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第11話 山賊編③ 騒動の前触れ

迷子を助けようとしたら、少女を誘拐しようとする山賊と間違われた俺達。


こんな事になるなら、人助けなんてしなければ良かった・・・。

後悔する俺達の前に謎の緑髪少女、ユラが現れた。



「??????」



ユラは凄く不思議そうな目をしながら、俺達に近寄って来る。

攻撃する気配は無い。俺達の事を見極めるかのようにじっと見つめていた。


「あなた達、山賊なの?」


あ、喋った。


「だから違うって言ってるだろ!!

 俺達みんな、山賊でも誘拐犯でもねぇよ!!」


かなりキレた口調で答えるエルム。

気持ちは物凄くわかるが、兵士相手にその態度はマズいかも・・・。


「・・・そう、わかった。」


しかしユラは特に怒った様子もなく、女兵士の元へ戻っていった。


「アネコさん。あの人達、山賊じゃないって。」


「アホか、ユラ。そんな簡単に信じるな!!

 あんな状況なら、誰でも山賊じゃないですって言うわ!!」


「でも、嘘を付いてるようには見えなかった。」


「ったく・・・。」


今度はユラの話を聞いた女兵士・・・アネコさんが俺達の前にやって来る。


「んー・・・・・・ん、んー?

 こいつ等。かなりヤバい力を持っているような気がする。只者じゃねぇ!!


 けどユラの言う通り、山賊や誘拐犯の類にも見えねぇんだよなぁ。

 ・・・どうしたものか。」


なんとも反応に困る事を言い出すアネコさん。

俺達を危険人物のように言わないでくれよ。

強引に犯罪者扱いしないだけマシだけどさ。



「何言ってるんだ。そんな奴等、早く捕まえてしまえ。」

「けどまだ山賊だって決まった訳じゃないじゃない。」

「だなぁ。もし無実だったらさすがに可哀想だし・・・。」

「疑われるような事をするから悪いんだ。さっさと殺してしまえ!!」



ユラやアネコさんの発言を聞き、ヤジ馬達がまた騒ぎ出す。

疑わしきは殺せなんて声まで聞こえた。

この城下町、もしかしてそんなヤバい事を考える連中ばかりなのか?



どうしよう。

どうしたら、悪者じゃないってわかってくれるんだ?





「あれ? ライト、エルム、アカリ??

 そんな所で何やってんだ?」





この声はエリトさん?

そういや、太陽城下町で山賊対策の警護依頼を受けたって言ってたっけな?


「エリト!! 一体何の用だ・・・。

 ってお前、その山賊達と知り合いか?」


「山賊? こいつ等が?」


「違うの。エリトさん。私達、迷子の少女・・・マイを助けようとしただけなの!!

 けどあの人達が私達を山賊だ、誘拐犯だって言い出して・・・。」



「おい。何俺達のせいにしてるんだ。この山賊が!!」

「あれ? でもなんで俺達、こいつ達を山賊だって思ったんだろう?」

「確か、誰かが人攫いだって騒ぎ出したのがきっかけで・・・。」

「!!・・・ 今はそんな事どうでも良いだろ。人様を悪者扱いするとは、この外道共め。」



「静かにしろ。今は話を聞いている途中だ!!」


「それで、そのマイって子は誰だい?」


「あそこにいる子・・・。」


話を聞いたエリトさんは、マイの方に向かった。

そして胡散臭いほど爽やかな笑顔で語り掛ける。


「マイちゃん・・・だったかな?

 君は迷子だったんだよね。

 あのお姉ちゃん達に助けてもらったのかい?」


「うん。あのおねえちゃんたち、マイをたすけてくれたの。

 でね、おとうさんたちのところまでつれてってくれたんだよ。」


「そうだったのか。良かったね、マイちゃん。」


「うん!!」


だがマイは怪しむどころか、とても嬉しそうな顔で事情を話した。

・・・イケメンは得だなぁ。


次はマイの両親に向かって、やや真剣な表情で声を掛ける。


「あなたがマイの父親ですね。

 ライト達がマイに何をしたか、話してもらえませんか?」


「えっと・・・迷子になったマイを探していたら、あの少年達がマイと一緒に歩いていたのを見かけました。

 初めは悪人だなんて思わなかったのですが、誰かがあの少年達を人攫いだと言い出しまして・・・。


 だから私もあの少年達を悪人だと疑ってしまったのです。

 けど、マイやあの少年達の話を聞く内に、何が真実なのかわからなくなってしまい・・・。」


「ふむ・・・なあ、アネコ。

 俺には勘違いでライト達が山賊扱いされたようにしか思えないのだが?」


「あー、実は私もそう思う。

 どうやら、誰かが人攫いだとか言い始めたせいで、こんな騒ぎになったようだな。


 ふむ。彼らを山賊扱いした者達からも事情を聞いてみるか。

 根拠も無いのに山賊だと決め付けていたのであれば、処罰も考慮せねばならぬ・・・。」



「処罰だって? 横暴すぎるだろ。付き合ってられるか!!」

「元はと言えば、勘違いをされるような事をする方が悪いんだ!!」

「大体、こんな状況で子供を迷子にさせるなんて、最低だわ!!」

「そうだそうだ、人騒がせな連中め。罪の無い俺達を巻き込むんじゃねぇよ!!」



虚言は処罰すると聞いた途端、暴言を吐きながら多くのヤジ馬が去って行く。

中にはマイ一家の悪態を付く人までいた。

・・・このヤジ馬共、山賊より悪質じゃないだろうか?


