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冒険者、耳を削ぐ。

少女の足だ。秒で追いつける。

だがしかし、ここで追い立ててしまったら相当やばい人になる。

憲兵団こっちです!脳内アラートだ。


爆速でかけていく少女を生暖かい目で見送り、ゆっくり匂いで追わせてもらうとしよう。

・・・。なんかやばさが格段にレベルアップした気がするがしかたない。


そんなわけで、リンの持っていた花の香りを嗅ぎながら悠然と歩く。

だれも整理しない荷物袋は幸いそのまんまだった。

奥底に眠っていた圧縮されたおやつを食べながらメンバーの荷物を思い出す。


よくよく考えれば、あいつら必要なものはちゃんと分けておくスタイルだったな。

特に盗賊とか金目のもの以外に興味なしだったし。

つまりこの荷物袋の中は貧乏性のメンバーが処分しようにもできなかった。

というより面倒くさがった荷物で満載なのである。

魔術が使えるスクロール、秒速で飽きた釣竿、調査ができる使い切り虫眼鏡、

焼き鳥の串、いつもらったかわからない硬いパン、臭い魚保存食等なんでもござれの状態である。

主に自爆で体力を失った冒険者はいつのものかわからない廃棄物を処理しながら村に向かった。


「村長!冒険者っぽい不審者がきたよ!」

「あのな、リン。荒事やってるやつなんぞ全員不審者だからな?」と答える老人。

「しかも一人だよ!空から降ってきたんだ!」

「あのーこんにちはー。依頼を受けてやってきました。冒険者でーす。」

ヒッと真っ青な顔でこっちを見られた。それはそうだろう。全力で撒いたはずなのだから。

「これはこれはどうも。アリュール村村長です。依頼内容はここから話しても?」

村の敷地に入らずのこの対応。なかなかの大物である。

この分だとここでの情報収集は無理そうだな、そう感じた。

「どうぞ構いません。依頼内容はゴブリンの殲滅でよろしいですか?」

「ええ・・・。しかし一人でしょう?命が惜しければ引いた方がよいのではないのでしょうか。」


ぐうの音も言えない。というか正論である。

初心者の冒険者に見られても仕方なし。

一人でのこのこ稼ぎの危険のある仕事をするのは大概素人、あるいはそれを超えた悪党である。

とはいっても何も見覚えのない地だ。

植生、動物、魔物を見てもそれっぽいけどそうではない、亜種か?地域差か?という状態だ。

このまま外に放置されれば野宿生活一本だ。さすがにそれはいやだ。

泥まみれになったら水を浴びたいし、酒と揚げじゃがで一杯やりたい。

現金な冒険者である。一般的な。


「・・・。まあ耳か何か持ってきたらいいですかね?1体につき報酬は?」

全く引く気配もなく淡々と続ける冒険者に呆れたようである。

「依頼内容を見なかったのかね?全滅させて1000ガルドだ。」

金の単位すら違うとんでもないクソ閉鎖的田舎である。

「ゴブリンの首領らしきものもいました。危険手当として200ガルド上乗せで。」

とりあえず危険手当を要求しておく。

「ふん。いいだろう。生きて帰ってこれれば考えておこう。」


とりあえず金は欲しい。通貨の概念すら違うのだから。

さくっとスクロールを発動させた付近にいくと焼き焦げた亜種ゴブリンの死体が転がっていた。

さすが天才魔術師の試作品。火力はパワーだという高い笑い声が聞こえてきそうだ。

すでに殲滅した後の証拠を回収していると、剣がわずかに鳴動した。

この剣、危険なものが近づくと鳴るのである。威力は大したことがないのだが。

のこのこやってきたゴブリンっぽいものが慌てて報告に戻っていった。


さくっと洞窟内に到着した。出入り口だけ沈めて帰りたい・・・。

中入りたくない・・・。だが耳がないと報酬にならない。丁寧な仕事がここで求められる。

プロフェッショナルゴブリン耳削ぎ職人。と自身をふるい立たせながら中に入った。


初めての依頼、ゴブリン退治を思い出す。

あの時はまだまだ駆け出しで、メンバーも緊張していた。

あの頃の初々しさはどこへやら。

いつのまにかメンバーは吸血鬼退治、対ドラゴン兵器、神殺し等物騒な名前で呼ばれることになった。

そんな中、俺はただの器用貧乏だった。


「あーただいま戻りました。」

「早!?ってか本物の黄昏亭の冒険者来てるよ!ニセ盗賊!」

村娘、ひどい言いようである。実際その通りなのだが。


冒険者を見ると初初しい少年1人と少女3人、ハーレムである。

「刈ってきたのは間違いないぞ、ホレ。」

高い放物線を描いて柵の中にゴブリンの耳入の袋を投げる。

「うわ!本物だ・・・!」

「あー、自己紹介が遅れたが俺は貿易都市ヤーンの冒険者、ジョンだ。」

「えっと、黄昏亭のタロウです。貿易都市ヤーンは聞いたことがありません。」

「まじか、本気?学ある?」

「失礼なやつね!魔術学校でも習ったことないわよ!」

魔法少女がキャンキャン吠える。

「あーすまん。ごめんなさい。それは置いといて、報酬ください。」

困っているのは村長だ。

当たり前だ。依頼を正式に受けているのは黄昏亭の冒険者なのだから。

このままどこの馬の骨かわからない冒険者に渡しても黄昏亭に角が立つ。

かといって短時間で殲滅してきたやばい冒険者に突っぱねればどんな目にあうかわからない。

「あーそうだな。うん。獲物を横取りした手間賃として200ガルド黄昏亭にわたす。それでどうだ?」

「馬鹿にしているの・・・!」

物騒なシスターだ。手に獲物を持っている。

「待って待って!落ち着いて、勝ち目がないから!!」

ナイスタロウ。その危機管理は役に立つ。

「あーそうだな、黄昏亭に俺から依頼だ。

 さっきの報酬とは別に500ガルド渡すからお前たちの宿に案内してくれないか?」

これは願ったりかなったりだろう。

胡散臭い成人男性(実力者)を連れていけばいいのだ。命の危険はともかく。

「受けるよな?」

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