第50話 果物村編③ 餓鬼の群れ
果物村のゾンビ達から逃げきったと思ったら、今度はビックボアーの群れに襲われた!!
しかし多少時間が掛かったものの、特にトラブルもなくビックボアー達の撃破に成功した。
「ふーっ、やっと終わったか。
でもやっぱ、ゾンビの振りした人間や喋る魔物よりも戦いやすいや。」
人間だと意識してしまう連中はどうしても、殺したり、再起不能の重傷を負わせる事を躊躇ってしまう。
が、純粋な魔物にはそんな気遣いなんていらないからな。
「にしても、凄い数だよなぁ。
全部解体するのは大変だぜ。」
「お腹も空いたし、先に一体だけ解体して食べましょ。
残りは食べ終わってから解体したら良いんじゃない?」
「賛成。」
「そういう事なら、他の死骸の見張りはまず俺がやろう。
お前達は解体と調理を頼む。」
複数の魔物をその場で解体する場合、目を向けていない個体が他の魔物や動物に盗み食いされる事もある。
なので誰か1人が見張りを行い、そういった連中を近づけないようにしていた。
それはさておき。
「ホーリー・ナイフ!!」
俺は光のナイフで、1体のビックボアーを食べやすいサイズにまで切り刻む。
「ファイア・ナックル!!」
そしてエルムが炎の魔法をアカリ達が集めた薪に使い、火を起こした。
「やっぱり便利ねぇ、エルム達の魔法は。」
「本当に羨ましい。」
「そんな事言われてもなぁ・・・。」
便利なのは否定しないけど。
まあアカリやユラは女の子だし、家事に役立つ魔法に対する羨望が強いのかもしれない。
もっとも俺達の場合、家事などは男女関係無く協力して行っているが。
「そんな事よりもそろそろ焼けたぜ。」
「お~、良い匂い。」
「いただきま~す。」
もぐもぐ。
久しぶりのビックボアーの肉は美味いなぁ。
本音で言えば、果物村の果物も食べたかったが、住人(?)があれでは諦める他なさそうだ。
けどなんであの村、あんなにボロボロだったんだろう?
自然災害でも受けたのかな・・・でもそんな感じでもないんだよなぁ。
「ふぅ。お腹いっぱい。
じゃあ、レイドと見張りを代わってくるわね。」
「よろしくな、アカリ。」
あのゾンビ共が追って来ないかが心配だが、きっと大丈夫だって祈る他あるまい。
この大陸、結構魔物が多いみたいだし、迂闊に村の外に出たりはしないだろう・・・多分。
あいつ等の場合、魔物どころか普通の野生動物にだって敵わないだろうが。
「あ。レイド、お帰り。
はい、この肉焼けてるから。」
「すまんな、ユラ。」
お、レイド。
戻って来てたのか。
ユラから渡されたビックボアーの焼肉を次々と平らげるレイド。
・・・こいつも食いしん坊だよなぁ。
皆、よほど腹が減ってたのか、一体目のビックボアーはあっさりと食い尽くしてしまった。
「う~ん、もうちょっと食いたいなぁ。」
「もう一体、解体する?」
まあ、こんだけたくさんあるんだし、もう一体くらい食っちゃっても良いかな?
「きゃああああああああああああああああ!!!!!!!!」
!?
この悲鳴はアカリ??
「アカリ!!」
真っ先にアカリの元へ向かうエルム。
「俺達も行こう。」
「「わかった。」」
エルムに続き、俺達三人もアカリの元へと向かう。
だけど、おかしいな・・・。
アカリは虫なんかにビビるタイプじゃないし、魔物や魔族にだって怯まず立ち向かう強さを持っている。
だから相当ヤバい生物にでも出会わない限り、悲鳴を上げたりなんてしないと思うが。
走る事しばし、震えながら何かを見続けているアカリを発見した。
「アカリ、大丈夫?」
どうやら怪我などは無いようだ。
良かった。
けど、一体何が・・・。
ふと先走ってたエルムを見ると、呆然とした表情でアカリと同じ場所を見ている。
何を・・・何を見たんだ?
「きゃっ!?」
「な、なな・・・!!」
ユラ、レイド?
何をそんなに驚いて・・・って!!
