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戦いの終わらない世界 2

「どうしたものか」


 誰にでもなく、独り言を零す。

 閃光、浮遊、頭痛の3連チャンという非日常は、ただの学生だった俺たちを不可思議な世界へと連れ帰った。


 目が覚めて、城としか形容できない建物にいた俺や他のみんなが案内された部屋は、あの石室のちょうど真上に位置しているらしく、英語に近い文様が連なって鎖のように宙に浮いている。

 案内してきた爺さんと同じように、絵本に出てくる魔法使いみたいなローブを着た人たちが、部屋の壁に沿うように列を並べる姿は、それこそ絵本に出てくる玉座の間のようで、否応無く威圧を感じてしまう。


 話しかければ返事はしてくれるものの、私語は認められていないとばかりに同じ返答が続く。



「今しばらくお待ちください勇者様」



 これで28人目だ。


 外野に期待できないなら内から予測を聞くしかない。こんな状況にも関わらず、1人ソワソワしてる小田くんが何か考えてそうだけど、普段交友がないから話しかけづらい。


 最初の話題をどうするかヤキモキしていると、また一人クラスメイトが案内されてきた。これで合わせて32人、うちのクラスが33人クラスだからあと1人目を覚ませば何らかの説明が始まるだろう。



「────はい、ええ。揃いました(・・・・・)


「………?」



 今しがた久礼野を連れてきた爺さんが、1人の兵士と交わす会話から漏れた言葉がボソリと耳に入ってきた。聞き間違いだろうか、揃ったとは一体何を指して……



「シャルロ・メル・ヴィンハルト伯。ならびに、メルノ・マリ・シャンゼラフ爵がご到着されました!」



 振り向こうとしたその瞬間、凱歌の始まりを告げるような大声が広間に響き渡った。

 突然の、しかし急でも失礼でもない格式通りの動きといったように、その読み上げを行った兵士は横にある扉に手をかけ開き始める。



「は?」

「嘘でしょ」

「いやいやいや」



 クラスのみんなが一同に懐疑的な声をあげる。

 無理もない。今目の前で兵士は、扉というには余りに巨大な門をたった1人で開いたからだ。

 大きさで言うならパリの凱旋門が近いだろうか、勿論建築様式というか、細かな装飾は異なる文化圏である事を示しているが、アレは門の形をしているだけで門扉としての機能はない。


 ダムの水門や、城塞の大門然り、巨大な鉄門というのは人力だけで開けることは想定されていない筈だ。

 実は取手にあるボタンか何かで反応しているとか、現実味のない目の前の現実を、必死で飲み込もうとする。


 そして、その巨大な門が見かけ倒しではない真っ当なコンセプトに沿って建てられた事が明らかになる。開け放たれた門のさらに奥、広々とした空洞から人外の威圧が覗く。


 尻もちはつかない


 後ずさりもしない


 ただ、そこに見えもしない巨大さに気圧され、金縛りにあったように自分が動けるということを忘れてしまった。



「ふむ、我を忘れたか……頼りないな」


「然り、これが勇者であると俄かには信じがたい」



 見上げるほどの威容

 言葉を失うほどの異様


 巨人と竜と神を混ぜこぜにしたような怪物が、合わせて8つの瞳でオレたちを見下ろしていた。

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