第26話 第6の子供編① クラーケン
第2部Start
俺達は2つ目の不死鳥の宝玉を探すため、闇大陸へと向かった。
さようなら光大陸。
今は闇大陸行きの船に乗っている所だ。
船旅中は景色を眺めたり、適当に話したり、昼寝したりしながらのんびりと過ごしていた。
どこまでも広がる青い海は美しくもあるが、変化に乏しく、ずっと眺めてると少し飽きてくるのがたまに傷だ。
でもまあ、魔王討伐の旅を決意してから慌ただしい日々が続いたので、こういう時間も悪くないかなと思ってる。
思っていたのだが・・・。
「zzz・・・。」
「ギシャアアアアアアアア!!!!」
zzz・・・?
「ら、ライト。大変よ、寝てる場合じゃないわ。
クラーケンが、クラーケンが船を襲おうとしているの!!」
・・・!!! ク、クラーケンだってぇ!?
「ギシャアアアアアアアア!!!!」
あ。本当にいた。
アカリの言う通りだ。
クラーケンは姿形こそ普通のイカと大差ないが、船など簡単に壊せるほどの巨体を誇る。
書物によると実力はビックボアーやゴブリンとは比較にもならず、魔物の中ではかなりの強豪だ。
そんなヤバい魔物と遭遇したからか、多くの人達が悲鳴を上げながらパニックに陥ってる。
中には涙を流しながら、生きる事を諦める人さえいた。
「・・・でっけえ。」
その声はエルムか。近くにはユラもいる。
皆、とりあえず被害を受けてなさそうで良かった。
しかし、これからどうしよう・・・?
なにせ俺達は客だ。
客として、船員達の邪魔をせず、守られ役に甘んじる必要がある。
ヒーロー気取りで魔物に戦いを挑み、何か問題でも起きたら責任が生じてしまうからだ。
だからクラーケン退治は船員達に任せよう。
船旅のトラブルに対応するのは船員達の役目だ。
なあに、船旅のプロフェッショナルなら魔物の一匹や二匹くらい、余裕で対処出来るはず・・・。
「く、食らえ。化物!!」
船員や雇われた護衛達が、クラーケンに向かって一斉に矢を放つ。
しかし矢を受けてもクラーケンには全くダメージが入らなかった。
まるで砂粒にでも当たったかのような反応をしている。
「ダ、ダメだ。
まるで歯が立たない・・・。」
「・・・終わりだ。
もう俺達、海の藻屑になるしかないんだ。」
・・・どうしよう?
魔物を倒すどころか、相手にもなっていないような気がするのだが。
だけど、だからと言って俺達が出しゃばるのは悪手だ。
雇われた訳でも無いから報酬0、何か問題が起きたら俺達の責任、そもそもクラーケンに喧嘩を売る事自体が危険・・・。
うん。ここは戦いに巻き込まれる前に離れよう。
あまりにもハイリスク・ノーリターンすぎる。
他の客だって逃げ惑うばかりで、クラーケンに挑もうだなんてしていないしな。
周りに合わせるだけだ。何の問題も無い!!
そうと決まれば、早くエルム達に声を掛けて逃げ始めないと・・・。
「ギシャアアアアアアアア!!!!」
「・・・う、うわああああああああ!!」
!! クラーケンが触手を使って船員の一人を叩き潰そうとしている。
ってか、あんなの食らったら船員即死するんじゃ・・・。
「ウインド・ダーツ!!」
バシッ!!
「グギャアアアアアアアア!!!!」
ユラ!?
