第15話 山賊編⑥ 太陽城への道
なんやかんやあって、マイ一家を太陽城まで送り届ける事にした俺達三人。
マイ一家だけなら、俺達三人でもなんとか守れるだろうし、そもそも計六人ならそれほど目立たないはず。
こそこそ進みながら、どうしても邪魔な山賊だけなぎ倒していけば大丈夫だろう。
そう思ったのだが・・・。
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いつの間にか、保護対象が十数人に増えていた。
・・・いや。マイ一家以外、助けるなんて一言も言ってないけど。
「おい、あんた達。何でこっちに近寄って来るんだよ?
俺達、兵士でも傭兵でもないんだぞ。服装見りゃわかるだろ?」
俺は光のナイフで山賊達を蹴散らしつつも、文句を言う。
太陽城の兵士や、護衛として雇われた傭兵達は、一目でわかるように服装が整えられている。
なので、いくら俺達が山賊と戦っていようが、兵士や傭兵じゃない事くらいわかるはずだ。
「ライトの言う通りだ!!
俺達、その場のノリでマイ一家は太陽城まで送る事にしたけどさ。
他の奴等まで送るなんて、一言も言ってねーぞ。
送って欲しけりゃ、護衛料を払いやがれ!!」
「ライト、エルム。よしなさい!!
・・・けどこんなに人が増えたら、全員は守りきれなくなるかも。
目立つし、隙も多くなるし。困ったわ・・・。」
山賊達と戦いながらも、愚痴や不安をこぼすエルムとアカリ。
いくら守ると約束してないとは言え、被害者面して寄って来られると余計な気を遣ってしまう。
だってこいつら・・・下手すりゃ、流れ弾に一回当たっただけで死にそうだし。
例え、助ける義務や義理がなくても、目の前で人が殺されたら後味が悪い。
迷惑な連中だよ、全く。
「そ、そんな事言わないで、僕達も助けてくれよ。
人間、助け合ってなんぼだろ・・・なっ!!」
よく言うよ。同じ町の人間もロクに助けない癖に。
「お前ら、いくら何でも薄情すぎるだろ!!
そこまで強いんだったら、守ってくれても良いじゃねーか。」
なんで強いってだけで、タダで他人を守る義務が出てくるんだ?
大体さぁ・・・。
「住民を守る義務があるのは、俺達じゃなくてこの国の兵士や傭兵達だぞ。
なんで素直に兵士や傭兵達に助けを求めないんだ?
その方が絶対良いだろ? 筋も通ってるし。」
「だってあいつ等、全然頼りにならねぇんだ!!
1VS1でも負ける奴だっているし、近寄るなとばかりに追っ払う奴だっている。
だから・・・お前達に頼るしか・・・!!」
「・・・えーと。マジ?」
1VS1で負けるってのはまだしも、守るべき人達を追っ払うってのはさすがに・・・。
あの人達、住民を守るために雇われてるんじゃなかったっけ?
「こら。ライト、エルム。何守るべき人達と言い争ってるんだ!!
そんな場合じゃないだろう?
アカリも弱音を吐かずに頑張れ。まだ先は長いんだ。」
ってかなぁ。なんで・・・。
「なんでエリトさんまで、俺達と一緒にいるんだ?
そもそもエリトさん、護衛として国に正式に雇われてるんだろ?
この図々しい人達、引き取ってくれよ。」
そう。いつの間にかエリトさんまで俺達の側にいた。
一応、近づいてきた山賊を斬り伏せたり、遠くから狙ってくる敵を教えてくれたりして、助けてはくれるんだけど。
・・・でも保護対象がもっと少なければ、エリトさん無しでも何とかなった訳で。
「おいおい。そんな冷たい事言うなよ、俺達の仲じゃないか。
それにどうせあの一家を太陽城まで送る所だったんだろ? ついでだ。ついで。
・・・大丈夫だって。お前達の力ならこれくらいの人数、余裕で助けられるさ。」
「またそんな勝手な事言って・・・。」
・・・そう言えばこの人、たまに厄介事に巻き込んで、俺達に迷惑掛けてくるんだよな。
世話になってる事も多い以上、突っぱねたくても、そうはいかないのが悩みどころだ。
「それにな。俺やアネコ、ユラだっているんだぞ。
これだけの戦力があれば、山賊なんか怖くないさ。」
実はエリトさんだけではなく、ユラやアネコさんも何故か一緒だった。
アネコさんもエリトさん同様、魔法こそ使えないが、剣術はかなりの腕前だ。
山賊やゴブリン程度なら簡単に倒す力がある。
そしてユラは・・・。
「ウインド・ダーツ!!」
「ブギャ!?」
どうやらウインド・ダーツと言う風の魔法が使えるようだ。
ダーツを投げるような形で使うので、接近戦では扱いにくいが、見えにくい上に技のスピードは俺達以上だ。
威力も申し分なく、離れた所にいたゴブリンをあっけなく粉砕した。
確かにこの戦力なら、ギリギリなんとかなるかもだけど、やっぱ納得いかねぇ。
何より納得いかないのは・・・。
「大体何で、俺達を山賊扱いした連中までいるんだ?
