第81話 章末話~4番目のヒロイン
上月 雛子:背中全体 ⅡからⅢ度の熱傷――全治1ヶ月
陣谷 凛:腹部2ヶ所刺し傷、臓器損傷――全治6週間
そして、
三矢島 千理:右腕切断、両脚に深い銃創――全治2ヶ月
三人は戦闘小隊という。
俺が魔族と戦うときの直接支援のために、熱海代表が用意してくれた剣士、魔法士、格闘家からなる小隊だ。俺と一緒に戦うために、今日からマンション奧欧に住むはずだったが、初日の早朝から俺が病院送りにしてしまった。
事情を聞いたところ、ちょっとしたいたずら心から始まったことらしい。
三人で闘気を上げて近づいたら、ハオウガは自分たちに気づくだろうか?と、そして、ちょっと小手調べを兼ねて戦ってみたら、お互いの自己紹介代りにちょうどいいのではないかと思ってやってきたそうだ。
そこへ完全武装した俺が現れたことから、つい実戦で腕試しをしたくなってしまったそうだが、俺が思いのほかガチで戦ったことから、三人に大怪我を負わせてしまったということらしい。
初日から三人とも重傷で運び込まれたのを見て、天使小隊の連中も誰にやられたのかと驚いていた。
――すみません、俺です
幸いにも全員元通りになるとのことだ。剣士の右腕を薙いでしまったことには気が咎めたが、これも元通りに動くようになるそうだ。
「だからこそのエンジェルスタッフよ」
冴子さんが光って見えた。
しかも、三矢島 千理は一美の妹だという。そう言われれば顔の作りは似ている。
しかし、
「一美には連絡しないで」
と強く止められた。こんな有り様は絶対に見せたくないのだと言う。
この姉妹の間には何かあると思ったが、今は聞かないでおく。
しかし、何でこんなことになったのだろう。
俺が名乗ったときに一言いってくれていれば…
――例えば
「蓮華流剣 ハオウガ=マイダフ」
「バトルスタッフ 三矢島 千理。共に戦う前に貴殿の実力を拝見したい」
――といってくれれば、あんな風にはならなかったのに。
あんなことがあった後だ。心のどこかで魔族に仕返しがしたかったのだろう。全員倒したのだから、仕返しなど要らないはずだが、つい、やってしまっていた。
使ったのは全て魔族から受けた攻撃だ。
いきなり、援軍を失った。
けれども、あまり落ち込んではいない。
そもそも聞いていなかった話だ。何かを失った気にはならなかった。
[仕方ない。三人が復帰するまでの繋ぎだけど一人送るわ]
ママナーナのため息が重かった。
要員は明後日の朝に来るという。
こういう風に事前連絡をしてほしい。そうすれば、あの三人にあんな大怪我をさせずに済んだのだ。
名は七条 だなえ。
そのときは、俺は彼女が期間限定のただの交代要員だと思っていた。
「ふうん、一人増えるんだ。良かったね、護」
美歩との第11夜、彼女は揉んだり引っ張ったりしながら、そんなことを言った。
「別にそんな風になるとは限らないよ」
俺は彼女に身をまかせながら呟いた。
「昨日3人やっつけたって話を聞いたし、三矢島さんも研修予定が延びるようだから、もう少し楽しめると思ったんだけど、これで一区切りかな」
「なんで、そうなるの、それにやっつけたわけじゃないよ、あれは事故だ」
「人の目も気にしないとね、そういうこともちゃんと見て、無視しないのが職業人というものよ。あたしはVIPじゃないから、その辺りはうまく折り合っていかなきゃいけないの」
「むずかしいんだな、女って」
「もういいわ、そんな話。とにかく最後の夜よ覚悟しなさい」
美歩の歓びの声は朝まで続いた。
俺の身体から何か抜けて空になっていた。
そして、朝と共に彼女はやってきた。




