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第39話 人魚編① 光魔法と正義の心

俺の名はライト。

勇者の子供、ブレイブチルドレンだ。



・・・はぁ。

俺達、まさか本当に勇者の子供だったとはなぁ。

そして勇者の血が流れているせいで、魔王から理不尽な恨みを買い、短命になる呪いを掛けられている。


勇者も魔王もこの世界に存在しなければ良かったのに・・・。



残酷な真実を知った俺達は、改めて魔王討伐を誓うのであった。

魔王の呪いを解いて、未来を生きるために!!


********


今の俺達は、幻影城へ向かう旅の途中だ。

雑談を交えつつ、穏やかな気持ちで歩いていたのだが、急にレイドが俺をdisり始めた。


「俺にはライトが光の中級魔法を使える理由がわからん。」


「おっと、ナチュナルにバカにしてきたな。レイド。

 お前みたいな雑魚がなんで・・・とでも言いたいのか?」


「・・・お前の力『は』バカにした事はないぞ?

 むしろ、並の人間よりもはるかに強い癖に何故、そこまで男らしくないのか理解出来ん。」


おい、こら。

別に俺が男らしくないんじゃなくて、レイド(やエルム)が無鉄砲なだけだからな?


「俺にはライトの性格と光魔法が噛み合ってないように感じるのだ。

 ヘタレ云々は抜きにしても、な。」


「それって、どういう意味なの?」


「光属性の上位魔法を修得するには、確固たる正義の心が求められる。

 師匠のライバルとも言える人物の言葉だ。


 だがライトは悪人でこそないものの、とても正義感の強い男には見えない。

 そんな奴がどうやって光の中級魔法を身に付けたのか、不思議でな。」


え。

ちょっと待て。

つまり・・・。



「って事は、俺がもっと強い魔法を身に付けようと思ったらさ。

 たくさんの人達を苦しめないとダメなのか?

 ・・・ヤダよ、そんなの。」



確かに俺は善良な人間ではない。

けれど、敵でもない相手を自分から苦しめに行くなんて、そんな外道な真似はしたくなかった。


「・・・おい、ライト。

 俺は『正義の心』が必要だって言ったんだぞ。

 それがなんで『人を苦しめる』事に繋がる?」


「だって、さ。

 耳障りの良い言葉で他人を騙して利用するとか、

 自分が悪いと思い込んでる相手を集団リンチするとか、

 そ~いう事が正義なんだろ?」


クズじじぃとか、太陽城下町の悪質クレーマー達みたいな?

あいつ等に限らず、世界中でそういった正義は横行していると思う。


「それのどこが正義だ!?

 俺には小悪党が周りに迷惑を掛けてるとしか思えぬ。」


レイドの意見は一理ある。

ってか実は、俺もそう思う。


だがそれでも・・・。


「少なくとも『本人にとっては』正義のつもりだろ?

 それに一応、『正論で人を導く』とか、

 『一致団結して悪と思われる存在を成敗する』とも言えるし。

 建前上は立派な正義さ。」


『正義』なだけで誰の救いにもならないけど。


俺が積極的になれる正義は『大勢の人と同じ選択肢を取る』の一点のみである。

こればっかりは正義で真理に間違いない。

これを否定する奴は、人間の在り方そのものを否定する事に他ならないからな。


まあ、太陽城の山賊事件で一回だけ疑念を抱いた事はあるが・・・。

きっと極限状態における気の迷いだろう、うんうん。


「うう・・・む。そうなの、か?

 理屈は通っている・・・かもしれんが、何故か納得できん。」


「あ~、レイド。

 その手の話題をライトに振るのはやめとけ。

 あいつ『人助け』とか『正義』とかに凄い反抗的だからな。」


「ライトも思春期だからねぇ。

 もっと大人になれば良いのに。」


エルムもアカリもうるさい。


大体、俺は他人の人助けや(迷惑を掛けない)正義まで否定する気はないぞ?

ただ単に自分が強要されるのが嫌なだけだ。


「なら、どうやって光の中級魔法を修得したのだ?

 まさか本当に誰かを騙したり、立場の弱い奴を集団リンチして修得したのか??

 ・・・上位魔法はそんな浅はかな思いでは修得出来ないはずだが。」


「ええっと、な。

 強敵相手にピンチになった俺を、エルムやアカリ、ユラが必死になって助けてくれてな。

 そんな三人を俺も助けたいって思ったら、使えるようになった・・・。」


うっ・・・改めて思い出すと物凄く恥ずかしい。

なんだ、あの時の俺?