俺達の顔、忘れたとは言わせねえぞ!!」
「ひ、ひぇ。あの説は申し訳ありませんでした。
だから・・・どうか見捨てないで下さい!!」
超しれっと、俺達に濡れ衣着せようとしたヤジ馬の何人かが混ざってやがる。
何も悪い事していない俺達を責めておきながら、ヤバくなったら助けろだって?
ご都合主義すぎるわ!!
「こら、ライト!! 怒っていたお前は気付かなかったかもしれないけどな。
その人達はデマに流されて誤解していただけなんだ。
途中からは山賊じゃないかもって、言ってくれてたんだぞ。」
「あ、そう言えば・・・。
確かにこの人達、途中から私達の事、山賊じゃないかもって言ってくれてたわ。」
え? そうなの??
エリトさんとアカリの話を聞いて、内心、俺は動揺する。
そういや、ヤジ馬の全員が俺達の事、悪人扱いした訳じゃなかったっけな。
最後まで疑ってた訳じゃないなら、もう許しても・・・いやいや、うーん。どうすれば?
黙り込んだ俺に向かって、エリトさんが静かに声を掛けた。
「お前が色々不満に感じるのもわかる。
でもな。皆、本物の山賊達に襲われて苦しんでいるんだ。
だから今は太陽城まで連れて行くだけでも良い・・・怒らないで協力してくれないか?」
・・・・・・。
・・・。
「わかったよ・・・。
どうせマイ一家を送るついでだしな。」
俺の言葉を聞いて、放り出されないかと不安がってた人達も安心したようだ。
何はともあれ、俺達はかなり目立つ形で太陽城まで突き進む事になった。
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「ぜーっ、ぜーっ。
た、太陽城まであ、あともう少し・・・。」
大勢の山賊や魔物と遭遇したせいで、魔法を使いすぎて辛い・・・。
攻撃を受ける前に倒せたものの、俺達三人の体力はもう限界に近かった。
同じように魔法で奮闘し続けたユラも、かなり疲れているようだ。
しかしフウさんを助けた時に山賊の親分を呼ばれたはずなんだが、未だに出会っていない。
襲われない理由はよくわからないけど、それだけはラッキーかな。
「う、うわ。また死体か。嫌になるぜ。
でもこの顔、どこかで見たような・・・。」
「エルム、あんまりじろじろ見るのはやめましょう。
気が滅入っちゃうわ・・・。」
あと、住民と思われる死体もしばしば見かけるので、地味にメンタルが削られる。
早く避難したい。
「こいつは・・・。
あの時、最後までライト達を山賊だと言い続けた・・・。
濡れ衣で人を山賊扱いした奴が、本物の山賊の犠牲になったのか。
哀れな話だ。」
「ん、エリトさん。何か言った?」
「いいや、何でも無い。
それよりもう太陽城は目の前だ。
踏ん張れ、ライト。皆!!」
こ、これで休める・・・と思ったらぁ!!
城門の前で十数もの山賊達が、城に攻め込もうとしていた。
兵士達も必死で応戦しているが、押され気味だ。
マズい。このままでは休憩ポイントが潰されてしまう!!
「エルム、アカリ!!
あの山賊達に向かって、一斉攻撃しよう!!
休憩ポイント・・・ゴホン、太陽城を守るんだ。」
「「了解!!」」
「私も手伝う!!」
俺達三人とユラは、味方を巻き添えにしないよう気を付けながら、力を振り絞って魔法をぶっ放す。
かなりヘバってるせいで、いつもよりは威力が落ちているから、死にはしないだろう。
多分・・・。
「「「「「「「「ぎゃあああああああ!!!!」」」」」」」」
俺達の魔法が直撃し、山賊達の大半を倒す事が出来た。
だがまだ数人、山賊が残っている。
けど、もう俺達に魔法を撃つ気力は残っていない・・・。
「よし、よくやったぞ。お前達。
あとは俺達に任せろ!!」
「アンタら・・・やっぱり凄い奴等だったんだねぇ
あたしの目に狂いは無かったわけだ。」
しかし残りの山賊達も、エリトさんとアネコさんの剣を受け、一瞬で息絶える。
俺達と違って、容赦なく悪人の命を奪えるのが凄くもあり、怖くもある。
・・・俺達には人を殺す度胸は無いからな。
ちなみにユラも魔法を使う際、人間に対しては殺さない程度の威力に抑えていたようだった。
まあ、何はともあれ・・・。
「やったーーーー!!!! 太陽城だーーーー。」
「助かったんだ。俺達、助かったんだ。」
「ああ、神様。仏様。ありがとうございます。」
「や、やっと休める。僕、もう限界・・・。」
これでようやく太陽城までやって来れた。
あれから更に人数は増え、全員を守り抜くのは大変だったが、なんとか犠牲者を出さずに来れて良かった。
俺達は体力が限界寸前ながら、ぶっ倒れる前に休憩ポイントまで辿り着いた。




