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第199話 災厄編④ ガイアの切り札

ついに本気を出し、上級魔法まで使って牙を剥く巨人族の遺伝子を持つ魔族ガイア。

そんな奴の隙を突いて、左足に集中攻撃を仕掛けるエルム。


だがガイアの反撃を食らい、なんとエルムは踏み潰されてしまったのだ!!

俺らの約20~30倍もの大きさを誇る巨人に・・・。





「エルムーーーーーーーー!!!!」





アカリの悲痛な叫び声が轟く。

エル・・・ム。

今度こそ、本当に死・・・。


「あ・・・。

 が・・・。」


い、いやっ。

まだ生きている。

良かった。


・・・しかし。


「ここまでしてまだ生きているとは、大した生命力だ。

 良かろう。

 今度こそ、確実にトドメを刺すとするか・・・。」


そんな怖ろしい事をのたまいながら、ガイアは大剣を振り下ろす!!


「や、止めてくれーーーー!!!!」


このままでは、エルムが殺されてしまう!!

しかしガイアが俺の懇願など聞き入れるはずもなく、大剣がエルムを・・・。





「メガ・ホーリー・ソード!!」





・・・襲う前に強烈な光の衝撃波がガイアの大剣に幾度となく叩きこまれた。

そのおかげでエルムに向かって振り下ろされた大剣の軌道がわずかに逸れる。


「なっ!?」


この攻撃は俺がやったものではない。

俺以外に『メガ・ホーリー・ソード』が使える人物は、この場でただ1人。


「光の剣士!!」


そう。

光の剣士が敵の大剣の軌道を逸らし、エルムを守ってくれたのだ。


「エルムは絶対に死なせないっ!!

 メガ・サンダー・ロッド!!」


アカリがガイアの顔面に向けて雷を・・・。


「!!!!

 ・・・・・・。

 ???」


・・・当てずに寸止めしている。

まるでガイアの頭を包み込むかのように。


って、そっか!!

これはアカリの得意技だ。

雷で視界を遮って、相手の目を眩ませるやーつ。


「ナイスだっ。

 アカリっ。」


その隙に光の剣士がダッシュでエルムを拾い、ダッシュでこちらまで戻って来た。


「エルムっ。

 無事かっ!?」


「大丈夫だ。まだ生きている。

 が、かなり危ない状態だ。

 頼む、そこの君。エルムを医療施設まで連れてってくれっ。」


「は、はいっ!!」


光の剣士が側にいた戦士にエルムを任せる。


「エルム・・・。

 死なないでくれっ。」


「おいコラっ。

 せっかくエルムとアカリが作ったチャンスを無駄にする気か?

 今こそ反撃のチャンスだっ!!」


・・・そうだ。

師匠の言う通り、ここは動揺している場合じゃない。

急いでガイアを倒さなければ、本当に仲間を失ってしまうかもしれない!!


「「「うぉおおおおおおおお!!!!!!!!」」」


俺、レイド、光の剣士はガイアの腹部めがけて、ありったけの攻撃を撃ちこんだ。


「うがあっ!!??」


視界を遮られた所に意識外の攻撃を受けたからか、かなり効いているようだ。


「ユラ。

 お前は敵の右手・右腕を集中的に狙えっ。

 まともに剣を振るえなくしてやれっ!!」


「うんっ。

 メガ・ウインド・アロー!!」


「あだっ!?

 う・・・腕が。

 ぐほっ!?」


「「「「「「「「俺達も行くぞーーーー!!!!」」」」」」」」


更にはユラ、師匠、戦士達も攻撃に加わり、俺達は無心になって攻撃を続ける。

・・・にしても既に何十発もの中級魔法を命中させてるのにさぁ。

まだ倒れる気配がないとは・・・。


いくらなんでもガイアの野郎、頑丈すぎるわ。





「や・・・やるではないか。

 しかしもう遊びは終わりだ。

 この大剣の真の力を持って、貴様らなど吹き飛ばしてくれるわーーーー!!!!」





しかも度重なる攻撃に増々ヒートアップしたのか、ガイアは巨剣を振りかざし、衝撃波を・・・。

衝撃波・・・を?



