当ての者共に名誉ある使命が務まるか。

 そもそも正義のための戦いに金を要求しようなど、恥を知れ!!」


うわぁ。なんて暴言。

偉そうな言い方してるけど、つまり・・・。


「要は金払うの嫌だから、タダでヤバい連中と戦って来いって事ね。

 他人を奴隷とでも思ってんのかよ、やっぱこいつクズだな。」


ロクな報酬もなく他人をコキ使おうなんて、金の亡者よりも悪質だろ!!

ったく。


「全くライトったら・・・あんまりムキにならないの。

 正直、あのおじさんの言う事は滅茶苦茶すぎるわ。

 もう相手にせず、放っておきましょう。」


「アカリの言う通りだ。

 人には魔王達を倒せと言う。でも自分で戦うどころか、金払って依頼するのも嫌・・・。

 どんだけやる気ねーんだよ。」


「あー、あー・・・信じてあげたいのは山々だけど、ちょっと、ね。

 残念だけど、魔王討伐の依頼は他を当たってくれない?」


アカリもエルムもハジメも、そして俺も完全に魔王達を倒す気なんて失せていた。

・・・元々無いとも言う。

まっ、こんなクズじじぃなんて無視して、さっさと帰るか。


「なんだその物言いは。悪い風にばかり解釈しよってからに!!

 っておい、どこへ行く気だ。まだ話は終わっとらんわ。」


帰ろうとする俺達を追い掛けてくるクズじじぃ。

困ったな。こんな奴に俺達の住所知られても、百害あって一利なしだ。

早く撒かないと・・・。



「「ブモ―!!」」



あの声はビックボアー。しかも2匹。なんで急に・・・。

今まであのオーガにビビって隠れてたとか?


俺達とクズじじぃの間に割り込むような形で姿を現したビックボアーは、俺達とクズじじぃを観察した後、クズじじぃへと襲い掛かった。

俺達よりもあのクズじじぃの方が安全に狩れると判断したらしい。


「ビ、ビックボアー。なんで急に。

 おい待てお前達、早く私を助けんか・・・ひぃぃ。」


あのクズじじぃ視点では、ビックボアーの先に俺達がいるせいで、あの時のように盾にする事も出来ないようだ。

これはチャンス。


「よし、今の内にあいつを撒こう。家まで着いて来られると厄介だ。」


「ちょっとライト・・・撒くのは良いにしても、あのまま放置するのは酷くない?」


「何言ってんだアカリ、あいつは人を盾にするような奴なんだ。

 下手に助けようとすると、大怪我するぞ!!」


「あらあらライトったら、盾にされた事まだ怒ってたのね。」


「普通は怒ると思うぞ。」


それに一応あいつ、あのしゃべるオーガからさえ逃げ切れたんだ。

ビックボアーから逃げるくらい、楽勝だろう。





こうして俺達はクズじじぃ・・・もとい不審者を撒いて、家に帰る事に成功した。

今日はとんでもない1日だった・・・。


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読んで頂き、ありがとうございました。

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