第13話 山賊編④ 山賊の襲撃
ガシャーン!!
グギャギャーーーー!!!!
きゃああああああああ!!!!
うぁああああああああ!!!!
なんだよ、うるさいなぁ。
こんな真夜中に騒ぎやがって、ムニャムニャ。
「ライト、エルム!!
早く起きなさい、早く!!」
・・・ん、アカリ? どうした??
そんな大きな声出して。何を慌ててるんだ?
「・・・うーん、なんだよアカリ。
まだ夜中じゃねぇか。静かにしろよ。」
「エルム!! そんな事言ってる場合じゃないのよ。
さ、山賊が・・・たくさんの山賊が太陽城下町に攻め込んで来たの!!」
zzz???・・・・・・!?
嘘?
俺達は急いで宿屋から抜け出し、物陰に隠れつつ、城下町の様子を観察した。
逃げ回る人々をケダモノのような顔で追い回す山賊達。
中には見境なく物を壊しまくる奴もいる。
放火でもしたのか、燃え盛ってる建物も目立つ。
所々で兵士達が戦い続けているが、とても優勢とは思えない。
犠牲となった人々を食い散らかすモンスターさえいた。
「や、ヤベェ。こりゃヤベェ。
国に喧嘩売る山賊とか、マジヤベェ。」
「ねぇ、どうしよう。ライト、エルム。
私達、どうしたら良いのかしら・・・。」
さすがのエルムとアカリも、こんな状況の前にパニック状態だ。
俺も内心、かなり混乱している。
どど、どうしたら良いんだ、一体。
でも、このままここにいるのは危険だ!!
それだけはわかる。
「と、とにかくこの城下町から早く逃げよう!!
きっと外までは追い掛けて来ないさ・・・。」
多分、山賊達の狙いは太陽城や太陽城下町だ。
数人が外へ逃げ出した所で、わざわざ追い掛けてくる可能性は低いだろう。
一応、太陽城まで逃げて匿ってもらう・・・って、手もある。
最近の山賊騒ぎを警戒してか、万一の時は住民達を保護してくれるそうだ。
とは言え、この様子だと太陽城ごと山賊に潰されそうで怖い。
それならいっそ、外まで逃げてしまった方がマシだと思った。
「そ、そうだな。ここにいるよりは安全だな。」
「え、ええ。そうと決まったら早く・・・早く逃げましょう。」
だけどその前に二人・・・。
特にアカリに伝えないといけない事がある。
「でもエルム、アカリ。山賊達と戦うのはギリギリまで避けよう。
奴らに狙われないようにこっそりと逃げるんだ。
もし、目の前で誰かが殺されそうになっても、絶対に無視するんだぞ。」
「ちょ、ちょっと何言ってるのよ。ライト?
いくら何でもあんまりよ!!
・・・そりゃ進んで人を助ける余裕は無いけど、ついでくらいなら良いじゃない。」
「バカ。考えてみろよ、アカリ。
派手に山賊を倒したりしたら、俺達、きっと目を付けられてしまうぞ?
下手すりゃ戦いに巻き込まれて、大勢の山賊と戦うハメになっちまう。
数人程度ならともかく、たった三人で数十、数百もの山賊に勝てるもんか!!
俺達が生き延びるためにも、逃げる事だけを考えるんだ!!」
仮に俺達が勇者の子供だとしても、無関係の人間を助ける義務なんてない。
太陽城から兵士として雇われているわけでもない。
クズじじぃの戯言じゃあるまいし、他人のために命を掛けて戦うなんて事、出来る訳無いだろ!!
「う、う~ん。そう言われると、なぁ・・・。
・・・・・・アカリ。
お前にとっちゃ辛いかもしれないけど、ここはライトの言う通りにしよう。」
「・・・・・・・・・・・・。
・・・わかったわ。
ライトやエルムを危険な目には合わせられないし、ね・・・。」
少し煮え切らない態度だが、エルム達は俺の考えに納得してくれたようだ。
意見がまとまった所で、俺達は山賊達に気付かれないよう、太陽城下町からの脱出を目指した。
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物陰から物陰へと移動しつつ、俺達は太陽城下町からの脱出を目指す。
とは言え、さすがに完全に見つからないように・・・ってのは無理だった。
しかし、大勢が入り乱れているおかげでピンポイントに狙われる事なく進めた。
よし、太陽城下町の出口まであともう少しだ。
これで俺達だけは無事に逃げる事が出来る。
そう思った時だった!!
