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第266話 真相編⑥ 子供達の望むもの

俺達は本当の意味で勇者の子供だった訳じゃなかった。

勇者の『遺伝子を持つ』子供に過ぎなかった・・・。


そしていつ死ぬかわからない身だったのは、魔王の呪いのせいじゃなかった。

元は人間だったのに頂上国の連中から、勇者の遺伝子を植え付けられたからだった。

つまり歪な存在だから、寿命が短かったのだ・・・。



だから例え魔王を倒そうが死の呪縛は解けず、俺達が救われる事は無い。

どう足掻いても俺達は救われない。

・・・救われないんだ。


「・・・。」


そんな哀れな俺達を魔王は無言で眺めている。


「俺達を殺したいんなら、好きにしろよ。

 魔王。」


どうせ俺達に希望は残されていない。

だからこの場で殺されようが構わない。


「・・・俺は魔王と戦うぞ。」


「レイド・・・。

 何を言ってるの?

 魔王を倒しても、私達は救われないんだよ。」


「わかってるさ、ユラ。

 だが最後に世界最強の存在と戦うのも一興だろう。

 ・・・わずかな時を生き長らえるのも、ここで無様に殺されるのも、大差ないのだから。」


なんだ、いつもの戦闘狂か。

と、一瞬思ったが、多分違う。


強者に戦いを挑む時、レイドはもっとわくわくした感じだった。

が、今は自暴自棄になってるようにしか思えない。

死にたがってるようにしか思えない・・・。



「そんな理由で魔王に挑まれても迷惑じゃ。

 ・・・もしも死に場所を求めているなら、勇者の子供達よ。

 わしらと共に世界を破壊せぬか?」


「なん、だと・・・?」



だが横からヒノラーがとんでもない提案を行う。


「・・・・・・・・・・・・。

 それも良いかもな。

 どうせ救われぬのなら、己の力で世界をどれだけ壊せるか・・・。

 試してみるのも悪くはあるまい。」


しかしレイドは狂気を秘めた瞳で、ヒノラーの提案を承諾する。


「その話、俺も乗った!!

 このままじっとしてたんじゃ、虚しくて、虚しくて、しょーがねー・・・。

 どーせ助かんねーなら、みーんなぶっ壊してやらあっ!!」


エルム・・・。


「私は遠慮するわ。

 もう戦いたくないから。

 ・・・もう何もしたくないから。」


「私もアカリと同じ。

 疲れちゃった。

 生きるのに疲れちゃった・・・。」


アカリ・・・。

ユラ・・・。


「我らと共に世界を破壊する事を望むか?

 ならば仲間に入れてやろう。


 戦いたくないのであれば、それでも構わぬ。

 邪魔をせぬと誓うなら、危害を加える気は無い。

 この大陸で大人しく余生を過ごすが良い。」


エルム達の話を聞いて、魔王が答える。

自分達と共に世界を破壊するのも良し。

邪魔しないのなら、静かに生きるのも良し・・・と。


「で、ライトよ。

 お主はどうしたいのじゃ?

 今のお主の望みはなんなのじゃ!?」


・・・・・・・・・・・・。


俺の望み、か。

今まであんなに頑張ってきたのに、それが全部無駄だと知って。

もう絶対、助からないと悟って。





運命に絶望し、世の全てを恨んでしまった。

世の全てを壊したくなった。





「なあ、カオス。

 お前、いずれ俺達が運命に絶望するって、わかってたんだな。

 だからあの時、あんな風に言ったんだな・・・。」


「・・・・・・・・・・・・。」


カオスは何も答えない。

が、あいつは幼い俺達に対し、確かにこう告げた。


--------


「ブレイブチルドレン、勇者の子供達よ。

 そう遠くない未来、お前達は自らの運命に絶望し、人間を・・・世の全てを恨む事になるだろう。

 ・・・ならばせめて、束の間だけでも偽りの平和を味わうが良い。」


--------


と。

どうやらあいつの予言通りになってしまったようだ。


そうだよ。


ロクでもない運命を背負わせた頂上国の連中が憎い。

俺達がこんなに辛く悲しい思いをしているのに、平和に暮らしている人達が憎い。

憎い、憎い、憎い!!


「世の中の全てが憎い。

 全てを壊したい。

 壊したくてしょうがないんだ。」


憎悪が止まらない。





「こんな世界なんて・・・。」



どうせ助からないなら・・・。



どうせ希望がないなら・・・。



どうせ死んじゃうなら・・・。



だったら、こんな世界なんて・・・。









「こんな世界なんて、滅ぼしてやる!!!!」









「ダメーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!」









!!!!????





ミライ・・・?


