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第52話 果物村編⑤ 恐ろしい光?

今回のライト君は「これだからなろう系主人公は・・・。」と言われそうな事をやりますw

「ふざけるなぁああああああああ!!!!」





村人を騙るゾンビ共のあんまりな姿を前に、とうとう俺は全力で叫んだ。


「「「ひ、ひぃ!?」」」


「・・・ライト?」


俺は怒りに満ちた表情を作り、村長に問い掛ける。


「勇者様、お助け下さい・・・だって?

 舐めんじゃねえよ、このゾンビ共が!!」


「だ、だからわしらはゾンビなどでは・・・。」


「へぇ?

 強盗殺人未遂に盗み食い、挙句の果てには一方的に村を救えと脅迫・・・。

 普通の人間はそんな事やらないよなぁ?

 お前達のやってる事は最初から最後まで、生者を喰らうゾンビと同じレベルだよなぁ??」


・・・改めてまとめると、事情があるとは言え、こいつらの行為がロクでもなさすぎる。

それでも盗み食いや脅迫辺りはまだマシだが、強盗殺人未遂はいくらなんでも人としてOUTなんじゃ・・・。

しかもあの様子からすると、初犯って感じでもなさそうだし。


別に俺達は正義の味方ではないので、あいつらの罪を裁くつもりはない。

ないけど、本当にドン引きものである。


「あ、あわわ・・・。」


「ゾンビじゃないって言うなら、山賊か盗賊の類かなぁ?

 正義の味方、ブレイブチルドレンとしてお前達なんか滅ぼしてしまおうかなぁ??

 その方が世の中のためだよなぁ!!!!」


「ひゃああああ!!」


脅してる俺が思うのもあれだが、こいつら急に怖がり過ぎだろ?


「あ、あいつ。

 いつも正義の味方をバカにしたり、勇者の子供なんて貧乏籤だ~って考えてる癖に・・・。

 アカリみたいに混乱してやがるのか!?」


「ううむ。言動も変だが、態度もどこか違和感があるな。

 怒りに満ちた表情のわりに、あまり怖さを感じない。

 キレる若者ライトがマジギレした時のヤバさは、こんなものではないはず。」


・・・頼むからお前ら、この場に及んで脱力するような事、言わないでくれ。

俺だって頑張ってこんな振る舞いをしてるんだからさ。


それとレイド。

キレる若者ってなんだ、キレる若者って。

俺は普通だ!!


そもそもキレやすい人間なんて、時代・年齢問わずたくさんいるだろうに・・・。


「しっ、エルムもレイドも静かに。

 ここはライトに合わせましょう。」


おっ、ユラは俺のやろうとしている事がわかったのか。

さすがユラは冷静で頭が良いなぁ。


それはさておき。


「お、おやめくだされ!!

 ・・・わしらは飢えて死にそうだったのですじゃ。

 だから、魔が差しただけですじゃ。

 お許しを、どうかお許しを!!」


「ふ~ん、空腹のあまり仕方なくあんな事をしたんだ。

 ・・・けど事情があろうと、罪なき他人に危害を加えるなんて許されないよなぁ。

 普通の人間のやる事じゃないよなぁ?

 山賊や盗賊、ゾンビなんかがやる事だよなぁ!!」


「ち、違いますじゃ!!

 わしらは普通の人間ですじゃ・・・。」


よほど恐怖だったのか、涙を流しながら許しを請う村長。

・・・ちょっと可哀想だが、自分達の命を守るためにも手心を加える訳にはいかない。


「普通の人間・・・ねぇ。

 よしっ、それなら盗み食いしたビックボアーの代金を払ったら、これまでやった事を全て許してやろう。

 人の物をダメにしたら弁償するのが『普通の人間』だからな。」


そう宣言し、俺は村長達に数十体のビックボアーの代金を請求した。


「・・・む、無理ですじゃ!!

 そんな大金、払えるわけがないですじゃ。」


「おいおい、確かに大金だけどライトの言い値は相場通りだぞ。

 高級食材とは言え、食い物の代金も払えないなんて、あんたらの村、本当に機能してんのか?」


エルムの言う通り、別に俺は足元を見てぼったくり価格を請求しているわけではない。

ガチで相場通りの金額を請求しただけなのに、払えるわけがないとか・・・。


まあ、村の様子から予想はしてたけど、想像以上にヤバいな。

こりゃ。


「ふむふむ、そんな金なんて持ってないと。

 じゃあ、今すぐ払えと言うのは勘弁してやろう。」


俺の宣言にほっと胸をなでおろす村人達。

だが甘い!!


