第128話 外伝12② 魔族達の望み
Side ~カオス~
「オガーよ。
貴様、本当に光大陸で『あの男』と出会っていたのだな。
まさかライト・・・ブレイブチルドレンから手掛かりを掴めるとは!!」
「あ、ああ。
だがライトに手を出したせいで、取り逃がしてしまった。
・・・やっぱ怒ってるのか、カオス。」
王女への復讐が完了した私は『あの男』について聞き出すべく、オガー達が住む無人島へと向かった。
ずっと音沙汰無かったから、復讐する前に息絶えたのかと不安だったが・・・。
「怒ってなどおらぬ。
逆にお前が『あの男』を殺していたら、暴れ回ったかもしれぬが。
ははは、あはははは!!!!」
「「「「ひゃああああ!!??」」」」
「お、おい。
キザ悪魔・・・。
頼むから俺達を脅かすのはやめてくれ!!」
?・・・。
ハオガーは何を言っているのだ?
脅かすつもりなど、全く無いのだが。
本当に怒ってなどおらぬのだから。
「で、でもよぅ。
あいつ、もうとっくに光大陸から離れちまってるぜ。
魔族に見つかったってのに、いつまでも同じ場所に留まっているはず無いし。」
それもそうだ。
居場所がわからなければ、復讐なぞしようがない。
例え、最強の力を持つ魔王とて、どこにいるかわからなければ、呪いの1つ掛けられないのだから。
「だが、生きているとわかっただけで朗報だ。
せいぜいこそこそと逃げ回るが良い。
いつの日か必ず捕まえ、魔族全員で盛大に復讐してやろう!!」
「や、やっぱキザ悪魔、怖ぇ。」
何故か怯えるハオガーやオガー達を尻目に、私は復讐相手がまだ生き残っている事に喜びを感じていた。
しかし最近は王女に王女の取り巻きと、報復が順調に行えているな。
ちなみに王女の取り巻きどもはフェイクのアドバイス通り、檻の中に閉じ込めたまま、何もせずに放置した。
魔王の元に連れ帰ってから数日と経たず、くたばったが。
とは言え、自分は偉いと思い込んでいるクズ共が、絶望に満ちた表情でくたばっていく様を眺めるのは本当に楽しい。
・・・楽しいのだが、どうしても虚無感に襲われてしまう。
クズ共を殺したところで私の・・・・・・おっと。
感傷に浸っても仕方無い、か。
「話は変わるが、急にアイ達をこの島に送りこんで悪かったな。
だがあいつらにはもう、居場所が無いんだ。
お前達には迷惑掛けるかもしれんが、受け入れてやってくれ。」
「・・・ああ、それか。
突然、あいつらが空から降って来た時はビビったけどよ。
この無人島は広いし、連中が増えたくらい平気さ。」
「それにあいつら見てると、な~んか同情しちゃうんだよな。
静かに余生を暮らしたい、とか思っていそうだし。」
静かに余生を暮らしたい、か。
そんな生き方を望む魔族もいる事に内心、驚いている。
大抵の魔族は世界の破滅のみ望んでいるのだから。
もちろん私もそのつもりだ。
そのつもりなんだ・・・。
「あ、けどよぅ。
アイの奴が・・・。」
ん?
アイがどうしたと言うのだ??
********
「「「・・・。」」」
「アイ!?
・・・死んで、いるのか?」
ハオガー達から話を聞いた私は急ぎ、アイの元へ駆け寄った。
その傍には三人の鳥魔族と、フェイクの死体もある。
「キザ悪・・・じゃなかった。
カオス?」
「姉御はまだ生きている。
けどもう・・・。」
そうだ。
魔族は人の知恵と魔物の体を持つ異形。
いつ体が壊れ、命を失くすかわからぬのだ。
「・・・その声はカオス、かい?
悪いねぇ。
せっかくこんな良い所まで運んでもらったけど、わたしゃもうダメみたいだ。」
もう目すら見えぬのか、声で私の存在に気付くアイ。
「アイ・・・。」
「「「姐さん!!」」」
フェイクの死体に寄り添いながら、アイは眠そうな声で呟く。
「・・・あれ?
フェイク様。なんで、こんな所に・・・え??
私がもうすぐ死にそうで、嬉しい、だって?・・・。」
そしていもしないはずのフェイクと話し合う?
フェイクの夢でも見ているのか??
「一人で地獄に行くのは怖い、だからお前が付き添ってくれる・・・と、頼もしい?
・・・あらまあ。
死んでも自分勝手なの、ね、フェイク、様。」
「姐さんの傍に王・・・。
じゃなくて、フェイクさんの幽霊がいるのか!?」
幽霊などいるわけない。
が、如何にもフェイクが言いそうな事を呟くアイを見ていると、そう断言もしきれなかった。
「もちろん、死んでも私達は一緒、よ。
・・・じゃあ皆、私、行くね。
フェイク様や兄さん達のところ・・・へ。」
その言葉を最後にアイは二度と目覚めなかった。
・・・。
アイの望みは復讐ではなく、愛する人と運命を共にする事、か。
愛と言えば、あの人魚を思い出す。
もっとも、あいつの想いは純愛ではなく愛憎だが・・・。
だが愛など、私には縁のない話だ。
私の愛する者はとっくにいなくなったのだから。




