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第206話 外伝13 ダイチの旅立ち

7人目の勇者の子供ダイチ君のお話。

基本的に彼は主人公一味と別行動を取っているため、どうしても出番が少なくなりがちです。

が、彼には物語の結末を左右する大事な役割があるため『こんなキャラもいたなぁ』程度には覚えて頂けると幸いですw

Side ~ダイチ~


「や・・・やっと、完成したんだ。

 魔族を人間に戻す薬が。」





僕の名はダイチ。

闇大陸の竜の山に住んでいる勇者の子供でね。

マンドレイクの遺伝子を持つ魔族フラウ、ケルベロスの遺伝子を持つ魔族ハル、ハナ、サクラの5人で暮らしてるんだ。

そして彼女達を魔族から人間に戻すための研究を続けている。


魔族には『合体岩』という、血を一定量吸わせると、その生物の遺伝子の塊に変化する岩が埋め込まれている。

例えばの話、ケルベロスの血を『合体岩』に吸わせた後、それを人間に飲ませたらね・・・。

あら不思議、ハルのようなケルベロスの遺伝子を持つ魔族の出来上がりって訳さ。


そんな魔族を元の人間に戻すためには『分解岩』という、『合体岩』を粉々に打ち砕く岩が必要なんだ。

けれど『分解岩』だけでは、『合体岩』による負担のせいで削れてしまった寿命までは戻らない。

削れてしまった寿命を元に戻すためには、伝説の霊薬『神酒ソーマ』も手に入れなければならない。


かなり手間取ったものの、ライト達が協力してくれたおかげで、無事『神酒ソーマ』をGet!!

更に彼らから貰った魔族に関する研究成果が記された本のおかげでね・・・。

ようやく魔族を人間に戻す薬が完成したんだ!!


********


「これが魔族を人間に戻す薬・・・なの?」


「うんっ!!

 そうだよっ。」


僕はそれをベッドで寝込んでいたフラウに渡した。

今の彼女はライト達と出会った時よりも体調が悪化し、まともに起き上がる事すらままならない。

・・・だから薬が完成して、本当に良かったよ。


「「「おめでとう。ダイチお兄ちゃん!!」」」


「ありがとう。ハル、ハナ、サクラ。

 君たちの分も用意してあるから、薬が上手く効いたら・・・。

 効いたら・・・あっ!?」


しまったっ!!

・・・薬の完成に浮かれる余り、大切な事を失念してた。


「どうしたの?

 ダイチ。」


「ゴメン、フラウ。

 薬が完成したのは良いけど、本当に効果があるのか実験出来ない。

 安全かどうかもわからないものを君に飲ませられないよ!!」


けれどこの薬は実質、魔族専用の薬だから、僕の体を使って実験するのは無理だ。

だけど僕とコンタクトの取れる魔族はフラウ以外ではハル達3人だけ。


「「「?~。」」」


・・・だからと言って、ハル達を投薬の実験台には出来ない。

彼女達はライトから預かって欲しいと頼まれた子供でね。

お手伝いとかもバッチリしてくれる、とっても良い子達だもの。


くそうっ。

もしも手元に『合体岩』があれば、外の魔物を合成獣化し、投薬実験が出来るのに・・・。


って、ダメ、ダメ!!

いくら相手が魔物でも、そんな非人道な真似を行うなんて良くない!!

・・・どっちみち『合体岩』を持ってない以上、どうしようもないけど。


僕は一体、どうすれば良いんだ!?





「なんだ、そんな事・・・。

 気にしなくても良いのよ?」





えっ?


「私はダイチを信じてるから。

 あなたの薬を飲めば、必ず人間に戻れるって。

 元気な体になれるって、信じてるから!!」


「・・・フラウ。」


そして彼女は一切の躊躇いなく、僕の作った魔族を人間に戻す薬を飲んだんだ。


********


「じゃあ、行ってくるね。」


「行ってらっしゃーい。ダイチお兄ちゃん。」

「ライトお兄ちゃん達を助けてあげてね。」

「お留守番は任せてー♪」


小屋の外でハル達の元気な声が届く。


あれから数日後・・・。

僕はこの国を出て、世界を旅する事にしたんだ。

僕ら勇者の子供を蝕む、魔王の呪いを解くために。


けれどライト達とは違うやり方で呪いが解けないか、探すつもりだ。


基本的に呪いを解こうと思った場合、呪いを掛けた張本人を倒すのが1番確実な方法だ。

故にライト達は死の呪いを掛けた魔王を倒そうとしている。


・・・でもこう言うとライト達に失礼かもしれないけど、そのやり方が上手くいかない可能性だってある。

魔王と出会えなかったとか、魔王を倒せなかったみたいな理由でね。


だからこそ、違う可能性を模索するのも大切だと思う。

別に問題を解決する手段が1つだけとは限らない。

他の方法でも呪いを解く事が出来るかもしれないから。


「いいかい、君達。

 もしも具合が悪くなったら、急いで『薬』を飲むんだよ。

 ・・・絶対に無理はしないように。約束だよ。」


「「「はーい♪」」」


でも実は迷ってたんだ。


竜の山は魔物だらけの危険な場所だもの。

彼女らだけを置いて、旅に出るなんて心配で仕方が無いよ。


とは言え、別の場所に引っ越せばOKとも言えない。

悪い魔族はいなくなったようだけど、まだまだこの国は治安は良くないからね。


・・・けれど。


「お願い、ダイチお兄ちゃん。ライトお兄ちゃん達を助けてあげて!!」

「私達、ダイチお兄ちゃんが帰って来るまで、魔族のままでいるから。」

「そうすれば、この山の魔物なんかに負けないもんっ!!」


ハル達と『彼女』の強い意志を聞いて、僕は決意したんだ。

魔王の呪いを解く決意を・・・。

僕やフラウを助けてくれたライト達への恩に報いるために!!


「万一、凶暴な魔族と出会った時の交渉用に『薬』よしっ!!

 ・・・これがあれば彼らに襲われても、きっと見逃してくれるだろう。」


準備も万端。

あとは一歩、前に踏み出すのみ。





「ダイチ・・・。

 ・・・いってらっしゃい!!」





「うんっ!!

 いってくるよ、フラウ。」





こうして僕は竜の山を出て、旅へ出発したんだ!!


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