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第16話 山賊編⑦ 戦いの決意

ギリギリながらも、俺達は避難所である太陽城まで辿り着いた。



マイ一家(+その他大勢)を送り届けると言う目的は果たしたが、これからどうしようか?

もう戦う義務も無いし、ここに残るか、もう一度町からの脱出を目指すか・・・。


けど今は、疲れて眠くてたまらない。

俺達は最後の力を振り絞り、城の広間の隅っこまで歩いて横になった。


あ、もう意識が・・・。


「お前達、よく頑張ったな。

 今はゆっくり休んでおけ。

 戦いはまだ終わってないんだからな。」


・・・この声はエリトさん。

いや・・・何か勘違いをしていないだろうか?


「エリトさん・・・俺達が傭兵として雇われていないって事・・・知ってるでしょ・・・?

 ・・・タダで・・・他人のために命を掛けるなんて・・・そんな事は出来ない。

 俺達は・・・使い捨ての奴隷じゃ・・・ないんだ・・・。」


「わかっているさ。俺だってギルドの人間だ。

 可愛い後輩達にタダで戦えなんて、言うつもりはないよ。

 『タダで戦え』とは・・・ね。ニヤリ。」


・・・エリトさんの笑顔に凄く不吉なものを感じたが、問いただす気力も残っていない。

俺は糸が切れたかのように、眠りについた。


********


zzz・・・はっ!!


・・・・・・。


・・・あれからどれくらい経ったのだろうか。


そしてこれからどうしようか?

ここに残るか、もう一度町からの脱出を目指すべきか?


考えがまとまらないまま、俺は辺りを見回す。


「???」


何故か俺達の周りには、たくさんの兵士や傭兵達がいた。

その中にはエリトさんやアネコさんの他、何故か王冠を被り、ゴージャスな服装に身を包むお爺さんまでいる。

避難した人達も遠くからこちらをちらちらと覗いているようだ。


え、えっと・・・どういう事なの?


思わずエルムとアカリを探すも、二人ともまだ眠っているようだ。

近くには同じく眠っているユラもいる。


何なの、この人達?

どうして俺達を取り囲んでいるの??。


「お、目を覚ましたか。・・・あれから30分ってとこだな。

 本当はもっと休ませたい所だが、今は余裕が無いんだ。許してくれ。」


「エ、エリトさん・・・これは一体?」


「うーん、何だよ。

 うるさいなぁ・・・おわっ!!」


「どうしたの。ライト、エルム?

 !! ・・・この人達、何。何なの?」


俺達の声を聞いて、エルムとアカリも目を覚ます。

ややパニックになっている俺達に向かって、豪華な格好をしたお爺さんが語りかけてきた。


「そなたらがエリトの話していた子供達か。

 聞けば、我が国民達を身を挺して守ってくれたそうではないか。

 その働き・・・誠に見事なり。」


「?? えーと、エリトさん。

 この豪華な格好の爺ちゃん、誰?」


「!!!! こら、エルム。なんと無礼な口を!?

 この方は太陽城の・・・いや、光大陸を統べる王であらせられるぞ!!

 ・・・王よ。この者達の無礼、どうかお許し下さい。」



ゑ?



王様・・・。

・・・・・・ええええええええええええええええ!!!!!!!!


「え、ええーーーー!!

 ひ、ひひ光大陸の王様!?


 は、ははーーーー!!

 ・・・ほら。ライトもエルムも早く!!」


「「はっ、ははーーーー!!」」


「ははは、良い良い。」


思わず土下座するアカリに、追従する俺とエルム。

なんでこんな所に王様が!?


・・・まあ、王様だから城にいてもおかしくないか。

けど、わざわざ俺達の元まで来るのはおかしすぎる!!


「時間が無いので、簡潔に言う。

 ライト、エルム、アカリ。

 我が国を山賊から守るため、傭兵として雇われてくれないか?」


え、アネコさん・・・。

何言ってますの?


「恥ずかしい事じゃが、山賊達の襲撃によりこの国は大きな危機に見舞われておる。

 どうか力を貸してくれぬじゃろうか?

 もちろん、相応の報酬は支給する・・・活躍によっては特別ボーナスも出そう。」


「特別ボーナス!!??

 お、おい。ライト、アカリ。聞いたか? 王様からの特別ボーナスだってさ。

 俺達も山賊退治に協力しようぜ!!」


金にがめついエルムが大はしゃぎで話に食い付いた。


アホか!!

金に目がくらみやがって。

命あっての物種だろうが!!


「い、いや・・・エルム。

 報酬に目がくらんで安請け合いなんてしちゃダメよ。

 だって私達、人殺しなんて出来ないじゃない。」


「うっ!! うーん・・・だよなぁ。

 ・・・いくら悪党とは言え、人間を殺すのはちょっと。」


アカリの言う通り、俺達全員、人を殺す度胸がない。

だが、ここで山賊退治を引き受けると、人を殺す義務が発生してしまう。


「心配するな。お前達が人殺しに抵抗がある事くらい、知ってるさ。

 だから、悪党共の後始末は俺達に任せれば良い。

 お前達は山賊達を戦闘不能にする程度まで追い込むだけで良いから。」


「エリトさん・・・。まあ、それなら。」


俺達は自分で人を殺す事に抵抗こそあれ、他人が悪党を殺す事に抵抗はない。

つまりまあ、自分達の手を汚すのを嫌っているだけだ。

我ながら勝手な考え方だと思う。


けどまあ、依頼や契約でもなければ、そもそも人を殺す義務など発生しない。

だから『自分達で殺さなくても良い』のなら、一応、山賊とも戦えなくはない。


しかし・・・。


「おい、アカリ。何を安請け合いしてんだよ? 冷静になれ。

 今の太陽国は子供を雇おうとするほど、山賊達に追い詰められているんだ。

 そんなヤバい状況で戦いに挑んだら俺達、死んじゃうかもしれないんだぞ!!」


「・・・た、確かにライトの言う通りよ。

 けどそれって、私達が何もしなければユラやエリトさん、マイ達が死んじゃうかもしれないって事でしょ?

