第18話 山賊編⑨ 取り巻き達との決着
4体の喋るオーガと対峙した俺達。
その内3体はエルム達に活躍により、倒す事に成功した。
一方、俺は・・・。
「ホーリー・ナイフ!!」
光の衝撃波をオガーに向けて放つ。
しかし・・・。
「ぐぬうううう・・・ふんっ!!」
オガーのアース・ハンマーにより、粉砕されてしまった。
衝撃波を潰すのにやや手間取っていたものの、純粋なパワーはオガーの方が上のようだ。
「はっ、タイマンで俺に勝てると思うなよ!!」
くっ、遠くから頭や腹を狙っても、ハンマーで防がれてしまう。
しかしだからと言って、接近戦を挑むのは危険すぎる・・・。
「くたばれ、ライト!!」
「うわっ。」
オガーが俺に向かって、アース・ハンマーを振り下ろしてきた。
動きは速くないし、距離もあるので、避けるのはそう難しくない。
しかしアース・ハンマーにより、えぐれていく地面を見るのがきつい。
あんな危険な攻撃をされているんだって思うと、怖すぎてメンタルがぐんぐん削られる。
・・・勘弁してくれ。
なんとか隙を狙いたいが、オガーの方も前の経験からか、俺の攻撃はかなり警戒しているようだ。
馬鹿正直に弱点を攻めた所で、簡単に防がれてしまう。
攻撃してもアース・ハンマーで防がれにくい場所は・・・そうだ!!
「そこだ!!」
俺はオーガの脛を狙って、光の衝撃波を放った。
「何!? ぐわっ!!」
やはり手に持ったハンマーで脛を庇うのは困難なようだ。
やっと俺の攻撃が命中したものの、脛に一撃入れた程度で倒す事は出来ない。
だが、オガーの態勢を崩す事には成功した。
「食らえ!!」
続けてオガーの右腕、左腕に向かって光の衝撃波を放つ。
腕にダメージを与え、アース・ハンマーを持てなくする作戦だ。
「ぐおっ、ああああああああ!!
う、腕がぁ!!」
狙い通り、オガーの手からアース・ハンマーが抜け落ちた。
場所が場所なので致命傷には至らないが、光の衝撃波を3回も受けたオガーは激痛で悶えている。
今がチャンス!!
「行けっ、ホーリー・ナイフ!!」
俺はがら空きとなった顔に向かって、全力で光の衝撃波を放つ。
「!!!!!!!!」
まともに攻撃を受けたオガーは、叫び声すら上げずに意識を失った。
脛や腕に意識が向いている最中、隙だらけの顔へ全力攻撃されたら、気絶してもおかしくはない。
やや手こずったものの、なんとかオガーとのタイマンに勝つ事が出来た。
ハジメ、見ているか?
俺、一人でもあの時出会ったオーガに勝てたぜ・・・。
********
「おー・・・遅かったじゃねーか、ライト。
俺なんて、余裕の勝利だぜ!!」
「バカ!! エルム、何考えているのよ?
あんな危ないハンマーに拳で挑むなんて!!
もっと安全を考えなさい・・・心配で見てられないわ。」
俺達が完勝した理由、それはこちらは遠距離攻撃出来るが、向こうは近距離攻撃しか出来なかった事だろう。
・・・遠距離攻撃出来るのに、接近戦を挑むバカも1人いるが。
とは言え、あのパワーはすさまじかった。
もし相手の方が多ければ、いくらリーチで勝っていたとしても、隙を突かれて殴られたかもしれない。
そしたら俺達の命は・・・ああ、もうあんな連中と戦いたくねぇなぁ。
「よくやったぞ、皆。
これで山賊達との戦いもかなり有利になっただろう。」
「さすがだねぇ、あんた達。」
一息ついてた所にエリトさん、アネコさんから声が掛かる。
オガー達の側にいた下っ端山賊達も既に倒しているようだ。
「けど全員、気絶しているだけか。
・・・人語を話すせいで、トドメ刺すのをためらっちまったんだな。
ま、後始末は俺とアネコに任せろ。」
「エリトさん・・・。」
人を殺す度胸が無い俺達の代わりに、エリトさんがオガー達のトドメを刺すと言い放つ。
そういう契約だったとは言え、罪悪感が無い訳ではなかった。
「そんな顔するなって。言っただろ、こういうのは適材適所だ。
お前達は人殺しをしなくて済む。俺は楽に手柄を立てられて嬉しい。
誰もが幸せになれるんだ。気に病む事はないさ。」
「エリトさん・・・。」
・・・無かった訳ではない罪悪感が、完全に吹き飛んでしまった。
やっぱこの人、ずる賢いっつーか。
まあ、俺達に気を遣ってるってのも少しはあるとは思うが・・・多分。
「やっぱり、こいつダメだわ。
表向きは爽やかイケメンぶってるけど、中身がどうしようもねぇ!!」
アネコさんがめっちゃ毒舌!!
