第17話 山賊編⑧ 取り巻き達との決闘
なんやかんやあって、俺達は山賊の親分の取り巻き達を退治する事になった。
取り巻き達の中には前に出会った喋るオーガ・・・魔族がいるようだ。
・・・あいつの剥き出しにされた殺意は超怖い。
出来れば戦いたくないけど、そうもいかないよなぁ。
まずは喋るオーガ達を探すため、俺達は太陽城下町を駆け回った。
マイ達を送っていた時よりも人や魔物が減っている・・・戦いが佳境に入ったのかもしれない。
しかしそれでも、山賊達に襲われている人達はまだいる。
「はぁ!!」
「ぐわああああ!!!!」
そんな人達を見かけた時は、エリトさんとアネコさんが駆けつけ、救出する。
俺達4人は喋るオーガ達との戦いに備え、体力を温存中なので手出しをしていない。
助かった人々の避難誘導も他の兵士達に任せていた。
そんな感じで、喋るオーガ達を探し回る事しばし・・・。
「や、やっと見つけた!!
オガーさん、あいつ等です。」
「!! あいつはあの時、森で戦った光魔法を使うガキ!?」
声がする方を向くと、オーガ4体とマイ母を助けた際、逃げ出した山賊2人がいた。
あの森で出会ったオーガもいる。
どうやら、オガーと言う名前のようだ。
「はあ、はあ・・・。
親分を探して、親分が手を離せないからオガーさん達を探して、その後こいつ等を探して・・・。
・・・ようやく終わった。手間掛けさせんじゃねぇ!!」
なるほど。大変だったんだ。
だから俺達に山賊の増援が来なかったのか。
変なタイミングで襲われなくてラッキー。
「よう。また会ったな・・・ライトっつったか。
ハジメとか言う女のガキはいないようだが・・・。」
「おわっ、喋った・・・ライトの話は本当だったんだ。
凄ぇ。俺、喋るオーガなんて初めて見た!!」
オガーが話しているのを見て、大はしゃぎするエルム。
ハジメと同じ反応してやがる・・・。
「・・・こ、こいつら。俺達の姿を見てはしゃいでやがる。
なんなんだ、一体?」
「コガー。それにソガー、トガー。
こいつ等をただのガキだと侮らない方が良い。
色々な意味でぶっ飛んでやがる・・・。」
『色々な意味』ってのが凄く引っ掛かる。
喋るオーガ見てはしゃいでたのは、ハジメとエルムだけだぞ?
「つまりこいつ等が、魔法を使うガキ共って事で良いんだよね?
ガキの数が1人足りないみたいだけど。」
「あの引率者っぽい2人は魔法を使えないはず。
だから人数的には4VS4でイーブン。
なんだ・・・それならあたい達の楽勝だね!!」
獰猛な表情をしながら、俺達に滲みよる4体のオーガ。
・・・くっ、わかっててもビビってしまう。
「まあ、待て。おい、ライト!!
これ以上、俺達の邪魔をしないと誓うなら、お前とその連れは見逃してやっても良い。
この前、見逃された借りだ。どうだ、悪い条件ではあるまい・・・。」
み、見逃してくれるのか?
こいつ、思ったよりも寛容だった!!
「オガー。何バカな事言ってんだい!?」
「落ち着け。ソガー。
2人掛かりだったとは言え、あいつ等はこの俺を負かす程度には強いんだ。
戦わずに済むなら、それに越した事はなかろう。」
・・・。
普段の俺ならきっと、オガーの提案に従って逃げると思う。
けど!!
「ありがたいお言葉だけどな、オガー。
ここでお前達から逃げたら、俺達の知り合いが酷い目に合うかもしれない。
だから俺は・・・俺達は逃げない!!」
「ほぅ?」
「お前達の方こそこれ以上、この大陸で暴れないって誓うなら、見逃してやっても良いんだぜ?」
「はっ、言うじゃないか!!
だがな、あの時と違って今回は人数的に互角だ。前みたいにいくとは思うなよ。
コガー、ソガー、トガー、行くぜ。あいつ等を皆殺しにするんだ!!」
「「「「アース・ハンマー!!」」」」
オガーの号令と共に、4体のオーガは魔法のハンマーを生み出した。
予想はしてたけど、他の3体も魔法が使えるんだな・・・。
「よし。ライト、エルム、アカリ、ユラ。
あのオーガ達はお前達に任せたぜ!!
俺とアネコはお前達に邪魔が入らないよう、他の連中を始末する。」
「エリトさん・・・。
作戦だってわかっていても、その態度はズルいし、情けない。」
「何言ってんだ、アカリ。適材適所だろ。
俺1人じゃ喋るオーガ1体にだって敵わねぇしな!!
はっはっはっ。」
残念なイケメンに脱力しつつも、俺達4人は4体のオーガ達と対峙する。
同じ人数なためか、自然と1VS1×4のような形になっていた。
もし誰か1人でも負けると、数で押されて全滅する恐れもある。
だから負けられない・・・絶対に負けられないんだ!!
********
「あんた・・・確か、コガーっつったか? 俺が相手だ!!