 私、何もせずにユラ達を見捨てるような真似、したくないわ。」


「!! そ、それは・・・。」


「それにな、ライト。

 もしこの国が山賊達の手に落ちたら、俺達の故郷である月の町もタダでは済まないだろう。

 良いのか? ギルドのお姉さんや坊主達が犠牲になっても!!」


!!


・・・エリトさんの言う通り、国を滅ぼして増長した山賊達が、月の町を襲わない保証は無い。

最悪、ギルドのお姉さんやガキ共が殺される可能性だってある。


内心、苦悩する俺。

そんな俺をエルムとアカリが心配そうな目で見つめている。





俺は命を掛けて他人を助けるような、そんな物語の勇者みたいな事は出来ない。

だけど、身近にいる人達に危険が迫っているのなら、それを助けられるのが俺・・・いや、俺達しかいないのであれば!!





「わかったよ。王様、エリトさん。

 山賊は怖いけど俺達、戦うよ。

 故郷の皆を守るために!!」


「おお、山賊退治の依頼を引き受けてくれるのか。

 感謝するぞ、勇敢な子供達よ!!」



わああああああああ。

わああああああああ。



うわっ!!

何だこの歓声!?


山賊退治に俺達が加わったくらいで、そんなに騒ぐなよ。

まだ状況はほとんど良くなってないんだからさぁ。



「ああ、引き受けてくれて本当に良かった。もう俺達、山賊に滅ぼされるとばかり・・・。」

「あの子達、俺達の事なんて知るかとか言って見捨てそうだったし・・・・うっ、うっ。」

「この国の兵士や傭兵ったら、頼りない人ばかりだし、もう心配で心配で。」

「一目散に逃げ出す兵士や傭兵も結構多かったからな。マジで助かった。」



何気にヤジ馬達のコメントが酷い。

しかし見捨てるとは心外な・・・命を投げ捨てるような真似、したくないだけだってば。


あと、この国の兵士や傭兵ってそんなに質悪いんだろうか?

ユラやエリトさん、アネコさん辺りが質悪いとは思わんけど。


「ん・・・何、この騒ぎ?」


「やっと起きたか、ユラ。ゆっくり休めたか?

 まだ仕事は終わってないぞ。気合入れろよ。」


ユラも目を覚まし、アネコさんに活を入れられている。

そういやユラは元々太陽城の兵士だから、嫌でも山賊と戦う義務があるんだな。


けど、人殺しは避けていたようだし、それをアネコさんに怒られてる様子も無かった。

いくら兵士とは言え、俺達と同じ子供だからその辺は許されてるんだろうか?


「まあ、俺は高給なら山賊と戦うのは構わないけどよ。

 具体的に何をするんだ?

 町を見回って、山賊を倒したり、人助けすれば良いのか?」


エルムがこれからの方針について、エリトさんに問い掛ける。


「いや。人命救助や下っ端達の討伐は、他の兵士や傭兵達に任せよう。

 山賊の親分退治はこの国最強の魔法戦士4人が担当しているから、大丈夫として・・・。


 お前達とユラは親分の取り巻き4体の討伐を頼む。

 フォローは俺とアネコに任せてくれ。」


え?

まさかの親分の取り巻き退治??

そんなハードル高そうな事を、途中参戦した子供に任せるとか、酷くない???


「なんでも親分の取り巻き達は、オーガにも関わらず人語を使うようだ。

 人の知能を持つオーガなど、相当危険な存在に違いない。油断するなよ。」


あ、やっぱりその取り巻きって喋るオーガの事なんだ。

嫌だぁ、会いたくねぇ!!


「まっ、大丈夫だろう。

 なんたってライトは二人掛かりとは言え、喋って魔法使うオーガを追っ払ってるんだし。

 なっ。」


・・・そんな事言われても。

しかも4体って、あいつの他に3体も同じのがいるのかよ。

怖ぇ!!



「おっ? それって前ライトが会ったっていう、喋るオーガか?

 やったぜ。俺一回、見てみたかったんだよな!!」


「こら、エルム。ダメよ、油断しちゃ。

 ライトやアネコさんの話を聞く限り、かなり危ない奴等だと思うわ。

 気を引き締めて挑みましょう。」


「・・・頑張る。」



三人共、やる気満々だー。

俺、怖くて怖くて仕方が無いのに・・・。





内心、超ビビりつつも、俺はエルム達と共に、山賊の親分の取り巻き退治に向かったのであった。


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読んで頂き、ありがとうございました。

少しでも「続きが気になる!」「面白い!」と思って頂けたら、評価★★★★★と、ブックマークを頂ければと思います。

どうぞよろしくお願いします。
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