なんかエリトさんに嫌な事でもされたんだろうか?
俺達の場合は持ちつ持たれつだから、そこまで悪く思ってないけど。
中身云々の話はノーコメントで。
「アネコさん。良いの?」
「ユラ・・・何、気にするな。
お前はまだ子供なんだ。やりたくもない人殺しなんてしなくて構わない。
精神教育上、良くないしな。」
ああ、ユラはそういう理由で人殺しを免除されていたのか。
俺達もエリトさんに悪人を殺す覚悟は持つべきなのかって、聞いた事があった。
けどエリトさんは、『お前らみたいなヘタレが嫌々人殺しに挑むのは止めとけ。心が歪むだけだ。』
・・・って言って、俺達が人を殺す事に反対したんだっけ。
バカにされているとは思ったが、結局、言う通りにしちまってるからなぁ、俺達。
にしてもユラと俺達って、人殺しを止められている理由まで似ているんだな。
そんな話をしながらも、エリトさんとアネコさんは気絶しているオガー達にトドメを刺そうとしていた。
言葉を交わしたせいか、殺して欲しくないって気持ちも少しあったが、止める気は無い。
勝手な理由で大勢の人間を苦しめた連中を、安っぽい同情で庇うのもあれだし・・・。
エリトさん達が剣を振り下ろす直前、俺達の前にボロボロになった兵士達がやってきて、信じられない事を言い出した。
「ア、アネコさん。エリト。ユラ・・・と、その子達は誰? って、それどころじゃない!!
大変だ!! この国最強の魔法戦士4人が、山賊の親分ハオガーにやられそうなんだ!!
頼む。どうか手を貸してくれ!!」
「「何!!!!」」
兵士達からの突然の知らせを受け、エリトさん達の手が止まる。
最強の魔法戦士4人って、確か太陽国の四英雄って言われている・・・。
・・・山賊の親分って、四英雄ですら勝てない程強いのか??
そ、そんなバカな!!
「ちっ、仕方ない。こいつ等のトドメは後回しだ。
皆、行くぞ。四英雄を救い、ハオガーを倒すんだ!!」
「あんた達はそこで倒れているオーガ達の後始末を頼む。
気は失っているが、まだ死んでいない。油断するなよ!!」
オガー達の後処理を兵士達に任せ、俺達はハオガーの元へと向かった。
「ハオガーの元まで、もう少しです。」
兵士の案内を受け、ハオガーの側まで来た俺達。
・・・オガー達の親分って事は、あいつ等よりは強いんだろうな。
け、けど聞いている限りだと向こうは1体。でもこっちは7人。四英雄も合わせれば11人。
11VS1ならうん。大丈夫、大丈夫だ・・・。
ズシーン・・・ズシーン・・・。
? なんだろう、この足音?
あの森でオガーと会った時の事を思い出す。
だけど、その足音はあの時よりもずっと大きかった。
「うわ、で・・・でけぇ。」
「ひっ!!」
「・・・!!!!」
エルム・・・皆? !!
こ、これは・・・・・・!!!!
俺達はオガー達の数倍は大きいであろう、巨大なオーガを見つけた。
あ、あれが山賊の親分・・・ハオガー????