これまでピクリとも動かなかったミライが、魔王の咆哮すら霞むような声を上げて。

魔王も、カオスも、ヒノラーも、ブラックを苦しめていた魔族達さえも。

驚いた表情をしながら、ミライの方へ顔を向ける。


「さっきまでの話はぜ~んぶ、聞こえてたわ。

 でもダメよ。ライト。

 世界を滅ぼすなんて、そんな事言わないで!!」


「・・・ミライ。」


「エルムとレイドもよ・・・。

 魔王と一緒に世界を壊そうなんて、さ。

 そんなの絶対ダメよ。」


「!!!!

 ・・・。」


・・・なんでだよ。


「どうしてそんな事を言うんだよ!?

 ・・・俺は世界が憎いんだ。

 ・・・世界を壊したいんだ。

 全部、滅茶苦茶にしてやりたいんだっ!!」


この時の俺は魔族と同じくらい、怖ろしい形相をしていたと思う。

なのにミライはいつもと同じ笑顔を俺に向けてくれた。


「う・・・。」


憎しみに染まった心が揺り動かされる。


「あんな話を聞かされて、怒る気持ちはわかるわ。

 だけど、だからって世界を壊すんだ~。

 ぜ~んぶ滅ぼすんだ~。


 ・・・な~んて考えるのはよしましょ~よ。

 ど~せあなた達には無理だから。」


「『ど~せあなた達には無理だから』?

 ふざけるなっ!!

 今の俺の強さなら、一国だって余裕でぶっ壊せるわっ!!」


なんせ上級魔法が使えるんだからな。

ミライは俺の力を舐めてるのか?


「強い魔法が使えるかな~んて、関係ないって。

 だってライトも皆もさ。

 人を殺すなんて、絶対に無理でしょ?」


「あ・・・。」


そうだ。


俺はこれまで、誰一人として殺める事が出来なかった。

魔族も、頂上国の人間さえもだ。


・・・怒りで我を忘れた時も。

平和のためにはそうするしか無いとわかっていても。

それでも誰かを殺す事なんか、出来なかったのだ。


「「「・・・・・・。」」」


そんな情けない事実を突き付けられ、俺の心は急激に萎えてしまった。

人一人も殺せない俺に世界を破壊する事なんて出来るかと問われたら・・・。

答えるまでもないのだから。


俺と同じ結論に達したエルムとレイドが涙を流しながら、立ちすくんでいる。

自分達は世界に怒りをぶつける事さえ叶わない。

そう気付いてしまったから。


「じゃあどうすりゃい~んだよ!!

 アカリやユラのように、死ぬまで引きこんでろってか!?」


だが人を殺す覚悟を。

世界を壊す覚悟を持てないのであれば。

・・・他に取れる道はない。


だってこれ以上戦った所で、無意味なのだから。





「・・・まだ出来る事は残されているわ。

 だから魔王達を止めて・・・。

 彼らから世界を守って!!」





(゜Д゜)ハァ?


「何、言ってんだよ。お前はっ。

 魔王を倒した所で、死の呪縛は解けない。

 あいつらと戦う理由はもう無いんだ!!」


話を聞いてたんならそれくらい、わかるだろっ。


「・・・よく聞いて。

 確かにあたし達は間違ってたわ。

 魔王を倒した所で死の呪縛は解けない。


 でもね。だからもう助からないって訳じゃないの。

 探せば他に助かる方法が見つかるかもしれない。

 だけど世界が滅亡したら、そんな希望も無くなっちゃうのよ!!」


!!!!

他に助かる方法が見つかるかもしれない・・・?


って。


「そんな方法、本当にあるのかよ!?

 もしあった所でもう間に合わんわ!!

 特にミライ。お前は・・・お前はっ・・・。」


今更そんなものを探したって、俺達の寿命が尽きる前に見つかる可能性は限りなく0に近い。

特にミライに至ってはあと1日、命が持つかすら、怪しいのに・・・。





「大丈夫よ・・・。

 あたしは最後まで諦めない。


 だからライトも皆も諦めないで!!

 ・・・お願い。」


「「「「「・・・・・・。」」」」」





なんでだよ。

なんであいつは今、正に死にそうな状況で希望を持てるんだよ!?

そんなあいつを見たら、ヤケになったり、落ち込んでた俺らがバカみたいじゃないか。


ちくしょう・・・。


「茶番は終わりか?

 勇者の子供達よ。」


・・・魔王。


「そんな無意味な希望に縋って、我と争うつもりか?

 我の邪魔をするなら、どのような事情があろうと、容赦なく滅ぼすぞ!!」


・・・・・・。





「なあ、魔王。

 もう世界を滅ぼすなんて、止めないか?

 そんな事するくらいなら、一緒に助かる方法を探そうぜ!!」





「なんだと!?」


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読んで頂き、ありがとうございました。

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