第144話 入門編⑤ 漆黒の剣
中級魔法より生み出されたレイドの氷と、闇の剣士の闇がぶつかり合う。
「ぐ・・・。
ぐぁああああああああ!!!!」
しかし闇の剣士のパワーの方が上回っていたようだ。
『メガ・ダーク・ソード』による暗黒の衝撃波を受け、レイドが吹き飛ばされる。
「・・・くっ。
まだこんなに力の差があるとは。」
それでも衝撃波の大部分が相殺されたからか、レイドの意識はまだ失われていない。
とは言え、受けたダメージは決して小さくないようで、肩で息をついている。
「思った以上に余裕そ~じゃん?
手塩を掛けて育てた弟子がここまで強くなるなんて、師匠として嬉しい限りだ。
けど、まだまだ頑張れるよなぁ・・・レイド。」
「うっ!?」
なんだか物騒な事を言いながら、闇の剣士がレイドに剣を向ける。
って、まだレイドに攻撃する気かよ!?
あまりの容赦無さにレイドの顔は引きつるばかりだ。
いくらなんでも、これ以上攻撃されると危ない!!
「ダメぇええええええええ!!!!
メガ・ウインド・アロー!!」
「ぐぉおおおおおおおお!!??」
しかしユラが強烈な風の弓矢を放ち、闇の剣士に命中させる!!
「嘘でしょ!!
ユラまで中級魔法が使えるの!?」
「ってか、あの師匠に一本取りやがったぞ!!」
こ、これはこれでやりすぎな気が・・・。
闇の剣士、めっちゃ吹っ飛ばされてるじゃん。
「レイド、大丈夫?」
「ユ・・・ユラ・・・。
まだだ。」
「え?」
ところが中級魔法が直撃したにも関わらず、闇の剣士が倒れる事はなかった。
中級魔法は大型の魔物でさえ、一撃で倒す程の威力なんだぞ・・・。
や、闇の剣士って本当に人間なのだろうか?
「・・・良い一撃じゃねえか。
今のは効いたぜ。」
一応、それなりのダメージは受けているようだが、まだまだ全然余裕がありそうだ。
「な・・・なら、もう一度。
メガ・ウインド・アロー!!」
追撃とばかりにユラが二度目の風の弓矢を放つ。
いくら闇の剣士と言えど、二度も中級魔法を受ければ、あるいは・・・。
「・・・・・・・・・・・・。
はぁ!!」
だがなんと闇の剣士は漆黒の剣で風の弓矢を弾き飛ばしたのだ!!
あ・・・あのユラの『メガ・ウインド・アロー』を・・・。
スピードなら、俺達が使える魔法の中でも最速なんだぞ!?
「すっげぇ速ぇ矢だな、おい。
けどだからって、真正面から馬鹿正直に撃って、食らう訳ね~だろ。
必殺の一撃は小技で態勢を崩してから、使うもんだ。」
いやいや。
いくら真正面から撃ったとは言え、ユラの風魔法を弾き飛ばせるのはあんたくらいだって。
「そ・・・そんな。
・・・うっ?」
そしてユラも中級魔法の連続使用により、疲労が溜まって座り込んでしまう。
「おい、レイド。
お前の師匠って、本当に人間なのか?
実は魔族なんじゃね~のか??」
「バカにするな、エルム!!
師匠は憎しみなんかに囚われるような、心の弱い人間ではないわ!!
本当にギリギリだが、師匠は悪に堕ちてなどいない!!」
「レイド・・・・
お前は一体、俺をど~いう目で見てるんだ?」
『ギリギリ』と言う部分に一抹の不安は感じるが、それはともかく。
「・・・別に魔族全員が憎しみまみれの悪党って訳じゃね~だろ。
フラウやハル達みたいに、前向きに生きてる魔族だっているじゃん。」
「( ゜д゜)ハッ!
そうか、師匠・・・。
あなたは実は魔族だったのか。」
・・・こらこら、レイド。
いきなり手の平返したように師匠を魔族扱いするのもど~かと。
「お前な。
弟子として、その言い草はど~なんだ?」
「あ、いや。
師匠が化物みたいに強いものだから、つい・・・。」
「「「うんうん。」」」
おまけに門下生にまで同調される始末。
「・・・お前らなぁ。
煽てた所で何も出ね~ぞ?」
「いや、煽ててないから。」
化物みたいだと言われたにも関わらず、闇の剣士は満更でもなさそうだ。
この微妙にずれている感じ、やっぱりレイドの師匠なんだなと思わずにはいられない。
「ま、俺は魔族でも勇者の子供でもね~がな。
正真正銘、普通の人間だぞ?」
『普通』かはともかく、ほんっとうにこの人、真っ当な人間だったのか。
人間の皮を被った何かとかじゃなくて。
「さて、と。
じゃあトドメだ。
メガ・ダーク・ソード!!」
え?
「「うわぁああああああああ!!??」」
もう戦えるのか怪しいユラやレイドに向かって、容赦なく暗黒の衝撃波を放つ闇の剣士。
ユラとレイドは仲良く吹き飛ばされ、あっさり意識を無くす。
「あ、あんたなぁ・・・!!
いくらなんでもやりすぎだろ~が!!」
「・・・お前、何を『あいつ』みて~に甘い事、言ってんだぁ?
武術なんてなぁ。
ぶっ倒れるまで戦い合いながら、強くなっていくもんだろ。」
一応、完全に的外れな意見ではないが・・・。
「つ、強くなる前に壊れちゃうって!!」
アカリの言う通り、そんなやり方では強くなる前に心や体を壊してしまう。
「あっはっは・・・安心しろ。
ちゃ~んと『体』はギリギリ壊れない程度に加減、してっから。」
『体』はって、『心』はど~した?
『心』が壊れない保証は無いの!?
しかし闇の剣士の言う通り、ユラもレイドも気を失ってはいるが、致命傷ではなさそうだ。
加減してるってのは、あながち嘘でもなさそうだな・・・。
それでも『修行』としては、あまりにも容赦無さ過ぎるが。
「さてと、次はお前らの番だ!!
食らえっ・・・。
メガ・ダーク・ソード!!」
そして闇の剣士は俺達に向かって、強大な暗黒の衝撃波を放つ!!
「あわわ・・・。
あわわわ・・・。」
「ちっ。
メガ・ファイア・キック!!」
エルムが足から強烈な炎を放ち、闇の剣士の攻撃に立ち向かう。
が、やはり暗黒の衝撃波のパワーに押されている。
このままではレイドの二の舞だ・・・。
「エルム!?
メガ・サンダー・ロッド!!」
しかしアカリも俺と同じように考えたのだろう。
危険すぎる修行への忌避感も忘れ、エルムを守るために強烈な電撃を放つ!!
いくら闇の剣士の『メガ・ダーク・ソード』が強くとも、中級魔法二発には敵わないようだ。
暗黒の衝撃波は完全に霧散し、強大な炎と雷のエネルギーが闇の剣士へ襲い掛かる。
「うおっ!?
・・・ちぃ。」
けれど闇の剣士はエルム達の渾身の一撃を辛うじて避ける。
とは言え、エルム達の攻撃を避けるのに精一杯だったからか、隙が生まれた。
渾身の一撃を食らわせるチャンスだ!!
「メガ・ホーリー・ソード!!」
「なっ!?」
いっけええええええええ!!!!




