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第177話 武闘大会編⑦ アカリVSユラ 前編

「では試合、始めっ!!」





アカリとユラ・・・。

女同士の戦いが今、始まる!!


「さてと。

 どっちが勝つかな?」


「うげっ!?

 光の剣士!!」


・・・って、なんで光の剣士が俺の隣に座ってるんだ?

つい先ほどまで空席だったはずだが。


なお、エルムは医務室で休んでいる最中だ。

レイド、ヒカルは次が試合なので、控室で待機中。

師匠である闇の剣士の姿も見当たらない。


だから珍しく俺は1人でいたのだが。


「そう嫌がるなよー♪

 あ、そーだ。

 さっきの試合、ライトもエルムも凄かったぞ。」


「そ、そう・・・?

 そりゃどーも。」


いくら相手が光の剣士とは言え、強者から戦いぶりを褒められるのは少し嬉しい。


「二人ともパワーに関しては、もう私に匹敵するレベルだ。

 スタミナや打たれ強さに至っては、私すら上回るかもしれん。

 ・・・マジでお前らに追い抜かされそうで、凄く不安なんだが。」


「あんたなぁ。」


まあ、息子とほぼ同世代の子供に負けるかも!?

ってなったら、不安に思う気持ちは分からなくもないけど。


「おっと。

 そんな事よりも試合、試合。」


とりあえず光の剣士の事は気にしないでおこう。

ベタベタされるのが鬱陶しいだけで酷い実害はないしな。


それよりもアカリVSユラの試合だ。


********


「メガ・ウインド・アロー!!」


「!!!!」


ってユラの奴、初っ端から中級魔法で攻撃か!?

でもこれこそユラのもっとも凶悪な特徴とも言える。


ユラの風魔法は『見えにくい』『とにかく速い』点が、非常に強力だ。

故に早撃ちにおいては右に出るものがおらず、遠距離からの打ち合いなら勇者の子供の中でも最強だろう。


いきなり攻撃を食らったアカリはどう出る・・・。


「メガ・サンダー・ロッド!!」


「!??」


・・・おいおい。


「なるほど。

 先に攻撃させ、耐えた後で反撃の雷魔法を繰り出した。

 と、いうわけか。

 正に肉を切らせて骨を断つ。」


「んな大袈裟な・・・。

 ただの脳筋戦法じゃん。

 ・・・エルムも似たよーな事、やってたけど。」


光の剣士がもっともらしく語るが、戦い方があまりにも強引すぎる。

アカリの奴、随分と吹っ切れちゃってまぁ。



「ハァアアアアアアアア!!!!!!!!」



ユラが態勢を立て直す前に、アカリは雷の杖から巨大な猫の形を模した電撃を生み出した。

見た目がド派手なため、観客達が大騒ぎするが・・・。


「・・・アカリの奴。

 なんであんな無駄な真似を・・・。」


「・・・・・・。」


魔法の力で生物などを模したものを表現する。

光の剣士の元でよく行っていた修行だ。


しかしそれはあくまで魔法の制御力を伸ばすための修行でしかない。

実戦では力の無駄遣いもいいところだ。

ぶっちゃけ、猫型の雷をぶつけるよりも、無心で雷を放出する方が威力もコスパも良いからなぁ。


「舐めているの?」


案の定、ユラが巨大な猫の姿をした雷を風の矢であっけなく粉砕する。

けれど。



「!!??」



ユラに電撃による攻撃がHitした!?

!!??

・・・あの猫型の雷は粉砕したよなぁ。


「ふむ・・・。

 あの猫型の雷は気を逸らすための囮か。

 ユラがそちらに目を取られている隙に、本命の電撃をこっそり近づけ、命中させた、と。」


「んな使い方が!?」


ピエロみたいな戦い方だな、おい。

そして魔法のコントロール力に長けたアカリだからこそ、可能な芸当か。


「ハッタリくらいにしか使えないと考えていた技術をこんな形で昇華するとは。

 子供の発想力とは侮れないものだ。」


これでアカリが一歩リードする形になった。


「くっ!!」


負けられないと、ユラが風の弓を放つ。

しかしアカリはこれをどうにか避ける。


風の弓は攻速が非常に秀でている一方、直線的にしか撃ち出せない。

おまけに中級魔法を二発受けてしまった事により、初撃に比べ攻速が落ちてしまったのだろう。

体力が消耗したり、大きなダメージを受けると、攻撃の精度って落ちちゃうからなぁ


ユラにとっては不利な展開が続くが、その目はまだ死んでいない。


「じゃあ、これでどう!?」


「!!!!

 キャア!??」


なんだって!?

ユラの奴、アカリを直接狙うんじゃなくて、傍の床に向かって風の矢を撃ちやがった!?

凄まじい風が巻き起こり、アカリの体を吹き飛ばす。


が、彼女は空中で体を一回転させ、無事着地。

直接、攻撃を受けてないのもあって、先ほどの攻撃によるダメージはほぼ受けていない。


が・・・。


「メガ・ウインド・アロー!!」


「キャアアアアアアアア!!??」


今度はしっかりと風の矢を命中させる。


「ふむ。一発目の攻撃はアカリの態勢を崩すための布石か。

 そして隙が生まれたところに本命となる攻撃を命中させる、と。」


・・・なんと厄介な。

だけど、ユラの攻撃はまだ終わっていない。


「メガ・ウインド・アロー!!」


「!!??」


更なる風の矢がアカリを襲う。


「ふうっ、ふうっ・・・。」


三回連続で中級魔法を放ち、さすがに撃ち疲れたのだろう。

ユラの攻撃の手が止まる。


「ハア、ハア・・・。」


とは言え、二連続で中級魔法を食らったアカリの方がキツそうだ。

かなりのダメージを受け、立つのも辛そうにしている。

が、アカリの目もまだ死んではいない。



「・・・まだよ。

 まだ戦えるわ!!」



そして小さなユラを巨大な津波で覆い尽くすかのように電撃を放出した!!


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