第39話 人魚編① 光魔法と正義の心
俺の名はライト。
勇者の子供、ブレイブチルドレンだ。
・・・はぁ。
俺達、まさか本当に勇者の子供だったとはなぁ。
そして勇者の血が流れているせいで、魔王から理不尽な恨みを買い、短命になる呪いを掛けられている。
勇者も魔王もこの世界に存在しなければ良かったのに・・・。
残酷な真実を知った俺達は、改めて魔王討伐を誓うのであった。
魔王の呪いを解いて、未来を生きるために!!
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今の俺達は、幻影城へ向かう旅の途中だ。
雑談を交えつつ、穏やかな気持ちで歩いていたのだが、急にレイドが俺をdisり始めた。
「俺にはライトが光の中級魔法を使える理由がわからん。」
「おっと、ナチュナルにバカにしてきたな。レイド。
お前みたいな雑魚がなんで・・・とでも言いたいのか?」
「・・・お前の力『は』バカにした事はないぞ?
むしろ、並の人間よりもはるかに強い癖に何故、そこまで男らしくないのか理解出来ん。」
おい、こら。
別に俺が男らしくないんじゃなくて、レイド(やエルム)が無鉄砲なだけだからな?
「俺にはライトの性格と光魔法が噛み合ってないように感じるのだ。
ヘタレ云々は抜きにしても、な。」
「それって、どういう意味なの?」
「光属性の上位魔法を修得するには、確固たる正義の心が求められる。
師匠のライバルとも言える人物の言葉だ。
だがライトは悪人でこそないものの、とても正義感の強い男には見えない。
そんな奴がどうやって光の中級魔法を身に付けたのか、不思議でな。」
え。
ちょっと待て。
つまり・・・。
「って事は、俺がもっと強い魔法を身に付けようと思ったらさ。
たくさんの人達を苦しめないとダメなのか?
・・・ヤダよ、そんなの。」
確かに俺は善良な人間ではない。
けれど、敵でもない相手を自分から苦しめに行くなんて、そんな外道な真似はしたくなかった。
「・・・おい、ライト。
俺は『正義の心』が必要だって言ったんだぞ。
それがなんで『人を苦しめる』事に繋がる?」
「だって、さ。
耳障りの良い言葉で他人を騙して利用するとか、
自分が悪いと思い込んでる相手を集団リンチするとか、
そ~いう事が正義なんだろ?」
クズじじぃとか、太陽城下町の悪質クレーマー達みたいな?
あいつ等に限らず、世界中でそういった正義は横行していると思う。
「それのどこが正義だ!?
俺には小悪党が周りに迷惑を掛けてるとしか思えぬ。」
レイドの意見は一理ある。
ってか実は、俺もそう思う。
だがそれでも・・・。
「少なくとも『本人にとっては』正義のつもりだろ?
それに一応、『正論で人を導く』とか、
『一致団結して悪と思われる存在を成敗する』とも言えるし。
建前上は立派な正義さ。」
『正義』なだけで誰の救いにもならないけど。
俺が積極的になれる正義は『大勢の人と同じ選択肢を取る』の一点のみである。
こればっかりは正義で真理に間違いない。
これを否定する奴は、人間の在り方そのものを否定する事に他ならないからな。
まあ、太陽城の山賊事件で一回だけ疑念を抱いた事はあるが・・・。
きっと極限状態における気の迷いだろう、うんうん。
「うう・・・む。そうなの、か?
理屈は通っている・・・かもしれんが、何故か納得できん。」
「あ~、レイド。
その手の話題をライトに振るのはやめとけ。
あいつ『人助け』とか『正義』とかに凄い反抗的だからな。」
「ライトも思春期だからねぇ。
もっと大人になれば良いのに。」
エルムもアカリもうるさい。
大体、俺は他人の人助けや(迷惑を掛けない)正義まで否定する気はないぞ?
ただ単に自分が強要されるのが嫌なだけだ。
「なら、どうやって光の中級魔法を修得したのだ?
まさか本当に誰かを騙したり、立場の弱い奴を集団リンチして修得したのか??
・・・上位魔法はそんな浅はかな思いでは修得出来ないはずだが。」
「ええっと、な。
強敵相手にピンチになった俺を、エルムやアカリ、ユラが必死になって助けてくれてな。
そんな三人を俺も助けたいって思ったら、使えるようになった・・・。」
うっ・・・改めて思い出すと物凄く恥ずかしい。
なんだ、あの時の俺?