「きゃああああああああ!!!!
あ、あなた・・・助けて、助けてーーーー!!!!」
!?
思わず振り向くと、一人の女性が三人の山賊に襲われそうになっていた。
どこかで見覚えがあるような・・・あ、あれはマイのお母さんだったはず。
マイやマイ父はいない。
はぐれたのか? それとも見捨てられたのか??
マイ母の叫び声に、俺より前に進んでいたエルム、アカリは気付いていなかった。
・・・どうする? どうする、俺??
「全く、ピーピーうっせえなぁ。
何があなたーだ? こいつ人妻かよ、つまんねぇ。」
「顔はまあまあだけどよ、人妻なんていらねえや。
他に獲物は山ほどあるしよ。」
「どうする?
やかましいし、殺っちまうか?」
こ、殺すって、本気・・・なのか?
しかもあのクズじじぃとオーガの時にように、復讐などの動機で殺そうとしているようには見えない。
ただ単に気分でマイ母の命を奪おうとしている。
そんな風に感じた。
クズじじぃの時はどっちが悪いかわからなかったし、クズじじぃ本人が救いようのない性格だった。
だから何の躊躇いもなく見捨てる事が出来た。
けど・・・。
罪の無い人を見殺しにして、本当に良いんだろうか?
・・・!!
俺は・・・俺は一体何を考えているんだ。
良いに、良いに決まってるだろうが!!
それにもしあの人を助けたら、俺は山賊に目を付けられてしまう。
・・・俺だけじゃない、エルムとアカリだって巻き込まれるかもしれない。
他人のために仲間を危険な目に合わせるなんて、そんな事は絶対に許されない!!
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「ま、まさかお前達。
マイを誘拐して売りさばこうと・・・?」
「いーや、あいつ等は山賊に違いない!!
誘拐が上手くいかなかったから、嘘を付いて誤魔化しただけだ!!
あの女の子もきっと、あいつ等に騙されてるんだ!!」
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それにそうだ・・・人を助けたってロクな目に合わないんだ。
昨日だって、迷子を助けようとして酷い目にあった。
マイの両親だって俺達の事、山賊だって疑っていた。
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「ブレイブチルドレン・・・選ばれし勇者の子供達よ。
お前達は魔王や魔族達を滅ぼすために生まれて来たのだ。
さあ、今こそ使命を果たせ。我らを・・・世界を救うために戦うのだ!!」
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何が我らを救えだ・・・。
どんなに偉そうな口叩いても、結局は自分の事しか考えていない癖に!!
そもそもマイ母が襲われそうになっているのは、他にも大勢の人が目撃している。
だけど誰も助けようとしない・・・雇われた兵士でさえ、我が身可愛さに逃げ惑う始末だ。
山賊と戦うどころか、一緒に逃げようと手を差し伸べる人さえ存在しない。
「あれ、ライト!?
何そんな所で立ち止まってんだ、早くこっちに来いよ!?」
「そうよ、ライト。何ボーっとしてるの!!
太陽城下町の出口まで後少しなのよ!?」
そうだ・・・人が人を見捨てるなんて、間違った事でも何でも無い。
口では綺麗事を言いつつも、他人なんて当たり前のように見捨てる。
それが人として正しいあり方なんだ!!
だから俺も・・・俺も皆と同じようにあの人を見捨てるんだ!!!!
「や、やめて。来ないで!!
だ、誰か・・・。助けて、助けてーーーー!!!!」
「うるせぇんだよ、このアマ!!
とっとと死にやがれ!!」
山賊の1人がマイ母に向かって斧を振り落とした。
「!! おい、アカリ。見ろよ。
ライトからちょっと離れた所で、誰か殺されそうになってやがる。」
「え・・・、あれってマイのお母さん?
ダメ!! ここからじゃ間に合わない。」
「ぎゃああああああああ!!!!」
「え・・・わたし?」
気が付くと俺は。
マイ母を殺しかけた山賊を、ホーリー・ナイフの衝撃波でぶっ飛ばしていた。




