伝える
彩ちゃんの過去を知りもしない癖に綺麗事並べてるなんて自分でも分かっている。
これは"賭け"だった。
まだ彼女の心に私の声が届くのか…
いや、私の声が彼女の耳に届けることができるモノなのか。
そしてアヤちゃんの目から流れ落ちた"一粒の雫"が"一筋の希望"を私に与えてくれた。
「彩ちゃんの気持ちは誰も知らないよ。当然でしょ??だって、その気持ち…伝えられるような相手と出会えてないんだからさ。せっかくこんな面と向かって話せてるんだからさ…いい機会だと思って彩ちゃんの気持ち、私に伝えてみない…?
…ううん、私聞きたい。彩ちゃんの事!!もっと知りたいよ!!ダメ??」
下手くそだ…
だけど私には"これ"を上手く言葉にする術がない。
不器用ながらも頑張ってみた結果がこれだ。
アヤちゃんはこちらを"ギッ"と睨むと、斜め下に視線を移し、すぅーっと静かに息を吐いた。
『ホント…会わなければよかった…』
そう一言漏らすと彩ちゃんの表情がだんだんと和らいでいく…
そして急に魂が抜けてしまったかのように床に伏せてしまった。
慌てて駆け寄ると、その穏やかな表情から、静かで透き通った呼吸が聞こえた。
な…なんか私、悪魔払いでもしたみたいなんですけど…
そんな事を考えながら、床に伏した柔らかく繊細な身体を抱え込み、ベッドへと移動する。
それだけの作業で息が切れる身体に不便さを覚えつつ、精巧に創り上げられた美しい人形のような彩ちゃんの寝顔に目を奪われた。