第164話 迷走少女編③ 少女の逃走
・・・・・・。
・・・。
「( ゜д゜)ハッ!」
あ、あれ?
ここは・・・道場の中、か??
俺、いつの間に寝てて・・・。
「目が覚めたようだな。」
レイ、ド?
かなり疲れ切っているようだが、妙に笑顔だな~。
・・・って、思い出したぁ!!
「く、くそう。
俺はレイドに負けちまったのか。」
レイドとの初めてのバトルは、あと一歩のところで負けてしまった・・・。
「そう落ち込むなよ。」
「お前もレイドも凄かったぜ?」
門下生もいたのか。
普段は粗暴な連中なのに、今日はやけに優しくしてくれる。
「まあ、ライトよりも俺の方が強かった。
・・・ただそれだけの話だ。」
「おい、レイド!!」
ぐっ・・・こいつ。
「ぐ、ぐやじい・・・。」
なんでだろう?
戦う前はお前の方が弱い、と言われたところで気にもならなかったのに。
実際に全力で戦って負けたら、これほど悔しいとは。
「・・・畜生。
すっげえ嬉しそうな顔、しやがって。」
普段はクールぶってる癖によぉ。
「それは嬉しいに決まっている。
お前ほどの強者と真っ向から勝負し、打ち倒したのだ。
武術家として、これ以上の喜びはない。」
「こ、今回だけだからな・・・。
次に勝つのはこの俺だからなぁ!!」
自分がこんなにも負けず嫌いだったなんて、始めて自覚したよ。
俺って意外とヒカルと性根が似てるのかなぁ。
「望むところだ、ライト。
お前がどれだけ強くなろうが、俺は更にその上を行く!!」
「言ったな、この野郎。
俺だっていつか絶対、お前を追い抜かしてやるからな!!」
そうだ。
一度負けたくらいで、いつまでも落ち込んでる場合じゃない。
次こそはレイドにも他の奴らにも勝ってみせる!!
って、あれ?
「そう言えば、エルムは? アカリは? ユラは?
あいつら、どこにいるんだ?
外で戦ってるのか??」
その割に戦いの音は聞こえないが。
「・・・・・・。
ああ、あいつらは・・・。」
レイドの奴、どうしてそんなに歯切れが悪いんだ?
「・・・ったく、あいつらときたら。
ぜ~んぜん、師匠の言う事に従わねえんだからよぉ。
聞き分けのないガキ共だぜ。」
師匠?
どこへ行ってたんだろう・・・。
って、そんな事よりも!!
「師匠。
エルム達がどこへ行ったか、知らない?」
「おー、ライト。
目を覚ましたのか。」
師匠は俺に軽く挨拶をした後、あの人にしては珍しく深刻な表情で・・・。
「・・・お前らが戦ってる間にアカリが行方をくらました。
エルムとユラは俺の制止も聞かず、アカリを探しに出掛けてる。」
なんだってぇ!?
********
「俺の心配が的中してしまったな。」
「心配って、ああ・・・。
武術大陸に行く前、言ってたっけ。
アカリが修行についていけるか、不安だって。」
あの時はなんでアカリだけを心配していたのか、よくわからなかった。
しかし今は心当たりがある。
「・・・レイド、お前。
ひょっとしたら、アカリは闇の剣士の容赦ないやり方に耐えられないかもしれない。
そう考えてたんだな・・・。」
「ああ、そうだ。
現に師匠の厳しすぎるやり方に耐えられず、道場を去る者も少なくない。」
「俺が厳しいんじゃなくて、辞めていった奴らが根性無しなんだよ!!」
これまでもこうなるかもしれない予兆は度々あった。
アカリは決して、根性無しではない。
が、優しすぎる・・・と言うより、甘っちょろい部分が目立つ。
それでも相手がモンスターや悪党ならば果敢に戦える。
けれど同情すべき相手や身内に対しては、傷付けたくないという気持ちが強く出てしまうのだ。
そういう性質が闇大陸では悪い方向に働く事も多く、大ピンチなのにも関わらず、ロクに力を発揮出来ない時もあった。
そんなアカリが仲間同士でこんな過激な戦いを出来るはずがない。
「アカリ・・・。
・・・くっ。」
「おい、ライト?
まさかそんなふらふらの体でアカリを探しに行く気か!?」
「ああ。
もちろんだ。」
門下生が心配そうに声を掛けるが、体の状態なんて関係ない!!
早くアカリを探しに行かないと。
「よせよせ、ライト。
大体、アカリを探してど~したいんだよ?
お前。」
師匠?
「頑張ってアカリを見つけた所でど~なるんだよ?
今のあいつを説得したって、無駄に決まってんだろ。」
随分と突き放した物言いだが、間違ってはないと思う。
そもそも俺自身、アカリと出会ってどうしたいのか、考えがまとまっていない。
・・・だとしても。
「だからって、寝転がってなんていられないよ。
アカリは大切な仲間なんだ・・・。
このまま一人、放っておく訳にはいかない!!」
「!!!!」
ふらふらになりながらも、俺はアカリを探すために外へ飛び出した。
あいつを見つけてどうしたいかはわからない。
けどだからって、放ってなんかおけるか!!
そして止めようと思えば、止められるはずの師匠は、どういうつもりか静観していた。
「・・・・・・・・・・・・。
ったく、反抗的な弟子ばっかで参っちまうよ。
・・・さてと、俺はど~すっかなぁ?」
********
「意外だなぁ、レイド。
お前も探しに行くんだ。」
「ふんっ!!
下らない理由で戦いから逃げ出す臆病者に克を入れに行くだけだ。」
「素直じゃね~なぁ。
お前も。」
こ~して俺とレイドはふらふらになりながらも、アカリを探しに出掛けた。
けれど武術大陸は広いし、アカリが出てからかなり時間が経っている。
・・・こんな状況でどうやってアカリを探し出せば良いのやら。
困ったなぁ。
「うおっ?
ライト、レイド!!
お前ら、そんなボロボロの体で出歩いて大丈夫か!?」
!??
エルム!?
ユラもいるぞ。
けどアカリはいない。
「エルムっ!!
アカリはその、見つからなかったのか?」
「・・・・・・。
あ~、その事なんだが。」
「アカリの事は一旦、放っておきましょう。
私達は闇の剣士の元へ戻って修行を続けるべき。」
って、ユラぁ!?
そんな薄情な台詞を淡々と。
勢い良く探しに行った癖に冷たすぎない?
「ユラ・・・。
なんかこう、お前らしくないぞ?
一体、ど~したと言うのだ。」
レイドですら、ユラの薄情な態度に違和感を覚えたのだろう。
戸惑いながら尋ねると・・・。
「事情は僕から説明するよ。」
お。
「お前は!??
ど~してこんな所にいるんだ!?」
「ライト達に伝言を伝えに来たからさ。
あのね。
アカリは今・・・。」




