冒険者達、策を練る。
「ジョンさん!仕事してください!!」
「なんだよタロウ、寝かせろよ。」
「んなこと言ってあんたもうS級でしょうが!」
「そんなお前らはまだ銀級だろうが。」
「俺たちがコツコツ積み上げている間にこの人ときたら・・・!」
「横から依頼かっさらって悪いな。ほいお駄賃。これで揚げじゃがを作れ。」
「だからこの異世界にじゃがいもはないんだっつーの!」
どうやらタロウ、とても平和な異世界に住んでいたようだ。
じゃがいもなき暗黒大陸にて唯一その存在を知っていた。
真面目に功績を積み上げているピチピチ初心者ハーレム冒険者、
そして実力はあれどあちらこちらでプラプラして魔物を狩り今となってはただのニート冒険者。
宿屋の親父は諦観ムードだ。金払いだけはいい。だが仕事をしない。
実力はあれどやる気が致命的にない。どうすれば働くのか、こいつ。
「第三回、S級冒険者ジョンを働かせる会議を開催します!」
タロウのパーティーメンバー女騎士アリサは高らかに宣言した。
他の黄昏亭に属している中堅メンバーやトップメンバーは呆れ顔だ。
あの男はフラッとここにやってきて長期の依頼を受けて1週間以内で帰ってくる男だ。
ほんとに依頼を受けたのかという調査も入る程だ。
だがしかし、依頼は受けているし解決もしている。
遠距離地方の依頼の場合どうしているのか?
どうやら魔術を地面に発射して空を駆けているらしい。変態だ。
高難度の依頼の場合は?それこそ難関モンスター、集団で退治して死体が出るほどの。
不意打ちで空から撃ち抜いていた。哀れドラゴン。
そんなわけで実入りのよく難しい仕事はササッと片付けられ残っているのは面倒な依頼のみだ。
そんなやつが休暇をとっているのだ。喜ばしいことこの上ない。
仲間に入れないか?それも試したがそもそも捕まらない。
タロウ達ぐらいだ。気をつかっているのは。
「あれだけの変態・・・じゃなくて使い手です。戦力アップ間違いなし。」
とタロウ。彼は実直な動きと堅実な対応で評価がいい。
「あの技術、師匠とか魔術学校に言ったら大騒ぎだったよ。腑分けしたいって。」
物騒なのは魔法少女マリスだ。これが職業名だ。変えたい。
「なんというか、あんまり関わりたくないです!勤勉以外NO THANK YOUです。」
ぶっちゃけるシスター、レーナ。会心させる術はない。諦めモードだ。
どうすれば働く意欲が湧くのか。あわよくばぜひ戦力になってほしい。
散々ひどい話やら実力差を見せつけられたが、なんやかんやお人好しなだけである。
「ひらめき丸!」
「何その語尾、マリサ。」
「つまりよ?別の世界の技術、体内魔力の燃焼による魔法の行使をしているってことでしょ?
家に帰れる方法を餌に働かせるのは?」
「マリサ!声でかいわよあんた!」とたしなめるレーナ
当たり前だ。冒険者は互いの秘密に無頓着であれ。
死にたくなければ。鉄の掟である。
「いや・・・その方法のったぞ・・・!」
と話すのは宿屋の親父だ。
「つまりあいつを叩き返せそうな話題をちらつかせればいい。」
「でも、多分ジョンさん。世界の端から端まで歩いて帰れる方法がないって結論に至ったんですよね?」
「合理的ね、タロウ。でも落ち着いてみなさい。それはあくまで彼単体で帰れる方法よ。
つまり協力者、私達の魔術の技術をちらつかせれば乗るかもしれないわよ?」
「ふむ、たしかに合理的だ。あるのか?そんな都合のいい方法。」
「ない。探す。」