ユラの風のダーツにより、クラーケンの触手は弾かれ、船員がトマトのように潰される事態は防げた。
だが・・・。
「お、おい。何やってんだよ。ユラ。
いや・・・まあ、さっきのはしょうがなかったかもしれないけど。
あんまり出しゃばらない方が良いって。ロクな目に合わないからさ。」
「ライトったら、またそんな事言って・・・。」
いやいや、アカリ。
そんな事言ったって、仕方ないじゃん。
人助けなんかする奴が、痛い目を見る世の中なんだから。
しかも今回は太陽城の時と違って、他に知り合いはいないし、誰かに雇われている訳でもないんだ。
だから大きなリスクを負ってまで、助けるべき人なんていない。
しかし・・・。
「ライト。今はそんな事を気にしてる場合じゃない。
きっとあの人達じゃ、クラーケンには敵わない。
放っておくとクラーケンが暴れて、船が壊される。
そしたら、私達もただじゃ済まない。」
・・・・・・・・・・・・。
「あーーーーーーーー!!
そうだった!!!!」
ユラの言う通りだ!!
このままクラーケンに船を壊されたら、俺達、海へ放り出されて死んじゃうかも・・・。
・・・ぐっ。しょうもない保身に拘って、命を落とす訳にはいかない。
勝手な行動を責められそうになったら、船員達が負けそうで危険だったから止むを得ず・・・とか言って、反論しよう。
「ちっ。しょうがねえなぁ。
ファイア・ナックル!!」
「サンダー・スティック!!」
俺より先にエルムとアカリがクラーケンに攻撃を行う。
魔法により放たれた炎と雷が、クラーケンの体に直撃した。
「グギャアアアアアアアア!!!!」
エルム達の攻撃を食らったクラーケンは苦しそうに悶えている。
が、倒すには至らない。
初級とは言え、3回魔法を受けて倒れないとは、頑丈さならオガー達以上だ。
こ・・・これはまずい。
ここが陸上なら、エルム達だけでもクラーケンに勝てただろう。
だがここは海上。
仮に自分達が攻撃を食らわなくとも、船という足場を壊されるだけでOUTなのだ。
おまけに戦いが長引くと、血迷ったクラーケンが海中へ潜り出す可能性がある。
逃げ出すだけならまだしも、万一海中から船に向かってダイレクトアタックでもされたら、一貫の終わりだ。
ならば・・・。
「ここは俺に任せろ。
余計な攻撃をされる前に一気に倒す!!」
「ライト!?」
エルム達の攻撃に怯んでいる今がチャンスだ。
態勢を立て直される前に片を付ける!!
「いっけぇええええええええ!!
メガ・ホーリー・ソード!!」
俺は最近の死闘で修得した中級魔法を使用し、光の剣を作り出した。
それを全力で振りかざし、特大の光の衝撃波を放つ!!
「ブギャバアアアアアアアア!!!!!!!!」
さしものクラーケンもこの攻撃には耐えられなかったようだ。
衝撃波を受け、倒れたクラーケンはそのまま二度と動かなくなった。
「ま、まるで伝説の勇者様・・・。
か・・・かっこいい。」
なんかヤジ馬達が騒いでるけど、まあいっか。
クラーケンが倒れた衝撃で波が生まれ、少し船上が濡れたようだが、誰も大きな被害を受けずに済んだ。
これなら勝手に戦った事を責められはしないだろうが、マイの一件もあるし、気は抜かないようにしよう。
・・・と思ったが、な、なんか急に眩暈が。
力が抜ける。ついでに気も抜ける・・・。
ハオガーの時と同じだ。
中級魔法は威力こそ物凄いけど、一撃で体力のほとんどを持っていかれるからなぁ。
「も、もうダメ・・・。」
「「「ライト!!」」」
極度の疲労に耐えられなくなった俺は、非常に情けない格好でへたれこんでしまう。
人目が多いのはわかっていたが、見た目を気にするような余裕は無かった・・・。
「な、何あの姿?
か・・・かっこわるい。」
黙れ、ヤジ馬。
ってかその台詞は、船を守る任務を果たせていない責任者達に言えよな。
戦っていない連中はバカにされず、仕方なく戦った俺達だけバカにされるなんて理不尽だ!!
話す気力すら無くした俺は、せめて心の中だけでも文句を言うのであった。