作り話の熱血主人公にでもなったつもりか??


顔がじわじわと赤くなっていくのがわかる。

もうヤダ恥ずかし過ぎ・・・俺の黒歴史だ。


「別に恥ずかしがらんでも・・・。

 ・・・けどまあ、お前にもちゃんと正義の心があったんだな。」


何故か勝手に納得するレイド。

しかし、勘違いされては困る。


「いや、俺は別に正義感から三人を助けようとしたわけじゃないぞ?

 単純に助けたいって思ったから、助けようとしただけ・・・ただの私欲だってば。

 仮に三人を助けるのが悪だったとしても、助けようって気持ちは揺るがなかったと思う。」


正義がどうかなんてくだらない事より、エルム達の命の方がよほど大事だ。

あの時の記憶は凄く恥ずかしいものだが、それでも後悔は全くしていない。



「なるほど・・・。

 ライトにとって、綺麗事で誰かを騙したり、立場の弱い者を集団リンチするのは正義で、

 仲間を助けようと必死になるのは私欲なんだな?」


「ああ・・・。

 ・・・・・・? あれ!?

 間違ってないけど、なんか変!!」



何故だ!?

他人に考えを整理されると、めちゃくちゃ違和感がある。

一つ一つは間違ってないはずのに、どうして・・・。


「ライト。お前は正義をややこしく解釈しすぎだ。

 もっと真っすぐに考えた方が良いと思うぞ。

 ・・・まあどっちにしろ、当面は上級魔法の修得なんぞ無理だがな。」


「なんで?」


「一回の中級魔法で力尽きるのに、さらに強力な上級魔法なぞ使えるはずがない。

 俺の師匠など、休憩無しで何発も中級魔法を撃てるのに、未だ上級魔法を未修得だからな。

 今は心の在り方よりも、地力を鍛える方が重要だろう。」


げっ、レイドの師匠って連続で中級魔法を使えるのかよ?

とんでもない化け物だ。


「もっとも、俺は未だに初級魔法しか扱えぬがな。

 力はまだしも、心でさえライトに敵わぬとは情けない・・・。」


「だからお前は俺の事、バカにしすぎだっつーの!!」


「そうそう。

 ライトはいざという時『は』心の強い男の子。」


・・・なんかユラにまで、普段はヘタレだと思われてる?

俺・・・。


ったく、必要の無い戦いを避けようとしているだけなのになぁ。

俺がヘタレなんじゃなくて、他の連中が好戦的なだけだ!!





「♪~。」





???


なんだろう、この歌声?

今まで聞いた事がないくらい、美しい響きだ・・・。


「ああ、良い歌だなぁ。」


「ずっと聞いていたいぜ・・・。」


「なんて、美しい歌声。

 まるで心が洗われるようだわ。」


「綺麗。」


「くっ、俺の心があの歌声に浸食されていく。

 負けてたまるか!!」


一人だけおかしな対抗心を見せているものの、俺達は突然の美声にすっかり心を奪われていた。

心を奪われたまま、景色も見ずに足を進めて行き・・・。


********


・・・気が付くと暗い森の中に迷い込んでいた。


俺達の故郷の近くにある森よりもさらに暗く、まさに『闇』大陸の森って感じだ。

だけど、不思議と生き物の気配がほとんどしない。


「・・・もしかして俺達、道に迷った?

 うっわー、ヤベぇ!!」


「ヤダ、どうしましょう・・・。」


「足跡を辿って、元の場所まで戻る?」


そうだなぁ。

こんな得体の知れない森に居続けるのも怖いし・・・。


あれ?


「あっちの方で湖が見える・・・。」


「本当だ。行ってみようぜ!!」


「おい。ちょっと待てよ、エルム。」



湖の方角が正解とは限らないだろ。

ったく・・・ん〝ん〝!!



「何・・・あの巨大な水の球?」


アカリが呟く通り、湖の上にとても巨大な水の球が浮いていた。

だけど、その中心になんかあるような・・・。



「うっ、うわああああああああ!!??

 ににに・・・。」



なんだよ、エルム。

急に騒ぎ出して・・・ん〝ん〝ん〝ん〝!!!!????





「あらあら・・・。

 また、私とあの人の時間を邪魔する輩かしら?

 困ったものね。」





水の球の真下から美しい声が聞こえてきた。

上半身だけ見るなら絶世の美女だが、下半身はさ、魚だ・・・。



ま、まさかこの人、人魚!?


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