いくぜ、ファイア・ナックル!!」
エルムの魔法、ファイア・ナックルが発動し、エルムの拳に炎が纏う。
「くたばれ、小僧!!」
コガーがアース・ハンマーをエルムに向かって振り下ろす。
しかしエルムは避けようともしなかった。
・・・って、おい。まさか!!
「俺の拳とお前のハンマー。
どっちが強いか勝負だ!!」
「バカめ。拳でハンマーに敵うわけなかろう。
潰れてしまえ、小僧!!」
あほーーーー!!!!
何インファイト挑んでんだ!?
遠くからでも攻撃出来るんだから、距離を取って戦えよ。
ビックボアーや下っ端山賊のような、雑魚じゃないんだぞ!!
振り下ろされるアース・ハンマーに向かって、直接、炎の拳を叩きつけるエルム。
つ、潰される。エルムが死んじゃう。
エルムーーーー!!!!
しかし俺の予想に反し、エルムがアース・ハンマーに潰される事は無かった。
炎の拳と大地の金槌によるぶつかり合いは、互角の勝負を繰り広げている。
「な!? 俺のアース・ハンマーが!!
くっ、こんな小僧に押されてたまるか。」
「うお、思った以上に強ぇ!?
けどな、俺の拳をなめるなよ!!」
今はわずかにエルムが押しているようだが、油断は出来ない。
もしファイア・ナックルがアース・ハンマーに負けたら、エルムはぺちゃんこになって死んでしまう!!
しかし拮抗はそれほど長く続かなかった。
「ん・・・・・・あち、あちーーーー!!」
熱い・・・?
!!
もしかして、ファイア・ナックルの熱がアース・ハンマーに伝わっているのか?
柄にさえ熱が届いていたせいか、コガーの手からアース・ハンマーが離れた。
「あれ、なんか力が弱まった・・・?
よくわからないけどチャーンス。
うおりゃああああああああ!!」
その隙を突き、エルムが全力でアース・ハンマーを押し返す。
すると、熱のこもったアース・ハンマーが弾き飛ばされ、コガーの元へと迫った。
「ぶっ!!」
勢い良く弾き飛ばされたアース・ハンマーがぶつかり、コガーは気を失った。
アース・ハンマー自体がかなり熱されていたのも、気絶した原因かもしれない。
「よっしゃあ、勝った!! さすが俺。」
・・・何がさすが俺だ。
偶然の癖に。
危なっかしい戦い方すんなよな。
********
「サンダー・スティック!!」
アカリが雷の棒を振りかざし、ソガーと言う女のオーガを攻撃する。
しかし・・・。
「ふん!!」
アカリの放った雷は、アース・ハンマーによって打ち消されてしまった。
「その程度の雷で、アース・ハンマーを打ち破れると思わない事だね。
今度はこっちの番だ!!」
ソガーがアカリに向かって、アース・ハンマーを振り下ろす。
「きゃっ!!」
敵の攻撃を回避するアカリ。
距離を置いてるので、簡単には当たらないだろうが、逃げてばかりではいずれジリ貧になる。
「くっ、ちょこまかと!!」
「・・・。」
回避しつつも、真っすぐと雷を飛ばすアカリだが、それもアース・ハンマーに悉く弾かれる。
サンダー・スティックから放たれる雷はそれほど速くないので、わかりやすい形で撃っても、強敵相手だと防がれてしまう。
「よし、今よ!!」
再び、アカリがソガーに向かって雷を放つ。
「はっ、何度攻撃しても同じだ。
こんな雷、打ち消してやる・・・何、軌道が変わった!?」
ソガーがアース・ハンマーを振り回し、雷を相殺しようとするも、雷の軌道が変わり、空振りに終わる。
雷は敵の背後に回り込むように動き、ソガー本体へと命中した。
バチバチバチ!!
「きゃああああああああ!!!!」
アカリのサンダー・スティックは、俺やエルムの魔法よりもパワー・スピードが少し劣る。
その代わり雷の軌道を自由に操作する事が可能で、そういった意味では使い勝手が良かった。
バタッ!!
電撃を浴び続けたソガーが気絶し、倒れる。
さすがアカリ。
危なげの無い戦い方だなぁ。
********
「死ね。アース・ハ・・・」
「ウインド・ダーツ!!」
ボンッ!!
「きゃああああああああ!!
て、てめぇ・・・。」
功速に優れる風のダーツが、アース・ハンマーが振り下ろされる前にトガーの顔へと命中!!
たった一瞬でトガーに大きなダメージを与えていた。
しかしユラの容赦ない攻撃は続く。
「ウインド・ダーツ!!」
ボンッ!!
「ぎゃああああああああ!!」
バタッ!!
・・・おい、ユラ?
一度攻撃した所に、容赦無く風のダーツをぶつけるユラ。
・・・同じ場所への集中攻撃って、かなり堪えるからなぁ。
これにはさすがのトガーもたまらず、気絶した。
遠くから高速で攻められるユラにとって、やや鈍重で接近戦しか出来ない相手は格好の餌食だったか。
しかしユラって、俺達4人の中だと最強?
・・・あまり怒らせないでおこう。
こうしてエルム達は3体のオーガを倒す事に成功した。
一方、俺は・・・。