作り話の熱血主人公にでもなったつもりか??
顔がじわじわと赤くなっていくのがわかる。
もうヤダ恥ずかし過ぎ・・・俺の黒歴史だ。
「別に恥ずかしがらんでも・・・。
・・・けどまあ、お前にもちゃんと正義の心があったんだな。」
何故か勝手に納得するレイド。
しかし、勘違いされては困る。
「いや、俺は別に正義感から三人を助けようとしたわけじゃないぞ?
単純に助けたいって思ったから、助けようとしただけ・・・ただの私欲だってば。
仮に三人を助けるのが悪だったとしても、助けようって気持ちは揺るがなかったと思う。」
正義がどうかなんてくだらない事より、エルム達の命の方がよほど大事だ。
あの時の記憶は凄く恥ずかしいものだが、それでも後悔は全くしていない。
「なるほど・・・。
ライトにとって、綺麗事で誰かを騙したり、立場の弱い者を集団リンチするのは正義で、
仲間を助けようと必死になるのは私欲なんだな?」
「ああ・・・。
・・・・・・? あれ!?
間違ってないけど、なんか変!!」
何故だ!?
他人に考えを整理されると、めちゃくちゃ違和感がある。
一つ一つは間違ってないはずのに、どうして・・・。
「ライト。お前は正義をややこしく解釈しすぎだ。
もっと真っすぐに考えた方が良いと思うぞ。
・・・まあどっちにしろ、当面は上級魔法の修得なんぞ無理だがな。」
「なんで?」
「一回の中級魔法で力尽きるのに、さらに強力な上級魔法なぞ使えるはずがない。
俺の師匠など、休憩無しで何発も中級魔法を撃てるのに、未だ上級魔法を未修得だからな。
今は心の在り方よりも、地力を鍛える方が重要だろう。」
げっ、レイドの師匠って連続で中級魔法を使えるのかよ?
とんでもない化け物だ。
「もっとも、俺は未だに初級魔法しか扱えぬがな。
力はまだしも、心でさえライトに敵わぬとは情けない・・・。」
「だからお前は俺の事、バカにしすぎだっつーの!!」
「そうそう。
ライトはいざという時『は』心の強い男の子。」
・・・なんかユラにまで、普段はヘタレだと思われてる?
俺・・・。
ったく、必要の無い戦いを避けようとしているだけなのになぁ。
俺がヘタレなんじゃなくて、他の連中が好戦的なだけだ!!
「♪~。」
???
なんだろう、この歌声?
今まで聞いた事がないくらい、美しい響きだ・・・。
「ああ、良い歌だなぁ。」
「ずっと聞いていたいぜ・・・。」
「なんて、美しい歌声。
まるで心が洗われるようだわ。」
「綺麗。」
「くっ、俺の心があの歌声に浸食されていく。
負けてたまるか!!」
一人だけおかしな対抗心を見せているものの、俺達は突然の美声にすっかり心を奪われていた。
心を奪われたまま、景色も見ずに足を進めて行き・・・。
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・・・気が付くと暗い森の中に迷い込んでいた。
俺達の故郷の近くにある森よりもさらに暗く、まさに『闇』大陸の森って感じだ。
だけど、不思議と生き物の気配がほとんどしない。
「・・・もしかして俺達、道に迷った?
うっわー、ヤベぇ!!」
「ヤダ、どうしましょう・・・。」
「足跡を辿って、元の場所まで戻る?」
そうだなぁ。
こんな得体の知れない森に居続けるのも怖いし・・・。
あれ?
「あっちの方で湖が見える・・・。」
「本当だ。行ってみようぜ!!」
「おい。ちょっと待てよ、エルム。」
湖の方角が正解とは限らないだろ。
ったく・・・ん〝ん〝!!
「何・・・あの巨大な水の球?」
アカリが呟く通り、湖の上にとても巨大な水の球が浮いていた。
だけど、その中心になんかあるような・・・。
「うっ、うわああああああああ!!??
ににに・・・。」
なんだよ、エルム。
急に騒ぎ出して・・・ん〝ん〝ん〝ん〝!!!!????
「あらあら・・・。
また、私とあの人の時間を邪魔する輩かしら?
困ったものね。」
水の球の真下から美しい声が聞こえてきた。
上半身だけ見るなら絶世の美女だが、下半身はさ、魚だ・・・。
ま、まさかこの人、人魚!?




