第187話 第8の子供編① 最後の勇者の子供
「やたらと辺鄙な所に住んでやがるなぁ。
盾姫のやつ・・・。」
「武術大陸にしては、静かな村よね。」
武闘大会終了後、今後どうするかを相談していると、唐突に王様が登場。
盾姫・・・いや、8人目の勇者の子供の居場所を教えてくれた。
なので一晩ぐっすり休んで、戦いの疲れを癒した後、すぐに会いに向かったのだ。
・・・やったら距離があったせいで、目的地に辿り着くまで数日も掛かってしまったが。
に、しても。
「あの人が武闘大会の優勝者、ライト・・・。」
「かっけぇ。」
村人達からすっごいキラキラした目で見られてるなぁ。
けれどこれはこの村に限った話ではない。
「レイドが言ってた事は本当だったよーね・・・。」
「あー。
武術大陸じゃあ、強い奴は尊敬される。
って、話ね。」
俺は先日の武闘大会で優勝、エルム達も好成績を収める。
その結果がこれである。
「・・・あ、あの。
ライトさん。」
「ん?」
他にも色紙を持った状態で、呼び止められ・・・。
「サイン下さい!!」
「あ、うん。
それくらいなら、いーよ。」
「キャーーーー♪♪♪♪」
サインを求められる事もしばしばあった。
ちなみに握手を求められるケースもある。
「なんか、こう・・・。
嬉しいような、恥ずかしいような。」
これまではキャーキャー言われるレイドを羨ましく思ってたが。
いざそういう立場に回ると、なんだか戸惑ってしまう。
「いーじゃん、いーじゃん。
強いだけでチヤホヤされる武術大陸、サイコー♪」
「・・・すーぐ調子に乗るんだから。
エルムったら。」
「私はライトの気持ち、よくわかる。
とっても恥ずかしい・・・。」
「そうか?
別に珍しい事ではあるまい。」
1番注目を浴びているのは俺だが、エルム達も尊敬の的となっており、周りからキャーキャー言われている。
しかし無邪気に浮かれるエルムはいーけど、澄ました態度のレイドはなんかムカつく。
・・・って、そんな下らない事はどうでも良い。
今は盾姫だ。
盾姫。
「なあなあ。
ちょっといーか?」
俺は近くにいた男女に話し掛ける。
「うおっ!?
俺、チャンピオンに話し掛けられた!!」
「いーなぁ・・・。
いーなぁ!!」
はしゃぎすぎだってば。
恥ずかしいよ。
「盾姫がどこに住んでるか、知ってたら教えてくれない?」
「盾姫?
ああ、西の外れの方に住んでるぜ。」
「わかった。
ありがとな。」
軽くお礼を述べ、俺達は教えて貰った方へと進む。
「お、俺・・・。
チャンピオンにお礼、言われちゃった!!」
「いーなぁ・・・。
いーなぁ!!」
・・・うーん。
このリアクションよ。
まあ、あまり気にしすぎないようにしよう。
********
「ここが盾姫、いや・・・。
8人目の勇者の子供の家かぁ。」
「随分、ひっそりとした場所に暮らしてるのねぇ。」
そして今、俺達は盾姫の家の前にいる。
最後の勇者の子供。
俺達と同じ運命を背負いし、子供。
可能であれば魔王を倒すため、共に戦って欲しいところだ。
・・・とは言うものの、うん。
突然『俺達は勇者の子供なんです。魔王を倒すため、共に戦いましょう』なーんっつてもなぁ。
普通なら『アホ共が意味不明な事を喚きながら、訳の分からん戦いを強いている』よーにしか、感じないだろう。
ま、あんまりにも拒絶するよーなら、無理強いせんでいっか。
どーせ魔王を倒せば、盾姫の呪いも解けるのだから。
「盾姫ー。
いるー?」
ドアをドンドンと叩きながら、エルムが呼びかける。
「あたしに何か用?」
うおっ!?
家からじゃなくて、後ろから声が!!
お出かけ中だったのか。
しかし、盾姫の声色・・・。
初対面のはずなのに何故か聞き覚えがあるような。
引っ掛かりを覚えながらも、後ろを振り返ると、黒髪の美少女がキョトンとした表情で立っていた。
「嘘だろ?」
衝撃のあまり、その一言しか発する事が出来なかった。
「あなたが盾姫?
噂のとおり、とっても可愛い女の子。」
「まあっ。
お上手なんだから♪」
「ふーむ。
実戦経験こそ足りぬようだが、大きな才能を秘めているのがわかる。
鍛え抜けば、相当な強者となるだろう。」
「・・・褒められてるのかしら?
でもあたし、戦いにはあんまり興味、ないからなぁ。」
ユラやレイドは特に態度を崩さず、マイペースに盾姫と話している。
だが。
「・・・・・・あ・・・・・・。」
「!!!!!!!!」
俺だけじゃない。
エルムもアカリも衝撃のあまり、まともに話す事すら出来ない。
「お前ら、さっきから妙に静かだな・・・。
って、アカリ!??
何故、急に泣き出すのだ!?」
「だってっ・・・。
だってっ!!」
「・・・えーっと。
この人達、一体どうしたの?」
「わからない。
ちょっと前までは普通だったのに。」
ユラやレイドからすれば、どうして俺達がこんな態度を取るのか、理解出来ずに戸惑ってるのだろう。
けれど俺達だって、ミライの存在が理解出来ない。
そしてつい、俺はあいつの名前を呟いてしまう。
「ハジメ。」