「お、おい? ・・・はぁ。

 あー、ライト、エルム、アカリだっけ? エリトの知り合いなんだよな。

 山賊ってのは誤解みたいだし、もう帰っていいぞ。疑って悪かったな。」


「皆さん、彼らは山賊や誘拐犯などではありません。

 なので安心して下さい。決してあなた達に危害を加える事はありません。」


アネコさんとエリトさんの言葉を聞き、残っていたヤジ馬達もざわめきながら散り散りになった。

マイの父母は後ろめたそうな表情で、マイは不思議そうな表情をしながら、無言で去って行く。


エリトさん達のおかげで山賊扱いされずに済んだが、本当に気分が悪い。

くそ、あのロクでなし共め・・・。


「エリトさん。今日は助けてくれたありがとう。」


あ、そうだ。エリトさんにお礼を言っとかないとな。

俺とエルムもエリトさんに軽くお礼を言った。


「別にこれくらい、構わないさ。

 ・・・それよりお前達、なんでこんな所にいるんだ?

 それとハジメはどうしたんだ? 留守番か?」


「エリトさん。それは・・・。」


********


「そうか。ハジメは亡くなったのか。

 あんな良い子が・・・気の毒に。」


俺達は宿屋の近くの食堂で、エリトさんに事情を話していた。


ちなみに、ユラとアネコさんはいない。

ユラの方は俺達に付いて行きたがってたが、アネコさんに止められ、渋々帰って行った。

どうやらユラとアネコさんは城の兵士で、住み込みで働いているらしい。


「で、お前達はハジメが亡くなった原因を調べるために旅に出た・・・と。

 そんでもって、手掛かりはその怪しいおっさんの発言だけ、か。」


ギルドのお姉さん達にチクられると嫌なので、魔王や勇者の子供云々について話すのはかなり迷った。

が、勇者の子供はともかく、魔王に関しては実在するようなので、恥ずかしながら尋ねてみた。


「なあ、エリトさん。

 やっぱり魔王の呪いとか、俺達が勇者の子供とかって嘘かな?

 でも、ハジメがあんな意味不明な死に方しちゃったせいで、嘘だと思い切れなくて・・・。」


「エルム・・・まあ、普通に考えたら妄言か詐欺だろうな。

 でもお前達、子供にしては強すぎるし、誰が親かもわからないからなぁ。

 ・・・案外、本気で勇者の子供かもしれないから困る。」


「ちょっとエリトさん。

 そんな真面目な態度で勇者の子供かも、なんて言わないでくれよ。

 俺達、そんな得体の知れない存在じゃないって・・・多分。」


物語ならよくある展開だけどさぁ。

でも、いくら親がわからないからって、実は勇者の子供だ、なんて決め付けて欲しくないよ。

気味が悪い。


「ライト、お前なぁ。そんなに不気味がるなよ。勇者に失礼だろ?

 ・・・まあとにかく、俺もハジメが亡くなった原因は調べた方が良いと思うな。

 魔王の呪いかまではわからんが、多分、お前達も無関係じゃない。」


エリトさんもそう言うか。

皆、ハジメと俺達には何かしら大きな共通点があるって認識なんだな。


「でも、残念だなぁ。

 お前達が急ぎじゃなきゃ、山賊対策の警護依頼に誘ったのにさ。」


な・・・!!


「冗談じゃない!!

 あんな人を強引に山賊扱いするような連中、絶対に助けないからな!!

 アカリもこれに懲りたら、もう無闇に人助けなんかするんじゃないぞ。」


「全く。アカリってば、本当にお人良しなんだから。

 困ったもんだぜ。」


「う。ご、ごめんなさい。」


俺達はまだ金に余裕があるし、警護依頼なんて受けずとも平気だ。

そもそもあんなどうしようもない連中、死んでも助けたくない。


「おー、怖。そんな怒んなって。

 生きてりゃそういう事だってあるさ。

 気にするだけ損だぞ。」


・・・そりゃそうだけどさ。

理屈ではわかっても、感情は納得してくれない。


煮え切らない表情の俺達を見て、エリトさんはしょうがなさそうな顔で俺達に話し掛けた。


「気持ちはわかるけどな。ま、今日はもう休んだらどうだ?

 一晩寝れば、嫌な事だって忘れるさ。」


そうだな。今日は色々あって疲れたし、さっさと休むか。

そして明日になったらこんな城下町、さっさと出て行くんだ。





エリトさんと別れた俺達はすぐに宿屋へ行き、ぐっすりと眠った。

その後、とんでもない騒動に巻き込まれる事も知らずに・・・。


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読んで頂き、ありがとうございました。

少しでも「続きが気になる!」「面白い!」と思って頂けたら、評価★★★★★と、ブックマークを頂ければと思います。

どうぞよろしくお願いします。
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