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第8話 序章⑧ 遺言

「よし、今がチャンスだ。

 弱ってる内にぶっ殺してしまえ!!」


「「おおー!!」」

「「「グギャギャー!!!!」」」



残りの敵は山賊3人、ゴブリン3体。

ダメだ、こんな調子じゃ勝てない。


ごめん、ハジメ。もうすぐ俺、殺されるわ。

今、そっちに行くからな・・・。



ゴゥ。


「グギャー!!」


バチバチバチ。


「「ギギャギャー!!」」



? 炎、雷??

あっ・・・。


「ライト、無事か?

 ったく、こんな奴等相手に何やってんだよ。」


「ライト、ライト・・・大丈夫?」


エルム、アカリ。起きてたのか!!

ゴブリン3体を倒したあの炎と雷は、やっぱりエルム達の魔法だったんだ・・・。


「何? あいつ以外に魔法を使えるガキが2人も??」


「ひ、怯むな。魔法を使う前にぶっ殺すんだ!!」


山賊の1人が魔法を使う前に殺せとばかりに突撃してくる。

だが・・・。


「てめぇ・・・ライトの仇だ、覚悟しやがれ!!」


俺、まだ死んでないんだけど。


バギ!!


魔法の力こそ宿ってないが、エルム渾身の右ストレートが山賊の顔にクリーンヒットした。


「ガ・・・。」


強烈な一撃を食らった山賊があっけなく倒れる。


魔物などと戦う際、直接殴りつける事の多いエルムのパンチ力は物凄い。

まともにもらえば魔法の力無しでも、並の人間や小型の魔物程度なら一撃で気絶するほどの威力だ。

・・・内心、こいつとガチの喧嘩はしたくねぇなぁと思っている。


「ひ、ひぇ。」


「どうするの? まだやる気?」


「ち、ちくしょう。覚えてやがれ。」


残りの山賊2人が気絶した山賊2人を抱え、逃げてった。

ゴブリン4体は既に全員、事切れている。


「エルム、アカリ・・・た、助かった。」


山賊達がいなくなり安心した俺は気を失ってしまった。


「お、おい。ライト、ライト!!」


********


なんだろう? この黒い空間。

助かったと思ったけどやっぱ俺、死んだ?


(大丈夫よ、まだ死んでないわ。気絶してるだけよ。)


こ、この声はまさか・・・・・・ハジメ?

そう思った瞬間、黒い空間に突如ハジメが姿を現した。


(うん、そうよ。ハジメよ。

 全くもう、食事や睡眠くらいちゃんと取りなさいって。

 心配で成仏も出来ないわ。)


・・・死んでも変わらずノリが軽いな、ハジメは。

けど、けどな!!


いきなりハジメが死んで、俺達ももうすぐ死ぬなんて言われて・・・。

凄く悲しかったんだぞ。凄く不安だったんだぞ!!

いつも通りの生活なんか出来るものか!!


大体お前、あんなに元気だったのに何で死んだんだよ?


(うーん、うーん・・・。何で死んだかなんてわかんないよ。

 突然、体中の力が全部抜けきっちゃってさ。

 気が付くと、死んじゃってたんだもの。)


そんな他人事みたいな・・・。

やっぱり魔王の呪いなのか?


(・・・それもよくわかんない。

 でも多分、何もしなければいずれライト達も私みたいになっちゃうでしょうね。

 魔王云々はともかく、旅に出たのは正解だと思うわ。)


魔王の呪いはさておき、もうすぐ死ぬかもってのは本当なんだ・・・。


どうしよう、俺どうしよう?

ゴブリン1体にさえ負けそうになるのに、魔王になんて勝てる気がしない。

死ぬのはやだよ、怖いよ。もう仲間を失いたくないよ・・・。


(まあまあ、取り乱さないで。大丈夫よ。ライトは一人じゃない。

 エルムだって、アカリだって・・・まだ知らない仲間達だっているじゃない。


 それにライト・・・あなたは自分が思っている以上に凄い男の子なのよ。

 運命くらい、きっと簡単に乗り越えられるわ。)


ハジメ・・・でも、でも!!


(あなた達が運命を乗り越えるその日まで、私も見守ってるから。

 ずっと見守ってるから・・・だからもう苦しまないで。

 前を向いて、元気を出して。お願い。ね。)


ハジメ・・・。

そしてハジメは黒い空間から姿を消した。


・・・俺は涙が止まらなかった。


********


ト・・・ライト!!


「!? あれ・・・俺?」


「やっと目を覚ましたか。

 ったく心配掛けやがって。」


「中々起きないから心配したのよ。

 寝不足も響いたのかしらね。」


エルム、アカリ。

俺、俺・・・。


「俺、気絶している間、ハジメの夢を見たんだ。

 『ずっと見守ってるから・・・だからもう苦しまないで。

  前を向いて、元気を出して』

 って、言ってた。


 俺・・・ハジメが死んで、俺達ももうすぐ死ぬって言われて・・・。

 ずっと悲しかった、死ぬのが怖かった。

 だからエルムやアカリにも迷惑掛けて・・・ごめんな。」


こんな事話しても、笑われるか、(頭を)心配されるだけだろうが、言わずにはいられなかった。

ところが・・・。


「俺もライトの事、バカに出来ないさ。

 死ぬのが不安で、急いで何とかしなきゃって思って・・・。

 焦ったって良い事なんて無いのにな。」


「私もどうすれば良いかわからなかったの。

 無理してでも先に進むべきか、エルム達を諫めるべきか。


 正直、魔王を倒すべきなのかも悩んでた。

 けど、何が正しいかわからなくて、流されるままになって・・・。」


エルム、アカリ・・・お前達もずっと悩んでたんだ。

でもそりゃそうか。


仲間が突然死んで、自分達ももうすぐ死ぬなんて脅されて、さ。

それで平気でいられるほど、俺達強くないもんな。

だけど・・・。


「俺達、ちゃんと運命を乗り越えられるのかわからないけどさ。

 最後の最後まで前を向いて進もうぜ、ハジメみたいに。

 ・・・完璧には無理だろうけど、ずっと落ち込んだまま生きてたって楽しくないし、な。」


「ああ・・・、それもそうだな。

 せっかく旅するんだから、美味しい物食べたり、観光なんかもしたいよな。」


「こらこら、エルム。

 ・・・まあ、少しくらいはそれも良いけど。

 休憩も大事だし、ね。」



そう決意しても、きっと落ち込む事もあるだろう。

けどそれでも、出来るだけ前を向いて生きて行こうと思う。



それが・・・ハジメの願いだから。


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