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脱出転生ハオウガ<異世界からの剣士、現代日本でアレコレ無双する>  作者: 等々力 至
第4章 イダフ プロジェクト
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第38話 火曜日の約束

 日曜から月曜日まではたったの一日だ。

 しかし、その一日が待ちきれなかった。

 俺は約束の時間よりも1時間早く、三矢島 一美(みやじま ひとみ)の部屋505号室を訪れていた。


「すみません、まだ準備できてなくて」

 三矢島は気の毒なほど、あわてていた。


「いえ、僕のほうが待ちきれずに早く来てしまったので…」

 と殊勝なことを言いつつも、一旦帰るという心遣いはしない。

 三矢島が料理をするところを拝見させてもらう。


 対面厨房(キッチン)で料理している三矢島の姿を愛でるように見ていたら、恥ずかしいからと奥の応接間へと追いやられた。


 テレビでも見ていて下さい、と言われ、背もたれ椅子(ソファ)に座らされたが、番組の内容など全く頭に入らない。


 といいながらも、重要な内容は覚えておく。

 刑務所から受刑者が脱走したらしい、この国では犯罪者にも等しく人権を認めている。イダフでは到底考えられないことだ。


 俺は遠目で三矢島の様子を見ていた。

 三矢島は柔和な顔立ちだが、包丁で何かを切るときには、それに合わせるかのように、刃物のような鋭い表情をときどき見せる。


――かわいい

 俺の視線に気づいたのか、三矢島が顔を上げる。

 俺と目が合った。「また、見てる」と文句を言われるかと身構えたが、何も言われなかった。


 俺は見ることを止めはしないが、控えはしよう。

 これ以上やると、露台(ベランダ)まで追い出されるかもしれないからだ。


 そうこうしているうちに、できました、と声がかかる。

 俺はすぐに行きたいところを、もったいぶって一拍置いてから、食卓についた。


 食卓には二人分の料理が置かれていた。


「一緒に食べたいんですけど、いいですか」と三矢島。


 俺の答えなど決まっている。

「はい、もちろんです」

 俺は日本式に手を合わせ、いただきますと詠唱してから、食べはじめた。


「ハオウガさんの国では、一日一食なんですか?」と三矢島


 話題に欠いているからかも知れないが、愚問だ。

 そんなことは人それぞれであり、そんなことについて決まりはない。

 一日一食を、一日一運知(うんち)と置き換えてみるといい、どれだけ下らない質問かわかるだろう。


 真面目に答えると、日本人のように三食食べるものもいれば、俺のように朝に少し、夜一食というものもいる。


 一般的にいうなら、一日ニ食が一般的だといえるだろう。


 戦闘中なら一日三食でも足りないが、平時ならこんなものだ。


「そうなんですか」

 三矢島の瞳が(かわいそうと)同情の光を帯びた。


――これだよ

 日本人は、一日三食食べられないと「かわいそうな国」と認定したがる。


 俺に言わせれば、一日三食の結果、肥満になったり、食べ切れなくて残飯を大量に廃棄したりする日本人、女神イダフの(ことわり)に反して生きなくてはならない日本人、彼らのほうがよほどかわいそうだ。


 しかし、わざわざ反論する気にはなれなかった。腹の内におさめておく。


 せっかくの食事なのだ、楽しく頂きたい。

 向かいの三矢島も美味しそうに食べている。

 大切なひとときだ。


「一日二食でお腹空かないんですか?」と三矢島

「最近、家から出ないので、あまり腹は減らないんです」と俺


 すると、三矢島の表情が急に険しくなった。


「せっかく日本にいるのに、家に引きこもっているんですかっ!?」

 俺を叱り飛ばすような口調だ。


「えっ…、ああ…、そうです」

 勢いに押されて、たじろいだ。


「外に出なくてはダメです。紫外線は敵ですが、日光に当たらないと人間っておかしくなりますよ」


 普段なら押し付けがましいと思うところだが、俺は三矢島のいうことを素直に聞いていた。


 食料を提供する側とされる側、自然界の規則に当てはめると、親と子のような関係になったつもりなのだろう。


 しかし、俺にとって食事とは、


 誰かに、()()()もらうものだ。


 俺も食事を準備してくれる人への感謝の気持ちを忘れることはない。

 これは師団や日本での生活を通して、学んだことだ。

 だからといって、三矢島の態度が俺の親のようになっても困る。


 釘をさしておかなくてはならない、なんて言おうかと思ったら、三矢島は意外なことを口にした。


「明日、出かけましょう。私が連れていきます」


「どこへですか」

 俺は一応尋ねる。


「任せて下さい、お金がかかるところは無理ですが…任せてください」


――二度も言った。お任せしよう。


 俺も自力で日本を散策することに飽きていた。(散策したのは2、3回程度だがすぐに飽きた)

 ならば、日本人に連れて行ってもらおう。

 それが最良の策だ。


 ごちそうさま、と手を合わせると、午後7時を過ぎていた。

 このまま泊まっても俺はよかったが、さすがに三矢島にとっては迷惑だろう。

 適当なところで辞去した。


 俺は部屋に戻ると、寝台(ベッド)に仰向きになる。

 満ち足りた腹をさすりながら、明日のことを考えた。


 どこに連れて行ってくれるのだろう。

 大阪か京都だとは予想はつく。わずかな会話で知った三矢島の人となりから判断すると、京都の寺社巡りが有力だが、意外な一面も見せてくれるかも知れない。


――明日、火曜日、三矢島と出かけるのが楽しみだ。

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