「ゴー・・・レム?」



なんとガイアは巨剣からゴーレムの姿をした衝撃波を作り出したのだ!!

・・・俺らも修行などで、龍なんかの形を模した衝撃波を放った事はあった。

が。



「UGAAAAAAAA!!!!!!!!」



なんか衝撃波の分際で叫び声まで上げてるんですけどっ!?

ってか、どー見たって自分の足で歩いてるしっ!!

夢でも見てるのだろうか・・・。


「上級魔法の中には全力で放っただけで、勝手に龍や虎などを模した形となる事がある。

 ・・・しかもそれらは自らの意志を持って敵を滅ぼそうとすると、書物には記されていたが。

 後者など絶対にデタラメだと、話す気すら失せてたのに、まさか真実だったとは・・・。」


「んな事、呑気に話してる場合かっ!!

 早くあのゴーレム型の衝撃波から離れろっ!!

 あんなものを食らったら、一環の終わりだぞっ!!」


しかし師匠の警告も虚しく・・・。



「UGAAAAAAAA!!!!!!!!」



ゴーレムは破壊の力を撒き散らし、一帯に甚大な被害を与えるのであった。


********


「( ゜д゜)ハッ!」


あ、あれ?

俺は一瞬、気を失って・・・。


「ライトっ!!」


「大丈夫かっ!?」


ミライ、ヒカル。


「お前ら、無事だったのかっ。」


「まあ、僕とミライは離れた場所で、怪我人の応急処置なんかをしていたから。」


なんかさっきまでいた場所と景色が違うと思ったら、ミライとヒカルが気絶した俺を運んでくれたからか。

でも他の皆は大丈夫なのか?


「な・・・なんて破壊力だ・・・。

 掠っただけで気を失いそうだ。」


「ああ。

 あの攻撃はガチでヤベーわ。

 エルムがあいつの左足を痛めつけてなかったら、全滅してたかもな。」


「レイド、師匠!!

 良かった。

 無事だったのか。」


「俺や師匠はな。

 だが先ほどの一撃で、また多くの戦士達が犠牲になってしまった。

 ・・・しかもユラやアカリ、光の剣士がどうなったかもわからぬ!!」


上級魔法・・・。

中級魔法とは次元の違う破壊力にただただ驚愕するしかない。

俺が軽く気絶する程度で済んだのも、せいぜいが掠ったくらいだったからだろう。


しかもあの一撃はエルムがガイアの左足を痛めつけていたため、十分な力を出せていないはずだ。

剣なんてものはしっかり足を踏み込みながら、振るうものだしな。

それでもあれだけの威力が出るのだから、とんでもない話だが・・・。



「・・・・・・。」


「光の剣士っ。

 無事で・・・・・・。

 ・・・あ。」



光の剣士は無事だったが、光の剣士に抱えられた二人の女の子・・・。

アカリとユラはピクリとも動かない。


「アカ・・・リ。」


「ユラぁああああ!!!!」


俺とレイドは仲間の無惨な姿に狼狽するばかり。


「落ち着け。この二人はかろうじてだが、まだ生きている。

 適切な治療を施せば、きっと助かるっ。」


「アカリとユラの応急処置は僕とミライに任せてっ!!

 初級魔法しか使えない僕らに出来る事なんて、これくらいしかないから・・・。」


「応急処置が終わったら、急いで医療施設に運んでもらうよう、周りの人にお願いするわ。」


「わかった・・・。

 アカリとユラを頼むっ。」


・・・頼む。

アカリ、ユラ。

どうか死なないでくれっ。





「本当に・・・しぶとい奴らだっ。」





あ。


「ガイ、ア。」


「上級魔法すら使えぬ者らが、これほどにまで粘るとは・・・。

 いくら勇者の子供の力を借りてるとは言え、さすがは武術大陸の強者共よ。

 アーハッハッハッ!!」


エルムに蹴られまくったダメージが大きいからだろうか。

左足を引きずりながらも、それでも巨人は俺らを全滅させようと迫って来る。


・・・どうすれば。

どうすれば、あいつを止められるんだ!?



「そう情けない顔をするな。

 ライト。」


「師匠・・・。

 でも。」


「俺に1つ考えがある。

 頼む。

 お前らの力を貸してくれっ。」


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