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第103話 偽王編③ 正義の強要

「ぎしゃああああああああああああああああ!!!!」





平和のためなどとほざきつつ、死に急ぐ女騎士・・・セイを俺は止めようとする。

も、話している隙を突き、ヒドラが俺達に向かって、火の玉を吐き出す!!

やべっ!?


「わわっ!??」


「・・・これまでですか。

 さようなら、王子様。」


ダメだ、避けられない。

火の玉に直撃する!?





「ファイア・ナックル!!」





だがエルムが炎の拳より火の玉を飛ばし、ヒドラの火の玉をも貫いた!!


「ぎぎゃ!?」


そのままファイア・ナックルより生まれた火の玉がヒドラへ直撃する。


「えっ・・・!?」


「おいおい、何やってんだよ?

 ライト。

 しっかりしろよ。」


「あ、ああ・・・ありがとな、エルム。

 くっ、ヒドラめ。

 不意打ちとは卑怯な!?」


あの程度の火の玉、不意さえ突かれなければ、俺一人でどうとでも出来たのに。


「・・・ライトよ。

 今のはお前が迂闊なだけだ。」


「うん。

 さすがに擁護出来ない。」


うっ?

レイドもユラも冷たいなぁ・・・。


「・・・ぎぎぃ!!

 ぎしゃああああああああああああああああ!!!!」


攻撃を受け、怒り狂うヒドラが今度は三つの頭から三つの火の玉を吐き出す。

・・・しかし。


「サンダー・スティック!!」


「ウインド・ダーツ!!」


「アイス・レイピア!!」


雷が、風が、氷が火の玉を弾き飛ばし、ヒドラへ襲い掛かる!!


「ぎぎゃああああああああ!??」


「あのヒドラの攻撃を!?

 私の魔法では、全く歯が立たなかったのに。

 彼らは何者なのですか・・・?」


初級魔法を四発も受け、ヒドラはかなり苦しそうにしている。

が、まだまだ致命傷にはほど遠い。

さすがはヒドラだ・・・。


ならば!!


「なあ、女騎士。

 あのヒドラの後ろに誰かいるか?」


「は・・・はい?

 誰もいません、けど。」


よっしゃ!!

だったらヒドラがぶっ倒れても、誰かが下敷きになったりはしないはず。


「ヒドラ・・・てめぇ。

 よくも不意打ちなんてしやがったな!?

 この卑怯者が。覚悟しやがれ!!」


「いやいや!?

 さっきのはライトが不注意だっただけでしょ!!

 卑怯者扱いはいくら何でも可哀そうよ・・・。」


魔物を贔屓するおかしな連れを無視し、俺は力を集中させる。


「メガ・ホーリー・ソード!!」


「中級魔法!?」


ちんたら戦って、事故が起こっても困るしな。

ここは中級魔法で一気に倒す!!


「食らええええええええええええええええ!!!!」


俺は光の剣を全力で振り回し、巨大な衝撃波を放った。

衝撃波はそのままヒドラへと直撃する。


「ぎしゃああああああああああああああああ!!??」


ずぅううううんんんん・・・・・・。


さしものヒドラも中級魔法の力には抗えなかったようだ。

光の剣の衝撃波をまともに受け、絶命する。


・・・ふぅ、疲れた。

一日二回は使えるようになったが、やっぱ中級魔法をぶっ放すとしんどいなぁ。





「・・・あの力は。

 あの方達は。

 まさか、まさかまさか・・・!?」


********


「こら、ライト。

 ずるいぞ。

 いつもお前ばかり、楽しそうに魔物を倒しやがって!!」


「そんなに怒るなよ、レイド。

 ただの成り行きなんだから・・・。

 そもそも、楽しそうに魔物と戦う奴なんかお前くらいだ。」


とても強そうなヒドラだったが、実力はクラーケンやラージ・トロルなどと同じくらいのようだ。

旅をする前の俺達なら勝てなかっただろうが、度重なる死闘を潜り抜けた今では大した敵でも無い。


・・・度重なる死闘なんて、一切望んでないんだがなぁ。

しかも魔王云々と全然関係無い戦いばっか。

勘弁してくれよ、もう。


「さて、と。

 魔物もぶっ倒した事だし、早くハル達のところへ・・・。」


・・・ん?


