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第28話 第6の子供編③ 自信過剰なチンピラ

勇者の子供(仮)である青髪のクールなイケメン、レイドがとんでもない事を言い出した。


「俺の名はレイド。修行の旅を続けている。

 お前達・・・見た目によらずかなりの強者のようだな。

 手合わせがしたい。この俺と勝負しろ!!」





・・・・・・。





「何、あの変な人?」


「しー、ユラ。

 確かに変だけど、そんな事言っちゃダメよ。

 可哀想じゃない。」


あらら、女性陣の反応が酷い。

心なしかレイドも一瞬『あれ。なんか俺おかしな事言った?』って表情になった。


まあ、作り話じゃあるまいし、強い奴を求めてさすらうなんて、変な人のする事だよな。

そもそも強い奴と戦いたいなら、道場にでも入門して上を目指す方が手っ取り早い。



・・・もっとも旅の動機が変なのは、俺達も同じだけど。



「なんだてめぇ。勝負しろだって?

 おかしな理屈こねて、力ずくで金でも奪おうってか!?」


なるほど。エルムはレイドを暴力で金を奪おうとするチンピラだと判断したのか。

それも一理ある。チンピラの人格などそんなものだろう。


ただ・・・。


「はっ。そんなみっともない真似、するかアホ。

 金など、適当な魔物を狩って売ればすぐ貯まる。」


そう、レイドはマジックバックを持っていたのだ。

つまりマジックバックを買える程度には、金を稼ぐ力を持っている訳で・・・。

そんな奴が暴力で金を奪いたがるとは考えにくかった。


「お前ら、まさか戦うのが怖いとは言うまいな?

 武術大陸なら道行く者との手合わせを怖がる者などほとんどおらぬ。」


「あらー・・・あなた、武術大陸の人だったのね。

 けど、他の大陸じゃあ喧嘩の売り買いなんて普通、しないわよ。

 何の得も無いんだし。」


「何!! そうなのか!?」


なんかこいつ、ずれてるなー。


物語じゃあるまいし、ガチの闘争を好む人間などそれほど多くない。

確かに闘争にはある種の楽しさや心地良い爽快感があるが、その一方、強い痛みや苦しさに耐え抜くだけの体力・精神力も求められる。


「他の大陸の人間は随分と軟弱なんだな。

 俺としてはそこの黒髪の男と・・・ん、んん?

 ・・・・・・なんだ、他人の空似か。」



エルムは赤髪だし、黒髪の男ってのは俺の事だよな。

他人の空似がどうとかって発言がちょっと気になる。


「ともかく、お前達の中でも黒髪の男が一番強い力を持っているようだ。

 是非、戦ってみたかったがな。」


「!!」


エルム?

何をそんなに動揺してるんだ??


「が、随分と疲れてるようだ。これでは勝負を挑めん。

 殺し合いならまだしも、俺が望むのは力比べだ。弱っている奴を狙うような真似は出来ぬからな。

 ・・・それにしても、なんと情けない格好だ。」


「・・・う、・・・うる・・・さい。」


今の俺はすぐにでも倒れそうなほどふにゃふにゃしている。

だって、クラーケンとの戦いで体力が空っぽなんだもん。

しょうがねぇだろ。


「人間である以上、疲れる事も当然あるだろう。

 だがだからといって、それほど情けない格好を晒すなど、みっともないにも程がある。

 お前も男だろう。どんなに辛くとも堂々と振舞ったらどうだ!!」


ぐ、な・・・なんかムカつく。

けど、言い返せない。

悔しいぃぃぃぃ。


「あのね、レイド。

 ライトはさっき、恐ろしい魔物と戦ったばかりなのよ。

 少し疲れた所を見せるくらい、しょうがないじゃない。」


「少し・・・か? まあ、良い。

 一番強い奴ですらこんな体たらくだ。他の奴等もさぞ情けない性質なのだろう。

 いくら力が強くとも、心の未熟な奴等などこの俺の足元にも及ばぬわ!!」


こ、こいつ。

いくらなんでも上から目線過ぎるだろ!!

アカリとユラでさえ、やや苛立った顔でレイドを見つめている。


そしてエルムは・・・エルム?

な、なんかキレてないか??


「・・・おい、てめぇ。誰が誰の足元にも及ばないだって?

 上等じゃねえか。レイド。

 てめぇが望む通り、この俺がお前と勝負してやる!!」


「ほぉ・・・ようやくやる気になったか。

 面白い、掛かって来るが良い!!」


おい、エルム?

こんな奴の挑発になんか乗って、喧嘩するなって。


「ちょっとエルム?

