第200話 災厄編⑤ 光の剣士の決意
「上級魔法を使えぬ者らが、ガイア相手にあそこまで粘るか。
大したものよ、奴らも。
だがそれでも我ら魔族には・・・届かぬ!!」
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「俺に1つ考えがある。
頼む。
お前らの力を貸してくれっ。」
「頼みとはなんだ?
師匠。」
「なーに、簡単な事だ。
お前ら全員で、ガイアへ攻撃魔法を放って、気を逸らしてくれ。」
「えっ!!
でも・・・。」
とりあえず攻撃なんて策で、ガイアをどうにか出来るのだろうか?
「大丈夫だっての。
闇の剣士様を信じろ!!」
・・・。
どうせ俺なんかでは、ガイアへの打開策など思い浮かばない。
しかも奴も結構なダメージを受けているとは言え、こちらの被害はそれ以上。
こんな調子で戦い続けても、ジリ貧でしかないだろう。
「わかったよ。
俺、師匠の策を信じる!!」
********
「行くぞ、ガイアぁああああああああ!!!!
メガ・ホーリー・ソード!!」
「メガ・アイス・ランス!!」
「メガ・ホーリー・ソード!!」
師匠の策に従い、俺・レイド・光の剣士はガイアに向かって、ひたすら攻撃魔法を放った。
「「「うぉおおおおおおおお!!!!」」」
傍で話を聞いてた戦士らも協力してくれるようで、ガイアに攻撃魔法を放っている。
が。
「そんな闇雲な攻撃など、通じるかぁ!!」
ガイアは俺らの中級魔法など、片手で軽々と弾いてしまう。
初級魔法に至っては、防御する素振りすら見せない。
・・・だよなあ。
こいつってそれくらいは平気でやってのける怪物だからなぁ。
「うぐっ!?
ち・・・。」
しかし右腕を少し痛めているのか、払いのける度に少し嫌そうな表情を見せている。
そこから活路を見出せるかっ!?
「「「ハアッ、ハアッ。」」」
「ライト・・・。
皆・・・。
・・・あたしも中級魔法が使えたら。」
けれど既に誰も彼もが少なからずダメージを負っており、体力も尽きかけていた。
こんな調子じゃガイアを押し切る事は出来ない。
「それで、終わりかぁああああああああ!!!!!!!!」
クソっ。
このままじゃ!!
「終わりでいーんだよっ!!」
「!!??」
師匠!?
そういや師匠は一斉攻撃に加わってなかったが、どこへ・・・。
「ぐああああああああ!!!!????」
更には突然のガイアの悲鳴!?
師匠の攻撃か?
でも一体、どこから・・・。
「あっ!?
あんなところに!!」
ヒカルが指差す方を見ると、いつの間か師匠がガイアの右腕の上に立っていた。
しかも奴の右腕には闇の剣が深々と突き刺さっている。
先ほどの悲鳴は剣を突き刺されたのが原因だろう。
「あのバカ・・・。
なんて危険な真似を。」
隙を作れ、ってそーいう事かよっ!?
お前らに気を取られている隙にガイアへ接近してやるぜ、と。
そして右腕をぶっ潰してやるぜ、と。
「俺も剣士だから、よーくわかるぜ・・・。
剣なんてものはよー。
腕や足を痛めてると、存分に振るえないってな!!」
「・・・き、貴様ぁ!!
あぐっ!?」
などと軽口を叩きながらも、師匠はとにかくガイアの右腕を突き刺しまくる。
我が師匠ながら、なんてエグいやり方を。
「・・・ロングめ。
まずはガイアの牙を削ぐ事を優先する気か。
それは良いが、だからと言って無茶しすぎだっ。」
ガイアに万全の状態で上級魔法を放たれては、全滅待ったなしだ。
だからこそ先に四肢を痛めつけて、可能な限り相手の攻撃力を削ごうって作戦のようだ。
「潰れやがれーーーーーーーー!!!!!!!!」
しかしこれ以上、右腕を痛めつけられたくなかったのか、ガイアが左手で師匠を叩き潰そうとする。
「うおっ!?
てめっ!!