何故か女騎士や優男、ヤジ馬どもがジロジロと見つめてくる。

やだな。あの目つき、なんだか気持ち悪い。

果物村の連中や、ザック達の事を思い出す。


「・・・いやっ。

 エルム。」


「落ち着くんだ、アカリ。

 目を合わせるんじゃないぞ。」


エルム達も警戒心を露わにしている。

何かふざけた事を言われる前に早く離れなければ。


「待て!!

 待つんだ、君達・・・。」


やっぱり!!


「待たない!!

 皆、ふざけた事を言われる前に逃げるぞ。」


優男が待てと言うが、知ったこっちゃない。

俺達がこいつらに付き合う義務など一切ないのだから。





「無礼なっ!!

 このお方をどなたと心得る?

 幻影城の・・・いや、この闇大陸の王子であらせられるぞ!!」


「嘘付け!!」





連れらしきおっさんが突然『優男はこの国の王子なんだ』などと発言する。

・・・バカな嘘も大概にしやがれ!!


「なんだと!?

 貴様、ふざけるのもいい加減にしろ!!」


そりゃ本物の王子を偽物呼ばわりなんてしたら、死罪になっても文句を言えない。

・・・本当に死罪になったら、なりふり構わず逃げるだろうけど。

だがな!!


「ふざけてんのはどっちだ!!

 本当に王子ならなんで女騎士以外、誰も守ろうとしないんだ!?

 ヒドラに殺されかけてたんだぞ、こいつ。」


「そ、それは・・・。

 ・・・王子が死を望まれていたから。」


「んな言い訳、通じるわけないだろ!?

 アホっ!!」


もしあいつが本物の王子であれば女騎士以外、誰も守ろうとしないなんてありえない。

将来、国を背負うかもしれない人間なんだぞ?


だからあの優男が王子だなんて、嘘に決まっている。

偽物の王子に敬意を払えなんて言う奴など、一欠片も信用する価値が無いと思う。


「確かにあいつが王子だなんて、ありえぬ話だ。

 王子を名乗るにしては、弱すぎる。」


「いや・・・あのな、レイド。

 普通、王族はそんなに腕っぷし、強くないと思うぞ?」

 

「何!?

 よその国ではそうなのか?」

 

どんな国でもそうだと思うが。

だって王族なんて、体を鍛えるよりも、国を治めるための勉学に励むはずだしな。

護身術くらいは嗜んでるだろうが、実戦経験だって少なそうだし・・・。


「・・・まあ、仮にあの優男が本物の王子様だったらさぁ。

 余計にこの国、やべぇよな。

 誰も助けようとしない王子とか、人望無さすぎ。」


「逆に王子の周りの人達が薄情すぎる・・・って、可能性も高い。

 ひょっとしたら、王子を亡き者にしようと考えているのかも。」


「もしかして、お家騒動ってやつ!?

 いくら私でも、そんな醜い争いごとに関わるのは嫌よ・・・。」


ってか、エルム達の話す通り、本当にあいつが王子様だったら余計にヤバいよな。

もうこの国、崩壊寸前じゃないだろうか?


「違う・・・違う、違う、違う!!!!

 王子様、どうか我らを信じてください。

 あ奴らの邪推になど、耳を貸さないでください・・・!!」


いやいや。

俺達じゃなくても、客観的に見ればお前ら、悪意たっぷりだと思うぞ?


推測通り、あの優男が偽王子なら王族の名を騙る詐欺集団でしかない。

逆に本当に王子だったとしたら、そんな重要人物を見殺しにする連中に悪意が無いなんて、信じられない。


「・・・わかっているよ。

 エルム、と言ったね。君の言う通りだ。


 私に人望が無い故に助ける価値も無い、と。

 そう思われているだけに過ぎない・・・。


 だから部下達の事を悪く言わないでくれ。

 勇者の子供達よ!!」


!?

