第160話 光の剣士編⑬ お泊り会
「父さ~ん。
夕飯の準備出来たよ~。」
「お~。
今行く~。」
あ。
もうそんな時間か。
道場破り(?)をしに、光の剣士の元へ向かったは良いが、すっかり遅くなっちゃったなぁ。
「ど~する、皆。
今から師匠・・・闇の剣士の道場まで戻るの、無理じゃね?」
激しい修行でかなり疲れてるし。
「そうねぇ。
今日は近場の宿に泊まって、明日にでも帰りましょうか。」
だな。
「・・・あ~、オホン。
そういう事なら、今晩はうちに泊まって行かないか?
歓迎するぞ。」
え″!?
「マジで!?
やった。
ラッキー~♪」
「助かる。」
ちょ、ちょっと待った!!
「いやいや、待てよ。
建前上とは言え、俺達は道場破りに来たんだぞ?
なのに泊っていくだなんて、厚かましいにも程があるぜ。」
「・・・ライトよ。
お前はただ、光の剣士にベタベタされるのが嫌なだけだろう。
屁理屈言わずに、素直に受け入れたらどうだ?」
うっ!?
「レイド、てめぇ。
他人事だと思って。」
「他人事だしな。」
しばくぞ、こいつ。
しかし俺以外は光の剣士の提案に乗り気なようだ。
俺に味方はいないのか・・・。
とは言え、今から宿を探すのも面倒だからなぁ。
どうせ今日だけの話だし・・・。
「・・・わかったよ、光の剣士。
一晩、泊めてくれ。」
「そ~か、そ~か♪
もちろん夕飯もご馳走するぞ。
じゃ、行こうか。」
見るからに嬉しそうなのが、なんか嫌。
光の剣士はいつになったら、俺を息子じゃないと理解してくれるのだろう?
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「うまっ、うまっ。」
「おいし~♪」
食卓に並んだ夕飯は想像以上に豪勢だった。
おまけに急な話だったにも関わらず、俺達の分までしっかり準備してあったし・・・。
「な~、ヒカル。
お前んちの食事はいつもこんなに豪華なのか?」
「ん~ん。
普段はもっと普通だよ。」
やっぱ、そ~かい。
「美味しい?
ライト。」
「あ、はい。
おいしいです・・・。」
「そう。
良かった♪」
カスミさん・・・光の剣士の奥さんの笑顔が眩しくて、訳もなく恥ずかしい気分になる。
飯が美味いのは本当だけどな。
「さ、ライト。
遠慮なんかせずにどんどん食べなさい。
エルム達も好きなだけお代わりして良いぞ。」
「やったぜ♪」
俺はもちろん、ついでっぽいがエルム達の事も歓迎する光の剣士夫妻。
・・・絶対、俺を自分の息子だと勘違いして、こんな態度を取ってるんだろうな。
色々な意味で困るが、戸惑ってばかりでもご馳走が勿体ない。
そう考え直し、俺は豪勢な夕飯を堪能するのであった。
********
「あ~。
良い湯だった♪」
「そ~いや、エルム達の寝る場所、どこが良いかな?
部屋はたくさん余ってるけど。」
その後、風呂に入り、今はヒカルと寝る場所について相談中だ。
そんな中、光の剣士が妙に恥ずかしそうにしながら、現れ・・・。
「・・・ライト。」
「何?」
ど~にも対応に困るが、泊めてもらっている以上、邪険にし過ぎるのも良くな・・・。
「今日は一緒に寝ないか?」
「気持ち悪いわ!!」
邪険にし過ぎるのも良くないなんて、少しでも考えた俺がバカだった。
この変態親父が!!
「・・・おいおい。
いくら可愛い我が子が戻って来たからって、それはちょっとなぁ。
変態すぎて引くわ~・・・。」
「???」
これにはエルムすらドン引きである。
レイドは全然、意味がわかってなさそ~だが。
こいつ、そういう知識にも疎いのな。
美男子の癖に襲われた経験が無いんだろうか?
まあ、レイドほど強い奴を襲える輩なんぞ、世界中探しても中々見つからないだろうが。
「父さんさぁ。
それはいくらなんでも、人としてOUTでしょ?