「うわあ!!!!」
アカリ達が見ていたもの。
それは・・・。
口に血をべっとりとつけながら、ビックボアーの死骸に齧りつく餓鬼どもだった。
「な、なんだ・・・こいつら!?」
だがよく見ると、餓鬼どもの顔ぶれには見覚えがあった。
こいつらは確か、果物村で見かけたガキどもだ。
その内の1人は俺達の事を涎を垂らしながら見ていたので、印象に残っている。
「「「恵みじゃあーーーー、恵みじゃあーーーー!!」」」
な、なんだこの呻き声?
って・・・。
「ひゃああああ!!??」
果物村の村人達が俺達が狩ったビックボアーに齧りついていた。
こ、こいつら・・・人の獲物を堂々と盗み食いしてやがる。
いつもの俺達なら役人にでも突き出すか、泣いて謝るまでボコボコにしていた所だろう。
・・・けれど。
瘦せ細った体で、顔や服が血で汚れるのも気にせず、魔物の死骸を生のまま喰らい付く連中・・・。
何がそんなに嬉しいのか、気色の悪い歓声を上げる奴も多い。
怖い、怖すぎる。
俺は盗み食いされた怒りよりも、得体の知れない連中への恐怖心の方が上回った。
おそらくエルム達も同じ思いだろう。
早く・・・早くこの場から逃げないと!!
「お待ち下され。
ブレイブチルドレン・・・勇者の子供達よ。」
!??
勇者の子供達・・・だと?
勇者の子供なんて他人から言われたのはクズじじぃ以来だ。
「ひ、人違いだ!!」
不吉な予感が駆け巡り、咄嗟に誤魔化す俺。
しかし・・・。
「人違いではありませぬ。
その手に記された星の輝き・・・。
まさしく勇者の血を引く者の証ですじゃ。」
勇者の子供の特徴を知っている?
変だ。光大陸で俺達の事を勇者の子供扱いしたのは、クズじじぃただ一人だけ。
武術大陸出身のレイドもこれまでの態度を見る限り、勇者の子供扱いされた事なんてないはず。
なんでこいつらだけ、俺達が勇者の子供だって事を見抜いてるんだ?
「ひょっとして、研究所の人達が妙な事を吹き込んだ?」
あっ、そうか。
ユラ賢い。
・・・って、関心している場合ではなかった。
「まずは飢えに苦しむ我等に食料を恵んで下さった事、村の長としてお礼を申し上げまする。」
「って、おい!!
誰が食料を恵んだだって!?
勝手に盗み食いを正当化してんじゃねえよ!!」
「そうだ、エルムの言う通りだ。
お前ら、本当は果物村の人間じゃなくて、山賊か盗賊なんだろう?
それともやっぱり、ゾンビの群れなのか!?」
いきなり旅人を襲ったり、堂々と盗み食いをするなんて、まともな人間のする事ではない。
それこそ山賊や盗賊、ゾンビでもない限り・・・。
特に山賊や盗賊という線は普通にありうると思った。
「な、なんと無礼な!?
我等は山賊でも盗賊でも・・・ましてやゾンビでもありませぬ。
正真正銘、果物村の人間ですじゃ。」
「嘘。だって果物村はもっと裕福だって聞いた。
旅人から物を奪おうだなんて、そんな事をするはずがない!!」
だよなぁ。
あの村、めっちゃ寂れてたし。
そんな裕福な連中が、見栄も命もかなぐり捨てて強盗に勤しむなんて考えられない。
「そ、それは仕方ないのですじゃ。
我等、果物村は狂った王により、税として9割もの食料や財宝を奪われてしまい・・・。」
「んな訳ねーだろ!!
いくらなんでも、蓄えの9割も搾取する王なんかおらんわ!!」
村長の見え透いたホラ話を遮って、ツッコミを入れるエルム。
そりゃあ農村の税金なんて、せいぜいが収穫の3割程度だし。
9割も蓄えを奪ったら、村の存続自体危うくなって、長期的に見れば税を取る側としても大損である。
どんな暴君だろうがその程度の事、計算出来ないはずは無いのだが・・・。
「ほ、本当なんです。」
「逆らうと皆殺しにされるので、従う他無かったんです・・・。」
こ、こいつら。
口裏合わせとは小賢しい真似を。
まあ、飢えている事は確かなようだが、嘘を付いてまで本当の事を言いたくないとは。
やっぱこいつ等、何か後ろ暗い所でもあるのだろうか?
「だから、ブレイブチルドレン・・・勇者の子供達よ。
どうか我等を救ってくだされ。
世界を救う程のお力で、滅びゆく我等の村を救ってくだされ!!」
は?