俺は蚊じゃないんだぞ?」
軽快に飛び跳ねながら、師匠はガイアの攻撃を回避し続けるも。
「今だっ!!」
「あっ?」
師匠が飛び跳ねる瞬間、なんとガイアは右腕を引っ込めた!!
「ゲッ!?」
「くたばれーーーーーーーー!!!!!!!!」
足場を失い、落下するしかなくなった師匠に向かって、ガイアは拳を叩き付ける。
「!!!!????」
師匠は俺らの頭上すら超え、ぶっ飛ばされた!!
「「師匠っ!!」」
「ロングっ!!」
・・・おいおい。
師匠は無事なのかっ!?
「「闇の剣士っ!!」」
ミライとヒカルが慌てて、闇の剣士が飛ばされた方へと走っていくが・・・。
ガイアに全力でぶん殴られた挙句、あんな高い位置から地面に落ちて、さ。
・・・いくら師匠でも大丈夫なんだろうか?
「他人の心配をしている場合かぁああああああああ!!!!!!!!
ギガ・ミスリル・ブレード!!」
師匠に続いて、俺らもまとめて倒そうと、再びガイアは上級魔法でゴーレムを形どった衝撃波を放つ!!
って、左足と右腕をめちゃくちゃ痛めつけられてるのにさぁ。
それでも中級魔法の何倍も強そうじゃねーかっ。
「ぐっ!!
メガ・ホーリー・ソード!!」
「メガ・アイス・ランス!!」
「メガ・ホーリー・ソード!!」
「「「うぉおおおおおおおお!!!!」」」
それでも俺、レイド、光の剣士、その他戦士達は奴の攻撃に対抗すべく、攻撃魔法を放った!!
だがっ。
「UGAAAAAAAA!!!!!!!!」
俺らの渾身の一撃など、上級魔法には敵わず、簡単にかき消されてしまう。
も・・・もうダメだ。
「・・・。
ライト、レイド、皆っ!!
お前達は少しでも遠くへ逃げるんだっ。」
えっ?
「うぉおおおおおおおお!!!!」
なんと光の剣士は迫りくるゴーレムへ単身、突っ込んだのだ。
・・・なんでっ!?
「はぁああああああああ!!!!」
そしてゴーレムに向かって光の剣を直接、斬りつける。
確かに俺らの魔法は遠距離から攻撃するよりも、直接殴り付ける方が威力は高い。
けれどあのゴーレムは多少、やり方を変えた程度でどうにか出来るシロモノではない。
現にゴーレムをほとんど食い止められず、光の剣士は傷付くばかり。
「何やってんだよ、アンタはっ!?
んな真似したら、本当に死んじゃうだろうが!!」
「・・・なーに。
お前らを、ライトを守れるなら本望だ。
それでかつて、我が子を守れなかった罪を償えるならっ。」
って、こんな状況でも俺を息子扱いかっ!?
まさか死を直面にしても考えを改めないなんて、思わなかったわっ。
「バカ野郎っ!!
何度も言うが、俺はあんたの息子じゃない・・・。
息子じゃないんだから、あんた1人が犠牲になる理由なんかないんだーーーー!!!!」
あんな勘違い男に自己犠牲なんぞ完遂されたら、俺は一生後悔する。
だから光の剣を携え、ゴーレムに向かって突撃した!!
「俺だって、おめおめ逃げてなどいられるか・・・。
この国の人々を守るためにも・・・。
ユラや師匠達の想いを無駄にしないためにもっ!!」
俺だけではなくレイドも逃げるのを良しとせず、氷の槍を構えながらゴーレムに突撃する。
「「うぉおおおおおおおお!!!!」」
「待て、お前ら・・・。
子供が命を投げ捨てるような真似などっ。」
光の剣士がゴーレムを剣で斬り付けながらも、戻るよう促すが・・・。
「UGAAAAAAAA!!!!!!!!」
やはりゴーレムは抑えられず、俺達3人の武器は砕け散ってしまった!!
「ライトっ!!
レイドっ!!」
光の剣士が咄嗟に俺ら二人を覆いかぶさるように倒れ・・・。
それが俺が意識を失う前に見た最後の光景だった。