犯罪だよ、犯罪。」
「人としてOUT? 犯罪?
何を言って・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・って、アホかお前らーーーー!!!!
我が子を襲う親なんぞ、いる訳ないだろ!!
そもそも私にそんな趣味なんか、ねぇし!!」
おわっ!!
急に逆切れ!?
「話が見えないのだが・・・。
一緒に寝るとは、同じ部屋で休むと言うだけだろう?
その程度の事で、どうしてそんなに騒ぐのだ。」
「・・・あのね、レイド。
一緒に寝るってのは、そういう意味じゃ・・・。
あ、そういう意味で合ってたのか。」
???
「ま~、そうでしょ。
だって光の剣士、どう見てもライトの事をそ~いう対象として見てないじゃない。」
「聞いた事がある。
子供は大きくなるまで、親と同じ部屋で寝るものだって。」
「・・・そなの?」
アカリとユラの意見を聞いて、俺も少し落ち着きを取り戻す。
親と生活している子供って、そ~いうものなんだ。
「そ~だね。
僕が一人で寝るようになったのも割と最近だよ。
父さんったら、中々子離れしたがらなくてさぁ。」
「おいっ!!
ヒカル!?」
「じゃ~、なんだ?
光の剣士のライトと一緒に寝たい発言は、別に犯罪行為じゃなくてさ。
単に親バカが我が子に甘えたいだけかぁ?」
「・・・・・・。
・・・まあ、そういう事だな。」
なんでこ~いう時だけ、恥ずかしそうにしてんだよ。
昼間は恥も忘れて、変人ムーブしまくってた癖に!!
まあ、身の危険を心配する必要は無さそうっぽいが。
けどだからって、このおっさんと同じ部屋で寝るなんてヤなんだけど。
「もちろん母さんも一緒だぞ。」
「うっ!?」
「ハハハ。
ライトも男の子だなぁ。
父さんよりも母さんに甘えたいってか。」
いや、そうじゃなくてだな。
あんな綺麗な女の人と一緒の部屋で寝るなんて、すっごい恥ずかしいじゃん。
・・・今までもアカリやユラと同じ場所で寝た事は多々あったけど、あいつらは兄弟だからな。
でもカスミさんは赤の他人だもの。
「良いなぁ、ライトの奴。
あんな綺麗な女の人と一緒に寝れるなんて。」
「良くねえわ!!
ってか、その言い方は止めろっての。」
まるで俺が人妻相手に劣情を抱いているみたいじゃないか。
「・・・もうい~じゃん、ライト。
父さんの親バカに付き合ってあげれば?
別に身の危険がある訳じゃないし・・・。」
「おまっ!?」
「そうね。
ライトもたまには家族水入らずで過ごして来たらどう?」
「アカリまで!?
だから誤解すんなって!!
俺と光の剣士は親子じゃね~から・・・。」
地味にアカリ達まで、俺と光の剣士を親子扱いしてないか?
俺の本当の家族は、光の剣士達じゃなくて、お前らなんだぞ??
「よくわからんが、話はまとまったようだな。
じゃあライト。
光の剣士と一夜を過ごして来い。」
「なんもまとまってね~だろ~が!!
ってか、おかしな言い方はいい加減止めろぉ!!」
って、ど~して皆、俺を置いて先へ行く!?
「じゃ、ライト。
また明日ね。」
「ユラまで!?
ちょま・・・。」
・・・行ってしまった。
「そ~いう訳だ。
今晩は父さん達と一緒に寝ような♪」
「何がそ~いう訳だよ!?
もし妙な真似をしたら、ぶった斬るからな!!」
「だからお前らの想像する『妙な真似』なんか、しないっつ~の!!
・・・ったく。
なんで子供って奴は、おかしな知識ばかり身に付けたがるんだ。」
まあ実際に『妙な真似』なんかしないだろうけど、それでもやっぱヤダなぁ。
こんな事になるのなら、強引にでも近場の宿屋を探すべきだったかも・・・。
軽率な判断を後悔しつつも、俺は光の剣士の部屋まで連れていかれるのであった。