「だが今度、俺達がこの村に来たらその時は全額払ってもらうからな!!

 ・・・せいぜい必死に働いて、代金を用意しろよ。

 あっはっは。」


「そ・・・そんな。

 なんて惨い事を。」


いや、全然惨くないんだけど。

俺はただ、盗み食いした物の金払えって言ってるだけだぞ?

強盗殺人未遂や脅迫に至っては、水に流してやってるのにもう・・・。


この村の連中の思考回路は酷いったらありゃしない。

・・・追い詰められたせいでこうなっただけだと信じたいものだ。


「もし払えなかった時はそうだな・・・どうしよっかなぁ?」


「あ、あわわ・・・。」


う~ん、本当にどう言おうっかなぁ?





「うがああああああああああああああああ!!!!」





ん?


「ラ、ラージトロル!?」


「「「ぎゃああああああああ!!!!」」


あ、ラージトロルだ。

もしかしてさっきのビックボアーの団体、あのラージトロルから逃げ回っていたとか?


西港町で初めて出会った時は疲れ故に太刀打ち出来なかったが、ちょうどいい。

見せしめになってもらおうか!!


「お前ら、そこをどけ。

 そしてよく見ておけ!!

 悪党どもの末路ってやつをなぁ!!!!」


恐れを成した村人達が、俺とラージトロルの間から離れていくのを見計った後、光の中級魔法を発動させる。


「メガ・ホーリー・ソード!!」


俺は光の剣を生み出し、巨大な衝撃波をラージトロルに向かって放つ!!


「ががああああああああああああああああ!!!!!!!!」


俺の一撃をまともに食らったラージトロルがあっさりと倒れ、絶命する。

初級魔法だけで敵う相手ではないが、さすがに中級魔法の力には耐えられないようだ。



「あ、あのラージトロルを一撃で・・・。」

「ひ、ひぃいいいい!!」

「あ、あわわわ。殺される。逆らったら殺される!!」

「お助けを、どうかお助けをぅ・・・。」



一部始終を見ていた村人達が、俺に怯えているのがわかる。

ラージトロルって、並の建物よりもデカいからなぁ。

そんなのを一撃で倒せば、ビビる奴はビビるか・・・。


かくて俺達を見る村人達の目が、自分達を助けてくれる英雄から、恐ろしい力を持つ悪鬼へと変わった。


あの最初に出会ったガキだけは妙に目を輝かせていたような気もしたが、見なかった事にしよう。

どうせ子供が1人騒いだ所で、恐怖に慄く大人達の心を変える事なんて出来ないだろう。


「ひゃああああ、殺される!!

 わしらはあの子供達に皆殺しにされるんじゃあ!!!!」


・・・狙い通りとは言え、お前ら手の平変えすぎだろ?

最初、俺達を皆殺しにしようとしたのはそっちの癖にさ・・・ったく。


けどまあ、ここまで怯えてくれればもう村人達が追い掛けてくることもあるまい。


「騒ぐなって。

 これ以上、悪党に成り下がらないって誓えるなら、お前達を皆殺しにする気はない。

 これからはせいぜい、心を入れ替える事だな。」


「「「ひええええ・・・。」」」


「じゃ、行こうか。皆。」


ラージトロルのおかげで、邪魔な村人は既に離れている。

これでようやく、ストーカーされる事なく旅の続きができるってものだ。

けどまあ、村人の目が届かなくなるまでは油断はしないようにしよう。


俺に続き、エルム、アカリ、レイドが戸惑いつつも後を付いて来る。

そしてユラは・・・。


「そうね、あの村人達のせいでご飯も途中だったし。

 美味しい美味しいラージトロルの肉でも食べましょう。」


謎に『ラージトロル』の単語を強調する。

ラージトロル・・・あっ!!


こら、ユラ!!


ラージトロルの死骸を置いていくのはまだしも、村人達に妙な手心を加えるんじゃない!!

あいつ等が変に誤解して、また俺達に付き纏い始めたらどうするんだ?


「!!」


ほら、見ろ。

最初に会ったガキなんて、ユラのヒントに気付いたのか、倒れたラージトロルを凝視してるし。

あーっ、もう!!


俺はお人好しなユラを軽く睨むが、彼女は言い訳を一切せず、許しを請うような目で見つめ返してくる。





・・・はぁ、わかったよ。

わかってるって。

ユラにも困ったものだ。





少しヒヤリとしたが、そのまま俺達はこの場を後にした。

村人達は誰一人、俺達の事を追い掛けようとはしなかった。


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