第132話 ファンクラブ編② 女の戦い
「レイドぉ!!
俺はお前が気に食わねえ!!!!
なんで地元だからってお前、女の子にモテモテなんだ!!??」
あ。
ヒカルとか言う俺のそっくりさん(?)の話、してたら忘れてた。
俺達、勇者の子供一行が港町をほっつき歩いていると、なんとレイドのファンらしき女の子達と遭遇。
黄色い声援を受けるレイドを見、エルムは大激怒。
実は俺も腹を立てている。
ダイチとフラウがいちゃいちゃしているのを目の当たりにした時と同じくらい、怒りに震えている。
「顔か?
やっぱイケメンこそ正義ってか??」
正義・・・。
なんて嫌な響きなんだろう。
「?
何を言っているのだ。お前は。
別に俺はモテてなぞいないぞ。」
???
「あの子達は単に俺が強すぎるから尊敬しているに過ぎん。
武術大陸では強き者こそ、褒め称えられるからな。」
クールぶりながらも微妙にドヤ顔で語るレイド。
うっわあ、うぜぇ♪
「んだと、ゴルァ!!
強い奴が尊敬されるだぁ?
だったらなんで、お前より強い俺が女の子から尊敬されねぇ!?」
「何よ、あの赤毛。
レイド様より強いですって?」
「そんな出来の悪いホラ、誰も信じないわよ。」
酷い言い草だなぁ。
レイド『より強い』かはわからないが、レイドと張り合える程度にはエルムも強い。
「・・・エルムよ。
現実的に考えろ。
今のお前がこの国で尊敬なぞされるはずがない。」
「(゜Д゜)ハァ?」
「お前は今、正にこの国に来たばかりであろう。
誰がお前の強さなぞ、知っていると言うのだ?」
あっ、そっか!!
「うっ!?
でもよ。強い・弱いくらい、纏ってるオーラでわかるもんだろ?」
なんだよ?
オーラって・・・。
ちなみに言うまでもないが、強弱を示すオーラなどこの世界の人間は纏っていない。
「いやいや、エルム。
強そう・弱そうなんて皆、噂とヤマ勘で判断してるぞ?」
基本的に人は一目見ただけで、他者の本質なんて理解できない。
大体は容姿・経歴・評判などの上っ面の情報で、わかった気になってるだけなのだ。
もちろん、同じ時を過ごす事で徐々に理解し合えるが。
「まあ、そうよね。
レイド以外はこの武術大陸に来たばっかなんだし・・・。
私達の実力なんて誰にもわからない、か。」
「(T△T)ソンナァ…」
見た目だけで言えば、俺達って極々普通の少年・少女だからな。
・・・本当に普通の少年・少女であれば、どれだけ救われたか。
まっ。
それは置いといて、だ。
「けど、あんたらさぁ。
絶対、強いってだけでレイドのファンやってるわけじゃないだろ?
あいつがイケメンだからキャーキャー言ってんだろ??
なぁ!!」
レイドが強いのは事実だが、性格的には残念脳筋なのだ。
故にいくら強くとも、実力と性格だけではカッコ良くなど映りはしない。
ならばやはり、顔が良いから評価しているに決まっている!!
「な、何の事かしら~♪」
「女の子とは言え、私達も武術大陸の人間よ?
レイド様の強さにも惚れ込んでるわ!!」
「今、『も』って言った。
『も』って言ったぞ!!」
俺が騒ぐと女の子達はわざとらしく顔を逸らす。
「う″~、く″や″し″い″!!」
「これだから女って奴はよ~・・・。
イケメンばっか優遇しやがって!!」
「・・・あんた達ねぇ。
しょ~もない事でムキになってんじゃないわよ。」
しょ~もない事ってなんだ?
アカリ。
男にとって、女の子にモテる・モテないは大事なんだぞ!!
「あの人達・・・ライトにエルムだっけ。
イケメンは敵だみたいに騒いでるけどさぁ。
自分の容姿に自覚、無いのかしら?」
「まあ、黙ってましょう。
私達はレイド様のファンなんだから。
特にライト・・・ヒカル様に良く似た方を褒める訳にはいかないわ。」
「そうね。
にしてもあのヒカル様の偽物、ライトって名前なのね。
・・・ライト。ライト?
ライトって確か・・・。」
女の子の何人かが俺やエルムの方を見、ひそひそと話しているのがわかる。
ど~せ、レイドと違って不細工過ぎるとか言い合ってんだろ!?
腹立つ!!
「ってか、今更だけどあなた達さぁ。
レイド様の何なの?
舎弟??」
「「ちゃうわ!!」」
「あいつらは闇大陸で出会った旅仲間だ。
・・・まあ色々あって、な。」
レイドの奴、俺達とつるむ本当の理由はボカそうとしてるな。
そりゃまあ、自分達は勇者の子供で魔王を倒すために旅を続けている、な~んて言いたくないだろうが。
あまりにも恥ずかしすぎる。
「・・・・・・。
別にヒカル様の偽物と・・・。」
「偽物言うな!!」
「・・・ごほん。
ライトとエルムはレイド様の旅仲間でも構わないわ。
けどね!!」
女の子達が猛獣のような目付きでアカリやユラを睨み付ける!!
「な・・・何?」
彼女達の迫力に飲まれてか、アカリがやや怯みながら問うと・・・。
「ど~して、あんた達までレイド様と一緒に旅してんのよ!?
ずるいわ!!
羨ましすぎるわ!!!!」
「「「「「「「「そ~よ、そ~よ!!!!」」」」」」」」
「ええええええええ!!!!????」
「・・・。」
って、嫉妬かよ!?
まあ、レイドファンのあの子達からすりゃ、女であるアカリやユラがレイドと一緒にいるのは腹立たしいのだろう。
・・・その気持ちもわからなくもないが、俺達の運命は過酷だぞ?
はっきり言って、一緒に旅なんかしない方が彼女達にとって幸せだと思う。
「ふ~ん、アカリ~。
お前やユラ、あいつらから嫉妬されてるっぽいぞ。」
「他人事なの!?
そもそも私はレイドに惚れてなんかいないって。
だからそんなに睨まないで~・・・。」
エルムの影に隠れながら、苦情を上げるアカリ。
アカリの言う通り、俺達が互いに惚れ合う事などないだろう。
だって俺達は全員、勇者の子供。
つまり兄弟なのだから。
・・・全然似てないけど。
けど例え似てなかったとしても、兄弟同士で恋愛感情が芽生えるなんて、ありえない話だ。
だから嫉妬するだけ無駄だと思うんだがなぁ。
とは言え、アカリに関してはレイドではなくエルムに助けを求めた事で、自分達のライバルではないと判断したらしい。
女の子達のアカリに対する怒りが瞬く間に霧散する。
・・・それでも何人かは微妙に腹立たしげにアカリを睨んでいるが。
レイドに惚れてないのはわかったはずなのに何でかなぁ?
それはさておき・・・。
「・・・。」
「「「「「「「「・・・・・・・・・・・・。」」」」」」」」
何故かユラはアカリのように弁明しようとしない。
あれほど大勢の女の子から睨まれても一歩も引かず、睨み返している。
まさか・・・レイドを巡って女の戦いが始まった!?