ど、どうしてそれを!!


唐突に正体を見破られ、戸惑う俺達に王子(?)が命令を下す。





「ブレイブチルドレン・・・選ばれし勇者の子供達よ。

 この国を蝕む悪しき王を倒してくれ。

 正義のために。我らを、この国の人々を守るため、戦うのだ!!」





・・・・・・。





「(゜Д゜)ハァ?」





「ハァ?・・・って。

 私の言葉がわからないのか!?」





「いや、言葉の意味はわかる。

 ただそんな狂った事を堂々と命令する神経が理解できなかった・・・。」


「く、狂ってるだと。

 無礼な!!

 これはこの国の王族がくだす命令だぞ!?」


やっぱ、この自称王子。

見た目だけの偽物だったのか。

・・・だって。


「どこの世界に旅人に王殺しを命令する王子がいるんだ!?

 お前みたいな恥知らず、王子なんかじゃない!!」


「なっ・・・?」


本物の王子様がその辺の旅人とっ捕まえて『王を殺せ!!』なんて命令、くだすはずがない。

この自称王子様御一行には、常識すら無いのだろうか?


「・・・ま~、旅人にクーデターの首謀者、押し付けようとしているわけだしなぁ。

 いくら何でも性質悪すぎ。

 人としての誇りが無いのか、こいつら?」


「そうね。

 殺し合いだって絶対嫌なのに、クーデターの主謀者になれだなんて。

 そんなの無理よ。出来るわけないわ・・・。」


「この人達に少しでも同情した私がバカだった。

 旅人相手に王殺しを命令するような連中、絶対に信用出来ない。」


エルム、アカリ、ユラもあんまりすぎる命令に拒否反応を示しまくっている。


「・・・はぁ、お前達。

 旅人がいないと出来ぬ反乱なぞ、諦めてしまってはどうだ?

 自分達では勝ち目が無いと思っているのなら、せめて逃げる覚悟くらい、持つべきだ。」


そしてレイドに至っては哀れみのあまり、逃げた方がマシだと提案する始末。


「あ~・・・逃げる、か。

 だなぁ。もうこの国、崩壊寸前だしさ。

 旅人にクーデターやらせるよりは、そっちの方が良いんじゃね?」


世の中、逃げるのは恥だと言う奴も存在するが、どうしても勝ち目が無いなら逃げて良いと思う。

ってか、旅人に王殺しを押し付ける方がはるかに恥晒しだしな。





「何が逃げた方が良い・・・だ!?

 父は殺され、愛する国もあの悪しき王のせいで、崩壊寸前なんだ!!

 ・・・なのに全てを投げ捨てて逃げてしまえと言うのか!?


 ふざけるな!!」





ふざけるな・・・って、ふざけてるのはどっちだ!?

大体てめぇ、悪しき王を倒せとか言いながら父は殺されたって、言ってる事がぐちゃぐちゃじゃねぇか!!

王子の振りもちゃんと出来ないのか、この偽王子は。


「そもそもどこへ逃げろって言うんだ!?

 もう平和な場所なんて、この国のどこにも無いってのに!!」


「それに外は魔物だらけなんだ!!

 僕達みたいな一般人が逃げられるわけないだろ・・・。」


・・・それでも他に道が無いなら、仕方無いだろうが。

他人がなんとかしなきゃ、何も出来ないのかよ!?


「お前らは勇者の子供だろ!!

 そんなに強いのに、どうして正義のために戦わないんだ!?

 なんでこんなに苦しんでいる俺達を助けてくれないんだ・・・。」


・・・。





「力があるなら、弱い奴のために戦うのは当たり前だろう。

 平和のための礎になるのは当然だろう!!

 自分達の事しか考えていないのか、このロクでなしが!!!!」





・・・・・・。





「てめえら!!

 いい加減にしやがれ!!!!」


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読んで頂き、ありがとうございました。

少しでも「続きが気になる!」「面白い!」と思って頂けたら、評価★★★★★と、ブックマークを頂ければと思います。

どうぞよろしくお願いします。
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