 あんな自信過剰なチンピラの挑発になんか、乗っちゃダメよ。

 大体、喧嘩なんてしたって誰得でしょ?」


あ。自信過剰なチンピラ扱いされて、レイドがちょっと嫌な顔をしてる。

ざまあみろ。


「うるせぇ。

 あんな奴にコケにされっぱなしで、黙ってられるかよ。


 第一、常日頃ヘタレメンタルなのはライトだけだ。

 ライトはいざという時にしか根性を見せない男だからな!!」


こら。エルム、てめぇ。

さりげなく俺の事disってんじゃねえよ!!


「そんなライトよりも俺の方が弱いだなんて、冗談じゃねぇ!!

 ・・・今はそうだったとしても、いつか必ず追い越してやるんだ。」


「・・・エル・・・ム?

 おま・・・え、俺の事・・・どんだけ下に・・・見てるんだ・・・よ。」


「いやー・・・、ライト。

 エルムは別にあなたの事、見下してるわけじゃないのよ。

 むしろ、自分より強いかもって思って、対抗心を燃やしてるっていうか・・・。」


「おい、アカリ。黙ってろ!!」


本当かなぁ?

まあ、対抗心は持たれてると思うが。

何かと張り合ってくるし。


けど、エルムが俺の事を認めているなんて、正直信じられない。

なんだかんだでエルムはかなり強いし、あいつと喧嘩しても俺、勝てる気しないからなぁ。


「まあ、喧嘩くらい構わないけどここではダメ。

 人や建物なんかを巻き込まない場所に変えた方が良い。」


「ユラと言ったな。ふっ、いいだろう。

 ・・・他人から損害賠償など求められても、迷惑だからな。」


っておい、見境なく暴れて損害賠償求められた事あるのかよ?

喧嘩で賠償金を払わされた事なんて、エルムでさえ一度も無いのに。



・・・こいつ、偉ぶってるけど実はかなりのバカだと思う。


********


そんな事情があり、俺達は町から少し出た所の広い空き地まで移動した。

ここなら人や建物を巻き込む心配は無いし、見咎められる可能性も低いだろう。


「ここなら何かを巻き込む心配は無い。

 思う存分暴れられそうだ。


 だがエルムと言ったな。安心するが良い。

 何も殺したり、再起不能な重傷を負わせるつもりなどない。

 その自惚れた心をへし折る程度で勘弁してやろう・・・。」


「はん、それはこっちの台詞だ!!

 お前の方こそ、泣いて謝まる程度で勘弁してやるぜ。」


「大した自信だな・・・。

 ならば、万一この俺に勝てたら、お前達の言う事を1つ、聞いてやろう。

 なんなら賞金を渡しても構わぬ・・・勝てるものならな!!」


賞金をやっても構わないって、随分と強気だな。

これでエルムが勝ったら俺達、チンピラから金を巻き上げた事になるんだろうか?


今はそこまで金に困って無いんだけどなぁ。

けどだからと言って、こいつに聞いてもらいたい事なんて・・・。



「じゃあ、もしエルムが勝ったら私達の旅に付き合って欲しい。」



ゑ?


ユラさん、何言ってますの?



「ちょ、ちょっとユラ?

 何言ってるのよ。こんなチンピラを仲間に入れる気なの??」


あ、レイドがアカリの方を睨んだ。

自分がチンピラだって自覚が無いのだろうか?


「きっとあの人も、私達と同じ勇者の子供?だと思う。

 だからこの先、頼れる戦力になってくれるはず。」


「・・・そりゃ、そうかもしれないけど。」


まあ、ユラの言う通りだとは思うが。

でも、あんな性格に問題のありそうな奴と上手くやっていけるかなぁ?


「勝てば旅に協力しろ・・・か。

 それは構わぬが、お前達は何を目的に旅をしているのだ?」


「なっ・・・え、ええっと。

 ま、魔王討伐の旅、だ・・・。


 俺達、魔王に呪いを掛けられて、寿命が超短い。って言われた。

 信じれないかもしれんが、お前も他人事じゃないんだぞ・・・多分。」


物凄く自信が無さそうに旅の目的を話すエルム。

別に何も恥じる事はないはずなのに、どうしてか俺まで恥ずかしい気分になる。



「お・・・お前ら、正気か!?

 ・・・・・・頭の病院にでも行った方が良いんじゃないか??」



レイドにさえ正気を疑われた!?

あんな喧嘩バカにさえ心配されるなんて、かなりショックを受けるんだが。


「う、うるせー!! 俺だっておかしな事を言ってる自覚くらいあるんだ!!

 大体、お前だっておかしな目的で旅をしてるじゃねえか。

 人の事ばっか、バカにすんじゃねえ!!」


「うぐ・・・ま、まあ良いだろう。

 そんな事よりそろそろ始めようではないか!!」


あれ、なんか誤魔化されたような気が・・・。

けどこいつ、あんなに堂々と修行の旅を公言してた癖になんで動揺したんだろう。

・・・他に何か旅の目的があるのかな?



「ああ、良いぜ。

 覚悟しやがれ、レイド!!」





こうして、エルムとレイドのタイマン勝負が始まった。


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