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第5話 リダリからの指令

 さて、制御体にとんでもないことを言われてしまった。

 俺が眠っている間に9000年の時間が経ったという。つまり、俺が眠っている間に、地球は太陽の周りを9000回公転したということになる。


――つまり、今はザミダフ攻略戦から、9000年後の世界だというのか

《はい、正確には今年はザミダフ攻略戦から9051年です》


――信じられない。9000年も経ったというなら、この艦も出来てから9000年経っているということだ。いくらイダフの職人であっても、そこまで長く持たせる船を作れるとは思えない

《本艦は恒星間航行を前提に作られており、船には珍しい「ン」の称号が付けられています。》


――うん、知ってる

《恒星間航行は、亜光速飛行でも数百年から数千年かかります。従って、この船は数千年の宇宙飛行に耐えられるように、イダフの科学力、魔法力を総結集して建造されています。9000年は予想の範囲内です》


――そうか、じゃあ、今、我が国はどうなっているんだ

《記録にありません》


 また、これだ。肝心なところになると記録がないと言う。


――じゃあ、お前の記録はどこまで残っているんだ?

《公式記録はイダフ暦629年までです。私的記録については、9638年から9670年までのものが存在します》

――私的記録?誰の記録だ

《リダリ隊長です》

――見せてくれ

《許可が必要です。符丁を発声して下さい》


 符丁、合言葉か、俺とリダリ隊長の間には、そういう心がときめくやり取りは無い。思い当たる符丁はなかった。


――緊急事態だ。なんとかならないか

《開示は許可されていません。ただ、リダリ隊長からはハオウガさん宛てに伝言を預かっています》

――教えてくれ

《それでは再生します》


 伝言は音声だった。


 唐突に、堂内にリダリ隊長の声が響いた。

『…これでいいの? えっ録音は始まっているの?』

 なんだか、リダリ隊長らしい。自分で大抵の機器は治せるのに、使いこなすのはなぜか苦手にしていた。


 咳払いをして、リダリは話し始めた。この癖にも覚えがある。


『ハオ殿、リダリだ。この私的記録は君が氷柱から出たときに、制御体から聞かせることになっている。管理上、指令書としておくが、この指令には従わなくても構わない』


 従わなくてもいいというのは変わった指令だ、隊長は一旦出した命令に従わなくてもいい、という人ではない。むしろ徹底した遵守と遂行を求めてくる人だ。


『もし、君が目覚めたら、この状況にどうしたらいいか迷うに違いない』

――はい、9000年経ったと聞かされて、どうしていいかわかりません。


『もし、そうなら手間はかかるが、私を訪ねてきてもらいたい。一応の装備は用意してある。詳しくは装備と指令種を見て欲しい』


『…………………』

 ずい分間を置いている。


『…………………ん、終了しないぞ、あ、そうか、以上。イダフ暦9670年3月12日、元銀の羽衣師団所属、リダリ』

 リダリ隊長もイダフ暦9670年と言った。やはり、本当のことのようだ。


《再生終了》

 制御体の合成音声が冷たく聞こえた。


――これで全部か

《開示可能な記録は以上です》


 わかった、というものの実はよく分かってないが、わかったことにしよう。


 結論は出た【ここに居ても仕方がない】


 ン・メノトリーで暮らすこともできるかも知れないが、俺はまだ16歳だ。残りの人生をここで過ごすわけにもいかない。

 外に出よう。そして、9000年後の未来というやつを見てやろう。


 イダフ人は優秀だ。女神イダフの加護もある。イダフ王国は、世界の主要国として、更に発展しているに違いない。マイダフ家は兄が継いだのなら少し心配だが、それでもマイダフ家だ。何とか残っているだろう。

 万一没落していたら、俺が再興してやろう。発展していれば、どこか領地をもらって、そこの領主として暮らして、そうだ、剣を教えることにしよう。

 俺は蓮華流剣代王の位にあるし、実戦経験もある。何しろ魔皇帝アカムスと直接戦ったのだ。戻ったら生ける伝説として扱われるかもしれない。そうなると身辺が騒がしくなるかもな。


 よし、決めた。

 生ける伝説となった俺がいきなりマイダフ家に戻れば、家督相続のような面倒事に巻き込まれるかも知れない。

 まずはリダリ隊長を訪ねて、情報収集だ。それからどうすればいいか考えよう。


「俺の装備はどこだ?出してくれ」

《奥の装備室にあります》


 制御体がそういうと、壁が切り抜かれるように出口が現れた。俺は颯爽と堂を出た。

 堂から出ると、後ろで出口が消えたのが分かった。

 ハコネのことが少し気になったが、あのままで構わないのだろう。封じの氷柱から無理に出すことはできない。俺と同じように、その時が来たら目覚めるだろう。


 俺は制御体の案内に沿って、装備室の扉を開けたが何も無かった。

「装備なんて無いじゃないか」

 おもわず、俺は声を荒げていた。


《あります》

 冷静な制御体の声が腹立たしい。


 俺の目には装備室には空っぽに見えるが、9000年経って技術が進んだのだろうか。

 いや、そうではないようだ。あると言われて、よく見ると部屋の隅に装備品を入れるにはあまりふさわしくない紙袋が二つ、床に置かれていた。


 白い袋にはイダフ語ではない文字が書かれていた。

 俺の知らない異国語、日本語だった。

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