戦いの終わらない世界
短いけど投稿します。次の話では視点が変わって別キャラのお話となります。
気づくと、白地に青い線の交叉する豪奢な部屋に居た。
倒れ伏した筈の身体は直立していて、その原因となった割れるような頭痛も無い。
薄暗く内臓が持ち上がるような重たい空気をしたあの部屋と違い、ここは足先から軽くなるような落ち着かない雰囲気をしている。
「ッ──!」
“誰か”
そう言葉を発したつもりだったが、声どころか息を発したかすら怪しく、途端に呼吸を危ぶみ焦る。
出来もしない深呼吸のフリだけして、落ち着いて辺りを見回す。
すぐ近くに、見知ったみんなが居た。
「───!」
こちらが気づけば、あちらも気づく。
そして同じように声と呼吸に慌てる。
手を握ろうとするが、どうしたことか触れることさえ出来ない。
しばらくの間、互い互いに慌てふためいていた。
言葉や音のないその様は、滑稽に映った事だろう。
もしここを眺めている空間の主がいるとするならば、だけれど………………
「…………アレ?」
本のページをめくったような、場面の転換が脈絡もなく起きたような、途端に自分のいる場所が置き換わったように豪華なベッドで目を覚ました。
天蓋付きとまではいかないが、一般的なセンスで寝具に選ぶようなデザインではないことは確かだ。
なんだか場違いに思えて、居心地の悪さからそそくさとベッドから離れる。
部屋は随分と広い……
「お目覚めですかミヤマ殿」
部屋を一回り見終わると、計ったようなタイミングで誰かが部屋を訪れた。
部屋の戸を隔てていながら、一言一言ハッキリと聞こえるのは、なんの仕掛けだろうか
いや、それ以前になぜ名前を知っているのか、ここはどこなのか、さっきまでいたアレは何なのか、疑問は尽きない。
ただ、なぜかその声からは逆らうことを許さない圧力のようなものを感じた。
「ええ、はい。目は覚めました」
思いの外声は平然としていて、心臓の鼓動も早くなっていたりはしなかった。
戸を開けた老人の姿があまりに魔法使い然としていて、笑いが吹き出そうになってしまったけれど
だって黒いローブとぐにゃぐにゃの杖に伸びた爪、皺で垂れた瞼長っ鼻、これが絵本の世界なら完全に悪の魔法使いといったところだ。吹き出さない方がどうかしてる。
「それは良かった。お友達のみなさんもお目覚めになられていますよ」
「あの、みんなはどこに?」
「こちらです。付いてきてください」
老人の先導に従い、長い廊下を歩む。
道中、他のみんなはいつ目覚めたのか、みんな個室を与えられているのか、ここは何処なのか、気になる事をいくつか質問してみたけれど、老人は何も答えなかった。
なんというか、答える意味がないといった態度を感じた。
白地に青線の空間は、魂の座のようなものとお考え下さい。
魔法という事象の存在し得るこの世界において、その事象のない世界からきた生物が、異なるシステムへ異動される際に行う最適化のための空間のようなものです。
つまりは転生スキルを貰える神の間ですね、貰えるのはチートスキルではなく魔法を扱える為のスロット開けぐらいのものですが。
空気なんてもちろんありませんし、そもそも肉体が付属してくる現実空間でもありませんから、声も出なきゃ触れもしません。それでも誰かを認識できるのは視えているのが魂だからであって、そこを外見のように勝手に錯覚しているだけで、手を伸ばしているように勘違いして、手を伸ばされているように感じてるだけです。
上記の通り、肉体が付属してないので直前までの痛みも不調も何もありません。
そういう空間なのだとお考え下さい。